熊本県宇土半島で外来種駆除事業の一環として2010年10月に捕殺された55頭のクリハラリス(Callosciurus erythraeus) の消化管内寄生蠕虫相を調査した。4種の線虫のみが見出され,そのうち優占的な糞線虫類,Strongyloides callosciureus は陽性率が49.1%, 寄生虫体数が2.13±0.66であり,他の3種の線虫はBrevistriata callosciuri,Capillariidae gen. sp.,Rictularia cristataで,これらの陽性率は0.18-0.55%,虫体数は3以下であった。S. callosciureus の寄生虫体数の平均/分散比および負の2項分布様式におけるk値はそれぞれ0.089および0.283であり,集中分布を示しており,後者は雄宿主では0.387,雌宿主では0.278であった。この線虫種の寄生虫体数と宿主個体の特性(性,齢,体サイズ) の関係を一般化線形モデルを用いて調べたところ,雄の宿主が雌よりも多くの線虫を擁していた。これらの雌雄差は宿主の行動学的な差異によるものとみることができた。
岐阜県内で捕獲されたホンシュウジカ63頭およびニホンイノシシ30頭の筋肉について住肉胞子虫の調査を行ったところ,シスト保有率はそれぞれ95.2%および50.0%であった。ホンシュウジカおよびニホンイノシシから得られた住肉胞子虫のブラディゾイトは,いずれも馬肉の生食による住肉胞子虫性食中毒の原因とされる毒性タンパク質に対する免疫染色で陽性を示した。ニホンイノシシの筋肉からはHepatozoon sp.も検出された。分離株の18S rDNAの系統樹解析により,ホンシュウジカ由来住肉胞子虫株は遺伝的に多様で主に5つのグループに分類され,ニホンイノシシ由来のHepatozoon sp.はタイの野生イノシシ寄生マダニ由来のHepatozoon sp.と最も近縁であった。
飼育下の雄スバールバルライチョウにおける眼窩上肉冠のサイズと赤さを目視により段階評価し,糞中テストステロン(T)含量と比較した。夏の繁殖期に向けて肉冠のサイズと色の増強がみられ、同時にテストステロン含量は5月から6月に著しく増加した。6月末にT含量の低下がみられ,肉冠は退色した。肉冠の変化は精巣活動を反映していることが示唆され,飼育下繁殖時の個体管理に役立つ指標になると考えられた。