日本胸部疾患学会雑誌
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28 巻, 8 号
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  • 畠山 忍, 永井 明彦, 来生 哲, 荒川 正昭
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1053-1058
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌患者155名に10種類の腫瘍マーカーを同時測定し, 各マーカーの有用性とその併用測定の意義について検討した. CA19-9, CA153, CA125, NCC-ST-439, CEA, NSE, TPAの7種マーカーで, 陽性率が良性群に比し有意に高く, 正診率ではCEAとTPAが, 特異度ではSLX, CA153, SCC, NSEが優れていた. 偽陽性の多いIAPを除くと, 三種類以上のマーカーが陽性の場合には肺癌である確率は90%以上でありCEA, TPAを中心とした combination assay が肺癌の補助診断として有用であると考えられた.
  • 永田 忍彦, 高山 浩一, 石橋 凡雄, 重松 信昭, 居石 克夫
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1059-1065
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺癌251剖検例を対象として肺癌患者の終末肺感染の発症要因を検討した. 抗癌療法 (化学療法, 放射線療法) 及びステロイド剤投与を受けた群の抗酸菌感染症の合併率は抗癌療法のみの群に比し有意に高かった. ステロイド剤投与を受け致死的抗酸菌感染症を合併した4例中3例ではステロイド剤の投与期間が1ヵ月以内と短期間であった. 一方非細菌性 (真菌, ウイルス, 原虫) 感染症の頻度は抗癌療法のみの群, 抗癌療法とステロイド剤併用群の二群の間で有意差はみられなかった. 抗酸菌感染症の発症, 増悪にはステロイド剤投与の影響がリンパ球減少の影響よりも大きいが, 非細菌性感染症の場合は両者の影響の間に有意な差はみられなかった. 一般細菌感染症の頻度は無治療群, 抗癌療法のみの群, 抗癌療法とステロイド剤併用群の三群間で有意な差はみられなかった.
  • 平田 健雄, 安場 広高, 佐竹 範夫, 松延 政一, 木野 稔也, 大島 駿作, Yuusaku Matsui, Masao Kado
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1066-1071
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    DPBにおけるエリスロマイシン (EM) の有効性の機序を検討する目的で, EMの好中球の活性酸素産生に及ぼす影響を in vitro で検討した. その結果, EMは, FMLP誘導性の化学発光を, 濃度依存性に抑制し, EM濃度25μg/mlでは, 45.3±5.6% (n=7)抑制した. その抑制作用の発現は速やかで, 5分で60分における抑制率の62.1%の抑制が認められた. その抑制活性は温度に依存し, 且つ, 可逆的であり, 37℃では認められるが, 0℃では認められず, 好中球の能動的な代謝に依存することが判明した. また, EMは, FMLP, OPZ, A23187誘導性の化学発光は著明に抑制するが, PMA誘導性の化学発光に対する抑制作用は軽微であり, EMは好中球のCa2+依存性の過程を阻害することによりその薬理作用を現わす可能性が示唆された. これらの結果は, DPBにおける, EMの有効性が, その抗炎症作用に由来する可能性を支持するものと思われた.
  • 岡野 昌彦, 佐藤 篤彦, 千田 金吾, 岩田 政敏, 安田 和雅, 志知 泉, 須田 隆文
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1072-1077
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性気道感染症であるびまん性汎細気管支炎 (Diffuse panbronchiolitis: DPB) 20例と嚢胞性気管支拡張症 (Cystic bron chiectasis: CBE) 20例における血清IgGのサブクラスについて検討した. 両疾患の各IgGサブクラスはいずれも, コントロール群に比して上昇していたが, 両疾患の比較では, DPBでIgG1とIgG2が, CBEでIgG4が顕著に増加していた. 総IgG量に対する各IgGサブクラス の比率では, コントロール群に比しIgG1の増加とIgG2の低下が両疾患に共通し, IgG4の増加がCBEで認められた. 起炎菌別の検討では, 緑膿菌感染群でIgG1の増加が, 非緑膿菌群でIgG4の増加が認められた. 以上の成績より, 慢性気道感染症における血清IgGサブクラスの変動はIgG1とIgG2の増加が共通した特徴であり, この反応は気道感染に基ずく生体の正常な防御反応と推察されたが, DPBとCBE, さらに起炎菌別のIgGサブクラスに差が見られた.
  • 岸本 卓巳
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1078-1084
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    石綿曝露が誘因となって発症した悪性胸膜中皮腫と石綿肺合併肺癌の典型例を各1例経験した. 両者の石綿曝露は, 同程度のクロシドライトによる高濃度曝露であり, 喫煙歴も同程度の heavy smoker であった. そして, 1例は肺, 胸膜病変をほとんど有さない悪性中皮腫を発症し, 他の1例は典型的な石綿肺に肺小細胞癌を発症した. 石綿曝露による発癌性に関しては石綿の種類に大きく影響されるが, 石綿の fibrogenicity と carcinogenicity に関しては, 曝露者の染色体など遺伝子の問題も要因となる可能性も考えていく必要があると思われる.
  • 前防 昭男
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1085-1091
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    クローン化ヒト DNA Alu-family をプローブとして Dot Hybridization 法を行い, 良性, 悪性肺疾患患者における血中DNA濃度を測定した. 原発性肺癌患者では, 良性肺疾患患者, 健常人に比し有意に高値を示した. 各組織型別には特に差は認めなかった. 臨床病期別にはIII+IV期においてI+II群に比し有意に高値をとった. また治療前後において測定し得た症例では, 治療効果を認めた症例において血中DNA濃度は低下を示したが, 一方, 治療効果がなく, 悪化した症例では上昇を示した. したがって治療効果判定におけるマーカーとしても有用であると考えられた.
  • 小野 欧美, 板橋 孝一, 酒井 一郎, 中野 郁夫, 藤野 通宏, 三上 洋, 木村 清延, 佐々木 雄一, 大崎 饒, 小島 英明
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1092-1097
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は82歳女性. 初回入院時, 腹部大動脈瘤精査の経過中にCT上, 腹部大動脈周囲のリンパ節腫大を認めたが, 3ヵ月の間に自然退縮したため, 経過観察となっていた. その後, 全身倦怠感と歩行障害のため再入院となった. 胸部レントゲン写真上, 粟粒大の陰影が密に散布しており, 肺生検を行なったところ結核性肉芽腫であった. 抗結核療法を行ない, 経過は良好であったが, 重篤な肝機能障害と汎血球減少症を併発し, うっ血性心不全及び呼吸不全で死亡した. 剖検で広汎な悪性リンパ腫と特に肺に著明な粟粒結核病変が認められた. 肝機能障害の原因は, 肝臓の主に門脈域への悪性リンパ腫の浸潤が主体であると考えられた. また, 骨髄, 脾臓, 肝臓には食血現象がみられ, 感染症に関連して生じ汎血球減少症を併発する, 所謂“hemophagocytic syndrome”の臨床像と一致した.
  • 古賀 俊彦, 平野 恭子, 桝崎 雅博, 小宮 豊, 築城 栄
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1098-1105
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    サンドブラスト業に従事する塵肺症の患者につき, 鉱物学的解析を行った. 当該工業所の床上に堆積していた研磨後の落下粉塵は, X線回折, エネルギー分散型X線元素分析 (分析電顕) により, この砂粒はほとんど (90%以上) が石英から成り, ごく一部緑泥石を含有したものであることがわかった. この落下粉塵には, 肺の深部に到達可能な5μ以下の粒子が無数に認められた. 経気管支肺生検を施行した一名の患者の肺組織には, 典型的な珪肺結節が認められ, その沈着粉塵の分析電顕で, free silica が高頻度に同定された. この肺組織内沈着粉塵の成分や構成比は, 5μ以下の落下粉塵のそれと酷似していた. 作業従事者三名の全員が胸部レントゲン写真上典型的な珪肺の所見を呈した. 作業従事者全員に高度の珪肺が生じたのは, このサンドブラスト業は家内工業であり労働衛生上の抑止力がうまく作動しない特殊性と, 高濃度の free silica を含む粉塵を吸入する危険性に対する認識不足, 珪肺症に対する知識不足によるものと考えられた.
  • 佐藤 寿伸, 工藤 宏一郎, 有岡 仁, 青塚 新一, 岡 輝明, 可部 順三郎
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1106-1113
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は44歳男性, 労作時呼吸困難, 皮下結節を主訴に入院した. 胸部X線上, BHL. 両側びまん性の小粒状影を呈し, Gaシンチでは同部に異常集積像を認め, 血清ACEも86.1IU/L/37℃と高値であった. BALでは総細胞4.4×108, リンパ球64%, leu3a+/Leu2a+16.07%と増加していた. TBLBでは乾酪壊死を伴わない類上皮細胞性肉芽腫を認め, 著しく活動性の高いサルコイドーシスと診断した. BALF付着性肺胞マクロファージの非刺激下培養上清中にはIL-1αが2.7ng/ml, IL-1βが496ng/mlと著明な肺胞マクロファージによる spontaneous なIL-1の産生亢進を認めた. spontaneous なIL-1の産生状況の経過は臨床症状の変動にほぼ一致して推移し, ステロイド剤の非投与時には産生亢進が持続し, ステロイド剤の投与後には spontaneous なIL-1の産生は抑制された. これまで日本人サルコイドーシスにおいて肺胞マクロファージによる spontaneous なIL-1の産生亢進を認めた症例の報告は皆無であり, 本症例はサルコイドーシスの免疫学的発症機序を考える際に極めて貴重な1例と考えられる.
  • 橋本 圭司, 谷口 隆司, 岡田 英彦, 浜本 康平, 中島 道郎, 今井 弘行
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1114-1119
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の女性で, 気管支喘息を既往歴に持ち, 今回も気管支喘息重積状態と診断され入院したが, 声帯直下に輪状の気管結石が発見され, 起座呼吸の為, 半座位の状態で, 緊急気管切開を行い救命し得た.
    気管支結石症は時に遭遇する疾患であるが, その成因については気管支周囲の石灰化病変の気管支内穿孔が多いといわれている. 今回の気管結石症は本邦で3例目であるが, その成因に真菌感染症の関与が考えられた貴重な症例であった.
  • 斎藤 亮, 磯上 勝彦, 藤村 重文, 大久田 和弘
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1120-1124
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    低γグロブリン血症を伴う胸腺腫は Good 症候群と呼ばれ, 本邦では15例が報告されている. 我々はOKT4抗原欠損症に合併した Good 症候群の1症例を経験したので報告する. 症例は61歳男性で咳を主訴として近医受診し, 同院で胸部異常影指摘され, 精査目的にて宮城県立瀬峰病院を紹介された. CT, MRI, 血管造影などの検査で胸腺腫疑いとなり, 胸腺・胸腺腫摘出術を施行した. 腫瘍は370gと大きかったが周囲への浸潤はなく容易に摘出できた. 組織学的には正岡分類I期の被包型で紡錘型細胞を腫瘍細胞とする混合型の胸腺腫であった. また術前検査で低γグロブリン血症と末梢血のOKT4陽性細胞欠損を認めた. Leu3a陽性細胞は正常より低値ながら存在したため, OKT4抗原欠損症に合併した Good 症候群と診断した. OKT4抗原欠損症に合併した Good 症候群は米国で1例報告されているだけで本邦での報告はない.
  • 西条 亜利子, 杉山 幸比古, 菅間 康夫, 北村 諭
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1125-1129
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性で, 咳嗽, 喀痰, 発熱, 息切れを主訴として入院. 帰宅試験, 肺病理組織像, 血清抗体価などより夏型過敏性肺臓炎と診断した. 46歳時に胸腺腫のため胸腺全摘術を受けたが, その術前にBALを施行しており総細胞数と好中球の増加を認めた. 入院後, 帰宅誘発試験後のBALFにても著しい好中球増多を認めた. 発病初期のみならず発病前好中球増多があり, 過敏性肺臓炎の発症における好中球の役割や, 好中球を増加させる因子について今後の検討が必要とされる.
  • 渡辺 東, 溝部 政史, 小川 裕, 武井 伸夫, 野本 日出男, 浦田 誓夫, 真野 健次, 北條 俊太郎, 今村 哲夫
    1990 年 28 巻 8 号 p. 1130-1135
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺腺癌にびまん性転移性髄膜癌腫症を合併した症例に対し, 抗癌剤の髄腔内投与と脳室ドレナージ術等を施行し長期生存例を経験した. 症例は36歳女性. 乾性咳嗽と頭痛を主訴に受診. 右S8原発の肺腺癌 (T4N1M1, P. S. 2) の診断で化学療法を施行. 加療後も頭痛は増悪し, 神経学的所見, 髄液検査, 脳CT検査では異常を認めず, 髄液中CEA値のみ異常を示した. 経過中脳圧亢進のため突然の視力消失と意識障害を来し, 緊急脳室ドレナージ術を施行, 得られた髄液から悪性細胞が発見され髄膜癌腫症と診断した. 白質脳症等の副作用を防ぐ目的で, 抗癌剤の髄腔内投与を計画的に行った. 脳圧亢進に対しては脳室腹腔短絡術を施行し, 短絡チューブにフィルターを設置して悪性細胞の腹膜への播種を予防し, 抗癌剤を反復投与する目的でリザーバーを留置した. 固形腫瘍に合併した髄膜癌腫症で, 髄腔内化学療法が奏効し長期生存可能となった症例は極く稀れと考えられ, 若干の考察を加え報告した.
  • 1990 年 28 巻 8 号 p. 1136-1142
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1990 年 28 巻 8 号 p. 1143-1148
    発行日: 1990/08/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
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