ヒト胎児 (4∼7カ月; 10胎) の十二指腸の微細構造を, グルタールアルデヒド-オスミウム酸二重固定, エポン包埋した材料で, 光線および電子顕微鏡を用いて観察した.
限界膜につつまれた果粒をもつ細胞は, 結合組織内にも上皮内にも見出され, これらが成体の基底果粒細胞と同様の細胞質構造を示すことから, 基底果粒細胞と同定された. 胎児の基底果粒細胞は, 神経要素との関係, 上皮組織内での分布などの点で成体の基底果粒細胞とは異っていた.
4カ月胎児では基底果粒細胞が固有層内に数個塊ってみられることが多く, この細胞塊は上皮組織の基底部に連続していた. 5カ月胎児では, このような基底果粒細胞塊は稀であった. 7カ月胎児では, 大部分の基底果粒細胞が単一で, 他の上皮性細胞に挾まれており, 細胞質突起が腸管内腔に達していることが多かった.
固有層の基底果粒細胞はシュワン細胞に似た細胞によって包まれていた. この細胞の細胞質突起と基底果粒細胞との間には無髄神経線維が多数みられた.
7カ月胎児では, 基底果粒細胞の基底面に, 果粒内容を含むΩ型の細胞膜陥凹が見られた. 基底果粒細胞は胎生時にも, 開口型放出の機序により分泌機能を営むと考えられた.
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