日本野生動物医学会誌
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16 巻 , 2 号
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特集論文
  • 吉川 泰弘
    2011 年 16 巻 2 号 p. 79-82
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

    21世紀に人類が克服すべき課題は,環境保全(eco-health)の問題である。これらは環境汚染の低減,地球温暖化の抑制といった課題である。また,爆発する人口の増加と食料危機の問題もある。食料の安定供給(food security:食の安全保障)の確立,貧困と飢餓の解消は差し迫った国際的な課題である。しかし,グローバリゼーションを推し進めたとしても,経済格差や文化・信仰の相違なども絡んでおり,これらの問題は容易に解消できる課題ではない。さらに,これらの課題は,相互に複合的に関連しており,結果として感染症(野生動物の感染症,家畜の感染症および動物に由来する人の感染症など)を生み出している。このような意味で,21世紀において,新興・再興感染症の統御は最も喫緊の課題であるといえる。OIEの野生動物疾病届出の戦略も,このような認識を基礎に置いた戦略・戦術である。我が国が,この体制にどのように対応していくのか? 農林水産省,厚生労働省,環境省の取り組みを例に紹介する。

  • 川端 善一郎
    2011 年 16 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     人間の環境改変が感染症の発生と拡大の原因になっているという考え方に基づき,「環境改変—感染症—人間」のつながりを解明しようとした。そのための研究の考え方と方法論と,現在までに得られた主な結果を述べた。甚大な被害が起こりにくくする手だてを見出すことにつなげるための,環境疾患予防学ともいえる学の事始めを紹介した。

  • 根上 泰子
    2011 年 16 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     近年の高病原性鳥インフルエンザなどの感染症や環境汚染物質などの非感染症が,人や家畜の健康のみならず,野生動物の健康にも影響を与えており,人間活動がこれらの問題に直接的あるいは間接的に関連している。しかし日本には野生動物の衛生に関する公的なシステムは存在しない。一方諸外国には,野生動物の衛生管理に関する,政府機関,大学,組織などの異なる組織間での連携システムおよび公的なシステムが存在している。そこで本論では,まず保全医学が生まれた背景と,日本における野生動物衛生問題の現状について述べ, 次に,歴史的,社会的,経済的観点などから,日本と,米国を中心とした諸外国の野生動物衛生管理ステムの比較を行い,日本での地域レベルでの保全医学的な連携の実践事例をあげ,最後に,日本での,人,家畜,野生動物,生態系を守る保全医学の概念に基づいた野生動物衛生管理システムへの提案を行った。

  • 中津 賞
    2011 年 16 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     大阪の一動物病院に来院する外国産野生動物について詳細に分析した。2005年9月1日から2009年8月31日までの4年間に来院した新患動物数から検討した。新患動物総数 20,987頭で,エキゾチックスは14,855頭であった。9,152頭がペット用に繁殖された動物と看做された。残りの5,703頭(27.1%)が野生由来の疑いのある動物であった。

     この調査の結果,日本では各人が好む動物を世界中から輸入し,飼育できる実態がよく現されていた。いったん輸入された鳥は原産地に送り返されることもなく,また繁殖された個体が現地に戻されて個体数の回復に寄与することも皆無であることを考えると,こうした生命が消費されていることに注目する必要がある。

     バラ苗などの輸入時には,土壌は一切持ち込みが認められないので,根は洗浄される。土壌中のあるゆる微生物群の日本への侵入を拒否している。動物は体内に多数で,複雑な,細菌をはじめとする微生物叢を保有して健康を保っている。これらの無数ともいえる生物群を同時に日本に輸入していることには無頓着であるのに驚かされる。ペットとして飼育する動物はいわゆる古典的なペット,例えば,犬,猫,鳥ではブンチョウ,セキセイインコ,ジュウシマツなどの数百年に渡ってペット化されて維持されている種が飼いやすく,ペットとして最適の動物であるので,外国産野生動物に代わってこれら古典的ペットの飼育に留めればと思う。

  • 宇根 有美
    2011 年 16 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     日本には生きた哺乳類,鳥類および爬虫類が年間約100万頭輸入されており,これらの動物のほとんどがペットとして流通している。ペットは,人と同一の居住空間で飼育されることが多く,幼児や老人など免疫システムが未発達な人との接触も少なくない。このため,これらの動物を原因とする人獣共通感染症の正確な知識を持つ必要がある。さらに,ペットを含むさまざまな動物に接する機会のある専門家は,自らの健康を損なわないためにも,最新かつ適切な感染症に関する情報を知っておく必要がある。

     ここでは,最近,国内で確認された輸入動物の人獣共通感染症を主体に実例を紹介する。

  • 鈴木 希理恵
    2011 年 16 巻 2 号 p. 111-113
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー
     外国産野生動物ペットを一般家庭で飼育する場合,捕獲による絶滅,外来生物,感染症と体内細菌群,適正な飼養,密輸と違法販売の5つの問題がある。捕獲による絶滅の背景として大規模な自然の開発があり,その副産物として野生動物ペットが大量に輸出されている。しかしこのような生息地の現状は知られていない。密輸と違法販売で規制強化と普及啓発に効果があった事例としてスローロリスがあげられる。スローロリスは日本では2000年以降許可された輸入はないが,販売されていた。2007年9月からワシントン条約で国際取引が原則禁止され,2008年1月にスローロリスの密輸販売者が逮捕される事件が報道されると,購入が控えられるようになり,2008年,2009年と密輸はなくなった。JWCSはスローロリス研究者を招き,密輸・違法販売の取締まりのための識別と押収後の対応についてのワークショップを関係者に対して行った(2009年2月)。外国産野生動物ペット問題の解決策として規制と普及啓発は効果があると思われる。そのためには獣医師・研究者による研究が必要であり,それを基盤としてNGOは規制強化の政策提言や一般への教育普及を担うことができる。
  • 山下 真
    2011 年 16 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2018/07/26
    ジャーナル フリー

     動物の角膜疾患はよくみられ,原発性,または他の眼科疾患や全身疾患から続発性として起こる。前眼部疾患を診断するためには角膜の生理や特性を知り,またできる限り角膜の検査に特化した機器を用いるのが望ましい。また獣医学領域で扱う動物種はきわめて多岐に渡るため,対象動物の性質,生活環境なども考慮しなければならない。一方仮に診断機材が揃っていたとしても全てが容易に扱える動物ではないため,その動物に応じた診断の方法を工夫しなければならない。限られた検査の中から少しでも有用な情報を獲得するための方法を各現場において創意工夫されることが望ましい。

原著論文
  • 小泉 哲郎, 野上 貞雄, 横畑 泰志
    原稿種別: 原著論文「英文」
    専門分野: 寄生虫学
    2011 年 16 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/11/23
    ジャーナル フリー
    2002年5月から2004年4月にかけて,神奈川県藤沢市の日本大学湘南キャンパスで62頭のアズマモグラ(Mogera imaizumii)を捕獲し,消化管内寄生蠕虫相を調査した。条虫類1種,Hymenolepis mogerae,線虫類4種,Ascarops mogeraProtospirura pseudomurisParastrongyloides winchesiTricholinstowia talpaeが得られ,関東地方のモグラ類の寄生蠕虫相の初報告となった。これらの優占的な線虫類2種,すなわちA. mogera およびT. talpae は,負の二項分布を伴う顕著な集中分布を示した。これらの優占的な2種の感染の有無および感染虫体数に影響する因子を,一般化線形モデルで検出した。A. mogeraでは,最適なモデルにおいて,宿主の成熟の主効果が感染の有無に,宿主の齢の主効果および宿主の齢と体重の交互作用効果が寄生虫体数に対して有意に影響していた。T. talpaeでは,最適なモデルにおいて,捕獲季節の主効果のみが,感染の有無と寄生虫体数に影響していた。これらの結果は,単独性や便所の使用のような宿主の社会・行動学的特性や,中間宿主の有無のような蠕虫の生活環上の特性によって説明された。
研究短報
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