Archivum histologicum japonicum
Print ISSN : 0004-0681
39 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • I. 腺細胞
    黒住 一昌, 川端 五十鈴
    1976 年 39 巻 4 号 p. 207-229
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ヒトの耳道腺 すなわち外耳道に分布するアポクリン汗腺を 透過および走査電子顕微鏡で観察した.
    腺細胞は非常によく発達した滑面小胞体とゴルジ装置を含有する. 粗面小胞体は しばしば大きな球状の糸粒体に密に接近している. これらの大きな糸粒体は分泌顆粒と直接の関係をもたない. ゴルジ層板の陥凹面の近くに いくつかの細管がみられる. これらのゴルジ装置に附属した細管に特異な暗調物質が貯留し, 大きな暗調分泌前顆粒を生ずる. その中に多数の明調空胞が発生し, その表面から分離する. このようにして生じた空胞は, 細胞遊離表面の方に移動し, その内容を開口様式により放出する. これらの空胞のうちのいくつかは, 細胞質のひきちぎり (分離) によっても腺腔に放出される. これは いわゆる離出 (アポクリン) 分泌である.
    酸性ホスファターゼの活性は 暗調な分泌前顆粒にあらわれるのみならず, 細胞の先端部に位置する明るい空胞や腺腔にも出現する. このような組織化学的所見は, アポクリン汗腺の分泌物が ライソゾームに他ならない分泌前顆粒に由来する加水分解酵素をふくみ, これらの酵素が 離出分泌によって腺腔に放出された物質の 消化分解に資するものであろうことを示唆する.
    走査電子顕微鏡によって, いろいろな大きさのアポクリン分泌突起を腺腔表面に観察した.
  • II. 筋上皮細胞
    川端 五十鈴, 黒住 一昌
    1976 年 39 巻 4 号 p. 231-255
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ヒトの外耳道 アポクリン腺の筋上皮細胞を 透過および走査電子顕微鏡で観察した.
    筋上皮細胞は長さ約100-150μm, 幅3-5μmの 長い線維状の細胞で, 互に平行に配列し, その長軸は腺管自身の長軸に平行である. 細胞の先端は しばしば鋭利にとがっていて, 次第に細くなる側面をもって, 隣接する細胞と側面結合をなし, あるいは やや鈍円な先端を有して, 隣接細胞の同様な先端と末端結合を形成することもある.
    筋上皮細胞はデスモゾームによって互に結合するとともに, 腺細胞との間にもデスモゾームが存在する. また基底膜に接触する細胞基底面には, ところどころ電子密度の高い所があり, 表皮細胞の半デスモゾームに類似する. 腺細胞の形質膜は よく発達した ひだを形成するが, 筋上皮細胞の表面には きわめて少数の陥入や突出がみられるにすぎない. 腺細胞と筋上皮細胞との間が比較的接着装置に乏しいことは 腺細胞を剥離して, 筋上皮細胞を露出させ, 走査電子顕微鏡で観察することを容易にしている.
    筋上皮細胞の核をふくむ部分は やや隆起して, 腺上皮内に突入する. 核をとりかこむ細胞質辺縁部には, 小さいゴルジ装置と いくつかの他の小器官がふくまれている. 筋上皮細胞の基底側半部には, 細胞の長軸に平行に走る多数の筋細糸が密につまっている. 細い筋細糸と太い筋細糸が存在するが, その配列には規則性はない. 筋細糸と平行して微細管がしばしば対をなしてあらわれる.
  • 武田 正子
    1976 年 39 巻 4 号 p. 257-269
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    マウス有郭乳頭味蕾の神経支配について, アドレナリン作働性神経支配をも含めて 電子顕微鏡により検索した.
    高電子密度のシナプス膜と シナプス小胞の集積とを伴う 典型的な求心性シナプス接合が, 第3型細胞と神経終末との間に認められる. 第2型細胞と神経終末の接合部位に沿う細胞膜下には, しばしば小胞体嚢が見られ, 神経終末は, シナプス小胞と同じ大きさの小胞をかなり多数含有する. この神経終末の性質は 遠心性ではないかと推測される.
    アドレナリン作働性神経の検出のために, マウスにL-DOPA と nialamide を前投与した後, 5-hydroxydopamine を投与した. 味蕾下の結合組織には 多数のアドレナリン作働性神経線維が認められ, さらに その中の少数の神経線維は味蕾の基底膜を貫き, 味蕾細胞に接触する. 一部のアドレナリン作働性神経は, 味蕾周辺の上皮細胞間にも分布する. アセチルコリン-エステラーゼ反応を行なったところ, コリン作働性神経線維のほかに, アドレナリン作働性神経線維も陽性を示した.
  • 大橋 淑人, 北 昭一, 村上 宅郎
    1976 年 39 巻 4 号 p. 271-282
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    ラット小腸粘膜の血管構築を鋳型走査電顕法でしらべた.
    粘膜の血管床は 筋層のそれとは完全に独立していた. 絨毛の毛細血管叢は 複雑な網目状を呈し, この毛細血管叢は絨毛の頂部で起こり, 絨毛の基部で集束する. この所見は絨毛の微小循環におけるMALLの“噴水説”を支持するものである.
    陰窩部の毛細血管叢は陰窩部の底で起こり, 同部底近くで集合する. 絨毛と陰窩部の毛細血管叢は互いに交通する. 動脈終末をもたない絨毛基部は, この交通を通して陰窩部毛細血管によって養われると考えられた.
  • 島田 達生
    1976 年 39 巻 4 号 p. 283-294
    発行日: 1976年
    公開日: 2009/02/20
    ジャーナル フリー
    成熟ニジマス血管嚢の自由表面と割断面が 走査電子顕微鏡によって検索された.
    血管嚢上皮は冠状細胞, 支持細胞 および脳液接触ニューロンから構成されている. 冠状細胞は 腔に向かって突出する多くの特殊線毛-いわゆる “globules” と豊富な滑面小胞体によって特徴づけられる.
    これらの globules の外観から 大まかに2種類の冠状細胞が存在する. すなわち房状と花状の冠状細胞である. 前者はブドウ状の globules で占められており, その数は一つの細胞につき 約60∼80個である. 後者は 棍棒状または花弁状の globules を含んでおり, その数は 一つの細胞に 約50∼60個である. これらの globules の機能的意義も討議されている.
    支持細胞の自由表面は比較的 滑らかで, 短い微絨毛が散在性にあるのみである. 脳液接触ニューロン (第III型) と呼ばれる細胞は, 長い孤立の線毛が認められるところの 頭状の膨出部を有している.
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