日本野生動物医学会誌
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25 巻, 4 号
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原著論文
  • 諸橋 菜々穂, 佐野 宙矢, 加藤 孝典, 豊田 英人, 中村 智昭, 竹田 正裕, 桑山 岳人, 白砂 孔明
    原稿種別: 原著論文
    2020 年 25 巻 4 号 p. 119-127
    発行日: 2020/12/24
    公開日: 2021/02/24
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     カピバラ(Hydrochoerus hydrochaeris)は南米に生息する最大の齧歯類である。カピバラの胎盤構造はヒトと類似しているという報告があり,実験動物への応用も期待できる。カピバラの計画的繁殖には繁殖生理の理解が重要だが,その情報は限られる。近年飼育現場等では,ハズバンダリートレーニング(HT)による低ストレスの採血や非侵襲的に採取可能な糞を用いた内分泌モニタリング方法の開発が進められている。本研究では,カピバラの血液および糞を用いた発情周期の特定や妊娠判定法について検討した。非妊娠個体でのHTによる採血とスメア採取を確立し,糞および血中性ステロイドホルモン濃度測定とスメア検査を行った。また,妊娠個体における糞中性ステロイドホルモン濃度測定を行った。非妊娠個体において血中プロジェステロン(P4)とエストロン3硫酸(E1S)濃度変動から明確な発情周期様の変動が3周期(平均11.7±0.9日)確認でき,血中E1S濃度変動は糞中エストラジオール(E2)濃度変動やスメアでの無核角化上皮細胞の出現と一致した。糞中E2濃度変動からも明確な周期的変動が15周期(平均8.5±0.3日)確認されたが,糞中P4濃度変動からは明確な周期性は確認できなかった。妊娠個体では,妊娠中期から出産直前における糞中P4およびE2濃度上昇が確認された。 以上から,血中P4やE1Sおよび糞中E2濃度測定とスメア検査からカピバラの発情周期が特定でき,糞中P4とE2濃度測定から妊娠判定実施の可能性が示唆された。

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