AKR自然発生白血病の肝, 脾, リンパ節, 脳より無細胞濾液を作り, 同系マウスに接種した. AKR自然発生白血病は生後6ケ月より現われ始め, 9ケ月で最高になるのであるが, 生後24時間以内に無細胞濾液を接種したマウスでは, 生後6ケ月までに39.1%に白血病が発生した. 生後24-48時間と48-72時間に接種したものでは, 何れにもそれよりやや少ない25.0%に白血病の発生が認められた. 生後6-48日に接種したものでは生後6ケ月以内に白血病発生は殆んど認められなかったが, 発生率は生後7ケ月で最高になり, 対照に比較すると, 2ケ月の促進が見られた.
雌雄別では生後6ケ月までは, 白血病発生率は雌の方に高く, 6ケ月を過ぎれば雄の方に高くなった.
生後48時間以内に脳の無細胞濾液を接種したマウスでは, 生後6ケ月までの白血病発生率は12.5%であった.
無細胞濾液により発生した白血病より更に無細胞濾液を作り, 生後48時間以内のマウスに接種したところ, 生後6ケ月以内に50%に白血病発生を認めた.
剖検では胸腺の腫脹の著しいもの, 全身のリンパ節腫脹の著明なもの, 及び種々の移行型が見られた.
白血病マウスの末梢白血球数は2万台のものが最も多いが, 時に80万にも達した. リンパ芽球は1-52%認められ, リンパ球系細胞が多数を占めるものが多く, なお好中球系細胞の増加しているものもあり, また赤芽球出現の認められるものが多かった. 骨髄, リンパ節, 脾, 胸腺のスタンプ標本でも多数のリンパ芽球が見られた.
臨床組織培養では, 骨髄, リンパ節, 脾が共に急性リンパ球性白血病の増生様式を示した.
白血病細胞の染色体数は正常染色体と同様に, 40のものが最も多く, 全体の64.3%を占め, そしてすべて棒状染色体であった.
AKR自然発生白血病に, 時に少量の腹水の貯溜を認める事があるが, 無細胞濾液の接種により発生したリンパ球性白血病マウスのうちに, 腹水型に転換して, 腹水中に多数のリンパ芽球が存在するものを発見し, 以後腹水のみで継代移植を行なうことができた.
無細胞濾液を接種したマウスの1例に急性骨髄性白血病が発生し, 細胞移植が行われた. このマウスより無細胞濾液を作り, 同系のマウスの新生児に接種したところ, リンパ球性白血病が発生した.
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