放送研究と調査
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73 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 「文研ブログ」#413・#418・#423から総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」取りまとめ公表を受けて〈2022 年 5月~ 8月〉
    村上 圭子
    2023 年 73 巻 1 号 p. 3-23
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2023/02/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    2021年11月に総務省で開始した「デジタル時代における放送政策の在り方に関する検討会」は、分科会やワーキンググループが設けられ、多様な論点で議論が続けられている。2022年8月には取りまとめが公表され、放送の将来に向けた政策として、守りの戦略と攻めの戦略が示された。守りの戦略とは、放送ネットワークインフラの将来像についての検討である。具体的には、1)クラウドマスターの導入等も含めたマスター設備の将来像、2)複数の局による共同利用型の模索を始めとした、中継局の保守・運用・維持管理のあり方、3)維持・更新費用が割高な小規模中継局等のエリアについて、放送波やケーブルテレビの再放送に加えて、ブロードバンドによる代替の検討という3点である。攻めの戦略とは、放送局のネット配信のあり方についての検討である。具体的には、1)「誰もが安心して視聴できるという信頼を寄せることができる配信サービス」に、人々がアクセスしやすくするための方策、2)ネット時代における公共放送の役割や、現在は放送の補完業務であるNHKのネット活用業務の位置付け等の2点である。提示された1つ1つの論点は重く、それらは複雑に絡み合っているため、論点を俯瞰して論じていかない限り、放送の将来像は見えてこないというのが筆者の基本認識である。加えて、議論のプロセスに並走しながら、重要な論点が避けられてはいないか、先送りされてはいないかを適切なタイミングに問題提起していくことも、どういう結論に至ったのかを検証する以上に重要ではないかと考えている。本稿では、8月に公表された取りまとめを受けて速報的に放送文化研究所のサイトで問題提起した、3回分の「文研ブログ」を再掲する。なお、ブログで扱った論点については、その後の議論の進捗に応じて内容が変化しているものもあるが、議論のプロセスの記録と理解いただきたい。
  • 放送・通信融合と法体系見直し
    村上 聖一
    2023 年 73 巻 1 号 p. 24-43
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2023/02/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    平成(1989~2019年)の約30年間、放送と通信の融合が進展していく中で、放送制度は断続的に見直しがなされてきた。本稿では制度改革を、①法体系の再編や放送事業の構造に関する規制の見直しと、②番組規律に関連した制度の見直しに分け、2回にわたって改正過程の検証を行う。今回取り上げる法体系や放送事業の構造に関する規制は、平成に入る直前に放送法が大きく改正されたことから、1990年代はそれを基礎とした検討が行われ、抜本改革の議論には至らなかった。この時期、放送と通信の中間領域的なサービスが登場しつつあったが、放送事業者や郵政省など従来の政策共同体が主導する形での漸進的な制度改正が続いた。しかし、2000年代に入り、官邸主導の政策形成が進む中、情報通信分野でも規制改革と連動した制度見直しがテーマとなった。そこでは、IT戦略本部などが議論を主導し、従来の業種別の縦割りの法体系からレイヤー型の法体系に転換すべきといった改革案が示された。ただ、これに対しては、放送事業者が慎重な姿勢を示したこともあり、総務省の有識者会議での検討が進む中で方向性は変化していった。そして、2010年に法体系は再編されたものの、既存の放送事業者の経営に大きな影響を及ぼさないものとなった。その後、2010年代に行われた法改正も、既存の制度の部分的な手直しにとどまった面がある。このように平成期においては、2000年代以降、規制改革を主張する新たな行為主体が議論に参入し、制度の抜本改革が提唱された。一方で、制度を具体化していく段階で従来の政策共同体が影響力を行使し、改正が漸進的なものに回帰していった面がある。
  • 2022 年「日本語のゆれに関する調査」から(2)
    塩田 雄大
    2023 年 73 巻 1 号 p. 44-62
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2023/02/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    「日本語のゆれに関する調査」の結果について報告をおこなう。さまざまな配慮表現をめぐる調査結果から、次のようなことを指摘する。▶「お足元の悪いところ」「おかげさまで」「〔メール冒頭で〕お疲れさまです」「〔会話冒頭で〕お疲れさまです」に関して、全体の結果としては、全面的に支持する回答〔=「自分でも言う(書く)・おかしくない」〕が過半数を占めている。それに対して、「高いところから失礼します」「つまらないものですが」「何もありませんが」のそれぞれにおける全面的な支持は半数以下であり、これ以外の選択肢にも回答が分散している。特に「何もありませんが」においては、全面的に支持する回答と、全面的に支持しない回答〔=「自分では言わない・おかしい」〕が同程度になっており、現代日本において感じられ方がさまざまであるようすが見て取れる。▶どちらの言い方が感じがいいか(ふさわしいか)を尋ねた設問「[遅くなって~大変お待たせして]しまい」「お越し[いただき~くださり]」「いつでも[かまいません~結構です]」「教えて[いただきたいです~いただけますか]」「ありがとうござい[ます~ました]」に関して、「[遅くなって~大変お待たせして]しまい」では「[遅くなって]のほうが感じがいい」が半数近くと比較的回答が集中しているが、これ以外の設問ではいろいろな選択肢に回答が分散している。 ▶[60歳以上]の集団では、「おかげさまで」「何もありませんが」「いつでも[結構です]」「ありがとうござい[ました]」への支持が相対的に多く、「〔メール冒頭で〕〔会話冒頭で〕お疲れさまです」への支持が相対的に少ない。また大卒者の集団では、「お足元の悪いところ」「おかげさまで」「〔メール冒頭で〕お疲れさまです」「[遅くなって]しまい」「お越し[いただき]」「教えて[いただけますか]」への支持が相対的に多い。▶10年前の調査との比較から、各年代にわたって共通に見られる傾向として、「〔メール冒頭で〕お疲れさまです」の一般化と、「つまらないものですが」の非一般化〔=衰退〕が観察される。
  • 将来に向けた危機感を問うアメリカの事例と専門家の提言
    青木 紀美子, 大竹 晶子, 小笠原 晶子
    2023 年 73 巻 1 号 p. 64-87
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2023/02/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
    メディアが社会の多様な人々の姿や現実,視点や価値観を反映することは,発信する内容の正確さ,公平さ,豊かさを担保するために欠かせない。さらにデジタル化で情報や娯楽の選択肢が広がる中で,身近で有用かつ信頼できるメディアとして「選んでもらう」こと,すなわち将来の存続のためにも重要な課題になっている。#MeToo運動,コロナ禍,Black Lives Matter 運動を経て,社会や情報通信環境の急速な変化にも押され,その認識と危機感を深めたアメリカでは,組織の体制,登用する人材,そして発信するコンテンツに登場する人の多様性を向上するための戦略や目標を示し,実績を報告するメディアが増えている。報道の現場では取材対象の多様性を点検・モニタリングして公表する動きや,多様な取材対象のデータベースをつくり,活用する試みも広がっている。多様性向上に長年取り組んできた全米公共ラジオNPRのキース・ウッズ氏は,メディアの役割は格差のある社会を反映することではなく,多様な視点を伝えることであり,多様な人々が自分を重ねて見ることができるような存在を示すことが重要だとしている。また,日本のメディアの多様性欠如について問題提起してきた東京大学の林香里氏は,多様な人々の声やその課題が可視化されることによって当事者が現状を変えていく力を得ることや,現実社会で小さくなっている人々をより大きな存在にしていくことによって皆がより暮らしやすい社会をつくることができると指摘している。
  • 1960 年代のテレビ解説番組
    島田 匠子
    2023 年 73 巻 1 号 p. 88-89
    発行日: 2023/01/01
    公開日: 2023/02/20
    研究報告書・技術報告書 フリー
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