‘ふうしゅん’を用いた有機栽培茶生産体系を2年間実証し,病害虫被害,土壌,収量および品質への影響について検討をした。
‘ふうしゅん’を用いた有機栽培茶生産体系を実施すると,チャノミドリヒメヨコバイ,チャノコカクモンハマキ,カンザワハダニ,チャトゲコナジラミ,炭疽病および輪斑病の発生が抑制できた。収量については,年間を通して慣行栽培と同等であり‘やぶきた’と比較して多かった。また,直がけ被覆を実施した一番茶において,全窒素含有量が高いかぶせ茶が得られた。その他の時期においても,総合的な荒茶品質は,‘やぶきた’の慣行栽培と比較して,年間を通してほぼ同等程度の荒茶が得られた。
チャノミドリヒメヨコバイは,チャの新芽を吸汁加害し,収量と製茶品質に悪影響を及ぼすことから重要害虫となっている。特にチャの有機栽培において本種に対する防除は必要性が高いが,現在,チャの有機栽培においてチャノミドリヒメヨコバイに対して使用できる農薬はない。しかし,天然ピレトリン剤は,チャノミドリヒメヨコバイと近縁種であるEmpoasca fabae Harrisに対して大きな防除効果を示すことが報告されており,本剤は,チャノミドリヒメヨコバイにも防除効果を示す可能性がある。そこで茶園において,天然ピレトリン剤のチャノミドリヒメヨコバイに対する防除効果を評価した。その結果,天然ピレトリン剤 (希釈倍数が500倍または1000倍) を約7日間隔で2回散布することで,たたき落とし虫数,新芽の被害程度および産卵数を低減させる結果が得られ,慣行防除で用いられるフロニカミド (1000倍希釈) と同等の防除効果を示した。
Exobasidium vexansを分離するために組織分離法によるチャもち病菌病斑からの分離を試みた。通常の表面殺菌を行った後、神奈川県足柄地区採集の180葉片から13葉片 (8.1%) にチャもち病菌がカルシウム添加PDA上に出現した。糸状菌由来の雑菌は全体の56.9%を占めた。組織分離株のコロニー形態は落下担子胞子集団分離株と同じであった。コロニーは偽菌糸と出芽胞子から構成され、5ヶ月後次第に厚膜胞子様構造体 (CLB) に転換した。CLBの発芽能力をカルシウム添加PDA上にコロニー懸濁液を塗布して試験した。培養10日後CLBは発芽し出芽胞子を形成した。4つの発芽タイプに分けられた。
京都宇治で20世紀末から増加傾向の一番茶の凍霜害の発現に関する気候学的な調査を行い,以下の結果が得られた。
4月前半に集中する凍霜害には,3月の平均気温が高く,萌芽期が早まる条件が重要である。一番茶の萌芽期 (4月) の日付は,春 (3月) の平均気温と負の有意な相関関係があり,3月平均気温が高いと4月の萌芽期は早くなる。特に,3月平均気温が8℃以上の後の4月における日最低気温0℃以下の低温日に発現頻度が極めて高くなる。1990年以降の気候の温暖化は1年の大部分の月での気温の上昇を伴っているが,3月は特に気温の上昇が顕著である一方,4月はむしろ下降傾向で,凍霜害が発現しやすい状況となっている。この3月から4月にかけての気温の季節進行における長期の変化傾向は,日本付近の近年の「気候温暖化」に伴った日本列島付近の大気循環の季節進行における特異的な変化に関係している可能性が高く,茶の凍霜害の予測と対策には,その気候学的な機構解明が重要である。
茶園に生息するカブリダニ類を対象として,B5判の白色板を使ったたたき落し法によるカブリダニ類の密度推定法について,静岡県の現地茶園において検討した。たたき落し法による平均値とすそ葉の寄生程度 (寄生数および寄生葉率) との間には,有意な正の相関関係が認められた。たたき落しによる捕獲データを使って圃場内の分布様式を解析した結果,基本集合度αは-0.0242,密度-集合度係数βは1.03となり,ランダム分布 (ポアソン分布) を示した。さらに,得られたαとβに基づき,目標精度D=0.1〜0.3における必要標本数を算出した。その結果,目標精度D=0.3を満たすために,平均値が1頭であった場合には,圃場当たり11箇所のたたき落しを行う必要がある。また,たたき落し調査における,存在頻度率または最大値による平均値の推定法について検討した。存在頻度率 (x) と平均値 (y) との間の関係では,y=1-exp (-0.987x0.985) の非線形回帰式が得られた。さらに,最大値 (x) と平均値 (y) との間には,y=0.408xの直線回帰式が得られた。実際の調査にあたっては,予備調査として存在頻度率または最大値を求め,次に,それらから推定された平均値に基づいて必要表本数を割り出した後,本調査を行うことにより精度の高い密度推定が可能となろう。
静岡県農林技術研究所茶業研究センターの標準的な肥培管理茶園 (‘やぶきた’成木園) において,28-29年生と40年生の茶樹のバイオマス乾物重および全炭素含有率を,地上50 cmを中切り位置と想定し,中切り位置以上の地上部 (中切り上部),中切り位置未満の地上部 (中切り下部) および地下部の3層別に実測し,茶樹の炭素ストック量を計算した。また,中切り上部の炭素ストック量を中切り位置から樹冠面までの距離に基づき計算する単回帰式を求めた。単回帰式から標準的な樹高の30年生茶樹における中切り上部の炭素ストック量は4.81 t-C ha-1と推定された。28-29年生の茶樹の中切り下部および地下部の炭素ストック量はそれぞれ14.0および12.5 t-C ha-1であり,30年生の茶樹の中切り下部と地下部の炭素ストック量がこれらと同等と仮定すると,標準的な樹高の30年生茶樹における炭素ストック量は31.3 t-C ha-1と推定された。中切り下部の樹体の炭素ストック量は28-29年生と40年生が同等であり,地下部については28-29年生に比べて40年生の方が有意に大きかった。
徳島県海陽町の宍喰地区で真冬に製造される寒茶について,有機成分と無機成分を分析した。春に製造された茶と比較すると,宍喰寒茶の有機成分は遊離糖が多く,ポリフェノール,カテキン類,カフェイン,遊離アミノ酸は少なかった。無機成分は,宍喰寒茶が春に製造された茶よりもCa,Al,Mn,Ba,Srが多かった。