日本胸部疾患学会雑誌
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35 巻, 7 号
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  • 冨岡 真一郎, 井上 雅樹, 大津 格, 萩谷 政明, 角 昌晃, 青木 弘道, 本間 敏明, 長谷川 鎮雄
    1997 年 35 巻 7 号 p. 739-745
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    臨床的肺気腫症例の運動能力に関わる諸因子を検討する目的で, 高運動能力群 (10名), 低運動能力群 (10名) の2群について肺機能, CT肺気腫スコアー, 低運動負荷量での換気諸量とその変化率を比較した. 気道閉塞の指標である一秒量, 予測一秒量に対する割合, 気道抵抗は両群間に有意差を認めず, 機能的残気量は低運動能力群で有意な高値を示した. 20watt以下の運動時呼吸パターンの比較では, 低運動能力群で一回換気量の低下と Rapid shallow breathing index が高値を示し, さらにCT肺気腫スコアの高値を認めた. 気道閉塞の程度に差を認めない肺気腫症例では機能的残気量の高値が, 低い運動強度での浅く速い呼吸パターンにつながる可能性が示唆された. こうした運動時呼吸パターンの変化が, 換気効率の低下と呼吸仕事量の増加を招き, 肺気腫症例の運動能力低下に関わるものと考えられた.
  • 塚本 克紀, 千田 金吾, 早川 啓史, 佐藤 篤彦, 中島 康雄, 土井 修, 山口 哲生, 田口 善夫
    1997 年 35 巻 7 号 p. 746-754
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    慢性型の特発性間質性肺炎の急性増悪の臨床像および治療による予後を retrospective に検討した. 症例は, 厚生省特定疾患びまん性肺疾患調査研究班の診断に基づく32例であり, 平均年齢は65.1歳であった. 急性増悪発症前後で, 検査所見上CRP, ESR, WBC, LDH, GOTの有意な増加, PaO22PaCO2, Albの有意な低下がみられ, 胸部X線所見上, 粒状影の出現頻度, 陰影の広がりの増加がみられた. 急性増悪発症より一年後の予後から2群に分けたとき, 死亡群においては初診時年齢が有意に高齢であり, 初診時のPaCO2が有意に低値であった. 急性増悪発症時の検査所見の比較では, 生存群においてCRPの値が有意に高値であった. 治療法に関しては, 両群間に有意な差はみられなかった. 年齢, 安定期の呼吸状態, 急性増悪時の炎症反応の程度は, 治療反応性の指標になると思われた.
  • 宮本 晴子, 徳永 豊, 江川 博彌, 岡山 真史, 宮崎 こずえ, 奥原 種臣, 山木戸 道郎
    1997 年 35 巻 7 号 p. 755-760
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支喘息発作に自然縦隔気腫を合併した6症例について臨床的検討を行った. これらは平均年齢21.2歳と若年者であり, すべてにアトピーの素因, 小児喘息の既往があった. 5症例で上気道感染を契機に増悪した. 3症例で縦隔気腫, 皮下気腫が増悪傾向にあり, 皮下ドレーンを挿入し減圧したところ経過良好となった. 他の3症例は内科的加療のみで縦隔気腫は自然に消退した. 気管支喘息発作を起こした症例のうち自然縦隔気腫を合併する頻度は1.24%であった.
  • 寺本 信嗣, 松瀬 健, 長瀬 隆英, 斎藤 恵理香, 和田 裕雄, 大賀 栄次郎, 片山 弘文, 福地 義之助, 大内 尉義
    1997 年 35 巻 7 号 p. 761-765
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    遺伝子治療の Vector として用いられている2種類の DNA virus vector (Adenovirus (Ad) vector, Adeno-associated virus (AAV) vector) による培養ヒト気道上皮細胞への遺伝子導入の特徴について比較検討した. どちらのウイルスベクターも, 感染効率 multiplicity of infection (moi) 依存的に遺伝子導入の効率が増加した. また, 同一のmoiでは, ほぼ同等の遺伝子発現を認め, ヒト培養気道上皮細胞への遺伝子導入効率については Ad vector と AAV vector とで大きな差異はないと考えられた. また, ウイルスベクターの細胞への暴露時間を延長することで, どちらのウイルスベクターも遺伝子発現の増加を観察した. 以上より培養気道上皮細胞における遺伝子導入に関して Adenovirus vector と Adeno-associated virus vector との間に大きな差はないと考えられた.
  • 細谷 寿也
    1997 年 35 巻 7 号 p. 766-775
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺線維症の増悪因子, 治療抵抗性を探索する目的で実験的肺線維症にて病理組織と肺組織サイトカインmRNAの経時的変動を観察し, グルココルチコイド投与の影響を観察した. マウスブレオマイシン肺線維症を用い, 同モデルにプレドニゾロン1mg/kgを連日投与し, 3日, 7日, 14日後に肺を採取しブレオマイシン単独群, グルココルチコイド投与群の組織像を比較, 肺組織内サイトカインmRNAをRT-PCR法にて定量した. 組織所見ではグルココルチコイド投与群はブレオマイシン単独群と同程度の線維化を示し, グルココルチコイド投与の影響はみられなかった. 肺組織サイトカイン発現においては単独群ではTNFα, TGFβ, INFγ, IL-2, IL-4, IL-10 の発現は増加し, グルココルチコイド投与群ではIL-4以外のサイトカイン発現は単独群に比し有意に抑制された. とくにIL-10発現の低下はステロイド抵抗性機序の一つと考えられた.
  • 中村 敬哉, 佐藤 公彦, 原田 直子, 櫻本 稔, 宮原 亮, 前川 豊行, 福田 正悟
    1997 年 35 巻 7 号 p. 776-783
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    12歳男性が両肺野陰影, 微熱, 表在リンパ節腫大のため入院. 両肺門リンパ節腫大, 貧血 (Hb 9.9g/dl), 高免疫グロブリン血症 (IgG 5,469mg/dl) を認めたがM蛋白は陰性. 鼠径部リンパ節生検と開胸肺生検で胚中心を持つ多数のリンパ濾胞と濾胞間の成熟形質細胞の著明な浸潤を認めたが, 濾胞構造は破壊されていなかった. 免疫組織化学検査により多クローン性と確認したため悪性疾患は否定し, 無症状のため経過観察とした. 17歳に呼吸困難と出血傾向のため再入院. 両肺野陰影, 高免疫グロブリン血症 (IgG 13,900mg/dl), 貧血 (Hb 6.6g/dl) は増悪し, 血小板減少症 (2.5×104/mm3) と蛋白尿が出現. 血清 interleukin-6 は177pg/mlと高値. 気管支肺胞洗浄で多数の形質細胞を認めた. ステロイドと免疫抑制剤の投与により病状は改善した. 本例の肺病変は plasma cell interstitial pneumonia であり, multicentric Castleman's disease の1臓器病変であると考えた.
  • 吉田 良昌, 大崎 禄男, 藤下 隆, 丸山 宗治, 小林 正
    1997 年 35 巻 7 号 p. 784-789
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は56歳男性. 健診にて胸部異常陰影を指摘され精査目的で入院した. 放射状にひろがる棍棒状の陰影と, 末梢血好酸球増多, アスペルギルス抗原に対する即時型皮内反応陽性, 血清IgE高値, アスペルギルス沈降抗体陽性より喘息を伴わないアレルギー性気管支肺アスペルギルス症 (ABPA) と診断した. 気管支洗浄施行数日後, 発熱, 炎症反応高値を示し, 胸部X線写真上, ニボーを伴う硬化像を認めた. 肺炎とアレルギー反応の増悪を考え, 抗生物質, ステロイド剤, 抗真菌剤を投与した. 多量の固形粘液栓を喀出するとともに陰影は縮小し, 中心性気管支拡張を残して治癒した. 数日後, 喘息発作を生じたため, ステロイドを増量するとともに気管支拡張剤を投与した. 本例ではABPAの気管支喘息に対する従来の説明はあてはまらず, その発症には粘液栓喀出に伴うアレルギー反応と気道過敏性の亢進の関与が疑われた.
  • 片山 隆行, 秋葉 裕二, 西垣 豊, 森本 寛, 山口 修二, 藤内 智, 山崎 泰宏, 中野 均, 大崎 能伸, 菊池 健次郎
    1997 年 35 巻 7 号 p. 790-795
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は42歳男性. 平成6年7月, 突然左側胸部痛が出現し, 2日後には呼吸困難も出現したため近医を受診した. 低酸素血症と胸部X線像にて左胸水を認め, 当科を紹介された. 肺血流シンチグラム上, 両側の多発性陰影欠損像と, 胸部造影CTスキャン上, 肺動脈本幹に低吸収域を認め, 肺血栓塞栓症と診断した. 凝固・線溶系検査にてAT III活性値と抗原量の低下を, またその家族内にAT III欠乏者を確認した. 遺伝子解析の結果, AT III遺伝子の第6エクソンの2ヵ所に点突然変異を認め, 先天性AT III欠乏症と診断した. 肺血栓塞栓症とAT III欠乏症との関係について文献的考察を加えた.
  • 竹川 宏典, 高岡 和夫, 藤岡 保範
    1997 年 35 巻 7 号 p. 796-800
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    42歳男性. 健診にて胸部X線写真の異常陰影を指摘された. 胸部X線写真で左上胸部に17×12×11cm大の辺縁明瞭, 内部均一な類球形の腫瘤陰影を認めた. 胸部CTでは, 腫瘤陰影は左肺, 胸郭, 左主気管支, 食道, 胸部大動脈に接し, 内部は water density であった. 胸部MRIで腫瘤陰影は隔壁を認め, 2房性であった. 手術にて腫瘤を摘出した. 腫瘤は, 黄色の液状内容物をもち, 径8cm大と5cm大の2つの嚢胞が連続して1つの嚢胞を形成していた. 組織学的には大きい嚢胞部分には食道壁に相当する非角化型の扁平上皮を認め, 小さい嚢胞部分には気管支壁に相当する線毛円柱上皮, 軟骨を認め, 縦隔食道気管支嚢胞と診断した. 従来の報告では, 2つの腫瘤が細い共通管でつながっている形態を取っていたが本症例では1つの腫瘤から成り立っていた. 発生病理学的に貴重な症例と考えられた.
  • 金木 利通, 久保 惠嗣, 山崎 善隆, 川嶋 彰, 関口 守衛, 本田 孝行, 中塚 龍也, 広瀬 芳樹, 河野 宏, 上条 与司昌
    1997 年 35 巻 7 号 p. 801-806
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は42歳, 女性, 糖尿病の既往があるがコントロール不良であった. 発熱, 咳嗽, 呼吸困難にて受診. 右側全胸部に湿性ラ音を聴取し, 呼吸音低下を認めた. 炎症反応は亢進し, 高血糖, および低酸素血症を呈し, 胸部X線写真上, 鏡面像を伴う空洞病変, 浸潤影を右側肺野に認めた. 胸部CT像では鏡面像を伴う空洞病変の多発とエアブロンコグラムを伴う浸潤影を認め, 感染性肺嚢胞および肺炎と診断した. 抗生剤治療を開始したが治療に難渋した. このため経皮的に感染性肺嚢胞内にドレナージチューブを挿入し洗浄および抗生剤の注入を施行し, 改善した. 本例の如く壁が厚く, 気管支と交通のない感染性肺嚢胞の場合, 同部への抗生剤の移行性が不良になるため感染性肺嚢胞内の洗浄ドレナージおよび抗生剤注入が有効と考えられた.
  • 森 広安, 山田 洋, 寺師 健二, 幸山 正, 河俣 仲秋, 山口 昭彦, 有馬 直道, 田中 弘允
    1997 年 35 巻 7 号 p. 807-812
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は47歳, 男性. 平成4年3月皮膚筋炎, 間質性肺炎を発症した. 低酸素血症の進行を認め, 前医にて同年5月よりステロイド剤の投与が開始されたが単独では無効であったため, 平成5年4月より azathioprine (150mg/日) を併用したところ, 改善傾向を認めステロイド剤の減量を行っていた. 同年9月胸部X線上, 左中下肺野に辺縁明瞭な多発性結節影が出現し, 急速に増大傾向を示した. 経皮生検の結果, non-Hodgkin's lymphoma (T-cell type, diffuse, pleomorphic) の病理診断を得たため, 化学療法 (vincristine, adriamycin, prednisolone) を施行したが反応せず, 大脳にも同様と思われる病変を認め, 同年12月死亡した. 皮膚筋炎の経過中には高率に悪性腫瘍を合併するが, 悪性リンパ腫を発症する場合, そのほとんどが Hodgkin's disease であることが知られている. 本例は non-Hodgkin's lymphoma, T-cell type で, また肺原発であった点でも貴重な症例と思われたので報告した.
  • 中島 正光, 真鍋 俊明, 見手倉 久冶, 橋口 浩二, 二木 芳人, 松島 敏春
    1997 年 35 巻 7 号 p. 813-817
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    近年, 薬剤性肺炎は増加している. しかし, 全ての薬剤が薬剤性肺炎を発症させ得る可能性を持っており, さらに診断法に確実なものはなく, 診断に苦慮することは多い. 我々は既に薬剤性肺炎症例において血清KL-6が高値となり, 本症の診断に有用であることを報告している. 今回我々は小柴胡湯による薬剤性肺炎症例で血清KL-6値を経時的に追跡し得た症例を経験したので報告する. 症例は67歳, 男性で発熱, 咳嗽, 呼吸困難を主訴として入院となった. 胸部X線写真で両側に線状, 粒状, 網状陰影を認めた. 入院後症状, 胸部X線上陰影, 検査データの軽快を認め, さらに再服薬にて再発症したことより薬剤性肺炎と確定診断した. 血清KL-6値は薬剤性肺炎発症早期に高値となり, 症状, 検査データ, 胸部X線写真上陰影の軽快と共に減少し, 正常範囲内となった. 血清KL-6は薬剤性肺炎の血清マーカーとして有用と考えられた.
  • 綿屋 洋, 緒方 賢一, 諸岡 三之, 中橋 恒, 原 信之
    1997 年 35 巻 7 号 p. 818-821
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    62歳, 女性. 平成5年2月にリウマチ肺の診断を受け, 当科にて外来診療を続けていた. 平成8年6月19日高血圧のため塩酸マニジピン (カルスロット) 1日1回10mgが開始された. 1回服用後より顔面紅潮や動悸が出現していた. 6月20日より発熱, 咳嗽, 呼吸困難が出現し増強したため6月28日来院された. 胸部X線写真では全肺野にわたり網状粒状影を認め, 動脈血液ガス分析では高度な低酸素血症が認められて当科入院となった. メチルプレドニゾロンを投与し, 症状及び胸部X線写真陰影の著明な改善が認められた. 臨床経過と塩酸マニジピンに対するリンパ球刺激試験が2.6 stimulation index と陽性であったことより薬剤誘起性間質性肺炎と考えられた. 塩酸マニジピンによる薬剤誘起性間質性肺炎は検索しえた範囲では報告がなく貴重な症例と考えられた.
  • 大嶋 清宏, 遠藤 俊輔, 蘇原 泰則, 村山 史雄, 山口 勉, 布施 勝生, 石井 芳樹, 北村 諭, 久力 権, 斉藤 建
    1997 年 35 巻 7 号 p. 822-825
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は75歳, 女性. 平成7年12月心タンポナーデのため入院. 心臓超音波検査, 胸部CT, MR-CTで多量の心嚢液と一個の心嚢内腫瘤を認めた. 心膜原発腫瘍を疑いエコー下腫瘍生検を施行. 病理組織検査で, 心膜原発肉腫型中皮腫と診断し腫瘍切除・心嚢開窓術を施行した. 術後経過は良好で術後第19病日に退院. 術後局所再発により, 4ヵ月目に収縮性心膜炎のため死亡した.
    心膜中皮腫は稀な疾患で生前に確定診断を得るのは困難だが, 本例はエコー下腫瘍生検で診断し得た. 腫瘍を可及的に切除し心嚢を胸腔に開窓することにより心タンポナーデを治癒せしめ, 良好な ADL (activity of daily life) を得ながら, 延命させることができた.
  • 1997 年 35 巻 7 号 p. 826-830
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 35 巻 7 号 p. 831-833
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 35 巻 7 号 p. 834-841
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 35 巻 7 号 p. 842-844
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 35 巻 7 号 p. 845-846
    発行日: 1997/07/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 35 巻 7 号 p. e1
    発行日: 1997年
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
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