茶園のうね間と樹冠下に生育する雑草は,茶園管理の妨げや収穫物への異物混入源となり栽培上問題となるため,これらの効果的な除草技術の開発が求められている。そこで,著者らは乗用型摘採機の後部に2台の刈払機を装着し,うね間と樹冠下の雑草を刈払うことができる茶園用除草機 (以下,除草機) を開発した。本研究では,除草機による茶園うね間と樹冠下の除草効果を評価した。静岡県農林技術研究所茶業研究センター (以下,センター) 内の茶園において,除草機を0.2 m/sで処理することにより,除草直後は除草前に対してうね間では雑草生草重が61.9 %減少し,樹冠下では94.2 %減少した。静岡市内の有機栽培茶園において,除草機を0.3 m/sで処理することにより,除草前はうね間から樹冠下の範囲における雑草の植被率が75.0 %であったのに対して除草直後は7.0 %と有意に低下し,除草1ケ月後においても13.0 %と有意に低かった。さらに本研究では,除草機による効果的な除草時期および除草頻度を検討した。センター内の茶園において,中耕が行われる条件下で,3月から9月まで2ケ月ごと (3,5,7,9月) に除草機を処理することにより,各茶期摘採時期におけるうね間から樹冠下範囲の雑草の植被率が50 %以下となり,各草種の最大草高は15 cm未満に抑えられた。このことから,中耕が行われる茶園では,除草機を一番茶期から秋冬番茶期まで2ケ月間隔で4回処理することにより,雑草を効果的に抑制できると考えられた。
緑茶を淹れて飲む食文化は日常から失われつつある。そうした中で,家庭科調理実習の授業で行われるお茶教室は食文化への挑戦の機会として有用であることが報告されている。本研究では,小学生の家庭科の授業として行われたお茶教室の感想文をテキストマイニングにより分析した。その結果,教員の視点では,教育的意義としての知識や技術の習得を重視し,一方で受講生の視点では,緑茶を淹れるごとに変化する味覚の体験を重視することが明らかになった。この結果を基に,食文化の継承という観点から,教育の中で発達段階に応じたお茶教室プログラムを実施することで,持続的なお茶に触れる機会と興味関心の醸成が可能になることを考察した。
茶業経営の大規模化に伴う,生産者の負担軽減のため,茶の新芽の生育段階を簡易に推定する手法を開発した。スマートフォンを用いて茶樹冠面を撮影し,茶樹冠面画像から新芽を特異的に抽出し,開葉数を推定するプログラムを,プログラミング言語Pythonを用いて作成した。新芽の抽出処理の精度は84 %であり,概ね新芽のみを抽出することができた。抽出された新芽のSaturation値は,撮影機器によらず開葉数と相関関係にあり,同値から開葉数を推定するモデルを作成した。同モデルを用いて静岡県内の現地茶園8か所で推定開葉数と実測した平均開葉数を比較したところ,RMSEPは0.33枚であった。