JARI Research Journal
Online ISSN : 2759-4602
2016 巻, 10 号
JARI Research Journal 2016年10月号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
研究速報
  • -AACNによりドクターカーが出場した場合-
    髙山 晋一, 鷹取 収, 井上 哲, 齋藤 大蔵, 坂本 哲也
    原稿種別: 研究速報
    2016 年2016 巻10 号 論文ID: JRJ20161001
    発行日: 2016年
    公開日: 2025/11/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
     Fig. 1は国内における交通事故の発生状況を示している.近年,交通事故による死者数は減少傾向にあったが,2015年は2014年に比べ,4人多く,4,117人となり,交通事故死者数の下げ止まり傾向にあると懸念されている.自動車の安全対策では,事故を発生させない予防安全,衝突後に被害を軽減させる衝突安全の両面から研究,開発がおこなわれ,安全性の高い市販車が市場に投入されている.しかしながら,依然と交通事故の被害に多くの方々が遭っている.昨年度は死者数が増加してしまい,さらなる安全対策の必要性が求められている.予防安全と衝突安全によって救えなかった場合に,最後の砦として緊急通報システムが注目されている.第10次交通安全基本計画にある”救助・救急活動の充実”の欄にも”緊急通報システム・事故自動通報システムの整備”が盛り込まれ,世界一安全な交通社会を実現するために,国として掲げている目標にもなっている.  緊急通報システムとは,緊急性を要する交通事故が発生した場合にGNSS(全地球測位システム)や携帯電話などの通信システムを活用し,消防や警察へ迅速な連絡をおこなうシステムであり,いわゆる,事故自動通報システムである.  事故自動通報システムは国内では一部の車両に搭載され,(株)日本緊急通報サービス(HELPNET)によって運用されているが,実際の救命効果については,未知数な部分があった.そこで,著者らはこれまでに事故自動通報システムにおける死者数削減効果(救命者数)と想定される短縮時間(事故発生から医師接触までの時間)の相関関係について検討をおこなってきた3)が,実際に何分短縮できるのかを予測するところまでには至っていない.そこで,本報告では,緊急性の高い負傷者が発生した場合に事故自動通報システムによって医師の治療が開始されるまでの時間を見積り,事故自動通報システムによる時間短縮効果について検討をおこなった.なお,事故自動通報システムには事故の発生場所を伝達するACN(Automatic Collision Notification)と,衝突時の車両情報(ΔVなど)も送信し,重症度判定をおこない,消防のみならず,病院にも情報を伝達するAACN(Advanced Automatic Collision Notification)があり,ここではAACNによる時間短縮効果の検討をおこなった.
研究活動紹介
  • -第2報:ユースケース及び機能レベル基本アーキテクチャの研究-
    中村 英夫, 金子 貴信
    原稿種別: 研究活動紹介
    2016 年2016 巻10 号 論文ID: JRJ20161002
    発行日: 2016年
    公開日: 2025/11/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
     ヒューマンエラーに起因した交通事故の低減,移動手段としての利便性向上,周辺車両との協調制御による渋滞緩和,輸送効率向上や不必要な加減速の抑制による自然環境への負荷低減などを目的に,高度運転支援システム(特に自動運転システム)が,幅広くグローバルに研究開発されている.周辺監視義務を含む運転主権の所在によって,自動運転システムがレベル定義されている. NHTSA(National Highway Traffic Safety Administration )やSAE(Society of Automotive Engineers)のレベル定義にもとづいたレベル定義をTable 1に示す.高速道路での車間距離制御(ACC),車線逸脱防止システム(LKAS)の組合せなど,既に実用化フェーズにある運転支援システム(レベル2以下)は,運転主権をドライバが常に有する.一方,将来的に想定される自動運転システム(レベル3以上:赤線部分)は,周辺監視義務を含む運転主権をシステム側が有する状態がある.前者に比べて後者は,システムが備えるべき性能と負うべき責任は格段に高まる.従って,安全性を確実に担保できる安全設計が必須である.  一般財団法人日本自動車研究所が受託した経済産業省の委託事業「平成27年度次世代自動運転システム研究開発・実証プロジェクト」の「自動走行システム安全設計」では,自動運転システム(レベル3以上)の安全性を確実に担保するための設計要件(基本的な考え方)を明確にすることを目的とする.本稿は,この事業成果の一部を紹介するものであり,第1報に繋がる第2報とする.  具体的に本稿では,自動運転システムの将来像を具体化・共有化するための下敷きとして研究を行った,ユースケース,シナリオ,機能レベルの基本アーキテクチャを紹介する.これらの結果は,自動運転の全体システムを対象に,例えば,機能安全規格ISO 26262に従ったコンセプトフェーズ検討などに使うことを想定しており,第3報(連載)にて紹介する.
  • -第3報:自動運転システムにおける機能安全コンセプトの事例検討-
    金子 貴信, 中村 英夫, 深澤 竜三
    原稿種別: 研究活動紹介
    2016 年2016 巻10 号 論文ID: JRJ20161003
    発行日: 2016年
    公開日: 2025/11/06
    研究報告書・技術報告書 フリー
     自動運転システムには,自動化のレベルに応じて,運転支援のような高速道路での定速走行・車間距離制御(ACC),車線逸脱防止システム(LKAS)などを組み合わせた運転支援から自動運転・無人運転までが含まれる.これらのシステム開発や実用化に向けての法規制などの検討が世界各国で進められている.一方で,自動運転システムを構成する電気/電子システム(以下,E/Eシステムと略す)に故障が発生し,走行中に前方障害物に衝突するなどの事故(危害)によるリスクを低減するための安全設計が必要と考えられ,自動車用E/Eシステムの機能安全規格ISO 26262(2011年11月発行)の適用が考えられる.この規格は,E/Eシステムに故障が発生した際にフェールセーフ(機能停止)やフェールオペレーショナル注1)(機能継続)などの安全機構を設けることにより,ドライバ,乗員や交通参加者等への危害となるハザード(危険)を許容可能なレベルに低減する考え方である.本検討では,周辺監視義務を含む運転主権がシステム側にある自動化レベル3以上を想定した自動運転システムの機能レベルアーキテクチャをベースとして,ISO 26262 Part3 のプロセスに従った機能安全コンセプトを策定し,産業界で利活用するための1つの事例を作成した.また,今後の課題についての検討結果も報告する.  なお,本報告は一般財団法人日本自動車研究所が受託した経済産業省の委託事業「平成27年度次世代自動運転システム研究開発・実証プロジェクト」の「自動走行システム安全設計」に関わる部分を紹介するものである.
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