放送研究と調査
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68 巻, 2 号
放送研究と調査
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 山田 賢一
    2018 年 68 巻 2 号 p. 2-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    韓国では2月9日から開かれるピョンチャン五輪を機に、高画質の地上4K放送の普及推進を図ろうと地上テレビ各局が取り組んでいる。韓国では現在、ケーブルテレビや衛星放送、IPTVなどの有料放送への加入比率が全世帯の90%以上に達し、広告収入の面でも地上テレビのシェアは下がる一方で、各局は地上4K放送を売り物に挽回を図ろうとしている。地上4K放送の普及にあたっては、カバーエリアの拡大や受信機の普及に加え、有料放送への再送信をどうするのかと言った課題が存在するが、直接受信の世帯が5%程度しかない現状では、ピョンチャン五輪を4Kの高画質で視聴するには、有料放送への再送信が欠かせない。しかし地上テレビ局側が4K化の投資を回収するため、再送信料の大幅な引き上げを目論んでいるのに対し、有料放送側は難色を示し、現状は地上テレビ局側が再送信を拒否している。一方、地上テレビ局の衰退の原因として、特にKBSとMBCにおける「政治介入」の問題を指摘する声もある。KBSは理事会のメンバー11人のうち7人が政府・与党の推薦枠で、政府の意向に反する報道がしにくいとされる。MBCも事情は似ていて、「地上テレビ局は公平な報道をしていない」との意識が韓国国民の間に広まっている。韓国は、世界で最も早く4K放送の実用化に取り組んできた国であり、地上4K放送についても、世界の先端を走ることで関連産業の活性化につなげようとしている。ただ、その中核となる地上テレビ局が明確なビジネスモデルを提示できなければ、その将来は必ずしも楽観できるものにはならないだろう。
  • Jリーグのメディア戦略にみる新たな潮流
    黛 岳郎
    2018 年 68 巻 2 号 p. 14-27
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    これまでプロスポーツのメディア戦略の中心にいたのは放送事業者であり、スポーツ団体などはテレビ中継などを通じてビジネスを拡大してきた。しかし、日本のプロサッカーリーグ、Jリーグは2017年シーズンから、OTTプレーヤー、通信事業者とともにメディア戦略の展開を始めている。本稿では、“通信”をパートナーにしたJリーグの新たなメディア戦略に注目。Jリーグ、OTTプレーヤー、通信事業者のねらいや背景に迫ることで、その全貌を浮き彫りにし、Jリーグの事業がどのように変化する可能性があるのかを明らかにした。そのうえで、“通信”とのメディア戦略が他のプロスポーツリーグなどに波及していくのか、放送事業者への影響は出るのか、考察した。Jリーグの新たなメディア戦略は、“通信”の資金力やビジネス戦略、技術力などを後ろ盾に、より魅力的な試合映像を、より多くの視聴者に届けるとともに、スマートスタジアム事業を展開するなど、戦術を大きく変化させてきており、事業拡大の伸び代も大きい。“通信”とのメディア戦略を進めるプロスポーツリーグはほかにも現れ始めており、今後、放送事業者への影響が懸念される。
  • 特許状更新と新たな規制監督システム
    田中 孝宜
    2018 年 68 巻 2 号 p. 28-37
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    イギリスの公共放送BBC存続の基本法規に当たる特許状が2017年1月更新された。特許状の更新に当たってBBCのあり方が議論される。議論のたたき台として政府が2015年7月に公表した「グリーンペーパー」では、「BBCの使命、目的、価値」、「BBCの事業範囲およびその対象」、BBCの財源」、「BBCの管理体制」の4つの主題を軸に一般から意見募集が行われた。意見公募では、デジタル時代に合わせてBBCが事業や予算規模を拡大することについて69%が賛成し、60%の人が受信許可料制度の変更は必要ないとした。こうした中で、今回の特許状更新での最大の変更はBBCのガバナンス、統治システムであった。前回の特許状ではBBCの内部に監督機関のBBCトラストを設置したが、今回はBBCトラストを廃止し、初めて外部の独立規制機関Ofcom(Office of Communications)がBBCの規制・監督を担うことになった。Ofcomではまず、BBCを規制する『運営枠組み』を示し、その後、具体的な量的基準を示した『運営免許』を10月に公表した。OfcomはBBCの業績評価を行い、BBCが新たなサービスを計画する場合Ofcomが決定権を持つなど、制度上は強い権限を持つことになった。本稿は、特許状更新議論の過程を振り返るとともに新ガバナンス体制のあり方を整理するものである。
  • 住民基本台帳からの無作為抽出によるインターネット調査の試み
    星 暁子, 渡辺 洋子
    2018 年 68 巻 2 号 p. 38-52
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    1996年から継続して(2004年を除く)郵送法で実施している「幼児視聴率調査」の有効率は漸減傾向にあるため、有効率の維持、改善に効果的な方策を検討している。従来の郵送法と同様に調査相手を住民基本台帳から無作為抽出し、郵送で調査協力を依頼するが、回答についてはインターネット経由とする「郵送依頼WEB回答方式(WEB式)」を導入できれば有効率の改善につながると考え、2016年と2017年の2回、WEB式実験調査を実施した。WEB式では謝礼を「前送り」と「後送り」のグループに分けて有効率をみたところ、「前送り」は郵送法の有効率を上回った。またWEB式において調査へのアクセスはスマートフォンが多いこと、アプリ利用者は入力頻度が高いことがわかった。調査結果をみると、サンプル構成については郵送法とWEB式の調査では概ね同じであったが、調査に回答した保護者の属性が若干異なっていた。視聴時間については、視聴率の高い時間帯など視聴の特徴は同じであったが、視聴時間はWEB式の方が少なかった。今後WEB式をさらに改善することで、有効率を向上させられる可能性があるほか、データの精度を高めたり、視聴の実態をより具体的に測定したりすることもできると考えられる。WEB式への移行を視野に、引き続き検証を重ね、幼児のメディア利用の実態をより的確に把握できる調査とするよう努めたい。
  • 冷静に“時間”と闘う,テレビドラマの「記録」者
    広谷 鏡子
    2018 年 68 巻 2 号 p. 54-73
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    「放送のオーラル・ヒストリー」のシリーズ、「放送ウーマン」史では、放送という特殊な世界ならではの専門職や、これまであまり語られてこなかった、表舞台には出ない女性たちの証言を元に、放送の歩みを新たに振り返る。第4回は、番組を予定通り進行させるため、スタッフの誰よりも沈着冷静に「時間」を管理する「タイムキーパー」(以下、TK)として、40年近くテレビと関わってきた原田靖子さん。1970年からフジテレビの生放送番組でTKを務めたあと、主に民放ドラマの制作現場で、フリーの「ドラマのTK」=「記録」として、60本以上のドラマ作りに携わってきた。初めて担当したドラマ『時間ですよ』(TBS)で、演出の久世光彦氏に鍛えられ、フリーの立場で各局の多彩な演出家たちとドラマ制作に携わり、2007年まで、好調期の民放ドラマとともに歩んだ。原田さんの仕事の原点は、「きちんと放送を出す」「時間内に入れる」こと。だがドラマの場合、管理するのは、「時間」だけではない。証言からは、映画のスクリプターのように、そのドラマに関するさまざまな情報を詳細に記録し、監督を始めスタッフ・キャストに伝達・共有することも、「記録」の重要な役割であることがわかる。「時間」と闘いながら、現場がうまく回るように若手ディレクターと大物役者、新人役者と大監督の間を取り持つことも役割と認識してきた。原田さんは、テレビを「エネルギーを奪い、時代を映すだけの一過性のもの」とクールにとらえる一方、みんなが「平等」なテレビの現場が結局好きなのだと語る。これまでの経験値を次の世代に伝え、サポートしていくことで、有望な若手ディレクターの育成に貢献してきたことも、証言からは浮かび上がる。
  • 放送と音楽著作権の新時代
    大髙 崇, 吉澤 千和子
    2018 年 68 巻 2 号 p. 74-83
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    放送で使用される大量の音楽。その使用料を権利者に分配するために、放送局はJASRAC等の「著作権等管理事業者」に対して使用する楽曲を報告する義務がある。インターネット時代の到来や権利意識の高まりもあり、正確な全曲報告がより一層求められている。今、この報告のため、楽曲の特徴を自動検知する「フィンガープリント技術」の導入が放送局で進んでいる。技術導入までの経緯を辿ると、著作物の利用者(放送局)と権利者・管理事業者の間で、課題の解決と新たなルール作りに向けて粘り強い議論がなされたことがわかる。著作権法が目指す「権利の保護」と「文化の発展」。このバランスを保ちながら放送コンテンツをさらに展開させるための課題と展望を考える。
  • 仙台で開催された世界防災フォーラム
    田中 孝宜
    2018 年 68 巻 2 号 p. 84-87
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/21
    研究報告書・技術報告書 フリー
    世界の防災力を高めるための課題や方策を話し合う「世界防災フォーラム」が、11月25日~28日、仙台で開かれた。世界防災フォーラムは、2015年に仙台で開催された国連防災世界会議で策定された「仙台防災枠組」の推進に日本がけん引役を果たそうという目的で、初めて開催された。国内外から産・官・学・民の防災関係者が集まるフォーラムでは、日本の「BOSAI」ノウハウを世界に発信していくことを目指している。フォーラムでは幅広いテーマで約50のセッションが行われたが、本稿はその中から、災害情報に関するセッションを中心に報告するものである。
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