自動車の普及に伴う交通事故や交通渋滞は,甚大な社会的損失をもたらしており,2015年の全国の交通事故死者数は,4,117人で,15年ぶりに増加となった.政府は「2018年を目処に交通事故死者数を2,500人以下とし,2020年までには,世界で最も安全な道路交通社会を実現する」ことを掲げているが,既存の取組だけでは抜本的な解決が難しく,新たな取組である自動走行システムへの期待が大きい.この自動走行システムの早期の実用化・普及促進に向けては,自動走行システム導入による交通事故低減効果の訴求が必要であり、そのためにはコンピュータ・シミュレーションによる定量的評価が有効と考えられる.
一般財団法人日本自動車研究所(JARI)は,戦略的イノベーション創造プログラム(自動走行システム)の「交通事故低減詳細効果見積もりのためのシミュレーション技術の開発及び実証」研究事業を受託し,中立,公平な立場を生かして,産官学連携の中核として本事業を推進している.本稿では,平成27年度成果の概要を紹介する.
抄録全体を表示