日本野生動物医学会誌
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14 巻 , 1 号
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特集
  • 町田 香
    2009 年 14 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    我が国は,海外から家畜を含め多くの動物を輸入している。農林水産省動物検疫所は,外国から輸入した動物,畜産物等を介して家畜の伝染性疾病が国内に侵入することを防止するほか,外国に家畜の伝染性疾病を広げるおそれのない動物,畜産物等を輸出することによって,国際的信用を高め,もって我が国の畜産の振興に寄与すること,並びに狂犬病,エボラ出血熱等の動物由来感染症の侵入防止を図り,公衆衛生の向上及び公共の福祉の増進を図ることを目的として,家畜伝染病予防法,狂犬病予防法,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律並びに水産資源保護法に基づく検査等を実施している。
  • Yasuhiro YOSHIKAWA
    2009 年 14 巻 1 号 p. 7-18
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    New mission of the OIE on the international wildlife disease notification system was introduced. Main purpose of this WAHIS/Wild system is collecting and presenting the worldwide data of wildlife diseases by OIE to each member country using the WAHIS/Wild database. It is useful for control zoonoses, domestic animal infections derived from wildlife as well as maintain ecosystem and conservation of biodiversity. The basic tactics of the system which was discussed in the ad hoc group of the Working Group of Wildlife Diseases in OIE are summarized. Present situation and problems of wildlife disease notification in Japan were also described here.
  • 遠藤 秀紀
    2009 年 14 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    動物園が研究の責任を果たし続けなくてはならいないことを再確認する。動物園は,日本独自の教育と学問の歴史のなかで,学術研究から一定の距離を取らされてきた。戦前は富国強兵政策,戦後は経済発展主導の陰に押しやられ,純粋基礎科学の研究の場としての位置づけを確立できないまま推移した。戦後についていえば,敗戦を契機に自由で民主的な社会教育が法整備されてきたにもかかわらず,動物園・博物館は,冷戦を要因に理念的発展の途が閉ざされてしまった。結果的に,動物園と社会教育は往々にして土木行政や利益誘導の場にとどまり,科学的研究を進めることのできない組織となった。そしてまた大学を中心とした学術も,動物学の偏向や純粋基礎科学の貧困を黙認し,動物園を大学とは関係のない組織ととらえ,社会教育に無関心であり続けた。そしていまの行革時代に,動物園は真の研究も教育も二の次に,サービスと遊興を尺度にした乱暴な合理化の対象となっている。公務員と公教育を軽視することでリーダーシップを演出する政治によって,社会教育と動物園は理念から隔離され,営業行為・サービス業の末端部分として破壊されつつあるといえよう。他方,短期的経営追い込まれた大学・アカデミズムは,無関心から掌を返したように動物園と社会教育に表面上接近し,それを業績増殖のための都合のよい植民地として弄ぶようになっている。いま私たちには,こうした愚昧と不幸の歴史を断ち,動物園を学問と教育の中心地として繁栄させていく責任がある。
  • 野田 亜矢子
    2009 年 14 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    動物園という職場においては,多大な業務の中で,種々の標本や資料が日々溜まっていく。これらが「溜まっていく廃棄物」となるか,それとも「貯められるべき標本やデータ」となるかは,それを扱う動物園職員の「意識」によって決められる。意識を持って取り組みさえすれば「動物園職員による研究」は困難を伴うかもしれないが,決して不可能なことではない。動物園という現場は,全てが知的好奇心をくすぐるものであふれている。我々現場で働くものが,そこここに転がっているであろう貴重なサンプルを埋没させることなく科学,そして社会に還元し,動物園機能の1つである,「研究」という役割を果たしていかなくてはならない。
  • 勝俣 悦子
    2009 年 14 巻 1 号 p. 33-35
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    わが国における海獣類(鯨類)の研究は,捕鯨によって得られた鯨の生殖腺および歯や耳垢による年齢査定から生物学的な特性が明らかにされた。大型鯨類の商業捕鯨が全面禁止となった後,研究の対象は座礁・漂着した個体や飼育個体に移行し,水族館で飼育・展示されているイルカは研究にも貢献している。飼育下の海獣類では,識別された個体を用いて長期にわたる実験や観察が可能である。繁殖に関する研究では,飼育下での成果を自然界へフィードバックすることができる。調教技術を用いた感覚や認知に関する実験や研究は,自然界では困難な研究であり,飼育下の海獣の活躍の場である。
  • 楠 比呂志, 木下 こづえ, 佐々木 春菜, 荒蒔 祐輔
    2009 年 14 巻 1 号 p. 37-50
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    人間活動に起因する全球レベルでの自然改変や環境破壊により,地球史上過去に類をみない速度で,完新世の大量絶滅が進行中であり,その回避は我々人類の急務であると筆者らは考えている。そこで我々は,国内各地の動物園や水族館などと共同して,希少動物の生息域外保全を補完する目的で,それらの繁殖生理の解明とそれに基づいた自然繁殖の工夫や人工繁殖技術の開発に関する研究を展開している。本稿では,我々のこうした保全繁殖研究の内容について概説する。
原著
  • 石橋 治, 新妻 淳, 三浦 彰子, 飯塚 信二, 藤田 博己, 小倉 剛, 坂下 光洋, 我如古 創, 砂川 勝徳, 仲田 正
    2009 年 14 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    1999年1月から2003年3月までに沖縄島において捕獲されたジャワマングース2,618頭についてマダニ類の寄生状況を調査した。採取したマダニ類は1,434個体で,寄生率は19.1%であり,寄生損壊個体を除く1,317個体はミナミネズミマダニ(Ixodes granulatus),タカサゴキララマダニ(Amblyomma testudinarium),ヤマアラシチマダニ(Haemaphysalis hystricis),タカサゴチマダニ(H.formosensis)およびキチマダニ(H.flava)の3属5種であった。今回の調査から,感染症媒介能を有する可能性があるマダニ類が沖縄島のマングースに寄生していることが明らかとなり,感染症発生の予防という公衆衛生上からもマングースの制御が重要であると考えられた。
  • 木下 こづえ, 稲田 早香, 荒蒔 祐輔, 関 和也, 芦田 雅尚, 浜 夏樹, 大峡 芽, 楠 比呂志
    2009 年 14 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    飼育下の雌ユキヒョウ(Uncia uncia)と雌チーター(Acinonyx jubatus)における性行動と発情ホルモンの関係を調べる目的で,週に2〜7回の頻度で,同一日に行動観察と採糞を行った。糞中エストロゲン(E)濃度はエンザイムイムノアッセイによって測定し,ユキヒョウでは25項目の行動の回数を,チーターではRollingについてのみ回数を記録した。その結果,ユキヒョウでは,糞中E濃度との間に有意な正の相関関係が見られた行動は,Locomotion(r_s=0.4305, P<0.01),Flehmen(r_s=0.3905, P<0.01),Sniffing(r_s=0.3588, P<0.01),Rubbing(r_s=0.2988, P<0.01),Lordosis(r_s=0.2621, P<0.01),Pace(r_s=0.2335, P<0.01),Rolling(r_s=0.2285, P<0.01),Prusten(r_s=0.2216, P<0.01),Spraying(r_s=0.1876, P<0.01),Pursuing(r_s=0.1793, P<0.01),Attacking(r_s=0.1732, P<0.05)およびApproaching(rs=0.1423,P<0.05)の12項目であった。また糞中E値とこれらの行動の頻度は,共に季節的に変動し初冬から晩春にかけて高値を示した。チーターでも,糞中Eのピーク日やその直前にRollingが頻発し,両者の間には有意な正の相関関係が認められた(r_s=0.2714, P<0.05)。以上の結果から,飼育下の雌ユキヒョウと雌チーターにおいて,発情ホルモン動態と関連したこれらの行動を観察することで,適切な交尾のタイミングを予測できる可能性が示唆された。
  • 石橋 治, 新妻 淳, 須藤 健二, 小倉 剛, 砂川 勝徳, 仲田 正
    2009 年 14 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    2000年10月から2004年4月まで沖縄島において捕獲されたジャワマングース2,406頭を用い,ノミの寄生状況を調査した。ノミの寄生率は9.3%であり,採取時に逃逸した個体を除いて同定した370個体のノミは全てネコノミ(Ctenocephalides felis)であった。沖縄島のマングースには感染症媒介能を有する可能性があるノミの寄生があることが明らかとなり,感染症予防という公衆衛生の面からもマングースの制御が重要であると考えられる。
  • 尾形 光昭, 渡辺 聡史, 小川 裕子
    2009 年 14 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    飼育下マレーバクの遺伝的管理を目的に,ミトコンドリアDNAのチトクロームb遺伝子の塩基配列に基づき,飼育下マレーバクの遺伝的変異を調査した。その結果,日本国内の飼育下マレーバクからインドネシア飼育施設系統とマレー半島飼育施設系統の2つの遺伝的系統が確認された。このことからマレーバクは,同じ地域に生息する他の哺乳類と同様に,スマトラ島集団とマレー半島集団の2つ地域集団に分かれる可能性があることが示唆された。
研究短報
資料
  • 日本野生動物医学会・教育委員会, 浅川 満彦, 外平 友佳理, 皆川 智子, 野村 愛, 渡邊 有希子, 加藤 智子, 石塚 真由美
    2009 年 14 巻 1 号 p. 85-95
    発行日: 2009年
    公開日: 2018/05/04
    ジャーナル フリー
    獣医系大学において,野生動物に関してどのような教育が実施されているのかアンケート調査を実施した。1996年に行われた同様の調査の結果と比較すると,講義については多くの大学で改善が見られている。しかし,実習に関しては,人材や設備の不足から十分な教育が実施されていないことが明らかとなった。一方で,各大学からは,野生動物医学に関して,これ以上の教育体制の改善が望めないとの意見も出された。獣医学における野生動物医学の教育の現状を報告する。
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