日本胸部疾患学会雑誌
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33 巻, 4 号
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  • 日高 孝子, 阿部 正義, 田中 拓夫, 光山 孝志, 原 直彦, 原 信之
    1995 年 33 巻 4 号 p. 379-383
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    胸膜炎の発症のメカニズムを解明するために胸水中の補体分解産物を中心に検討した. 補体共通経路活性化産物である膜障害複合体 (SC5b-9) は, 結核性胸水では癌性胸水に比して有意に高値を示した. 組織障害の程度を示す乳酸脱水素酵素 (LDH) については, 結核性胸水では, SC5b-9との間に有意な相関が認められたが, 癌性胸水では認めなかった. 結核性胸水では, SC5b-9とBbの間に強い相関を認めたが, C4d, Immune complex (IC) との間には相関は認められず, 補体副経路の活性化によるSC5b-9の産生が示唆された. 一方, 癌性胸水では, SC5b-9ならびにBbとも低値で両者の間に相関は認められず, 又IC, C4dとの間にも相関は認めなかった. 以上より結核性胸水の貯留には癌性胸水とは異なり, 補体の活性化の関与が示唆された.
  • 渡辺 浩, 壽賀 晶子, 土橋 佳子, 堀 彰宏, 川上 健司, 真崎 宏則, 秋山 盛登司, 大石 和徳, 高橋 淳, 永武 毅, 松本 ...
    1995 年 33 巻 4 号 p. 384-388
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1983~1992年の10年間に当科に肺癌の治療目的で入院し, 放射線治療を施行した57症例のうち放射線肺臓炎を起こした20症例 (35.1%) について, 臨床的検討を行った. 肺癌の組織型は, 扁平上皮癌8例, 小細胞癌7例, 腺癌3例, その他2例であった. 肺臓炎の発生頻度は, 男性, 呼吸器基礎疾患のあるもの, 化学療法を併用したもので高かったが, 平均年齢に差は認めず, また放射線の照射野面積, 照射量ともに発症率に関連は見られなかった. 肺臓炎の発症時期は照射中及び終了後1ヵ月以内のものが90%を占め, またその範囲は照射野に一致するものが多かったが, 照射野以上に広がったものも5例 (25%) 存在した. 治療としては主にステロイド投与を行ったが, ステロイド減量中に再増悪の見られたものが4例 (20%), また治療に反応せず死亡した症例も2例 (10%) に認められた.
  • 村上 和憲, 岡嶋 研二, 坂田 研明, 高月 清
    1995 年 33 巻 4 号 p. 389-394
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    近年, インターフェロン (IFN) 療法に小柴胡湯を併用することによりまれに間質性肺炎を合併すると報告された. 活性化白血球は間質性肺炎の発症に重要な関与をしていることが知られている. そこで我々はIFNおよび小柴胡湯の白血球に対する作用を検討した. ラットに蒸留水または小柴胡湯を経口投与し, 次にIFNまたは生食を投与した. 3時間後, 肺に集積した白血球を好中球に特異的に存在する好中球ペルオキシダーゼの酵素活性によって測定した. 小柴胡湯単独投与群では変化がなかったが, IFNを投与することにより肺に好中球が集積し, 小柴胡湯前投与により集積はさらに増強した. また, 小柴胡湯は単球のTNF産生を増強した. これらの結果より, 小柴胡湯はIFNと併用すると好中球の過剰な活性化を惹起し, 肺を傷害する可能性があり, 間質性肺炎のリスクになりうると考えられた.
  • 榊原 博樹, 廣瀬 邦彦, 松下 兼弘, 中村 慎吾, 佐藤 元彦, 加古 恵子, 末次 勸
    1995 年 33 巻 4 号 p. 395-402
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支喘息患者10名にエイコサペンタエン酸エチルエステル (EPA-E) 製剤 (MND-21) を1日2.7g, 12週間投与した. この間, 喘息症状, 血清の脂肪酸濃度, および calcium ionophore A23187で刺激された白血球のロイコトリエン (LT) 産生能を測定した. コントロールとして, EPA-Eを内服していない39名の気管支喘息患者から得られた白血球を使用した. LT産生量は逆相高速液体クロマトグラフィーにより測定した. EPA-Eの内服で血清中のEPA濃度は3.3倍に増加した. EPA-E内服4週間後の白血球のLTC4およびLTB4産生量 (それぞれ53.5±23.3ng/107cellsと24.9±12.4ng/ao7cells) はコントロール (それぞれ124.4±91.6ng/107cellsと58.3±34.8ng/107cells) と比べて有意に減少した. 4週間のEPA-E内服で有意なLTC5, およびLTB5の産生が認められたが僅かであった (それぞれ6.5±1.9ng/107cellsと4.6±2.7ng/107cells). 臨床症状の改善はEPA-E投与2ヵ月後に認められたが, その効果は一時的であった.
  • 中村 豊, 星野 誠, 福島 保喜
    1995 年 33 巻 4 号 p. 403-409
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支喘息患者をアトピー型 (A群) と非アトピー型 (NA群) とにわけ健常者 (C群) を対照として気管支粘膜を生検し, 気管支粘膜内に浸潤する各種炎症細胞をモノクロナール抗体を用いて免疫組織学的に比較検討した. おのおのTリンパ球, 好酸球, 好中球数は, A群とNA群との間に有意差は認められなかったが, 肥満細胞数は, A群がNA群に比べ有意に増加していた (p<0.025). その分布では特に粘膜上皮において増加していた (p<0.01). さらに電顕的に観察すると脱穎粒をおこしている肥満細胞がA群で多く見られた. 以上よりA群において肥満細胞は気管支粘膜上皮へ浸潤し, 積極的な炎症の役割をはたしている事が示唆された.
  • 小山 弘, 西村 浩一, 池田 顕彦, 月野 光博, 泉 孝英
    1995 年 33 巻 4 号 p. 410-415
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    安定期COPD患者における高用量吸入ステロイド薬の効果を明らかにするため, 43人のCOPD患者に対しプレドニゾロン (PSL) 0.5mg/kg/日を2週間経口投与した後, プロピオン酸ベクロメサゾン (BDP) 1.6mgを2週間吸入させ, 肺機能に対する改善効果を検討した. 投与前後の1秒量の比が115%以上で1秒量の改善が0.2L以上を有効の基準とすると43人中12人がPSLにより改善し, うち8人がBDP 2週間投与後も改善の基準を満たした. PSLによる改善が認められなかった31人のうち, 5人がBDP 2週間の投与により新たに1秒量の改善を示した. 2週間のPSLもしくはBDP投与により1秒量がPSL投与前より改善した17人に更にBDPを継続投与したところ, BDP開始後6週では8人 (19%) が改善の基準を満たしていた. BDP 1.6mgはステロイド反応性COPD患者の安定期の治療に有用と考えられた.
  • 周 彩存, 長山 直弘, 大塚 義郎, 永井 英明, 川辺 芳子, 町田 和子, 佐藤 紘二, 相良 勇三
    1995 年 33 巻 4 号 p. 416-421
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    一側肺全切除術後30年経過した肺結核後遺症患者の呼吸機能, 胸部X線および胸部CTを retrospective に調べた. 10年以上経過の追えた患者 (N=15) における肺活量VCおよび一秒率FEV1%の年変化率はそれぞれ-23.2±8.8ml/年および-0.683±0.688%/年であった. 術後30年 (N=30) のVC 900±210ml (%VC 31.6±8.1%), FEV1% 67.2±6.8%であり, 約半数に軽度閉塞性障害を認めた. FEV1%は胸部X線上肺門から横隔膜までの鎖骨中線上の高さの差を身長で除した量と負の相関 (r=-0.607) を認めた. 従って, 閉塞性障害の原因は中下薬の気管支が伸展されることが原因と考えられた. CT上 (N=19) 残存肺の手術側への過膨張・嵌頓のない18例においては肺気腫所見は認められなかったが, これのある1例において肺気腫を思わせる所見があった.
  • 吉田 良昌, 山下 直宏, 大田 亨, 川崎 聡, 水島 豊, 小林 正, 北川 正信
    1995 年 33 巻 4 号 p. 422-428
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は60歳女性. 慢性の咳嗽にて当科外来受診中であったが, 1ヵ月前より少量の喀血と労作時呼吸困難が持続した. 胸部X線像にて, 左下肺野に淡い浸潤影を認めた. 気管支肺胞洗浄液は好酸球とリンパ球の増加を認め, 多数の赤血球を混じていた. CTガイド下肺生検にて採取した組織では, 肺胞壁にびまん性の小円形細胞, 単球の浸潤を認め, いくつかの類上皮細胞肉芽腫の形成とヘモジデリン貪食マクロファージ, 少数の好酸球の浸潤が認められた. また, 気腔内の滲出物には多くの好酸球が出現していた. 類上皮細胞肉芽腫を形成し, 二次的に肺好酸球症を呈する特定の疾患は, いずれも否定的と考え, 原因不明の好酸球性肺炎と診断した. 喀血は好酸球性肺炎による肺胞出血が原因と考えられた. ステロイド投与後, 浸潤影の消退とともに喀血は速やかに消失した. 喀血を伴い, 類上皮細胞肉芽腫を形成した好酸球性肺炎の報告は少なく, 貴重な症例と思われたので, 文献的考察を加えて報告した.
  • 中村 嘉典, 藤本 尚, 上谷 光作, 駿田 直俊, 東本 有司, 船迫 真人, 大畑 雅洋
    1995 年 33 巻 4 号 p. 429-432
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    55歳男性. 20歳より35年間自動車整備業に従事し, トルエンジイソシアネートを含有する塗装剤を使用してきた. 51歳の時呼吸器症状が出現. 胸部で血 fine crackle を聴取し, ばち指を認める. 胸部CTにて不規則な分布の網状輪状影を呈し, 開胸肺生検では, Masson 体, 肉芽腫は認めなかったものの, リンパ球の浸潤を主体とした胞隔炎と線維化, 蜂窩肺を認め, 間質性肺炎の病像を呈していた. 組織所見からは典型的な特発性間質性肺炎とは考えにくく, 膠原病やサルコイドーシスも否定的で, トルエンジイソシアネート特異的抗体が強陽性であることなどから, 本物質の長期暴露による慢性過敏性肺臓炎と診断した. イソシアネートを原因とする過敏性肺臓炎の本邦報告例はすべて急性で, 本症例のように蜂窩肺にまで至った慢性例は見当たらない. 非常にまれな症例と考え, 報告する.
  • 小宮 武文, 松島 敏春, 木村 丹, 田野 吉彦
    1995 年 33 巻 4 号 p. 433-437
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は24歳の男性で左背部・胸部の鈍痛を主訴に来院し, 胸部X線写真にて軽度の左気胸と, 両側肺門・縦隔拡大, 多発結節影がみられた. 胸部CTにて左S9の結節影は胸膜直下に存在し, その腹側に気胸腔があり, また両側肺門・縦隔リンパ節腫大がみられた. 血清ACE・リゾチーム値が高値をとり, TBLBにて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が証明されたことからサルコイドーシスと診断した. 気胸は安静のみで軽快したが, 心合併症が疑われたためステロイド投与を施行した. 本症例は肺の線維化を来していない, 比較的早い時期のサルコイドーシスに合併した続発性の自然気胸と考えられ, 左S9のサルコイド結節の壊死を, その機序として考えた.
  • 石浦 嘉久, 藤村 政樹, 斉藤 元泰, 松田 保, 丸山 倫夫, 鈴木 栄一, 林 義信, 渡辺 洋宇, 野々村 昭孝, 北川 正信
    1995 年 33 巻 4 号 p. 438-443
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    10年来の篆刻歴をもつ70歳の男性が, 乾性咳嗽と労作時呼吸困難を主訴として来院した, 胸部レントゲン写真上間質陰影の増強と亜急性に増大する多発嚢胞の形成を認め, 開胸肺生検組織および臨床所見より特発性間質性肺炎の非定型例と診断した. 本症に合併する嚢胞は通常大きさは不変であり, 自験例のように亜急性に増大して呼吸不全により死亡した例は稀である. 嚢胞形成には炎症過程の関与も一因として挙げられており, 篆刻による持続的な Al, Siの刺激が亜急性の増大をきたした可能性が示唆された.
  • 村田 嘉彦, 草島 健二, 大石 不二雄, 木村 文平, 下出 久雄, 河端 美則
    1995 年 33 巻 4 号 p. 444-450
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺に原発した髄外性形質細胞腫の1例を経験した. 症例は63歳男性で左肺舌区の腫瘤影を指摘され切除術を受けた. 腫瘍は形質細胞より成り免疫組織染色でIgG-κのみに陽性であり形質細胞腫と診断された. M蛋白は陰性で, 骨髄生検その他により多発性骨髄腫は否定された. 手術時左下葉にも結節を認め, この部分は病理学的に結節性アミロイド沈着と確認された. 結節周辺の形質細胞もやはりIgG-κのみに陽性を示した. 肺原発の形質細胞腫はきわめて稀な疾患であり, さらに別の部位に結節型アミロイド沈着を伴っていた点はこの2つの疾患の関連を示しており興味深い症例と思われた.
  • 小山田 吉孝, 船江 修, 亀谷 宜隆, 副島 研造, 仲村 秀俊, 森 茂久, 金沢 実, 山口 佳寿博, 奥沢 英一, 山澤 文裕
    1995 年 33 巻 4 号 p. 451-455
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    胸水貯留をきたした熱帯性好酸球増殖症の1例を報告する. 症例は52歳, 男性. 平成2年7月から平成5年5月まで, 商用でベトナムに滞在した. 帰国後, 左側胸部痛を認めたため受診した近医で両側胸水, 好酸球増多症 (10,200/mm3) を指摘された. 6月, 精査加療目的で当科に入院した. 好酸球増多, 血清IgE高値 (708IU/ml), 抗フィラリア抗体陽性, 血中ミクロフィラリア陰性より熱帯性好酸球増多症と診断した. 胸水は浸出性で, 好酸球が細胞成分の51%を占めていた. 虫体は認められなかったが, 抗フィラリア抗体は胸水中でも血清と同力価で陽性であった. 抗フィラリア薬であるジエチルカルバマジンに加え, 喘鳴を伴う発作性の呼吸困難に対しステロイドの経口投与を行った. 喘鳴は消失し, 好酸球も著明に減少した. 熱帯性好酸球増多症において胸水貯留をきたした症例は現在まで2例が報告されているに過ぎず, その意味で本症例は貴重な症例と思われた.
  • 三好 礼子, 山地 康文, 島 さつき, 藤田 次郎, 岡田 宏基, 高原 二郎
    1995 年 33 巻 4 号 p. 456-462
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 男性. 平成3年に近位筋の脱力と眼瞼下垂が出現し, 重症筋無力症と診断された. 抗コリンエステラーゼ剤による治療を受け, 症状は改善していた. 平成5年8月, 腹部腫瘤に気付き, 精査したところ左肺門部原発の肺小細胞癌が腹部大動脈傍リンパ節に転移したものと診断された. 遠隔転移の検索では神経系への転移は認められなかった. 肺小細胞癌に腫瘍随伴症候群として神経・筋接合部疾患である Eaton-Lambert 症候群がしばしば合併することはよく知られているが, 重症筋無力症に併発した症例の報告は極めて稀である. しかし最近, 肺小細胞癌にアセチルコリン受容体が発現していることが報告されており, 肺小細胞癌の存在と重症筋無力症発症との因果関係が想像される. 本例には胸腺腫瘍は存在せず, 通常の重症筋無力症とは病因的に異なっており, 肺小細胞癌発生となんらかの関係が存在する可能性がある.
  • 斎藤 亮, 藤村 重文, 庄司 聡, 一ノ瀬 高志, 佐山 恒夫
    1995 年 33 巻 4 号 p. 463-467
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    右下葉の2つの異常影を認め, 開胸肺生検にてそれぞれ結核腫と necrotizing sarcoid granulomatosis と診断が確定した症例を報告した. 患者は平成3年度の集団検診にて胸部異常影を指摘され東北中央病院内科を受診した. 初診時胸部X線写真上右下肺野S9領域に腫瘤状陰影を認めたが, CTや気管支鏡検査などにより良性の疾患と判断された. 外来で経過を見ていたところ, 平成4年9月の胸部X線写真上右下肺野S10領域に新な陰影が出現した. 気管支鏡下に擦過細胞診などを行ったが確診がつかず, 開胸肺生検を施行した. 組織学的にはS9の病変は結核腫でS10の病変は necrotizing sarcoid granulomatosis であった. 肺の necrotizing sarcoid granulomatosis は肺癌とその鑑別が問題となるが, 術前に診断されることは稀で本症例のように開胸肺生検により診断されることが多い.
  • 吉澤 篤人, 古田島 太, 杉山 温人, 工藤 宏一郎, 柳下 芳寛, 可部 順三郎
    1995 年 33 巻 4 号 p. 468-472
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は発熱を主訴として入院した63歳男性. 胸部X線写真にて右下肺野に浸潤影が認められ, Cefotiam, Piperacillin, imipemem/cilastatin を処方したが, 呼吸不全が進行し, 人工呼吸器管理となった. その後, Clarithromycin と Rifampicin に変更後, 炎症反応は消失したが, 低酸素血症が残存したため, 器質化肺炎を疑い, ステロイドのミニパルス療法を施行し, 良好な経過を得た. 臨床経過からレジオネラ肺炎を強く疑い, 気管内より採取した喀痰のグラム染色, 培養, PCRを施行したが全て陰性であり, 間接蛍光抗体法による血清抗体価の有意な上昇も認められなかった. しかし, 尿中特異抗原が高濃度に検出されたため, 我々は本症例をレジオネラ肺炎と考えた. 選択培地による培養陰性で, 血清抗体価の上昇も認めず, 尿中特異抗原にてレジオネラ肺炎が強く疑われた1例を経験したので報告する.
  • 佐々木 結花, 山岸 文雄, 鈴木 公典, 宮沢 裕, 杉本 尚昭, 阿部 雄造
    1995 年 33 巻 4 号 p. 473-477
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は45歳, 男性. 1988年10月から肺結核治療中であった. 1989年10月血痰が出現し, 胸部エックス線写真上, 右空洞壁の肥厚, 壁の不整を認め, 壁在増殖型肺アスペルギルス症を疑い精査した. 右B2入口部上部に白苔を認め, 生検にて真菌の集塊を採取し, 術後痰から Aspergillus fumigatus が同定され, 気管支アスペルギルス症, 壁在増殖型アスペルギルス症と診断した. 本人の希望で内服治療となり, 4年後の1993年6月, 胸部エックス線写真上, 空洞の増大を認めたが, 空洞壁の厚みの増加, 内部突出, 菌塊形成は認められなかった. しかし, 空洞内を気管支鏡で観察したところ, 内壁に白苔が付着し, 同部の擦過検体で糸状菌を認め, 真菌感染の持続が強く疑われた. イトラコナゾールに変更後, 胸部エックス線写真上空洞壁はさらに薄くなり, 空洞内の観察により真菌塊の消失を確認した. 経気管支鏡的に空洞内部を観察し, 内服療法の効果を確認し得た稀な症例と考え, 報告した.
  • 雨宮 徳直, 西 耕一, 水口 雅之, 大家 他喜雄, 小林 孝一郎, 佐藤 日出夫, 車谷 宏, 藤村 政樹, 松田 保
    1995 年 33 巻 4 号 p. 478-482
    発行日: 1995/04/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性で, 咳嗽および痰を主訴に来院した. 胸部X線写真にて左中下肺野および右中肺野に小結節陰影を認め, 胸部CTでは両側の肺野に多発小結節影が確認された. 尚, 結節の一部は spicula を伴っていた. 画像所見からは転移性肺癌や原発性肺癌, 炎症性の肉芽腫などが考えられた. 気管支鏡検査を行うも診断に寄与する所見は得られず, 他の臓器を検索しても癌の原発巣と考えられる病変も認められなかった. 確定診断のため開胸肺生検を施行すると, 左側の3個の結節影は組織学的に炭粉沈着を伴う肺内リンパ節と判明した. 本症例は慢性肺気腫も合併しており, 両疾患とも喫煙との関連性が考えられており, 本症例のような症例は意外に多いのかも知れないと考えられた. また, 画像所見として spicula を伴う肺内リンパ節は比較的稀であり報告した.
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