Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
20 巻, 1 号
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  • I. 凍結移植歯芽の生存と発育に関する研究
    吉岡 済
    1960 年 20 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 1960/07/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    従来より凍結組織の生存並びに保存に関する多くの研究報告がなされてきた.
    一般に氷結晶が凍結時, 生活細胞の損傷と密接な関係にあるとされているが, その第1の論拠は直接的な損傷で, 氷結晶が細胞の protoplasmic colloidal system の破壊を導くが如き機械的傷害の原因であるとし, 結晶形成の量的脹膨が細胞を破裂させるものであると提言している.
    第2の論拠は間接的損傷が考えられ, 結晶形成が細胞を死に至らしめる化学的傷害の原因だと説明されている. Glycerol 及びその一連化合物の保護作用としての特性は氷結晶形成を抑制することであり, 或いは又その速度を適度に遅延せしめることにある. もしかかる保護物質を使用しない場合には非常に急激な凍結及び融解法を用いねばならない. しかしこの分野における理論的裏付けは未だ明らかではない. この見地から, 異った胚葉より由来した混合 organ としての胎生歯芽の同種体内移植後, その組織発生学的考察を判定規準として凍結組織が生存し得るかどうかを検討することは非常に画期的な問題である.
    純系C3Hマウス17日目胎児の第1大臼歯を摘出, 次の4群に分け夫々処置を加えた. 第1凍結群, 第2 glycerol 前処置凍結群, 第3 glycerol 前処置群, 第4無処置対照群とし, 夫々同種 host マウスの両側前眼房及び腋下へ移植した. 保護処置として歯芽に30% glycerol 液を作用きせ, 凍結法としては液体窒素(-195°C) 中で超急激凍結を行い, Tyrode 液 (37°C) を急激融解剤として用いた. 未分化の象牙質芽細胞及びエナメル質芽細胞は移植後40日にして夫々成熟し, 旦つ象牙質, エナメル質形成と共に完全な歯牙の発育を見た. すなわち移植前 glycerol 液の保護処置を施さなかった前眼房移植歯芽の発育率は0%であったが, glycerol 液で保護処置を受けた凍結群では33%の発育に成功した. 又腋下へ移植したものでは無処置凍結群が4%の発育率を示すのに対し, glycerol 処置凍結群発育歯芽では57%であった. 凍結することなく単に glycerol 液の処置を受けた歯芽では前眼房, 腋下両移植部共に glycerol 処置凍結群より損傷少なく, 発育率は上昇した. しかし glycerol 液自体, 正常組織に対して何らかの障碍を与えることは glycerol 処置群が無処置対照群に比し低発育率を示したことをもって認知し得た. 無処置対照群は前眼房, 腋下両移植部共に85%の最高率を示した. かくの如く移植部位として腋下は前眼房に比し高発育率を示したが, 無処置対照群では顕著な差を認めなかった. 又凍結群移植歯芽発育後の所見として屡々毛髮および重層のケラチンを含んだ皮様膿腫様構造物を認め, 旦つその毛髮は正常色素沈着を持つC3Hマウス (茶褐色) のものであったにもかかわらず, 凍結後は全くその色素沈着を見なかったのは甚だ興味深いものがある.
    以上の如く本実験で達成された基本的事実は胎生歯芽が凍結されてもなお生育力を維持しているということである. 凍結が極く微少の損傷を細胞に与えたのは明白な事実であるが, しかし多くの場合, 生存細胞を維持し, 且つ損傷を受けた細胞を修復し成長を続けることが証明された. これらは移植された組織が host 動物体細胞と最小限に交わり成長を続け, 又その大半は独特な形態学的特色を維持し, 長期間 host 動物内に保持出来る可能性を示したのである. 歯芽の組織標本は glycerol および液体窒素による凍結前処置を加え, 次いでマウス両側前眼房或いは腋下へ移植することにより得られたし, それは又細胞の増殖を示し組織発生の可能を啓示したのである.
    歯芽が凍結されて, なお生存能力を示す例が唯一つでもあれば本実験の目的は達成されたにも等しいものである. 然るに現実は数多くの歯芽がその発育, 生活力の維持を示すに至ったのである. これらの成果は冷凍歯芽貯蔵の最適条件および状態を証明する上に多大の貢献をなす新しい事実として極めて興味あるものと考える.
  • II. 移植歯芽の生存と発育過程に及ぼす組織培養並びにホルモンの影響に関する研究
    吉岡 済
    1960 年 20 巻 1 号 p. 19-34
    発行日: 1960/07/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    近時 in vivo 移植並びに in vitro 組織培養法の応用は背椎動物の発生学的研究に有益な数多くの成果をもたらしてきた. 他方, 実験動物骨格系に対する estrogen の効果に関して多くの研究がなされ, それが組織の発育を抑制するものであると報告されている. しかしその作用機転に関しては未だ明確に知られていない.
    本研究はこれに基き歯牙形成の原基である胎生歯芽の移植片に対する estrogen の影響について観察し, 又歯芽の体外培養後にその生存と発育の能力の有無を見, なお培養中にホルモンの影響がなかった歯芽の間接移植と直接移植に対するホルモンの効果を比較検討したもので, これは極めて興味ある問題である. 移植方法として体重20gの成熟純系雌マウスを4群に分け使用し (1. 卵巣摘出去勢群, 2. estrogen 注射群, 3. 去勢後 estrogen 注射群, 4. 対照群), これらを移植されるべき host 動物とした. 移植には何れも胎生17日目の歯芽を用いた. 体外培養歯芽は3日, 5日, 6日, 8日, 及び10日間培養の各グループに分け, 培養後 host マウスの腋下へ移植した.
    直接移植歯芽においては第1去勢群84%, 第2 estrogen 注射群91%, 第3去勢後 estrogen 注射群84%, 及び対照群は最高で, 94%の発育率を示した. 各群大差を認めないが, 第2群は他の3群に比し象牙質形成がやや良好で且つ歯髄の血管形成は活溌で, その数も優っていた.
    組織培養歯芽の3日間培養移植片は各群共その発育率は減少し, 夫々第1群55%, 第2群83%, 第4群63%で, 5日間培養では更に減少, 第1群18%, 第2群25%, 第4群25%, 6日間培養に至り各群全く発育を認めず0%, 培養後7日目に培養液は refeed され, 8日間培養では発育率は再び上昇, 第1群33%, 第2群33%, 第3群25%, 10日間で第1群26%, 第2群34%, 第3群25%, 第4群42%を示した. 各日数平均発育率は第1群28%, 第2群37%, 第3群25%, 第4群35%で, これは前述直接移植歯芽発育率に比し低率を示しているが, 各群間発育率の比較では共にほぼ同様の割合差が認められた.
    Estrogen の骨格系に及ぼす影響はその発育を抑制するという報告が多い.しかし本研究において直接的に, 或いは組織培養を経て完全にホルモン無影響状態に置かれた胎生歯芽を間接的に動物へ移植して estrogen が移植歯芽に及ぼす影響を観察し, それが組織に対し発育抑制の効果を示さず, むしろ極く僅少であるがその発育率を高めたいという結果を得た. これは勿論 estrogen の投与期間, 量等により異なった結果を得るものと考えられる. 各群の組織像においては著明な差を認めないが, estrogen 注射群では特に明瞭な象牙質細管形成が見られ, これは活溌な組織の発育を示すと共に他群に比し長期にわたり発育を続けるということが歯髄血管形成の旺盛さにより観察し得た. 又直接移植及び組織培養後, 間接移植発育歯牙共に上記の所見を呈したが, その発育率の比は5対2の割合であった. これは培養後移植歯芽では発育力の低下を示したものであるが, たとえ一例でもその発育を示すならば, 10日間にわたる長期の体外培養歯芽においても移植後, なお生育力を失なわないことを意味するものである. 他方移植時迄経続してホルモンの影響下にあった直接移植歯芽と培養中ホルモン無影響状態にあった間接移植歯芽に対する estrogen の効果は殆んど大差なく, 組織像で後者は僅かに発育の未熟な像を呈していた. 組織培養中, 歯芽は時間の経過と共に多くの out growth を培養器表面に沿って増殖させ, 従って歯芽そのものは flat 状を呈し培養8日目にて容易に dentinoenamel junction を観察出来た. 培養6日目に各群の歯芽発育率は0%を示しているが, それはこの時期になると out growth 外郭細胞群の一部が壊死に陥り老癈物及び毒性物質を培養液中に放出, 或いは又組織新陳代謝の結果培養液のpHを著しく変化させ多くの細胞に障碍を与えるか, これらを死に至らしめる結果と考えられる. 培養7日目には新鮮培養液を refeed した為, その後の組織は再生し発育率の上昇を示している. 以上の如く本研究においてマウス胎生歯芽の長期体外培養後なお, その生育力を維持し, 且つ estrogen 投与が移植歯芽の発育を抑制することなく, むしろ僅少ながら発育促進を示したという事実は今後この方面の研究に有力な手掛りを与え, 且つ重要な基礎を作り得たと確信する.
  • 西尾 光男
    1960 年 20 巻 1 号 p. 35-56
    発行日: 1960/07/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    犬尿道の知覚神経分布は尿道前立腺部で最も顕著, 前立腺前部, 膜様部及び海綿体部ではより多少劣勢である.
    前立腺前部に向う知覚線維の多くは上皮下及び上皮内単純性分岐性終末に, 少数は非被膜性及び有被膜性糸球終末に終る. 分岐性終末の多くは上皮内に形成され, 終末枝の多くは著明な太さの変化を示す. 尚お粘膜下膜内に Pacini 氏小体に似た小型終末小体が稀ならず発見されて興味深い.
    前立腺部では前立腺管に沿って屡々単純性分岐性終末を見, その終末枝は稀ならず上皮内に入る. 粘膜下膜内に稀ならず極めて小型の Pacini 氏小体が発見される. 粘膜に向う多数の知覚線維は専ら分岐性終末に, 1部は小体様終末に終る. 之等は量的にも構成上でも前立腺前部に於けるより優勢である. 小体様終末には前立腺前部に於けると同様, 陰部神経小体第I型類似のものが甚だ多い. 分岐性終末の多くは上皮内に形成され, 屡々可なり複雑に構成される. 終末枝は著明な太さの変化を示す太い線維から成る事も稀ではない.
    膜様部では先ず猫に於けると同様, 尿道筋周囲の外膜内に Pacini 氏小体の形成を見る. 之は2-3集合している場合が多い. 太い知覚線維はその中で分岐する事なく鈍状に終る. 尿道筋の内輪走平滑筋層内には猫に於けると同様極めて太い知覚線維に由来する特殊分岐性終末を見る. 之は筋層の発達良好な近位部に於ける程強力に構成されるが, 発達甚だ劣勢な遠位部に於ても尚お弱い構成の特殊終末の形成を見る. 尚お之は人前立腺に見られる阿部の所謂前立腺知覚終末に類似する.
    膜様部粘膜内にも糸球状及び分岐性終末を見るが, 之等は前立腺部のものよりは量的にも構成的にも劣勢である. 尚お犬では猫の場合と異ってここには Pacini 氏小体も終末棍も証明されない. 糸球状終末は遠位方に向ってその数を減ずるが, 粘膜周囲の静脉叢内にも稀ならず発見される事は興味深い. 分岐性終未も遠位方に向って発達劣勢となる. 終末枝は屡々太さの変化に富んだ太い線維から成り, 専ら上皮内に進んで終るが, 上皮下に構成される分岐性終末も稀ならず発見される.
    海綿体部の知覚神経分布は人に於けるよりは劣勢であるが, 猫の場合を遥かに凌駕する. ここでは分岐性終末が特に上皮内に形成される外, 糸球状終末は膜様部に於けるよりも遙かに多く, その構成もより良好, 更に之より上皮線維の発生を見る事もある. 尚お上皮内分岐性終末には複雑型も見られ, 又極めて太い上皮内線維も稀ならず発見される.
    陰茎内の背神経に附随して作られる Pacini 氏小体は人や猫に於けると異って犬では見られない. 然し之は包茎内には稀ならず発見される. 陰茎海綿体の白膜内には強力に発達する終末棍と特殊核に富んだ分岐性終末の形成を見る. 尚お終末棍内には屡々太い知覚線維の単純性分岐性終未を見る事が屡々である.
  • 豊田 守国
    1960 年 20 巻 1 号 p. 57-106
    発行日: 1960/07/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    In der vorliegenden Untersuchung wurden Riechdrüsen bei verschiedenen Mammalien, nämlich Kaninchen, Meerschweinchen, Ratten, Pferden, Rindern, Schafen, Schweinen, Hunden, Katzen und Fledermäusen cytologisch, histologisch zum Teil auch histochemisch eingehend studiert. Die ganz frische Riechschleimhaut aus Regio olfactoria der genannten Tiere wurde als kleine Gewebsstücke mit dem LEVIschen, CHAMPYschen Gemisch, ZENKER-Formol, 10% Formol u. a. fixiert, in Paraffin eingebettet, dann in 4-5μ dicke Serienschnitte zerlegt. Für die Darstellung der Mitochondrien wurden die mit LEVIschem und CHAMPYschem Gemisch fixierten Paraffinschnitte mit dem Eisenhämatoxylin nach HEIDENHAIN, Anilinfuchsin-Aurantia nach KULL und Azan gefärbt, diese Präparate wurden auch für verschiedene cytologische Beobachtungen der Riechdrüsen benutzt. Für den Nachweis des Mucins wurden die Perjodsäure-SCHIFFsche Reaktion (PAS) und die BAUERsche Reaktion an den mit ZENKER-Formol fixierten Schnitten appliziert, dabei wurde die Speichelverdauungsprobe für die Unterseheidung des Mucins von dem Glykogen angewandt. Außerdem wurden einfache Thionin- oder Toluidinblaufärbung, Berlinerblau-Reakion für Eisennachweis, SudanIII-Färbung u. a. angestellt. Für die Herstellung der Übersichtspräparate wurden die durch ZENKER-Formol fixierten Schnitte mit Hämatoxylin (HANSEN)-Eosin oder Azan angefärbt.
    Bei genannten 10 Säugetierarten sind die Riechdrüsen morphologisch miteinander sehr ähnlich und zeigen keine wesentlichen morphologischen Abweichungen.
    Die Gl. olfactoria stellt bei allen untersuchten Tieren eine einfache verästelte tubulöse Drüse dar und erweist sich durch morphologische, färberische und histochemische Beobachtungen als eine Art Schleimdrüse. Sie verteilt sich in der Riechschleimhaut verhältnismäßig dicht und erreicht die tiefste Schicht derselben. Die einzelnen Riechdrüsen teilen sich in einen kurzen intraepithelialen und in einen im Bindegewebe der Riechschleimhaut ziehenden, langen Abschnitt ein; der kurze intraepitheliale Abschnitt durchsetzt in der Regel das Riechepithel senkrecht, stellt zum Teil oder die ganze Länge hindurch den Ausführungsgang der betreffenden Riechdrüse dar, indem er mit einem eigentlichen, einschichtigen Plattenepithel des Ausführungsgangs bekleidet ist; im ersteren Falle dringt der Drüsentubulus aber eine kurze Länge in das Riechepithel hinein (der intraepitheliale Abschnitt des Drüsentubulus). Der lange, im Bindegewebe der Riechschleimhaut ziehende Abschnitt der Riechdrüse vertritt den Drüsentubulus oder -schlauch, nämlich den sezernierenden Abschnitt. Der lange, öfters leicht gewundene Drüsentubulus der Riechdrüse besteht aus großen, dunklen, verschiedentlich gestalteten Drüsenzellen und der schlecht ausgebildeten, sehr schwachen Membrana propria; er teilt sich wieder in einen subepithelialen oder superfizialen Abschnitt, einen mittleren oder Drüsenkörper und einen tieferen oder Drüsengrund ein. Der intraepitheliale Abschnitt stimmt in verschiedenen morphologischen Beschaffenheiten mit dem subepithelialen Abschnitt überein.
    Die großen dunklen Drüsenzellen vertreten bei den Riechdrüsen von verschiedenen Säugetieren die gewöhnlichen Drüsenzellen, die lebhafte Schleimsekretion ausüben und sich in verschiednen Sekretionsstadien, Ruhe-, Restitutions- und Stapelstadium, befinden. Sie führen außer den Mitochondrien stets starklichtbrechende orangegelbe Pigmentgranula und homogene hyaline Substanz in wechselnder Menge; die gewöhnlichen Riechdrüsenzellen zeichnen sich bei verschiedenen Säugern durch diese beiden Cytoplasmaeinschlüsse aus.
  • 古妻 五郎
    1960 年 20 巻 1 号 p. 107-123
    発行日: 1960/07/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    副腎皮質ホルモンが胃腺主細胞分泌機能に及ぼす影響を検するためラッテ体重1kgにつき1mg, 5mg, 10mgの割で hydrocortisone 1回, 毎日1回5日間及び10日間皮下注射し, また他方副腎摘出及び摘出後 hydrocortisone 10mg/kg, anthranil 酸10mg/kg皮下注射等の実験を行い, 夫々の場合の給食による胃腺主細胞の分泌機能状態を正常ラッテのそれと比較考察した. 得たる結果は以下の如く要約される.
    1. Hydrocortisone が胃腺主細胞分泌機能に影響を及ぼすことは疑を容れない事実である. この事実は更に以下の通り分析される.
    2. 常に認められる hydrocortisone の効果は胃粘膜表在細胞からの胃壁ホルモン productin 分泌を抑制することである. 従って少量の皮質ホルモンは productin 分泌抑制によって結果的には胃腺主細胞分泌顆粒新生にも抑制的に作用するが如くに見える.
    3. 処が多量の hydrocortisone は productin 分泌抑制以上に胃腺主細胞分泌機能を全面的に強く抑制する.
    4. その間の量では或時は主細胞分泌顆粒新生を促進する効果を示し, 或時は分泌顆粒の空胞化を促進する方向に作用する等一定しない. この事実は hydrocortisone が胃腺主細胞に直接作用するものでなく他のホルモンとの均衡関係に於て影響を現わすことに原因していると解せられる.
    5. 副腎摘出例, 副腎摘出後10mg/kg hydrocortisone 注射例及び副腎摘出後10mg/kg anthranil 酸注射例から得た結果では, 皮質ホルモンには明かな productin 分泌抑制作用の他に胃腺主細胞分泌顆粒の空胞化を促進する傾向が本来の効果として存するらしく推察されうる.
  • 須賀 昭一, 大竹 太, 佐藤 コト, 大竹 上, 小原 シズ子
    1960 年 20 巻 1 号 p. 125-137
    発行日: 1960/07/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. In this study, we have tried to investigate the formation of dental hard tissues, especially amelogenesis, by utilizing a fluorescence microscope. As a result of this study, the secondary fluorescence of the sections stained with acridin orange as fluorochrom shows various and well differentiated fluorescence colors, which proves most effective.
    2. The fluorescence microscope used in this study is one combined with LEITZ's camera microscope ‘Panphot’. The source of radiation used was an PHILIPS' high pressure mercury vapor lamp CS. 150, operating at 120 volts and 2.7 ampere. As the filter was designed to remove visible radiation from ultra violet light, 4mm thick blue fluorescence filter BG 12 is used, and as a filter for absorbing the red portion of visible spectrum, the liquid filter filled with 3per cent copper sulphate solution, is used. Ultra violet protective filters inserted into the microscope ocular are those of 2.5mm thick OG 1. Photomicrographs were taken by the one lens reflex camera attached to the microscope. The films used for this purpose are FUJI Color (reversal type, ASA 10), Ektachron (daylight type, ASA 32), and Konicolor (negative, ASA 50).
    3. The distributions and the changes of the elements that fluoresce bright orange or bright orange red color in the cytoplasm of each enamel organ cell at each stage will coincide with those of ribonucleic acid (RNA) in the cytoplasm of the same cells (Fig. 1, 2, 3 and 4) The granules in the cytoplasm of the ameloblasts can, to a certain degree, be distinguished by the difference of fluorescence color, it seems. (Fig. 2)
    4. By this methode, the secondary fluorescence color of the enamel matrix, especially the one at the formative stage, is similar to that of the granular layer and the deeper zone of keratin layer of the epidermis and both the fluorescence colors change in the same way, according to pH of buffer dye solution changes (Table 1).
    5. It has thus been recognized that ‘cuticle-like structure’ in the ameloblasts at the maturation stage shows entirely different fluorescence color from the other portion of cytoplasms (Fig. 3 and 4).
    6. It is considered that a fluorescence microscopy is a very usefull method for histological and histochemical studies on amelogenesis. However, it is required that we should be very careful of the interpretation of these findings, and further this fluorescence microscopy must be applied with routine methods, histological and histochemical.
  • 菅厚 正直
    1960 年 20 巻 1 号 p. 139-159
    発行日: 1960/07/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    土龍の直腸膨大部の近位部は極めて菲薄. 従って之に対する神経線維も甚だ僅少, 又 Auerbach 及び Meissner 神経叢も発達極めて劣勢, 神経細胞は稀に見られるに過ぎない. 然し膨大部の遠位部では筋膜も粘膜下膜も発達良好となり, そして最末端部では以上の組織像は最高頂の発達を示す. 特に内肛門括約筋は甚だ強力, 従って Auerbach 神経叢も強力で, 中に大型の神経節も含まれる. 又横紋筋性の外肛門括約筋で包まれる外膜内にも小型神経節の形成を見る. 然し Meissner 神経叢は発達劣勢である. 直腸下部に対する外来神経線維は多くの植物線維の外に, 可成り多数の知覚線維を含む. 後者は交感性神経細胞と何等関係せず, 神経叢内を通り貫いて専ら固有模特に腸隠窩間に来て非分岐性及び単純性分岐性終末に移行して終る. 又稀ではあるが非被膜性糸球状終末に終るものもある. 幹線維は一般に中等大線維で表わされ, 終末枝は屡々著明な太さの変化を示す.
    土龍の肛門管は甚だ長く延びていて, その近位2/3は従走性粘膜ヒダを有し, 肛門柱帯に属する. その柱も洞も非角化性重層扁平上皮で包まれ, 之に対し固有膜からの乳頭形成も著明. この柱帯には直腸下部に於けるよりも遙かに多くの知覚線維の進入を見, その終末は分岐性終末で表わされ, 終末枝は著明な太さの変化を示し広範に拡散する. 尚お人及び他動物に富豊に見られる上皮内線維がこの動物では何処にも見られない事は興味深い.
    肛門管の遠位1/3は縦ヒダの消失する肛門中間帯を示す. 上皮は柱帯に於けるより背が低く, 乳頭形成もより弱い. 然しこの粘膜にも可なり多くの知覚線維の進入を見, その終末は分岐性終末で表わされる. 但しその構成は柱帯に於けるよりはより単純, 又終末枝はここでも上皮内に入らない.
    肛門管の最遠位部は僅かの毛嚢所有の肛門外皮帯を示し, 之は肛門管を包囲する有毛性外皮に移行する. この外皮は直腸周囲にも及び, 中に極めて多くの知覚線維の分布を見る. それは真皮の中に平滑筋線維を含み, 表皮に対する乳頭形成も顕著で外陰部外皮の性状を具えることに基くものと思考される. その知覚終末は概ね甚だ太い線維に由来する分岐性終末と終末棍とで表わされる. 尚お毛嚢頸にも著明な知覚終末の見られる事は言うまでもない.
    分岐性終末は多くは表皮下に見られ, その終末枝は太さの変化を示す太い或は細い線維から成り, 一般に尖鋭状に終る. 又屡々多数の終末枝で構成される複雑性分岐性終末も発見される. 終末棍は可なり大型で卵円形を呈し, 結合織被膜内の内棍内には太い線維の非分岐性及び単純性分岐性終末を見, その終末枝はその遠位極に鈍状に又は原線維性拡散を以て終る. その他2-3終末棍が同一幹線維に由来する事も稀でない.
    この動物の肛門及び直腸下部の外皮はその外陰部(細川)に於けるよりも遙かに知覚線維とその終末とに恵まれている. 即ち前者は後者に於けるよりもより重要な知覚作用の営まれる所であり, この点比較解剖学的に見て極めて意義深く思われる.
  • 中井 隆治
    1960 年 20 巻 1 号 p. 161-178
    発行日: 1960/07/20
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    舌背は身体中で恐らく最も知覚線維に富んでいるが, その分布及び終末構成は舌乳頭の種類によって多少趣を異にする.
    糸状乳頭内には非被膜性の糸球状終末と太さの変化に富んだ終末枝から成る種々な形状の可なり複難な分岐性終末とが発見される. 茸状乳頭内でも前者に於けると同様上記2種の終末が見られるが, 糸球状終末は糸状乳頭に於けるより少量に発見される. 唯この部の上皮は非角化性であり且つ少量乍ら味蕾を所有するから, 細い線維の上皮内線維を見る外, 味蕾直下には太さの変化に富んだ終末枝から成る分岐性終末も見られ, 又このものから更に蕾内及び蕾外線維への移行も認められる.
    葉状及び有廓乳頭内には糸状及び茸状乳頭に於けるよりも少量の知覚線維の進入を見, その終未には糸球状終末は極めて少く, その多くは比較的単純に構成される分岐性終末で表わされ, その終末枝は上皮下特に味蕾に関係して終る. 然し稀ならず極めて太い線維に由来する複雑に構成され広範囲に拡散する分岐性終末も発見される. 尚お之等乳頭内には極めて多くの植物線維の進入を見, 到る所にその終網の形成を見る.
    舌下面では舌乳頭は見られず, 単に粘膜乳頭を見るに過ぎないから, 知覚線維は舌背に於けるよりも遙かに少い. 外側縁及び正中部には稍々大なる粘膜乳頭の存在を見, この中には少量の知覚線維が入り単純な分岐性及び糸球状終末に終るが, 小乳頭の多くのものには知覚終末は証明されない. 舌下面には稀ならず味蕾乳頭が見られるが, この中には茸状乳頭に於けると同様な知覚終末を見る. その他稀に上皮下に陰部神経小体第I型に類似の小体様終末が形成される.
    舌背の固有膜内にも陰部神経小体第I型類似の終末小体が稀ならず発見される. 之は舌下面のものよりは一般により大型である.
    舌尖腺の腺管に沿って知覚終末の形成を見る. 之は太さの変化に富んだ終末枝から成る複雑性分岐性終末で表わされる許りでなく, 非被膜性糸球状終末で表わされ, 且つ終末枝の1部は更に腺管内に進み上皮内線維に移行する.
    著者の最も大きな貢献は舌尖の粘膜下膜及び筋組織の中に複雑に構成される特殊分岐性終末を可なり多量に発見した事である. 本終末は1-2の太い知覚線維が特殊核に富んだ終末領に達するや太さの変化に富んだ多数の分枝に岐れ, 之等は全く不規則な迂りを走って終るが, その経過途上又はその先端部に原線維性拡散を示している, 即ち血圧下降反射に関する知覚終末第I型に類似する, 然し又陰部神経小体第III型に類似する場合も亦少なくない. 何れにもせよ, この様な甚だ複雑に構成される特殊分岐性終末は極めて高級な感受装置を示すものであろう事は疑う可くもない.
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