1996年9月から1997年5月までに新潟県で捕殺されたニホンツキノワグマの雌8頭について, 卵胞内卵母細胞に含まれるタンパク質, 多糖類および脂質の組織化学的検出を行い, 卵母細胞の発育に伴う量的変化を調べた。卵母細胞の細胞質において, アクロレイン・シッフ染色陽性のタンパク質とPAS染色陽性のグリコゲン顆粒は, いずれの発育時期のものにも認められ, グリコゲン顆粒は卵胞の発育に伴って増加した。また, アルシアン青染色陽性の酸性多糖類, スダン好性脂質, ナイル青硫酸染色陽性の中性脂肪およびCiaccio法陽性の類脂質は, 原始卵胞の卵母細胞にはみられなかったが, 一次卵胞から胞状卵胞の卵母細胞に認められ, これら脂質の含量は卵胞の発育に伴って増加した。一方, 卵母細胞の透明帯は, 常にタンパク質, 中性多糖類および酸性多糖類を含んでいたが, 脂質を含んでいなかった。
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