放送研究と調査
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69 巻, 2 号
放送研究と調査
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 制度形成に果たした法学研究者の役割
    村上 聖一, 山田 潔
    2019 年 69 巻 2 号 p. 2-17
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    シリーズ「証言を基に読みとく放送制度」では、これまで十分に明らかになっていない放送制度の形成過程や制度と経営との関係について、証言を基に探究を進める。1回目は、行政法研究者として長年にわたり放送法制の体系的な研究にあたった塩野宏・東京大学名誉教授の証言である。 戦後、民放の発達とともに放送制度が抱える問題点が認識されるようになる中、塩野氏はNHKの放送法制研究会(1963年~)に加わったことで本格的に放送法の研究を始めた。証言からは、当時、民放が放送制度の見直しを強く求め、事業免許導入や受信料の使途の見直しが焦点になっていたことがわかる。特に受信料制度の行方についてはNHKが危機感を持ち、制度について理論的な検討を行う必要に迫られていた。こうした中で、NHKの考え方をまとめていく上で重要な機能を果たしたのが放送法制研究会であり、その中では法律の専門家、とりわけ行政法研究者が主導的な役割を果たしていたことが証言から明らかになった。そして、NHK・民放の二元体制を明確にすることや、受信料の使途をNHKの業務に限ることなど、研究会の提言の多くはその後の郵政省による制度の見直しの検討にも反映された。今回の証言は、塩野氏にとって鮮明な印象を与えた1960年代の議論が中心だが、それはこの時期にきわめて重要な検討がなされたことを意味している。この時期の議論がその後の日本の放送制度の枠組みに大きな影響を与えたことが証言からは浮かび上がる。
  • 2000年以降の研究動向を中心に
    小平 さち子
    2019 年 69 巻 2 号 p. 18-37
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    “子どもとメディア”はいつの時代にも関心の高いテーマといえるが、本稿ではインターネットの本格的な普及が子どもたちの生活に様々な変化を及ぼしてきた2000年以降に注目して、国内で実施された調査研究動向の整理・分析を試みた。日常生活におけるメディア接触実態に関する調査、メディアの影響を明らかにするパネル調査や実験研究、子どもの学習とメディア利用をめぐる調査研究について、小学生以上対象と乳幼児対象に分けて、多様な調査研究について、具体的に取り上げた。その結果①スマートフォンやタブレット端末等新しく登場したメディアへの関心が高いこと、②乳幼児を対象とする研究への関心が高まってきたこと、③パネル調査が重視されるようになったこと、④メディア接触の影響を検討する際に、量的側面だけでなく番組やコンテンツの内容・描写といった質的側面への注目が高まったこと、⑤研究成果を授業・保育・保護者の啓蒙等の教育プログラムに反映させる枠組みが意識されるようになってきたこと等を、この時期の“子どもとメディア研究”の特徴として挙げることができた。1990年代までの課題に応える形で調査研究が進められてきたといえるが、今後のさらなる発展に向けて、研究の枠組みの検討や研究手法の開発、長期にわたる調査研究環境の確保・充実に向けた工夫が必要であり、研究を深めるにあたっては常に“子ども”を捉える視点に考えをめぐらし、多様な分野の研究者との交流と議論の中で自らの研究を高めていくことが重要と考えられる。
  • 「北海道胆振東部地震」メディア利用動向インターネット調査から
    入江 さやか, 西 久美子
    2019 年 69 巻 2 号 p. 38-47
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    2018年9月6日に発生した「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」では、北海道のほぼ全域の電力供給が止まり、最大で約295万世帯が停電した。テレビの視聴が困難な状況になったほか、電話の通話やインターネット接続などにも影響が出た。NHKでは、地震発生当日のメディア利用動向を把握するため、北海道全域でインターネット調査を実施した。 ■地震発生当日に利用できた端末・機器は「ラジオ」が多く、「テレビ」は68%が利用できなかった。スマートフォン・タブレット端末によるインターネット通信は、発生直後から未明(午前6時ごろまで)は40%が利用できたが、その後20%台まで下がった。 ■地震に関する情報を得るのに利用したメディアは、発生直後から未明(午前6時ごろまで)は、「ラジオ(NHK)」が多かったが、午前中から夜間にかけて徐々に下がり、その一方で「家族・友人から聞いて」が多くなった。 ■利用者が多かった「ラジオ」については、NHK・民放ともに「情報が信頼できるから」「欲しい情報が得られると思ったから」などコンテンツへの評価も高いが、「他になかったから」「電力やバッテリーの消費を節約するため」という回答も目立った。 ■知りたい情報の種類によって、ラジオやポータルサイトやアプリ、ソーシャルメディアなどを使い分けている様子がうかがえた。 ■今後の大規模災害に備え、災害時のメディアの機能確保と被災者の情報ニーズに応える情報発信の強化が求められる。
  • SNS時代の拡散抑制を考える
    福長 秀彦
    2019 年 69 巻 2 号 p. 48-70
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿は、「北海道胆振東部地震」で拡散した流言をTwitterの記録から分析し、SNS時代の拡散抑制について考察したものである。分析と考察の結果は以下の通り。 ■流言の拡散を抑制する基本は、正確な情報を伝え、情報の曖昧さを払しょくすることであるとされている。NHKはウェブサイトやスマホのアプリで災害情報の多様なコンテンツを提供し、Twitterや2次元コードでそれらへの誘導を行った。活字や図表を随時、検索できるネットのコンテンツはラジオ放送を補い、情報の曖昧さを払しょくする効果がある。 ■流言のツイートには、述語が「~らしい」の推定形から「~する」の確定調にトーンが強くなってゆくものと、そうでないものがあった。災害再来流言の中には、流言のツイートが噴出するかのように急激に増えるものがあった。ツイートが急増する際に「LINEでみた」という投稿が現れた。 ■流言を打ち消す否定情報には、拡散抑制の効果があった。否定情報がTwitter上で浸透してゆく速度は流言によって異なっていたが、強い恐怖感情を伴った流言の場合には浸透のスピードが速かった。 ■SNSで流言は爆発的に拡散する。メディアは迅速な対応を迫られるが、今後の可能性を予期する流言は取り扱いが難しく、打消し方は複雑なものとなりがちである。デマという言葉は拡散を迅速に抑制する即効性があるとされる反面、まだ不確実な流言を全否定してしまったり、流言中の善意の言説までウソと決めつけてしまったりするおそれがある。
  • 講演放送・学校放送は何を伝えたのか(後編)
    大森 淳郎
    2019 年 69 巻 2 号 p. 72-95
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
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    前編では、多田不二と西本三十二の自己形成と日本放送協会入局までを見てきた。 欧米列強の後を追うように帝国主義の道をつき進む日本を批判する詩を書いていた多田は、入局後も講演放送の制作に奔走しながら活発に詩作を続けていた。詩人であることと、協会職員であることの間に矛盾はなかった。 アメリカで進歩主義教育を学んだ西本は学究の道を歩み、ラジオ講演で国際平和について語ることもあった。逓信局によってラジオ講演が放送中止に追い込まれるという体験もしたが、関西支部(BK)の真摯な対応もあり、放送局への信頼を失うことはなかった。そして新しい教育を放送によって広めてゆきたいと考えた西本は、日本放送協会に入局し学校放送を立ち上げる。 多田と西本は、講演放送の現場で、また学校放送の現場で自己実現を果たしてゆくはずだった。だが、時代は大きく転換する。満州事変、日中戦争、そして太平洋戦争と続く戦争の時代、協会は軍・政府の宣伝機関として国民を戦争に動員することがその使命となっていった。その中で、多田と西本は組織人としてどう生きたのか、後編では2人の苦悩や葛藤を見据えながら戦時教養放送の実相を描く。
  • 田中 孝宜
    2019 年 69 巻 2 号 p. 96-101
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
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    10月末、韓国ソウルでPBI(国際公共放送会議)が開催された。PBIは世界の公共放送が一堂に会し、現在抱えている課題に向き合い、将来を展望する年一回の会議である。今年のテーマは「メディアの次のビッグバン」であった。放送と通信が融合しメディア環境が激変し、アメリカ発のメディア企業が巨額の資金を使って世界での影響力、支配力を強めている。ヨーロッパの公共放送にとっては、存続にかかわる事態だという危機意識が高まっている。BBCのトニー・ホール会長は、このところのスピーチで、アメリカ発の巨大メディアとの競争や、公共放送の財源確保の課題など、公共放送の置かれた厳しい環境に危機意識を繰り返し述べている。PBIの基調講演では、ホール会長は、信用されるニュース情報源として、各国の文化を守る砦として、分断される視聴者をつなぐ役割としての公共放送の重要性を改めて確認するように述べた。そして公共放送の将来に悲観的な声がある中で、世界の公共放送で力をあわせれば乗り越えられると訴えた。
  • 保護者に委ねられる「ルール作り」
    宮下 牧恵
    2019 年 69 巻 2 号 p. 102-105
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/20
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