放送研究と調査
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73 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 深刻化する誹謗中傷の被害と匿名表現の自由を考える
    渡辺 健策
    2023 年 73 巻 4 号 p. 2-24
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    SNSの普及など社会のデジタル化とともに深刻になっているインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷の被害対策として、他人の権利を侵害する投稿をした者の氏名などを明らかにする「発信者情報開示」の手続きが、2022年10月から簡易・迅速化された。繰り返されるネット被害に対し、新たな制度はどこまで力を発揮できるのか、効果と課題を整理する。一方、匿名を前提に投稿した発信者の身元情報を強制的に明らかにすることは、表現の自由の保障の観点から、慎重な判断が求められ、双方の利益のバランスの確保が重要となる。また、誹謗中傷の原因にもなり得るネット上の膨大な誤情報・偽情報による、いわゆる「デジタル情報空間の汚染」に、マスメディアはどう向きあうべきなのか。誤情報・偽情報が拡散する程度は、情報の受け手にとっての「重要さ」と「あいまいさ」に左右されるという流言研究の分析手法を手がかりに、最近の誹謗中傷事例を詳しく見ていくと、マスメディア側の伝え方に工夫の余地があること、誤った情報をマスメディアが打ち消す報道を行うことで拡散を抑制できることがうかがえる。さらに、ネット上の情報が事実かどうか検証するファクトチェックをマスメディアがより積極的に行うことも、社会の急速なデジタル化に伴って期待されるようになっている。ネット社会の匿名表現の自由の“可能性”と“危険性”にどう向き合うかを考える。
  • 安倍首相に対するTwitter上の投稿分析を事例としたトピックモデルの適用
    永吉 希久子, 瀧川 裕貴, 呂 沢宇, 下窪 拓也, 渡辺 誓司, 中村 美子
    2023 年 73 巻 4 号 p. 26-43
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    ソーシャルメディアにおける「世論」の特徴と、それを分析するメリットを検討するため、前号では2020年の安倍首相(当時)に関するツイートの分析を例として、「教師あり機械学習」によるセンチメント分析という手法を用いて、安倍首相に対する支持と不支持の態度を推定した。分析の結果、ツイートの8割近くが安倍首相に対するネガティブな態度を表していると分類され、世論調査の内閣支持率との間に、大きな乖離がみられることが明らかになった。そこで、前号で用いたのと同じ、安倍首相に関する500万のツイートについて、ツイートの話題を抽出できるトピックモデル分析という手法を用いて詳細に分析し、Twitter「世論」の特徴と、その有用性について報告する。 トピックモデルの手法は複数存在するが、本号では短文からなる文書の分析に適したギブスサンプリングディリクレ多項ミクスチャーモデル(GSDMM)を用いた。分析の結果、25のトピックが抽出され、全体の28%程度をコロナ関連のトピックが、24%程度を政治疑惑・スキャンダルに関するトピックが構成していた。トピックごとのセンチメントの分布をみると、ほとんどのトピックで安倍首相への否定的意見が大半を占めていたが、外交や「安倍首相への批判と、そうした批判者への批判」からなるトピック、辞任報道への反応では、肯定的意見も2割程度あった。また、政治的疑惑・スキャンダルに関するトピックは短期間の盛り上がりにとどまり、相対的に少数のアカウントが繰り返しツイートをする傾向にあるのに対し、新型コロナ関連のトピックは一定期間持続し、相対的に多くのアカウントが発言に参加していることも示された。 Twitter上の安倍首相への態度の大半を不支持が占めていたが、その内部は政治的疑惑・スキャンダルを中心に、相対的に少ないアカウントが積極的にリツイートを含めた発信を行うトピックと、緊急事態宣言やアベノマスクといった、多様なアカウントが否定的意見を表明したトピックが混在していたことがわかる。 Twitterデータの分析によって、通常の質問紙調査で測定できる「聞かれたから答える」意見とは異なり、人々が関心をもち、意見を表明するほどの熱意を持って抱く「世論」を測定することができる。本研究で用いたような、トピック分析やセンチメント分析などの手法を組み合わせて分析することで、人々の関心や熱意の推移、その多様性や状況による変化を検証することができる。このような点が、Twitterで世論を分析するメリットといえるだろう。 上記のように、Twitterに現れる「世論」は通常の世論調査から把握される「世論」とは質的に異なる。重要なのは、従来の世論調査から把握される世論とツイートの分析から把握される世論の、それぞれの特徴と利点、限界をふまえ、両者を補完的に用いることである。それにより、より多面的に世論を理解することができる。 *GSDMM(ギブスサンプリングディリクレ多項ミクスチャーモデル)Gibbs Sampling Dirichlet Multinomial Mixture
  • 学術利用トライアルの動向によせて
    宮田 章, 大髙 崇, 岩根 好孝
    2023 年 73 巻 4 号 p. 44-63
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    NHKがこれまで制作してきた放送番組を、学術研究のために利用してもらう事業(学術利用トライアル)は、今年で14年目を迎える。過去の放送番組を歴史的・文化的な資産と見なし、学術利用という形でその社会還元を行うことが趣旨である。これまで250件を超える研究者がNHKアーカイブスで番組を閲覧し、120件を超える学術論文が生産され、100件を超える学会発表がなされてきた。しかし、着実な研究成果があがっている一方で、NHKの事業としては依然「トライアル」(試行)という位置づけであり、2016年以降は、閲覧コンテンツの制限が進行するなど、事業の後退が目立っていることも事実である。研究の「成果」に対する、NHKと研究者との間の認識の乖離も見られる。本稿は2022年10月に行われた「成果発表会」の報告を行うとともに、近年の学術利用トライアルの動向を指摘し、今後の展開を実りあるものとするためにどうすればよいのか提言する。何を「成果」とするかは研究者たちにまかせたうえで、学術研究における放送番組研究の価値を高めるためにNHKができることを行うべきである。
  • テレビ報道とTwitterの間で
    東山 浩太
    2023 年 73 巻 4 号 p. 64-67
    発行日: 2023/04/01
    公開日: 2023/04/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
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