Ig-G型骨髄腫15例, Ig-A型骨髄腫3例, 原発性マクログロブリン血症3例の患者骨髄細胞を電子顕微鏡により観察した.
Ig-G, Ig-A骨髄腫の全例およびマクログロブリン血症のうち1例が形質細胞優勢であった. これら骨髄腫細胞は正常形質細胞に比し 種々の点で相違が見られるが, これは過剰のグロブリンが細胞内で産生貯留される為に生じた 特異な像であろうと考えられる. Ig-G, Ig-A骨髄腫細胞は その形態及び成熟度が症例によりほぼ均一な増殖を示すのが特徴であるのに反し, マクログロブリン血症の形質細胞優勢例では 各段階の成熟度の細胞が見られた.
1. Ig-G型骨髄腫細胞は一般に1内至数個の核を有し, そのクロマチンは塊状に濃縮されているが, 症例によっては均一に散在しているものもある. 数例に核内封入体が見られたが, 2層の限界膜と細胞質に類似した内容をもつ. ゴルジ装置は広範囲に発達し, その内外に多数の dense body が認められた. 粗面小胞体は良く発達しているが, 症例により その形態に相違が見られ, これを4種に分類した. ラツセル小体は粗面小胞体内腔に円形, 内容無構造で 小胞体内よりやや高い電子密度の物質として観察された. ミトコンドリアも症例により数, 形態の異ったものが見られた. 細胞質には線維構造も見られ, 束状に主として核周辺に存在していた.
2. Ig-A型骨髄腫細胞はIg-G型と型態学的に相違はほとんど認められなかったが, 3例中2例に粗面小胞体の膨化が観察された.
3. 原発性マクログロブリン血症の形質細胞優性例では, 特殊な構造として 核内封入体と結晶様構造が観察された. 核内封入体は一層の限界膜と 無構造で低電子密度の内容をもち, 大きさは大小様々で数も1個から5個まで観察された. 全く同じ核内封入体が, 形質細胞優勢でない2例のマクログロブリン血症のうちの1例の形質細胞核内にも認められた. 結晶様構造は dense body のうち とくに電子密度の高いものおよび lysosome の一部にも認められ, 約60Åの電子密度の高い部分と120Åの低い部分より成り, 規則的配列をなすものと 蜂の巣様構造をなすものの二種が観察された.
4. 原発性マクログロブリン血症の他の2例では マクログロブリン産生細胞が不明であったので, フェリチン抗体法により患者骨髄細胞を検索した. フェリチン粒子は骨髄細胞のうち2種の細胞, 即ち, 形質細胞と大型の特殊なリンパ球にのみ特異的にとりこまれ, 小リンパ球 (成熟リンパ球), 顆粒球, 単球, 赤芽球, 巨核球等にはフェリチン粒子は全く認められなかった. 上記2種の細胞がマクログロブリン産生に関与していることが充分考えられた.
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