高年層のドライバが第1当事者となる道路交通事故は年々増加しており,2010年以降は65歳以上のドライバによる事故件数が24歳以下による事故を上回っている.自動車の運転は,ドライバによる知覚,情報処理,運転操作の連鎖であり,加齢による心身機能の低下が各々の要素に影響を及ぼしていることによると考えられる.
衝突の危険は,通常状況と緊急状況の運転行動が適当でない場合に生じるとみられる.すなわち,Fig. 1のように,①ドライバ自身の通常時の運転行動や,他の交通参加者の挙動が原因となって通常状況が緊急状況に変化し,②ここで回避操作に失敗した場合に衝突に至る.事故を防止するためには,まず車線内への自車位置の保持や,適正な車速,車間距離の保持などに関わる通常時の運転行動が適切である必要がある.高年層のドライバではこれらの運転行動が不安定化し,緊急状況の出来につながっている可能性がある.
一方,高年層のドライバは,心身機能の低下を運転に臨む態度や行動によって補償しているといわれており,例えば,先行車の制動灯点灯に対してより早期に制動操作を開始することが報告されている.補償的行動がとられているのであれば,見かけ上は運転行動の変動性が増しても,自らが原因となって緊急状況を発生させるリスクはさほど増していない可能性も考えられる.
本稿では,年齢と通常時の運転行動との関係を把握するため,運転シミュレータで単路上の先行車追従走行を設定し,65歳前後までのドライバを対象に,運転操作,車両挙動,自車位置の変動性を調べた.また,横方向のリスクとして車線逸脱,前後方向のリスクとして先行車への追突を想定し,測定したデータに基づく簡単な机上計算により,各々の回避に成功するためにドライバが実現する必要のある車両挙動発生までの反応時間を推定して年齢群間の差を調べたので報告する.
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