輸液剤のアシドーシス補正剤として一般にD, L-乳酸ナトリウムが用いられているが, D-乳酸ナトリウムは生体にとっては非生理的な光学異性体であり, L体に比し代謝速度が遅く, 代謝経路も特殊であり, その有効性や乳児などにおける安全性が疑問視されている. そこでL-乳酸ナトリウムのみを含む腹膜透析液(L液)およびD体, L体を等量ずつ含む従来の腹膜透析液(D, L液)を慢性腎不全2例の腹膜透析に交互に使用し, 血中および排液中乳酸濃度, アルカリ化効果などを比較した. L液では血中DおよびL-乳酸濃度は不変であったが, D, L液では使用後血中D-乳酸が上昇し, B. E. の改善度もL液が大きい傾向にあったが, 両者の差はわずかであった. 内因性の乳酸はすべてL-乳酸であり, アシドーシス補正剤としてはL-乳酸ナトリウムが好ましいと思われるので, 今後さらに症例をかさね, 糖代謝能や肝機能障害例などで検討する必要があると思われた.
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