日本胸部疾患学会雑誌
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33 巻, 2 号
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  • 肺機能と運動負荷と質問表による検討
    三上 正志, 小林 龍一郎, 中村 清一, 川上 雅彦
    1995 年 33 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺気腫患者の臭化オキシトロピウムの定時吸入効果を, 本剤の吸入前と1ヵ月以上後での肺機能検査, 運動負荷試験, 息切れとQOLに関する質問表で比較検討した. 肺活量 (吸入前2,365±254, 吸入後2,570±257ml, p<0.05), 残気率 (前56.4±2.7, 後49.1±2.5%, p<0.01), Peak Flow (前2.58±0.42, 後3.29±0.45l/sec, p<0.05) が有意に改善し, 1秒率の改善に有意差はなかったが, 気道狭窄の改善が示唆された. ガス交換・換気指標では安静時のVO2 (前201±8.0, 後179±7.6ml/min) と運動負荷試験での運動持続時間 (前249±67, 後404±101sec) が有意 (共にp<0.05) に延長した. 本剤の吸入により閉塞性障害が改善され呼吸仕事量が軽減されたことが示唆された. 質問表より息切れの程度の改善が認められ, 家事等の日常生活労作の改善や生活意欲の向上傾向が認められた.
  • 大畑 一郎, 越智 規夫, 紅林 昌吾, 舛谷 仁丸, 宮川 トシ, 浜上 小夜, 川幡 誠一, 菊井 正紀
    1995 年 33 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチ (RA) 患者に合併した肺病変 (n=26) について検討した. RAの肺病変は, 間質性肺炎/肺線維症型18例, BOOP (Bronchiolitis obliterans Organizing Pneumonia) 型4例, 閉塞性細気管支炎型2例, 胸膜炎/心膜炎型1例に分類可能であった. 気管支肺胞洗浄 (BAL) では, 臨床病型にかかわらず, %リンパ球の増加が約1/2, %好中球の増加が約1/3の症例で認められ, 特に%好中球は胸部X線写真の進行とともに増加していた. BALF液性成分の分析では, 一部にIgGの局所産生がみられたが, IgM-リウマチ因子は, 検出できなかった. 治療は18例にステロイドあるいは免疫抑制剤が投与され多くの症例で予後良好であった. しかし間質性肺炎/肺線維症型の6例は悪化しうち4例は進行性の呼吸不全で死亡した. 臨床的亜分類は, 予後の予測に有用と思われる.
  • 鈴木 淳夫, 角坂 育英, 喜屋武 邦雄, 金子 昇, 中野 邦夫, 栗山 喬之
    1995 年 33 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    モノクロタリン (monocrotaline; Mct) 投与後ラットでの肺動脈中膜肥厚の意義を知る目的でDNA合成期にある中膜平滑筋細胞数の変動について検討した. 4週齢, 雄, Sprague-Dowley 系ラットに, Mctを投与した. 投与後3, 5, 7, 14, 21日に右室収縮期圧測定後, DNA合成期細胞核の標識を目的に Bromodeoxyuridine (BrdU) を注入した. その後作成したラット肺組織にて免疫組織化学的BrdU染色, Elastica van Gieson 染色を施行し, それぞれで肺血管平滑筋細胞のDNA合成能, 肺動脈中膜肥厚度を測定した. 結果では, 右室収縮期圧, 肺動脈中膜肥厚はMct群で14日目以降で有意に増加した. また, 肺血管平滑筋細胞のDNA合成能は投与後3日より有意に増加し, 7日目をピークにその後減少傾向を示し21日目には対照群と有意差を認めなかった. これらより, Mct投与後早期より平滑筋細胞の増生を促す因子の存在が示唆された.
  • 多田 敦彦, 河原 伸, 玉置 明彦, 岡田 千春, 竹内 誠, 谷本 安, 三島 康男, 宗田 良, 高橋 清, 木畑 正義
    1995 年 33 巻 2 号 p. 114-119
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺結核患者31例, 慢性難治性肺結核患者12例, 非定型抗酸菌症患者12例を対象にインターフェロン (IFN) 産生能を測定した. IFN産生能の測定は, 全血を測定材料に用い, IFN-α産生にはセンダイウイルス, IFN-γ産生にはPHAによる刺激を行った. その結果, 抗酸菌症患者のIFN-α産生能は健常者に比して有意に低下していた. 肺結核患者では2ヵ月間の治療後にIFN-α産生能の回復を認めた. 抗酸菌症患者のIFN-γ産生能は健常者に比して低下していたが有意差は認められなかった. また, IFN-α産生能と血清CRP値との間には負の相関の傾向が認められた. 以上の結果より, IFN産生能は抗酸菌症患者の免疫能の把握に有用であることが示唆された.
  • 芦野 有悟, 小野 貞文, 谷田 達男, 千田 雅之, 舟田 仁, 西村 俊彦, 植田 信策, 星川 康, 藤村 重文
    1995 年 33 巻 2 号 p. 120-126
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    正常時, 及び静水力学的肺水腫時の犬臓側胸膜の透過係数 (Hydraulic conductivity, K) を in situ 実験モデルを用い測定した. 雑種成犬12頭を開胸術のみ施行した群 (control 群; n=7), 静水力学的肺水腫群 (edema 群; n=5) にわけ, 第7肋間で開胸, 生理食塩水を満たした半球状のカプセルを左肺臓側胸膜に吸着させた. カプセル内圧 (Pcap=0, -5, -10, -20cmH2O)を変化させ, それぞれの胸膜を介した一定時間内の液体の変化量 (ΔV) を測定した. edema 群は肺静脈を絞扼後, 肺静脈圧を上昇させ同様に吸着させた. 透過係数は, Starling の式から, 単位時間変化量 (v) とΔPから得られる一次回帰直線の傾きで求められ, control 群では1.49±0.68 (平均±SD), edema 群では3.19±1.13 (平均±SD) nL・min-1・cmH2O-1・cm-2であった. 肺水腫時, 胸膜透過係数が上昇するが, その際の抵抗として, 血管外組織が関与する可能性が示された.
  • 渡辺 篤, 坂 英雄, 長谷川 好規, 下方 薫
    1995 年 33 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支造影 (以下“造影”) について東海4県73施設にアンケート調査を行い, 59施設より回答を得た (回答率81%). 解析可能57施設のうち, 現在造影を施行している: 30施設 (53%), 以前は施行していたが現在は施行しない: 22施設 (39%), 以前から施行していない: 5施設 (9%) であった. 1992年の1年間に造影を施行したのは34施設 (60%) で, 件数は1~27件 (中央値3件), 使用造影剤は propyliodone が圧倒的に多く, 対象疾患は肺癌, 気管支拡張症が主体を占めていた. 造影を施行しない施設の理由は, 他の画像診断法 (CTなど) の進歩, 患者の苦痛などであった. propyliodone 後の造影剤として iopydol・iopydone, iopamidol との回答があった. 気管支造影の症例数は少なくなっており, 造影の適応, 代替造影剤について今後の検討が必要である.
  • 下地 克佳, 斎藤 厚
    1995 年 33 巻 2 号 p. 132-139
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    喫煙者の慢性気管支炎+肺気腫 (以下, smoker CB+PE 群) および喫煙者の慢性気管支炎 (以下, smoker CB 群) と非喫煙者の慢性気管支炎 (以下, non-smoker CB 群) の気管支喘息要因を比較検討することによって喫煙の気管支喘息要因の発症因子としての意義を検討した. Smoker CB+PE 群および smoker CB 群は non-smoker CB 群に対して気道過敏性, 一秒量の改善量・率は明らかに高かった. Smoker CB+PE 群において喀痰中好酸球は増加傾向にあり, IgE (RIST) は明らかに高値を示した. 皮内テストにおいては一般アレルゲンでは著明な差はみられなかったが, ブロンカズマ・ベルナでは smoker CB+PE 群および smoker CB 群の陽性率は60%および71%であり, non-smoker CB 群では陽性者はみられなかった. 気道に同様の炎症を有する疾患においても喫煙者と非喫煙者では気管支喘息要因の合併頻度にかなりの差を認め, 喫煙が気管支喘息要因の発症因子として重要であることが示唆された.
  • 杉山 幸比古, 北村 諭
    1995 年 33 巻 2 号 p. 140-143
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    びまん性汎細気管支炎 (DPB) 患者の家族内慢性副鼻腔炎患者の頻度について, 26例のDPB家系においてこれを調べ, 127名の健常者の家系との比較を行った. この結果, DPB群では50%の家族に副鼻腔炎患者が存在し, 健常人家系の18.9%に比し有意に高頻度であった. また, 家族内に副鼻腔炎患者の存在するDPB家系の家族のHLA抗原を検討し, 副鼻腔炎患者とDPB患者は同一のHLAハプロタイプを有し, 共通の遺伝的素因をもつことが認められた. 従って副鼻腔炎のみの患者はDPBの軽症型あるいは不全型である可能性が示唆された.
  • 石田 雅朗, 山田 裕一, 中崎 聡, 川見 正機, 海老原 勇
    1995 年 33 巻 2 号 p. 144-149
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    患者は62歳の男性, 国鉄に整備工として27年間勤務し, 石綿を取り扱っていた. 45歳の時にシェーグレン症候群と診断を受ける. 60歳になり, びまん性間質性肺炎が併発し, さらに62歳には進行性肺線維症へと進展した. 本症例では, 45歳当時高γ-glb血症 (36.8%), 高IgG血症 (3,772mg/dl) を示していたが, 肺病変の進行とともに, これらの値は低下した. また58歳の時リンパ球サブセットの結果は正常範囲内にあったが, 60歳でびまん性間質性肺炎を合併した時, CD4 19.2%, CD4/8 0.46, CD20 26.8%と低値を示し始め, 62歳になって進行性肺線維症へと進展する頃にはCD4 5.0%, CD4/8 0.08, CD20 1.4%と極端な低値を取る一方で, CD8 64.7%, Leu7 49.0%と高値を示した. 本症例に見られた免疫学的検査所見の変化の原因を特定することは困難であるが, 石綿暴露歴にも注意する必要があると思われた.
  • 毛利 雅美, 南部 静洋, 小林 有希, 山之内 菊香, 栂 博久, 大谷 信夫
    1995 年 33 巻 2 号 p. 150-155
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は22歳男性. 突然の左胸痛にて受診. 胸部レ線上, 左舌区の孤立性結節影を認め, 肺血流・換気シンチ, 肺動脈造影にて肺血栓塞栓症と診断した. 明らかな下肢深部静脈, 下大静脈および肺動脈本幹の血栓は認めず, 陰影は自然経過にて消失した. 自己抗体の検索から, 抗カルジオリピン抗体 (IgG) が陽性を認め, その他膠原病を示唆する身体所見, 臨床症状は認めず原発性抗リン脂質抗体症候群と診断した. 抗リン脂質抗体症候群では下肢深部静脈血栓および下大静脈血栓症を伴う肺塞栓症の報告はみられるが, 深部静脈血栓症のない肺血栓塞栓症は稀であり貴重な症例と思われた.
  • 鈴木 和恵, 立花 昭生, 畠山 忍, 岡野 弘
    1995 年 33 巻 2 号 p. 156-159
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    シロスタゾールによる薬剤性肺炎の1例を経験したので報告する. 症例は73歳男性. 3回目の急性心筋梗塞を発症し, シロスタゾールの内服が開始された. 約70日後に呼吸困難, 乾性咳嗽, 発熱が出現した. 高度の低酸素血症と胸部X線, 胸部CTでびまん性スリガラス様濃度上昇を認めた. 薬剤性肺炎を疑い, 硝酸イソソルビド (冠動脈拡張剤) を除くすべての薬剤の中止とステロイド治療を施行し, 改善した. シロスタゾールのリンパ球刺激試験は陽性であり, 同剤による薬剤性肺炎と考えられた. これまでにシクロスタゾールによる薬剤性肺炎の報告はみられず, 本症例が第一例と思われる.
  • 鬼塚 徹, 河野 昌也, 瀧川 修一, 杉原 里恵, 安藤 博彰
    1995 年 33 巻 2 号 p. 160-164
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    67歳女性, 左肺上葉の陳旧性肺結核空洞に肺アスペルギローマを合併した症例を経験した. 肺機能の低下より, 内科的に経気管支空洞内注入法を選択し, フルコナゾール50mg注入を計250mg行った. その結果菌球の縮小を認めた. また, フルコナゾールの薬物動態を調べる目的で, 注入前後の血清濃度測定を行った. フルコナゾール血清濃度は, 1時間0.7μg/ml, 4時間0.8μg/ml, 8時間0.8μg/ml, 12時間0.7μg/ml, 24時間0.7μg/mlであり, 48時間では測定されなかった. 以上の結果よりフルコナゾールの吸収は非常に良く, 静注時の血清濃度に匹敵するか, またそれ以上であった. フルコナゾールの吸収は, 結核による肺胞構造の破壊や空洞壁の結合織の増生また二次的気管支拡張が認められる事より, 主として気管支粘膜上皮を介した吸収が起こったものと考えられた.
  • 矢野 守, 西谷 一志, 市木 拓, 宍戸 道弘, 高次 寛治, 西山 誠一
    1995 年 33 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は63歳女性, 気管および左主気管支の結核性狹窄による急性呼吸不全のため, 他院のICUにほぼ心肺停止の状態で入院した. 蘇生後気管切開のうえ人工呼吸器を装着された. 3mm径の気管支鏡が幸うじて通過できる刀鞘状狭窄を気管下部に3cm, 左主気管支に2cm認め, 右主気管支は完全に閉塞していた. その後3ヵ月にわたって人工呼吸器よりの weaning を試みるも, 自発呼吸では気道閉塞をきたし, 窒息状態に陥り失敗に終わっていた. 本院に転院しEMS挿入による気道拡張術を行うこととしたが, この操作中は通常の肺換気によるガス交換は不可能のため, PCPS下に気管および左主気管支狭窄部に夫々2連のEMSを挿入した. 2週間後には十分に狭窄が拡張していた. 約1ヵ月で人工呼吸器より weaning に成功しO2 0.5L/分の吸入下で気管切開チューブ挿入のままであるが歩行も可能となった.
  • 衣笠 誠二, 佐々木 学, 黒田 克彦
    1995 年 33 巻 2 号 p. 170-173
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 女性. 糖尿病にて加療中, 血痰, および胸部X線上腫瘤陰影を認め, 精査行うも確定診断は得られなかった. 悪性疾患を否定できないため開胸術を行い, 切除肺の病理組織標本で肺放線菌症と判明した. 本症は本邦において1964年~1993年の間に本例を含め59例の報告がみられるが, 多くの症例で確定診断は切除肺の病理組織検査によりなされていた. 近年化学療法の発達とともにまれな疾患となっており, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 大崎 緑男, 平井 康子, 水島 豊, 北川 正信, 杉山 英二, 小林 正
    1995 年 33 巻 2 号 p. 174-180
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は慢性関節リウマチ歴4年余の59歳女性. 併存した間質性肺炎に対しステロイド剤 (PSL) にて治療中, 徐々に胸部X線上左肺優位なびまん性間質影を呈するようになった. 呼吸状態悪化のため当科3回目の入院となったが, その入院加療中, 急速にびまん性陰影が悪化し呼吸不全にて死亡した. 剖検では, 肺重量の著明な左右差があり (左250g, 右510g), 左肺で線維化と峰窩肺がより進行していた. 顕微鏡的には, UIP像に加え, 気腔内滲出物と大食細胞の出現の目立つBOOP型の間質性肺炎像も混在して認められ, それらの変化は, 左肺においてより著明であった. 肺病変の左右差および急性増悪の原因は, 同定し得なかった.
  • 塚本 克紀, 本多 淳郎, 小谷 泉, 江藤 尚, 太田 伸一郎, 鈴木 春見, 佐藤 篤彦
    1995 年 33 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は60歳, 女性. 2ヵ月間の進行する咳嗽, 胸痛, 呼吸苦にて来院. 胸部レ線上, 両中下肺野胸膜側優位にびまん性浸潤影を認め, 胸部CTにて, 中葉舌区の淡い肺野濃度上昇域と, 胸膜直下に沿うような斑状陰影を認めた. 検査所見上, 低酸素血症, 拡散能障害, 軽度炎症反応陽性を示した. 血清ACE値は正常範囲であったが, リゾチームは高値を示した. BALF中総細胞数, リンパ球比率, CD4/8比の上昇を認めた. 開胸肺生検にて, 壊死を伴った癒合傾向の強いサルコイド様肉芽腫と著明な血管炎所見を認め, neorotizing sarcoid granulomatosis (NSG) と診断した. Prednisolone 投与にて, 良好な反応が得られた. NSGはサルコイドーシス (サ症) の1亜型と考えられるが, 本症例における血管炎所見の強さが, サ症とは異なった臨床像を呈したものと思われた.
  • 片岡 直之, 稲瀬 直彦, 吉村 信行, 東條 尚子, 月本 光一, 市岡 正彦, 宮里 逸郎, 谷合 哲, 丸茂 文昭, 松原 修
    1995 年 33 巻 2 号 p. 187-191
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺転移にて発見された左下腿原発胞巣状軟部肉腫 (Alveolar soft part sarcoma: ASPS) の1例を経験した. 患者は34歳の女性で乾性咳にて発症し, 胸部X線写真で多発性腫瘤陰影を指摘された. 2年前も同様の陰影があり, 開胸肺生検にてASPSの肺転移と診断した. MRIによる四肢の検索により初めて左下腿筋肉内に原発巣が発見された. 肺内多発性腫瘤をみた場合, 発育が緩徐でも常に悪性腫瘍の存在を念頭におく必要があり, 原発巣の検索にMRIが有用である場合がある.
  • 山口 正雄, 江藤 陽子, 松崎 剛, 石井 彰, 庄司 俊輔, 滝沢 始, 高石 敏昭, 井上 哲文, 長岡 滋, 伊藤 幸治
    1995 年 33 巻 2 号 p. 192-196
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性. 昭和49年, 気管支喘息発症, 喘息発作により近医入院を繰り返し, 副腎皮質ステロイド薬少量を継続投与されていた. 平成3年より大量の喀痰が持続し, 平成4年6月当科入院した. 喀痰量は入院時1日約200ml, 卵白様粘液と泡沫状気泡を含み, 気管支漏と診断した. 本症例は骨粗鬆症を有しており, 副腎皮質ステロイド薬の経口投与量は変えず, エリスロマイシン内服とベクロメサゾン吸入を行ったところ, 喀痰量は減少, 痰の切れは改善した. 次いでフロセミド吸入を追加したところ, 喀痰量は増加したが, 痰の切れは更に改善した. 同年10月退院後も気管支喘息・気管支漏共に良好な状態を維持している. 痰の成分分析では, アルブミン・フコース・シアル酸・フォスファチヂルコリン各濃度, レシチン/スフィンゴミエリン比の変化を認めた. 上記3薬剤は, 喀痰量のみならず, 喀痰の成分にも影響を与えることで気管支漏の症状改善に寄与したと考えられた.
  • 中島 淳, 小塚 裕, 柳生 邦良, 河野 匡, 大塚 俊哉, 丹原 圭一, 古瀬 彰, 大石 展也, 岡 輝明, 岡庭 弘
    1995 年 33 巻 2 号 p. 197-201
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    直腸癌左肺門リンパ節孤立性転移の1手術例を経験した. 66歳女性. 6年3ヵ月前に直腸癌にて低位前方切除, リンパ節郭清術を施行され, 1年10ヵ月後局所再発のために直腸再切除を行った. 5ヵ月前に血痰および胸部X線上左上葉無気肺が認められた. 著明な低酸素血症を示し酸素吸入を必要とした. 気管支鏡検査では左上葉枝を完全に閉塞した. 腫瘤が認められ, 生検にて直腸癌の気管支内腔への転移と診断された. 局所再々発および他部位への遠隔転移は認められなかった. 左肺全摘, R2a郭清を施行した. 術後経過は順調で, 動脈血ガス分析はほぼ正常に復し, 酸素吸入は不要となった. 切除肺の病理組織学的検索では, 直腸癌が肺門リンパ節に孤立性転移をきたし, 気管支内腔に進展したと考えられた. 術後6ヵ月経過後新たに出現した右肺血行性転移に対して化学療法を施行しながら経過観察中である.
  • 中川 晃, 山口 哲生, 天野 裕子, 高尾 匡
    1995 年 33 巻 2 号 p. 202-208
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 男性. 咳嗽, 血痰, 息切れ, 発熱を主訴に入院. 胸部X線では両側肺に粒状網状影を認め, 両側下肺野に fine crackle を聴取した. 抗生剤治療にて一過性の胸部X線陰影の増悪を認め, また当初喀痰細胞診が繰り返し陽性であったため, 診断に難渋した. BALではリンパ球の増加とCD4/8比の上昇を認め, TBLBではマッソン体と胞隔炎が認められた. 患者は抗生剤治療のみで軽快し一旦退院となった. しかしその5時間半後より症状の再増悪を認め, 再度入院となった. 胸部X線は初回入院時と同様であった. その後無治療にて軽快した. 過敏性肺臓炎と診断されたが, 2月の発症のため夏型過敏性肺臓炎は考えづらかった. 患者が使用していた加湿器の水で吸入誘発試験を施行したところ, 白血球数の増多とPaO2の低下を有意に認め, いわゆる加湿器肺が強く疑われた. 当初の喀痰細胞診は偽陽性と考えられた.
  • 甲原 芳範, 小林 淳, 北村 諭
    1995 年 33 巻 2 号 p. 209-214
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    24歳女性, 学生. 10年来の肺胞蛋白症で, 年1回の全身麻酔下片肺大量肺洗浄を繰り返していたが, 2年前より洗浄効果は不良であった. 今回重症肺炎を併発し入院した. 肺炎の改善後, 気管支鏡下肺洗浄を合計3回施行し成分調整サーファクタントを補充したところ, 病態の著しい改善を認めた. 確実な肺洗浄と洗浄後のサーファクタント欠乏状態への補充療法が好ましい影響を及ぼしたものと考えられた.
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