日本胸部疾患学会雑誌
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34 巻, 2 号
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  • 花本 澄夫
    1996 年 34 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺機能検査の情報構造を解析するため, 健常者, 慢性気管支炎, 気管支喘息, 慢性肺気腫, びまん性汎細気管支炎, 特発性間質性肺炎の6群より同数ずつ無作為抽出して得られた男女468例の肺機能検査データに対し, 19個の検査項目を変量とした多変量解析 (主成分分析) を実施した. その結果6個の主成分が得られ, 肺機能検査の情報の70%は「換気因子」,「容積因子」,「拡散因子」の3主成分の情報であり, 17%が「末梢気道因子」,「下気道因子」,「努力呼気曲線形状因子」の情報であった. 換気不均等の指標は気道閉塞の指標と共に第1主成分に含まれ, 両者は分離されなかった. また対象とした肺機能検査指標の範囲に他の未知の主成分の存在は検出されなかった. 因子負荷量により肺機能検査各指標の近縁度が定まり, これを用いて肺機能検査各指標の統計学的分類が得られた.
  • 久保田 勝, 片桐 真人, 矢那瀬 信雄, 相馬 一亥, 冨田 友幸
    1996 年 34 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中 Adenosine deaminase (ADA) 活性の粟粒結核診断における意義を検討した. 粟粒結核6例, サルコイドーシス21例, 特発性間質性肺炎 (IIP) 15例, コントロール7例, その他15例の計64例を対象とした. BALF-ADA活性は, 粟粒結核5.02±3.75IU/L (平均値±1SD), サルコイドーシス1.06±0.99, IIP0.21±0.43, コントロール0.30±0.51であり, 粟粒結核では他疾患に比べ有意に高値であった (p<0.01). BALF-ADA活性2.0IU/L以上の症例は64例中11例 (17.2%) で粟粒結核6例, サルコイドーシス3例, Wegener 肉芽腫, 癌性リンパ管症各1例であった. BALF-ADA活性2.0IU/L以上を粟粒結核の診断基準とした場合, 6例の粟粒結核患者では100%陽性であり, 他の検査方法の陽性率と比較して高率であった. 以上の成績から, BALF-ADA活性の測定は粟粒結核の早期補助診断の1つとして有用であると考えられた.
  • 藤井 忠重, 田中 正雄, 関口 守衛
    1996 年 34 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺分画症5例に肺血流シンチグラフィ, RI-アンジオグラフィおよびサブトラクションシンチグラフィを実施し, その診断学的意義について検討した. Tc-99m MAAの肺血流シンチグラムでは全例が左下葉に区域性 (S8, S9, S10付近) の境界明瞭な血流減少・欠損を示した. Tc-99m TcO4-のRI-アンジオグラム (大動脈相) では下行大動脈から左下葉の病巣部にかけての異常血流が描出され, また, 異時相の2動画画像より作成したサブトラクションシンチグラムにより異常血流がより良好に描出された. 以上, 肺血流シンチグラフィおよびRI-アンジオグラフィは肺分画症の補助診断に有用であり, 前者の左下葉における境界明瞭な区域性肺動脈血流欠損と後者の下行大動脈から肺病巣部への異常血流の描出は本症の診断上有用な所見である.
  • 田中 賢治, 赤嶺 晋治, 高橋 孝郎, 川原 克信, 山本 聡, 永安 武, 澤田 貴裕, 田村 和貴, 綾部 公懿, 富田 正雄
    1996 年 34 巻 2 号 p. 152-156
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    V-V bypass (veno-venous bypass) による ECMO (Extra-Corporeal Membrane Oxygenation) を用いることで換気停止が可能か検討した. 実験は雑種成犬を使用. 麻酔導入後, Swan-Ganz catheter を肺動脈へ, ETV (Extra-lung Total Volume) catheter を右大腿動脈へと挿入し, cannulae を右外頸静脈および右大腿静脈より挿入した. 回路には遠心ポンプおよび膜型人工肺を使用した. 体外循環開始後, 肺動脈酸素分圧が100mmHgとなった時点で, 換気を停止した. 全例1時間30分の換気停止が可能であった. 全経過中, 循環, 酸素加について有意な変化は認めなかった. 換気停止中の二酸化炭素分圧の上昇を認めたものの, 換気再開後は正常域へと回復した. この実験により, V-V bypass による原ECMOを用いる事で換気停止の可能性があることが示唆された.
  • 全国の200床以上を有する病院へのアンケート調査報告
    中澤 次夫, 川上 義和, 須藤 守夫, 小林 節雄, 末次 勧, 中島 重徳, 山木戸 道郎, 長野 準
    1996 年 34 巻 2 号 p. 157-163
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    近年の本邦の成人喘息死の実態を把握することを目的として200beds以上をもつ比較的大病院を対象としたアンケート調査を実施し, 1986~1991年の間に主として喘息発作で死亡した649症例についてその特徴につき検討解析した. その結果, 本邦の成人喘息死は男性に多い, 50~70歳代が多い, 急死例が多く特に不安定急変型が多い, 誘因では気道感染, 過労・疲労, ストレスが多い, 死亡と関連した事項としては, 患者の認識不足やコンプライアンス不足, ステロイドの減量, 中止や救急対策の不備などを含めた全体的な治療不足や遅延などが特徴的な事項として挙げられ, これら諸事項に応じた対策が必要と考えられた.
  • 前田 均, 中川 正清, 横山 光宏
    1996 年 34 巻 2 号 p. 164-173
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    大規模自然災害時の呼吸器疾患による入院患者要因の分析を行う目的で, 兵庫県南部地震 (1995年1月17日午前5時46分に発生) により被災を受け, 震災後10週間以内に入院加療を要した患者を対象とし, 被災地を含む近隣の30の医療機関へのアンケート調査を行った. 回収は18医療機関 (18/30) で行え, 入院患者総数は148名であった. 震災後2週目をピークとする3週以内に69.6%が入院し, 患者の年齢分布では65歳以上が69.6%占めた. 肺炎患者は58.8%を占め, 基礎疾患としては呼吸器疾患 (特にCOPD, 陳旧性肺結核, 気管支喘息) および高齢者 (65歳以上) が多く, その66.7%が避難生活中に発生していた. 68.6%が軽快退院しており死亡率は9.5%であった. 大規模災害時には多くの二次的要因に基づく呼吸器疾患の罹病を新たに生じる可能性を常に秘めており, 今後の大規模自然災害に備え, 医療的にも政策的にも十分検討された対策を練る必要があるものと考えられる.
  • 山本 智生, 米田 尚弘, 吉川 雅則, 夫 彰啓, 徳山 猛, 岡本 行功, 仲谷 宗裕, 塚口 勝彦, 国松 幹和, 成田 亘啓
    1996 年 34 巻 2 号 p. 174-179
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性肺気腫症の気道炎症の病態を検討するために, 好中球の遊走, 活性化作用を持つサイトカインである interleukin-8 (以下IL-8) を慢性肺気腫患者の喀痰中と血清中とから測定し, 気管支喘息患者, 健常者と比較検討した. 肺気腫患者の喀痰中IL-8濃度は喘息患者と健常者とより有意に高値を呈した (p<0.0001). しかし肺気腫患者の血清中IL-8濃度は健常者より有意に高値であったが (p<0.01), 気管支喘息患者とは有意差を認めず, また喀痰中IL-8濃度とも相関しなかった. さらに呼吸機能との関係を検討したところ, 喀痰中IL-8は肺気腫患者のFEV 1%と有意に逆相関し (r=-0.78, p<0.0001), %RV/TLCとも有意に正の相関関係を呈した (r=0.63, p<0.0001). 以上の結果から慢性肺気腫症ではIL-8が関与する慢性的な気道炎症の存在があり,喀痰中IL-8の濃度は閉塞性障害の程度に密接に関連している事が示唆された.
  • 中村 清一, 川上 雅彦
    1996 年 34 巻 2 号 p. 180-185
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    去痰薬の投与にもかかわらず痰の喀出に関する訴えがとれない, 病状の安定期にある慢性呼吸器疾患患者に, 理学療法補助器, フラッター®を使用させ, その去痰に関する急性効果を検討した. Visual Analogue Scale (VAS) で検討したフラッター®使用後の“痰のだしにくさ”と“胸のつかえ”は第2, 第3実験日でいずれも対照日に比し有意に改善された (痰のだしにくさ第2日 (平均±SE); 3.8±0.6 vs 4.4±0.6, p<0.05, 第3日; 3.0±0.5 vs 4.2±0.6, p<0.02, 胸のつかえ第2日; 2.9±0.6 vs 3.5±0.7, p<0.04, 第3日, 2.3±0.6 vs 2.9±0.6, p<0.01). 咳の強度, 咳の頻度, 息切れやピークフロー値には明らかな効果はみられなかった. フラッター®の施行中から施行後30分間 (計45分) に喀出された痰量は第2, 第3実験日には対照日に比し有意に多かった. (痰量第2日13.9±3.6 vs 11.3±3.1ml, p<0.04, 第3日13.2±2.8 vs 9.9±2.1ml, p<0.01). 以上よりフラッター®は患者の自覚症状を改善し痰量を増加する有力な去痰器具であることが示された.
  • 三上 理, 長岡 功, 蓮沼 紀一, 高橋 英気
    1996 年 34 巻 2 号 p. 186-193
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    低酸素性肺高血圧では肺細小動脈の中膜肥厚や右室肥大がみられるがその成因は未だ不明である. また近年, レニン・アンギオテンシン (RA) 系が血管壁や心筋局所に存在し, 高血圧症における細胞増殖に関与していることが示唆されている. 本研究では低酸素性肺高血圧ラットモデルを作成し, 肺局所でのRA系の関与について解析した. 低圧低酸素環境 (380Torr) 飼育3日目では右室肥大は明らかではなかったが, 14日目で肺細小動脈の中膜肥厚・右室肥大がみられた. 正常対照群の肺組織中ではアンギオテンシンII受容体 (AT1A) mRNAが恒常的に発現し, 膜分画中のアンギオテンシンII (Ang II) 受容体の結合能が認められた. 低酸素飼育3日目にすでにAT1AmRNAの発現及びAng II受容体の増加がみられ, 14日目ではAng II受容体数が正常対照に比べ1.7倍, 組織中Ang II量も1.7倍増加した. これらの結果より, 低圧低酸素飼育したラットでは肺局所におけるRA系の賦活化が起こり, 肺高血圧の成立に関与している可能性が示された.
  • 小倉 建夫, 阿部 直, 高田 信和, 片桐 真人, 冨田 友幸
    1996 年 34 巻 2 号 p. 194-199
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は32歳女性. 18歳時より和裁に従事し, 1日の内12時間以上坐位 (あぐら) で過ごしていた. 1978年頃, 1週間程左側胸部に鈍痛があり, その頃より労作時に呼吸困難が出現するようになった. 1988年頃より息切れが徐々に増強. 1989年RIアンギオ上, 肺高血圧と右上肺野梗塞所見を認めた. 1990年3月突然激しい左側胸部痛と安静時の息切れが出現し入院した. 胸部X線写真上, 肺門部肺動脈の拡大, 両側上肺野の透過性亢進, さらに左中肺野外側に浸潤影が認められた. 99mTc-MAA肺血流スキャンでは両肺野に多発性の欠損像が存在したが, 133Xe換気スキャンでは正常であった. 肺血管造影では両肺野に多発性に肺動脈血流の途絶像または低下が認められた. 以上の経過および検査所見から慢性反復型の肺血栓塞栓症と診断した. 本症例には肺血栓塞栓症の誘因となる基礎疾患はなく, 凝固系の先天的異常もないことから, 長期の坐業による血流停滞が誘因であると考えた.
  • 中野 豊, 佐藤 篤彦, 土屋 智義, 竹内 悦子
    1996 年 34 巻 2 号 p. 200-203
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 77歳の女性で, 夜間に突然発症した前胸部痛ならびに喘鳴をともなった呼吸困難発作のために来院した. 胸部に rhonchi を聴取し, 呼吸困難は,臥位ならびに右側臥位で増悪した. 経過ならびに身体所見より, 心不全あるいは閉塞性肺疾患を疑い精査を進めた. 胸部X線では, 左肺には含気が全く認められなかったため, 緊急胸部CT検査ならびに胸腔穿刺を行い, 大動脈弓部から下行大動脈にかけて, 内部に血栓形成をともなう, 大きさが13×11×10cmの紡錘状の胸部大動脈瘤の存在と, その破裂による血胸を確認した. 気管ならびに左主気管支は大動脈瘤により, 著しく圧迫を受けていた. また, 呼吸困難の再発時に気管支鏡検査を行い, 気管内腔の壁外性の圧迫による狭窄所見を認めた. 喘息様発作を来す疾患として胸部大動脈瘤もその鑑別診断として重要である.
  • 蜂谷 勤, 早坂 宗治, 本田 孝行, 武田 正, 早野 敏英, 藤本 圭作, 久保 恵嗣, 関口 守衛, 羽生田 正行
    1996 年 34 巻 2 号 p. 204-209
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺病変を有し, 開胸肺生検をおこなった Primar Sjögren 症候群の2例を報告した. 症例1は58歳女性, 症例2は54歳女性である. 共に乾性咳嗽と労作時呼吸困難を主訴に入院した. 画像上は間質性陰影を呈し, 症例1ではブラが散在していた. いずれも, 肺機能検査にて拡散能障害, 気管支肺胞洗浄液ではリンパ球比率の上昇を認めた. 開胸肺生検を施行し, 肺胞隔壁の肥厚と間質へのリンパ球を主体とした著明な単核細胞浸潤, そして一部にリンパ濾胞形成を認めた. 症例1では, 細気管支周囲の単核細胞浸潤も認められた. 以上より, これらの2症例は病理組織学的に, リンパ濾胞形成を伴う細胞性間質性肺炎と診断した.両症例ともステロイド剤を経口投与し自覚症状, 検査所見は改善した.
  • 小橋 吉博, 木村 丹, 田野 吉彦, 松島 敏春
    1996 年 34 巻 2 号 p. 210-215
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 男性. 急速に進行する両側下肺野の間質性変化を認めたため, 気管支鏡下肺生検により間質性肺炎と診断. 好中球エラスターゼ阻害剤+ステロイド剤投与後, 改善していたが, ステロイド投与開始1ヵ月半後から, 右上肺野に新たな浸潤影が出現し, 漸次増大. 喀痰培養検査からA. fumigatus が検出され, 血清アスペルギルス抗体も陽性であったため肺アスペルギルス症の併発と考え, KFCZ+5-FC, さらには5-KFC+AMPHによる治療も行ったが, 陰影は増大し, その後内部に空洞影を形成した. 最終的には, 空洞破裂により気胸を合併したため呼吸不全となり死亡した. 臨床経過に伴う画像上の陰影の性状から, 1982年に Binder らが最初に唱えた慢性壊死性肺アスペルギルス症に合致するものと考えた。
  • 木代 泉, 森 清志, 須賀 由香理, 富永 慶晤, 神谷 紀輝, 横井 香平, 宮沢 直人
    1996 年 34 巻 2 号 p. 216-219
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    非喫煙者の女性に発生した気管と肺の同時性重複癌の一切除例を経験した. 年齢は70歳で, 平成5年5月咳嗽を主訴に近医受診し投薬を受けるも症状の改善なし. 気管支鏡検査にて, 気管下部及び右B8入口部に腫瘤を認め, 生検にて両腫瘤とも扁平上皮癌と診断され, 当院を紹介された. 肺門, 縦隔リンパ節の腫大はなく, 遠隔転移も認めないため, 同年7月気管環状切除, 右肺下葉切除術を同時に施行した. 切除標本では両腫瘤とも中分化扁平上皮癌で, ポリープ状の発育を示していたが, 両病変とも上皮内進展があり, 主座は上皮内にあった. リンパ節や他臓器にも転移がない肺癌が, 気管のみに転移する事は確率的に低く, 1期肺癌に気管癌が合併したものと判断した. 非喫煙者の女性に, 気管・肺同時性重複癌 (扁平上皮癌) が発生することは極めて稀と思われ報告した.
  • 高野 浩一, 高山 浩一, 中野 寛行, 萩本 直樹, 中西 洋一, 原 信之
    1996 年 34 巻 2 号 p. 220-225
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性. 咳, 呼吸困難を主訴に入院. 胸部レ線および胸部CTにて左肺門部に腫瘤陰影を認め, 気管支鏡検査にて肺小細胞癌と診断された. 入院時より血中ACTH (2,000pg/ml), Cortisol (171.9μg/dl), 尿中17-OHCS (67mg/day) の高値, 低カリウム血症, アルカローシス, 高血糖, 中心性肥満, 全身の色素沈着が認められ典型的な Cushing 症候群と考えられた. さらに, 転移リンパ節生検標本の抗ACTH抗体による免疫染色の結果より, ACTH産生肺小細胞癌と診断された. VP-16およびCBDCA (またはCDDP) 併用による化学療法が施行され, 腫瘍は著明に縮小した. 腫瘍の縮小に伴い, 血中ACTHおよび, Cortisol は正常域に回復し, 色素沈着も消退した. 本症例は以後, 同併用化学療法を計6回施行し, 最終的にCRとなった. 一般に Cushing 症候群を合併した肺小細胞癌は易感染性で化学療法の効果が期待しにくいと言われるが, 本症例は化学療法が著効した症例であった.
  • 山本 傑, 菱沼 繁道, 橘 和延, 濱田 泰伸, 原 英記, 坂谷 光則, 上田 英之助, 審良 正則, 山本 暁
    1996 年 34 巻 2 号 p. 226-230
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    びまん性肺病変を伴う von Recklinghausen 病の2症例を経験した. 2症例とも肺病変は線維化と気腫性変化を主体とするものであった. 症例2に対し, 入院後に経気管支肺生検を施行したが, 間質の線維性肥厚と腺腫性過形成を認めた. これまでの報告によれば, 本疾患に伴うびまん性肺病変は線維化と気腫性変化が主体であるとされているが, 我々の症例もそれに合致するものである.
    昭和53年以後, 当院にて von Recklinghausen 病と診断された10例中, びまん性肺病変を認めたのは上記2症例のみであり, 検査所見を提示するとともに文献学的考察を加えて報告した.
  • 伊藤 恵介, 児島 康浩, 中村 敦, 山田 保夫, 片山 良彦, 武内 俊彦
    1996 年 34 巻 2 号 p. 231-235
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は41歳, 男性. 肝生検目的で近医に入院した際, 胸部X線写真で左中肺野に結節影を指摘された. 当院で精査を行うも確定診断が得られず, 開胸肺生検を施行した. 結節は凝固壊死した肺組織よりなり, 一部に Dirofilaria immitis と思われる虫体を認め, 肺犬糸状虫症と診断した. 本症は比較的稀な疾患とされているが, 今後, 診断例が増加する可能性がある. また, 本来良性の疾患であるが, 確定診断には大多数の症例で開胸術が施行されているため, 免疫学的診断法の確立や, 胸腔鏡下生検法の導入など, より侵襲の少ない診断法の活用が期待される.
  • 森島 祐子, 佐藤 浩昭, 大津 格, 角 昌晃, 松村 壯, 二宮 浩樹, 井上 雅樹, 内田 義之, 大塚 盛男, 長谷川 鎮雄
    1996 年 34 巻 2 号 p. 236-240
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は71歳男性. 眩暈, 全身倦怠感を主訴に来院. 著明な貧血と左前縦隔腫瘤陰影および右下葉結節陰影を認め入院した. 縦隔腫瘤陰影は経皮的生検で胸腺腫, 右下葉結節陰影は経気管支鏡的擦過細胞診で非小細胞癌と診断した. 貧血は正球性正色素性貧血であり, 骨髄では赤芽球系細胞を認めず赤芽球癆と診断した. 胸腺腫切除および拡大胸腺摘除術を施行し, 同時に肺癌に対して右下葉切除術を施行した. 病理学的に胸腺腫は被膜外の脂肪組織への浸潤がみられたため放射線療法を実施した. 赤芽球癆は胸腺摘出により改善は認められなかったがステロイド併用により軽快した. 手術後約2年を経過後も, 貧血はなく, 胸腺腫, 肺癌の再発も認められていない. 胸腺腫には重症筋無力症, 赤芽球癆などの疾患の合併が高率であることが知られている. 本例の如く, 胸腺腫に肺癌を同時に合併した例は稀であるが, 胸腺腫の悪性腫瘍合併について若干の文献的考察を加え報告した.
  • 山口 哲朗, 興梠 博次, 河野 修, 桜井 宏一, 久木田 一朗, 佐藤 俊秀, 岡元 和文, 寺崎 秀則, 菅 守隆, 安藤 正幸
    1996 年 34 巻 2 号 p. 241-246
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    人工呼吸にて管理不能になり, ECLA適応となった喘息重積発作患者における経気道的治療法の意義について検討した. 症例は19歳女性. 上気道炎症状にひきつづき喘息発作出現したため, β2刺激剤, アドレナリン, アミノフィリン, コルチコステロイド等の投与を行ったが, 症状改善せず, 人工呼吸による管理を行った. その後, 縦隔気腫, 皮下気腫, 無気肺を合併し, 人工呼吸にて換気が不可能となり, しかも左気胸を合併し致死的状況となったためECLAを施行した. ECLAによる呼吸補助の下に, 全身的な薬剤投与に加えて, 経気道的治療, 特にβ2刺激薬の大量吸入および気管支洗浄を行った. これらの治療により, 呼吸機能および無気肺の改善を認め, ECLAからの離脱が86時間後に可能になった. 人工呼吸による管理が不能な致死的状況下の喘息重積発作患者の生命維持には, ECLAが有効であり, ECLA施行下では, 経気道的療法がより安全に十分に行える利点があった.
  • 田辺 潤, 米山 浩英, 小橋 吉博, 谷口 真, 肥後 敦子, 矢野 達俊, 木村 丹, 田野 吉彦, 松島 敏春
    1996 年 34 巻 2 号 p. 247-252
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    人工呼吸器からの離脱が困難で, 60日以上の長期人工呼吸を必要とした31症例の年齢, 人工呼吸開始の誘因, 生存率, 抗菌薬投与量, 死亡原因, 剖検肺の培養, 合併症等を検討した. その結果, 呼吸器疾患を基礎に有する高齢者が多く, 気道感染を誘因として急性呼吸不全に陥り, 人工呼吸を開始していたが1年後, 2年後の生存率はそれぞれ40%, 33%と予後は不良であった. 死亡原因としては, Ventilator-associated pneumonia (VAP) によるものが多く, 死亡例では生存例に比べて合併症にも重篤なものが多く, 全経過を通じて抗菌薬の投与量は多かった. 剖検肺の培養ではP. aeruginosa 次いでS.aureus が多く検出され, 吸引痰の培養結果と比較したところ, 比較的一致していた. これらの患者に対する予後の改善は困難と思われるが, 感染に対する適切な治療とVAPなど院内感染の予防が重要と思われた.
  • 塚本 東明, 佐藤 徹, 山田 敬子, 長沢 正樹
    1996 年 34 巻 2 号 p. 253-258
    発行日: 1996/02/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は56歳の男性. 人間ドックの胸部レ線で左上肺野の淡い陰影を指摘され受診. 内視鏡的には左右上葉支口中心に凹凸不整, 白色で光沢があり, 左上葉支は高度に, 右上葉支は軽度に狭窄していた. 気管支鏡下生検で確診できず. 胸部CTでは胸郭内リンパ節の腫大を認めず. 診断, 治療目的に左上葉切除を行った. 切除肺では白色の腫瘍性病変が気管支の内腔を充填するように末梢まで伸びていた. 組織像は気管支壁を中心に発生したリンパ腫で, 増生の主体はいわゆる small cleaved cell. 周辺に形質細胞の出現もあり, 腫瘍細胞は粘膜上皮内へ侵入し lymphoepithelial lesion を形成. 免疫染色ではB細胞マーカー (CD19) で陽性を示し, 軽鎖・重鎖の胞体内免疫グロブリンの単クローン性 (IgM・λ) が証明された. また, IgH遺伝子とIgL遺伝子に再構成が認められた. 以上から最終的にMALTリンパ腫の概念に合致するB細胞性悪性リンパ腫, 小細胞型, びまん性と診断した.
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