人工臓器
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11 巻, 6 号
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  • 葛西 洋一
    1982 年 11 巻 6 号 p. 923
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 石井 威望
    1982 年 11 巻 6 号 p. 925-928
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 川西 秀樹, 椙山 雅文, 西亀 正之, 江崎 治夫, 張 恒雄, 木村 荘助, 土谷 太郎
    1982 年 11 巻 6 号 p. 929-932
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Poiyurethaneにて固定化した多孔性粉状活性炭シート(UPC)を開発しビリルビン(Bil)に代表される蛋白結合物質の吸着にっき検討した。粉状炭はBil吸着に最適のporeを有し, しかも最も粒径の小さなもの(10~40μ)を用いた。in vitroにて粒状炭(BAC)の約14倍, Amberlite XAD-7の約6倍のBil吸着を得た。また分子量250以上の中分子量物質の吸着もBACに比べ良好な成績を示した。黄疸犬を用いた3時間の直接血液灌流(DHP)を施行し最高80%のBil除去を得た。急性肝虚血による肝不全犬に対し,UPCにて蛋白結合及び中分子量物質, BACにて小分子量物質(アミノ酸等)の除去を目的としてUPC(36g)とcoatedBAC(75g)を直列に接続したシステムにてDHPを3時間施行し, 意識改善を認めると共に安全に施行できることを確認した。
    以上の結果, 我々のUPCは入工肝補助装置として有用なものと考えられる。
  • 大坪 修, 野村 雅夫, 渡辺 俊文, 高橋 郁夫, 前田 時彦, 高井 信治, 高橋 浩, 粟田 僚一, 野口 康夫
    1982 年 11 巻 6 号 p. 933-936
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    近年活性炭による直接血液灌流(DHP)の有効性が確認されるようになってきたが, DHPに伴う血液有形成分の減少, coating剤による吸着能の低下等の問題が残されている。
    今回, 我々は新たにシリコーンコーティングを施した熱硬化性樹脂由来活性炭を開発し, 3時間のDHPによる血球成分の変化を観察した。また, in vitro法により吸着能を測定し血球成分の変化と合わせて未コート炭, PHEMAコート炭と比較した。シリコーンコート炭, PHEMAコート炭ともに未コート炭と比較してDHP後の白血球, 血小板の減少が少なかった。特にシリコーンコート炭はDHP施行時の白血球数, 血小板数の変動が少なく, DHP後の走査電顕像においても, 活性炭表面への血液有形成分の付着は非常に軽度であり, 良好な血液適合性を示した。各種アミノ酸等に対するシリコーンコート炭の吸着能は, 未コート炭とほぼ同等であり吸着能の低下は認められなかった。
  • ―アミノ酸動態を中心として―
    松下 通明, 川俣 孝, 圓谷 敏彦, 柿田 章, 越野 勇, 今 忠正, 葛西 洋一, 駒井 喬, 福井 清
    1982 年 11 巻 6 号 p. 937-940
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Acetylated chitin被覆XAD-4(HNC-X)を用いたDHPでの血中遊離アミノ酸の動態を検索した。in vitroではTAA、EAA、NEAAの吸着率は、それぞれ16%、22%、11%であった。phe、Trpは特異的に吸着され、それぞれの吸着率は59%、65%であった。in vivoではTAA、EAA、NEAAの減少率は、それぞれ31%、27%、44%であり、NEAAの滅少が著明であった。個々のアミノ酸のなかでは、尿素形成系に関与するArg、Glu、Aspが有意に低下し掲それぞれの減少率は68%、57%、50%であった。以上のことから、HNC-Xを用いたDHPでは、1) アミノ酸減少率に差異があり、in vitroにくらべin vivoで減少率が高いものが多い。2) 吸着効果の他にKrebs-Henseleit cycleなどの生体内の代謝機能に促進的な影響を及ぼすものと思われる。
  • 試作代謝補助装置の実験的研究
    葛西 真一, 及川 巌, 浅川 全一, 山口 秀則, 山本 哲, 沢 雅之, 水戸 殖郎, 丹沢 宏
    1982 年 11 巻 6 号 p. 941-944
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    肝臓の二大機能のひとつである代謝機能の補助を意図して、遊離肝細胞を代謝系のreactorとした代謝補助モジユールの試作を行つた。モジユールの概要は、肝細胞浮遊槽中にPMMA中空糸膜を張りこの膜を介して患者血液と浮遊肝細胞とで物質代謝を行わせようとするものである。In-Vitro実験でアンモニアの減少と尿素窒素およびグルコースの増加が観察されたので、ガラクトサミン投与肝障害犬およびEck犬と灌流実験を行った。中空系膜型血漿分離器で分離された血漿を試作代謝モジユールに灌流させ、6~7時間の灌流を行った。灌流中さらにNH4Cl溶液を負荷して、一般検血および血液生化学検査を施行したところ、灌流早期に減少した赤・白血球,Htはまもなぐ前値に回復し、尿素窒素, グルコース値に著変はなかつたが、アンモニア濃度は減少するのが観察された。このことは、本法による代謝補助装置開発の可能性を示唆するものである。
  • 大内 清昭, 小山 研二, 高木 靖, 浅沼 義博, 今岡 洋一, 佐藤 寿雄
    1982 年 11 巻 6 号 p. 945-948
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    PAN膜透析を施行した7例の肝不全例について臨床経過, 各種検査成績の推移を報告し, PAN膜透析の意義について検討を加えた。今回の症例は重篤な臨床症状, 肝機能障害を示すものが多く, 2例に意識改善がみられたが全例種々の合併症を併発し死亡した。意識障害発現時血漿芳香族アミノ酸(AAA)の異常高値および分岐鎖アミノ酸(BCAA)の低下を認め, BCAA/AAAモル比(MR)は平均0.69と著明に低下していた。PAN膜透析でのアミノ酸除去率は透析前濃度に相関することが示唆され, 一回の透析によるAAAの減少に伴なうMR値の上昇がみられたが,翌日の透析前にはAAAは再び増加し, 全体としてMRの改善はみられなかった。以上より, PAN膜透析はアミノ酸不均衡の是正に有利に働らくことが期待されるが, 今回の症例のように高度の肝壊死例に対してはその効果も一時的であり, 昏睡早期における継続的療法および他の肝補助装置との併用が必要となろう。
  • 草野 元, 和田 元次, 大島 宣雄
    1982 年 11 巻 6 号 p. 949-952
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体肝の持つ代謝機能に着目し, これを装置の一部として組み込むハイブリッド型肝機能補助装置の開発に関する基礎的研究を行なった。実験にはラットの肝臓をコラゲナーゼにより分解して得た遊離肝細胞を使用した。まず回分培養実験を行ない, 培地に負荷したアンモニアの濃度及び肝細胞生存率を測定した。この実験により, 肝細胞の機能を最大に生かすことのできる最適培養条件を培地中溶存酸素分圧に注目し検討した。次に, 分画分子量2万のPMMAホローファイバーを用いた小型肝機能補助装置を試作し, 先に得られた最適条件下での灌流実験により装置の性能評価を行なった。さらに装置の生体への適用を目指した場合の問題点を, 3コンパートメントモデルに基づく代謝器システムのシミュレーションにより検討した。
  • 葛西 洋一
    1982 年 11 巻 6 号 p. 953
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 須加 尾政一, 富永 直樹, 伊藤 由雄, 笠井 俊二, 赤池 敏宏
    1982 年 11 巻 6 号 p. 954-957
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高分子材料がフィブリノゲンーフィブリン転換過程に関与する現象を改良マイクロスフィアカラム法、円偏光二色性・紫外吸収スペクトル併用法を用いて分子レベルで解析した。高分子材料にフィブリノゲンもしくはフィブリンを吸着させると、材料によりタンパク質の吸脱着挙動が異なることが明らかになった。材料に吸着したフィブリノゲンのコンポメーションは大幅に破壊されて論り、転換をしながら材料に吸着したフイブリノゲン・フイブリンのほうがよりNativeに近いコンポメーションを保っていた。また、高分子電解質共存下で転換反応を行なうと転換過程に伴うフィブリン凝集速度が遅くなり、反応進行に伴うコンポメーション変化も異なる挙動をとることが判った。これらのことより、フイブリノゲンーフイブリン転換反応系に高分子材料を関与させることにより、その凝集速度ならびに、繊維性タンパク分子の吸脱着挙動等を制御するための基礎的知見を得た。
  • ―臨床応用への可能性―
    杉立 彰夫, 阪本 泉, 高木 邦彦
    1982 年 11 巻 6 号 p. 958-961
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体内のfibrinogenは, thrombin及び血液凝固因子のFactor XIII (FXIII)の作用でinsoluble fibrinに変化する. 局所的に, insoluble fiiorinの形成を促進させる材料を開発する目的で, 組織吸収性gelatin sponge, 並びに手術用縫合糸を夫々担体として, FXIII及びthrombinを固定化した。
    固定化spongeは, その特性を利用して, 肝癌, 進行性乳癌などに対するtranscatheter embolizationの塞栓物質として臨床使用した. いずれの症例も, 目的とした血管の閉塞状態は良好で, その効果も満足できるものであった. 固定化縫合糸については, 局所的fibrin形成能を, in vivoの面から観察した. 即ち, 本材料をラットの腹壁筋層内に埋入し, 一定期間の後に, その抜糸に要する力, “Extraction-force”を測定すると共に, 局所のhydroxyproline量の測定を行った. いずれの結果も, 固定化材料周囲には多量のfibrin形成がおこり, 組織適合性が良好であることが証明された.
  • ―その術式と安全性―
    中尾 昭公, 堀沢 増雅, 末永 昌宏, 山本 隆男, 近藤 達平, 川瀬 静男, 長岡 昭二, 森 有一
    1982 年 11 巻 6 号 p. 962-965
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    雑種成犬5頭を用い, 急性門脈遮断時の血液凝固線溶系変化について測定し検討した。また親水性ヘパリン化材料(東レ, H-RSD)からバイパス用カテーテルを試作し, 門脈遮断と同時に門脈血をカテーテルを経由して大腿静脈ヘバイパスした犬5頭についても同様の測定を施行し比較検討した。その結果, 急性門脈遮断時には門脈血の急激なうっ血によって内因性ならびに外因性凝固亢進が門脈血中で早期に惹起され, 門脈結紮後10分で門脈血中SDICが発生し, 平均105分で5頭すべて死亡した。一方門脈血をカテーテルを経由して大腿静脈ヘバイパスした犬は4時間後も5頭すべて元気に生存し, 血液凝固線溶学的にも有意な変動を認めなかった。また使用後のカテーテル内面には血栓形成は認められず, 門脈遮断を時間の制限なく安全に施行できる術式が確立された。この術式は肝胆道系手術等, 臨床において幅広くその応用が期待できる。
  • 野一色 泰晴, 宮田 暉夫
    1982 年 11 巻 6 号 p. 966-968
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体材料にヘパリンを固定化することによって抗血栓性を賦与する一方法を考案した。生体材料特にコラーゲンを主体とする材料に対し, 最初に硫酸プロタミンをグルタールアルデヒドを用いて架橋固定する。次いで酸性領域においてプロタミンの固定された材料をヘパリン溶液内に浸潰すると, プロタミンとへパリンは強くイオン結合し, 結果的には材料にヘパリンを固定化することができる。この方法はプロタミンのもつ強い塩基性を応用したものであって, プロタミンを架橋, 固定できる材料であればどのような材料に対してでもヘパリン化可能である。固定後のヘパリンは固定されたプロタミンの分解吸収によって, あるいは生体内の電解質雰囲気下において徐々に解離し, その間材料の抗血性を保つ。
  • 今井 庸二
    1982 年 11 巻 6 号 p. 969
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 森 有一, 長岡 昭二, 滝内 秀文, 丹沢 宏, 西海 四郎
    1982 年 11 巻 6 号 p. 971-974
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高分子の排除体積効果を利用して血液成分の付着を抑制する材料の開発を目的とした。種々の鎖長のポリエチレンオキサイド(PEO)鎖を側鎖として有するメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(MnG, EO重合度(n)=9, 23, 100)をポリ塩化ビニル(PVC)に光グラフトすることによりPVC-タ-MnGポリマーを合成した。血液成分の付着は上記ポリマーを内面にコーティングしたPVCチニーブを家兎の頸動静脈間に挿入した後, 付着血液成分量をアミノ酸分析により定量すると同時に付着血液成分のモーホロジーを走査電顕により観察した。PEO鎖長が長くなるにしたがって血液成分の付着は著しく減少し, 柔軟性および親水性に富むPEO鎖の排除体積効果により血液成分の材料表面への吸着が顕著に抑制されることがわかった。
  • 富永 直樹, 西沢 真治, 須加尾 政一, 赤池 敏宏
    1982 年 11 巻 6 号 p. 975-978
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    細胞を一成分とするハイブリッド型医用材料を開発するにあたって、細胞の粘着、増殖、活性化を制御することが重要なポイントとなる。本報告では、細胞増殖のよいマトリックス材料であるフィブリンに着目し、種々の人工材料上にフィブリンを形成させ、その表面上でのマウス線維芽細胞(L細胞)の粘着と増殖を検討した。また種々の材料上に形成したフィブリン線維を走査型電子顕微鏡(SEM)によって解析した。その結果、材料表面に吸着したフィブリン(フィブリノゲン)と材料表面に形成したフィブリン線維では細胞の応答(粘着・増殖)が異表なることがわかった。また疎水的なポリスチレンと親水的なガラス表面上に形成したフィブリンに対する細胞の応答が異なっていたことより、材料の性質の違いがフィブリンの構造を変化させることが示唆された。またスルホン化ポリスチレン表面上に形成したフィブリン線維のSEM観察は、それを支持するものであった。
  • 前田 瑞夫, 木村 昌敏, 井上 祥平, 片岡 一則, 岡野 光夫, 桜井 靖久
    1982 年 11 巻 6 号 p. 979-982
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    リンパ球, B細胞とT細胞の分離を目的とし, タンパク質モデルとしての合成ポリペプチドを一成分とする多相系材料を合成して, 両者の分離能を, ポリペプチドの立体構造ならびにポリペプチド集合体のミクロドメイン構造に着目して解析した。その結果, 主に右巻きα-ヘリックス構造をとるポリ(γ-ベンジル-L-グルタメート)(PBLG)において, T細胞の粘着性に対するB細胞の粘着性, すなわちB細胞の選択性が1.6倍という値を得た。不規則構造のPBG(DL)では選択性は低下した。一方, ミクロドメイン構造を有するPBLG-ポリスチレングラフトコポリマーを用いると, B細胞に対する選択性は向上し, T細胞の2.2倍という値を得た。合成ポリペプチドを一成分とする多相系材料を用いることにより, 仔牛血清その他のタンパク質を共存させることなしに, リンパ球B・T両細胞を分離・精製しうる可能性が示唆された。
  • ―肋軟骨との反応について―
    加藤 弘文, 中村 達雄, 水野 浩, 松延 政一, 田村 康一, 渡部 智, 清水 慶彦, 寺松 孝
    1982 年 11 巻 6 号 p. 983-986
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    アルミナセラミックス人工骨と肋軟骨との反応を雑犬にて経時的に組織学的・力学的評価を行い、次の結果を得た。
    (1) セラミックスでは組織・材料間の接着強度は8週まで著しく増強し、その後は安定し増加しない。ステンレスではいつれの時期においてもその強度は弱く約1/4~1/8である。
    (2) 軟骨の組織治癒機転は活発に働き、ステンレスでは異物反応をみるが、セラミックスでは炎症、異物反応の相を経ずに線維芽細胞から線維組織を形成し、酸性ムコ多糖を分泌し組織-材料の相互反応を温和にし、高度な親和性を保持し、軟骨組織と結合することが8週で完成する。
    (3) 走査電顕でも8週以後セラミックス表面に付着する軟骨組織が増して強固な結合、高度な親和性を示す。ステンレスでは付着細胞・組織は乏しい。
    (4) アルミナセラミックスは骨と同様、肋軟骨とも高い親和性を保持する。
  • 林 紘三郎
    1982 年 11 巻 6 号 p. 987
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • ―長期応用時の生体適合性について―
    七里 元亮, 河盛 隆造, 鮴谷 佳和, 山崎 義光, 伯井 信美, 八木 稔人, 笹井 智令, 阿部 裕
    1982 年 11 巻 6 号 p. 988-991
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    著者らの開発した微小針型ブドウ糖センサーを組み込んだ携帯型人工膵島により膵摘糖尿病犬の7日間にわたる血糖制御に成功した。今回, 長期臨床応用時に問題となるブドウ糖センサー生体内留置時の活性の変化, センサーからの酵素漏出の有無について検討した。
    ブドウ糖酸化酵素をグルタルアルデヒドにより固定化したブドウ糖センサーは7日間にわたり安定した出力を示し, センサーからの酵素漏出は測定感度以下であった。ブドウ糖センサー皮下組織内留置時, 経日的に出力変動は大となるが, 3日間は安定した出力を認めた。この際, センサー表面の走査電顕所見は軽度の血液成分の付着をみるにすぎなかった。これらの結果は, 微小針型ブドウ糖センサーは生体適合性に優れ, このセンサーを組み込んだ携帯型人工膵島により血糖値を長期にわたり制御しうる可能性を示唆した。
  • 池田 章一郎, 沢田 雄治, 箕野 公規, 石田 睦, 伊藤 要, 市川 健次, 湯川 孝雄, 市橋 秀仁, 近藤 達平
    1982 年 11 巻 6 号 p. 992-995
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工膵臓用のグルコースセンサーの応答特性及び寿命を改良するために, 新たな方法で二, 三のグルコース制限透過膜及び固定化酵素膜を調製し, センサーを構成しin vitro試験で以下の結論を得た. i) センサーの濃度応答の直線性はグルコース制限透過膜の特性と固定化酵素膜の活性に大いに依存する. ii) 制限透過膜としてのアセチルセルロース膜は調製条件により任意に透過能を制御できる点等, 良好な性質を備えている. iii) AMF CUNO社製ナイロンフィルターを担体に用いた固定化酵素膜は高活性であり, アセチルセルロース膜と組合わせて, 応答特性の良好な長寿命のセンサーを構成できる.
  • ―装着部位に関して―
    中野 博重, 瀬川 雅数, 仲川 恵三, 中島 祥介, 白鳥 常男
    1982 年 11 巻 6 号 p. 996-999
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Hamster膵ラ氏島を封入したHybrid型人工膵(半人工膵)を, 膵全摘犬の大腿動・静脈間(大循環系), および大腿動脈・門脈間(門脈系)に装着し, 膵内分泌機能におよぼす影響について比較検討した。半人工膵を膵全摘犬の大循環系に装着した場合, 血糖コントロールに必要な膵ラ氏島数は10000個であった。門脈系に装着した場合, 10000個の膵ラ氏島数では血糖をコントロールすることはできなかったが, 膵ラ氏島数を14000個に増量すると良好な血糖コントロールを得ることが可能であった。
    10000個の膵ラ氏島を封入した半人工膵を大循環系に装着した場合と, 14000個封入半人工膵を門脈系に装着した場合を比較すると, 血糖値に関しては, 装着前の高血糖から, 装着後正常血糖に達するまで, 有意の差を認めなかった。一方, 血清IRI値に関しては, 半人工膵を門脈系に装着した場合よりも, 大循環系に装着した場合の方が高い傾向を示した。
  • Y. ARAKI, S. KAJIYAMA, Yoshio NAKAMURA, M. KONDO
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1000-1003
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ラット膵を機械的に細切りした後, Coliagenase及びDNA aseで更に細くし, これをalginate, polylysine及びpolyethyleneimineから構成される半透膜でmicrocapsule化し, 49日間培養を行なった。培養期間中培養液中のブドウ糖濃度に反応して十分なインスリン分泌が認められた。更にこの期間中にPerifusion testをこれ等に行ない高濃度ブドウ糖に対し十分なインスリン分泌増加が認められ同時に, 低濃度ブドウ糖に対しては, 速やかなインスリン分泌低下が認められた。しかしながらmicrocapsule化された膵細小組織とmicrocapsule化されない組織の間ではインスリン分泌反応性に有意な差は認められなかった。microcapsule化した膵単離ラ氏島移植実験において, 移植免疫をある程度克服出来たという報告があり, これ等から膵ラ氏島にまで単離せず酵素的に細小片にした膵組織を用いたmicrocapsuleが今後糖尿病治療のための膵移植時に起こる拒絶反応回避に有用であろうと考えられる。
  • 七里 元亮
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1004
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 村瀬 允也, 阿部 稔雄, 鷲津 卓弥, 田中 稔, 川村 光生, 竹内 栄二, 柿原 理一郎, 弥政 洋太郎, 石原 智嘉, 宮田 義弥, ...
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1005-1008
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生理的ペーシングを行った47症例, 57回の手術時心内心房電位について検討を加えた。1例の心外膜電極を除いて全てJ型心内膜電極を使用した。心房電位は洞不全症候群で2.1±1.0mV (mean±SD, n=28), 房室ブロック4.0±1.1mV (n=12)で洞不全症候群で低かった(p<0.001)。手術時に洞性P波が誘発できない症例の心房電位は著明に低くセンシングに問題を残している。単極は双極に比して低い傾向があり, 逆行性電位は, 洞性電位に比して低い傾向がある。
    体表面心電図I, II, III誘導のP波電位の和は洞不全症候群では0.3±0.11mV (n=35), 房室ブロック0.46±0.11mV (n=11)で有意差を認める(P<0.001)。
    心内心房電位と体表面心電図のP波電位の和(I+II+III)の間にはY=022+0.05X, r=0.532と比較的良い相関がえられた。
    洞不全症候群では一般に心房電位が低く, P波のセンシングには充分注意する必要がある。
  • 久米 弘洋, 松井 道彦, 丸山 浩一, 鈴木 茂, 杉田 洋一, 小机 敏昭, 佐々木 寿彦, 新井 達太
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1009-1012
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    昭和51年1月より, リチウム電池ペースメーカーを使用し148個を植込んだが, 電池消耗の為最近これらの交換を行う症例が増えつつある。交換時の指標として, 従来からminitestorを用い, 機種によって定められたPuls rateの減少及びPuls巾の延長が来た時に電池の交換を行って来た。
    しかし最近2例にRateの減少を見ずに突然電池消耗によるpacing failureを経験した。この為オシロスコープにより刺激波形を分析し, 電極間抵抗を測定することにより電池消耗の程度を予知している。この際電極間抵抗測定を簡略化する為に, コンデンサー静電容量により各機種のグラフを作成しペースメーカーの経過観察に役立てている。
    又最近ではteremetry機構を有するペースメーカーを使用することにより電池内部抵抗を知り, 電池の消耗状態を推測し, 交換時期を誤まらない様に心掛けている。
  • 会田 博, 渡辺 和朗, 安西 吉行, 坂本 滋, 早瀬 修平, 中島 昌道, 岩波 洋, 入山 正, 山口 繁, 清水 健
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1013-1016
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    単極型demandペースメーカの植え込み後, 経皮的通電神経刺激装置(TENS)を用いてelectromagnetic interference (EMI)作動条件を検討した。TENS電極とPM電極ベクトルが平行し接近しているほどTENS刺激がペースメーカーに入力しやすくEMIを起こすといえ, EMI発生のためspike on Tも認めた。TENS刺激時の心内電位, その周波数分析上でも, TENS電極とペースメーカー電極ベクトルが平行であれば, 高電位で低周波数成分を有しており, ペースメーカーへ入力しやすいといえる。TENS電極がgenerator上にあると, TENS電極とペースメーカー電極ベクトルの方向に関係なくEMIが生じgenerator上では使用すべきではないといえる。EMI発生要因として, TENS刺激の他にそれによって誘発された高電位の筋電位の要素も考えられ, どちらが主体かはさらに検討を加える必要がある。
  • 中村 昭光, 神吉 豊, 岩本 恒典, 門脇 政治, 佐藤 伸一, 北浦 一弘, 嶋田 秀逸, 鄭 正勝, 和田 行雄, 佐々木 義孝, 白 ...
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1017-1020
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Multiprogrammable pulse generatorの2機種(Programalith 221, 223, 82個, Cyber Lith 253, 53個)計135個を使用した。それらのコード分類は, VVIM 116個, AAIM 11個, DVIM 8個である。VVIMでは, rate 63回, output 16回, pulse width 18回, sensitivity 4回, hysteresis 7回のprogramが実行された。AAIMでは, rate 6回, pulse width 6回, sensitivity 8回, refractory period 1回が実行され, pulse width, sensitivityの頻度が高いのが特徴である。 DVI Mでは, rate 2回, sensitivity 1回が実行された。 Rate, refractory periodの仕様は, ほぼ満足しうるが, output, pulse width, sensitivityには拡張を必要とする部分がある。hysteresisについては, 120 msecで十分と考えられる。
  • 鷲津 卓爾
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1021
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 井上 仁, 羽田 一博, 三浦 純一, 菅野 恵, 薄場 彰, 岩谷 文夫, 星野 俊一, 元木 良一, 本多 憲児
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1022-1025
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    いわゆる人工血液(Fluosol-DA, 以下FDA)を用いて実験ならびに臨床的研究を行ない, 次の結論を得た。
    1) FDAは酸素運搬能にすぐれ, 臨床に応用し得る。
    2)稀な血液型症例や輸血拒否などの輸血できにくい大量出血例が良い適応となる。
    3) FDAはPaO2が高いほど, またHct. が低い時ほど有効であった。
    4) FDAの安全投与限界は10g/kgと考えられた。
    5)体外循環充填液としての応用の可能性もあるが, 牛において肺血管壁の肥厚が認められており, その臨床応用については慎重であらねばならない。
    6)屍体内臓器灌流保存時の灌流液として有効であり, 臨床応用可能であった。
  • 界面活性剤の影響
    X.-X. ZHENG, 佐藤 正明, 大島 宣雄
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1026-1029
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    人工血液としてのPFC乳剤(Fluosol-43)の微小循環系に及ぼす影響を既報にひきつづいて検討し, 細動脈中の血流速度の変化および乳剤中に含まれる界面活性物質(Pluronic F-68)の影響を検討した。実験はラット腸間膜を生体顕微鏡下に観察し, 乳剤あるいは界面活性物質投与前後の微小血管内血流速度と白血球の血管壁粘着能を測定した。血流の計測はビデオ画像処理法および新たに試作したdual slit改良法によった。乳剤の投与は毛細血管内の血流を著しく増加させたが, 細動脈中の血流増加は軽度であった。Pluronic F-68の投与も同様に毛細血管内の血流速度を増加させ, また白血球の血管壁粘着性の亢進を示した。in vitroに測定した全血液粘度は, 乳剤の投与により著減したが, 界面活性物質単独では粘性特性の有意な変化はみられなかった。これらのことから, 微小血管内の血流の挙動には何らかの界面現象が関与する可能性が示唆された。
  • 遠藤 幸男, 羽田 一博, 井上 仁, 三浦 純一, 寺西 寧, 今野 修, 岩谷 文夫, 元木 良一, 本多 憲児
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1030-1033
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    単離臓器の低温灌流保存においても臓器のViabilityの維持にPFCsが有効でないかと考え, 雑種成犬14頭を用い, 片腎を摘出し, 灌流液としてPFCs (FC群11頭)とSilicagel Plasma (SP群3頭)とを用いて, 低温灌流保存実験を行なった。腎機能の発現に関しては, 48時間保存までは両群間に差はなかった。灌流液の酵素学的変化も48時間までは両群間に差はなかった。摘出前と自家移植後の腎血管抵抗係数の変化をみるとFC群がSP群より低値であった。FC群の酸素運搬能は30μl/min/g・tissueでSP群は20μl/min/g・tissueであった。しかし低温灌流腎の酸素消費量は, 両群において4.0μl/min/g・tissue以下であり, 灌流時間とともに減少し, 48時間では1.0μl/min/g・tissue以下であった。即ち, 摘出腎の低温灌流保存においてはPFCsの酸素運搬能が, 腎のViabilityの維持に必要不可欠のものとは考えられなかった。
  • 八田 健, 志田 力, 宮下 勝, 申村 和夫
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1034-1038
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞による心室中隔穿孔後の急性期を乗り切り, 安定した慢性期に根治手術を行うための一手段として, バルーンカテーテルを用いた心室中隔穿孔(以下VSRと略す)の一時的閉塞法を考案した。まず実験的にVSRによる血行動態の変化を調べ, さらにバルーンカテーテルを用いたVSR閉塞法を検討したところ, 9例にVSR閉塞を試み, 7例で成功した。失敗例は手技の未熟によりカテーテルを左室まで進ませえなかった1例と, バルーンの直径がVSRの直径より小さかった1例であった。カテーテルシースの大きさ, 型を数種用いることにより, バルーンカテーテルの左室への挿入は容易, 確実となり, カテーテルシースの挿入からVSR閉塞までの所要時間は平均3分であった。臨床例に応用しうるまでにはカテーテルシースの造形, バルーンカテーテルの材質, 形状の検討,さらに耐久性などの問題を解決することが必要である。
  • 稲垣 豊, 山下 喜弘, 加納 英行, 岸本 秀雄, 石榑 秀勝, 池田 隆, 笠原 正孝
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1039-1044
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    肝静脈造影用double-balloon catheter (DBC)の有用性については, すでに報告したが, 人においては右心房と肝静脈の間が2.5cm膨前後しかなく, この間で上のballoonで正確に下大静脈を遮断する事は難かしい。DBCでう'まくすべての肝静脈が造影されない症例および門脈圧を測定する必要のある患者の為に, このたび新たに2-lumen, single balloon catheter (2L-SBC)を開発した。shaft部及びballoon部ともsilicone rubberであるがguide wireとの滑りを良くする為にpolyethylene管を入れたところ, 事前に熱処理で先端部を屈曲する事が可能となり,すべての肝静脈へcatheterの插入が極めて容易となった。門脈圧が測定出来るとともに右肝静脈が下大静脈より始め1本で出で後に枝分れする最も太いtypeの肝静脈本幹でも2L-SBCで完全閉塞出来るので, すべての肝静脈が造影可能となり, 極めて鮮明な造影像が得られるとともに安全な肝静脈造影法と思われた。
  • 元木 良一
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1045
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 屋ケ田 和彦, 川口 博昌, 内間 高夫, 渡辺 俊文, 山田 豊, 柳沢 孝嘉, 大坪 修
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1046-1049
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高Na透析における最適Na濃度は, コンパートメントモデル等により, ある程度理論的に求めることも可能である。しかし, 実際には, 患者の個体差, 透析中の食事や飲水,あるいは気分的なものまで影響するため, 何らかの形で生体の情報をフィードバックしてやることが必要であると思われる。
    我々は, ICU高Na透析システムを用いて, 除水速度に対して, コンパートメントモデルあるいは, 過去の経験をもとに透析液Na濃度を設定し, その上で, 患者の血圧変動に合わせて透析液Na濃度を変更することによって, 安定な透析を行うことができた。
    現在, これらの透析液Na濃度の制御を64KBのマイクロコンピューターを用いて, 自動的に行わせることを計画中であり, 将来は, さらに血液ガス, pH, BUN等の生化学データーをもフィールドバックさせ, 補液, 投薬, 血流量の制御等を自動的に行うシステムの開発を目指したいと思う。
  • 小沢 喜久夫, 板垣 一郎, 鶴三 千男, 酒井 清孝, 南部 正人, 酒井 糾, 樋口 順三
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1050-1053
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高Na+透析液・補液を用いた治療が現在広く臨床応用されているが、そのNa+濃度の決定は試行錯誤に依る所が大きい。そこで我々は水移動を考慮したコンパートメントモデルを考案し、その計算結果より次の知見を得た。(1) Cell wash法と通常透析を比較した場合、終了時の水・溶質の移動に差異はない。(2) 透析終了後の水移動は僅かであり、約30分で完了する。(3) 体内の水移動はNa+のみではなく、その他の物質(others)をも含めた総浸透圧により起こる。(4) コンパートメントモデルの計算結果と臨床データとは3%以内の誤差で良い一致を示した。以上の点より、我々の考案したモデルは充分臨床応用が可能である。さらに本モデルを無次元式を用いて簡便化した。この無次元式は1%の誤差で臨床データと一致した。また我々は、維持透析患者には長期的にみて治療1回当りのNa+除去量が重要であるという観点から、治療1回当りのNa+除去量を指標とした、至適透析液Na+濃度の決定法を考案した。
  • 田中 秀実, 峰島 三千男, 酒井 清孝, 藤島 悟, 西本 裕美子, 中西 光, 井上 政昭
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1054-1057
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究では、まずアセテートやバィカーボネートといつたアルカリ化剤を用いた場合の体液pH変動機構を定量的に取り扱う為に、透析中の血中アセテート濃度、バイカーボネート濃度、CO2 gas濃度及びpHの変動をシミユレートするプールモデルを作成した。その結果、アセテート透析では血中CO2 gas濃度の低下がpHの改善に大きく寄与していることが分つた。一方バィカーボネート透析ではカルシウム塩の沈澱を生成して、装置への悪影響及び体内からのカルシウムイオンの流出といつた問題が予測された。また以上の結果にもとづき、イントレランスの発症や、沈澱の生成を起こすことなく透析治療を行なうには、アセテートとバイカーボネートを同時に使用することが好ましいことが分つた。そこで各患者の代謝能力に応じて至適透析液組成を決定した。
  • 川村 孝, 安野 尚史, 上松 治儀, 清水 武, 大石 洋, 山本 富男, 杉山 敏, 稲垣 豊, 天野 泉
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1058-1060
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液透析中の循環動態を検討するため, 慢性腎不全による長期透析患者6名を対象とし, そのそれぞれにacetateまたはbicarbonateを含む透析液を用いて透析を行い, SWAN-GANZ thermodilution catheterを挿入して心血行動態的検索を行った。なお, 循環血漿量の変化による影響を除くため, isovolumetric hemodialysisとした。acetate透析では, 透析中, 末梢血管抵抗の減少と動脈圧の低下が認められた。また, 心拍出量の増加および肺動脈楔入圧の低下傾向, 左室仕事量の減少がみられた。一方, bicarbonate透析では, 各指標の変動はわずかであった。またacetate透析時, Noradrenaline投与により低下した末梢血管抵抗の回復と共に血圧低下の改善がみられたが, Dopamineではその改善にやや多量を要し, 心拍数増加や頭痛等の自覚症状の出現も認められた。以上より, acetate透析時の血圧低下にはNoradrenalineの使用またはbicarbonate透析が有用と思われた。
  • 五十嵐 健, 竹沢 真吾, 峰島 三千男, 酒井 清孝, 和田 孝雄, 中西 光, 井上 政昭
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1061-1064
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    透析によって除去される溶質は、すべて透析液中に廃葉される。したがって、透析液濃度を経時的に測定することにより溶質除去量を知ることができる。また、プールモデルを適用することにより、透析液濃度変化から体内血中濃度変化を推算することができる。そこでON LINEで透析尿素濃度を測定し、血中尿素濃度を推算するシステムを開発すべく、水溶液・牛血を用いた透析実験及び臨床試験を行なったところ、各々高成績が得られた。本装置は、全自動透析システムWADIC (WASEDA Automatic Dialysis Controller)第一段階であり、治療の評価を行なう上で最も重要なセンサー部を構成している。血液を一滴もサンプルすることなく血中尿素濃度をREAL TIMEで推定できるため、治療中に初期・終了時尿素濃度、クリアランス、溶質総除去量なども推算し、同時に表示させることが可能である。
  • 鄭 大基, 金沢 伊代子, 小田 治, 斉藤 明, 太田 和宏
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1065-1068
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    4名のCAPD患者の透析排液の中, 高分子物質をSDS電気泳動, 免疫拡散法, 高速液体クロマトグラフィーによって検討した。患者はいずれもHD治療からCAPD治療移行1ケ月後付近から, Ht値の改善がみられた。SDS電気泳動で透析排液中の各種の低分子タンパク質が漏出されていることを認めた。13種類のタンパク質を定量し、1週間当りのタンパク質漏出量を求めた。総タンパク質量41.8±5.6g, アルブミン19.9土5.0g, レチノールバインディングプロティン177.8±38.mg, β2-ミクログロブリン229.5土67.5mgの漏出量であった。中分子量物質の高速液体クロマトグラムや低分子タンパク質の漏出量から生体腹としての腹膜の性質を直接示唆しなかったが, 高値にある腎不全血中の低分子タンパク質を正常値に近づける治療法はいくつかの臨床症状の改善に有効であると思われた。
  • 松井 則明
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1069
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 青野 信卓, 梅津 光生, 妙中 義之, 田中 隆, 高野 久輝, 阿久津 哲造, 鬼頭 義次, 富野 哲夫, 康 義治, 藤田 毅, 曲直 ...
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1070-1074
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工肺を移動させて得られる血液拍動流と凹型に配列されている人工膜との間に生じる2次的な渦流によってガス交換能が高められるインターパルス膜型肺のガス交換能特性を検定した。血流量の増加は, 酸素添加能・炭酸ガス排出能のいずれも低下させたが, その程度は小さかった。酸素血流量比の増加は, 酸素添加能, 炭酸ガス排出能のいずれも増加させたが, 前者は0.5で, 後者は3.0で一定値となった。又, 拍動数の増加は, 酸素添加能, 炭酸ガス排出能のいずれも増加させた。インターパルス膜型肺は, 他の膜型肺に比較し優れたガス交換能特性を示した。
  • 板岡 俊成, 貝塚 秀樹, 毛井 純一, 中島 秀嗣, 河村 剛史, 横山 正義, 和田 寿郎, 武田 順一, 井下 俊, 渡辺 廣行
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1075-1078
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ガス交換能を有する内径205μ、内厚44μのmicroporous polysulfone Hollow Fiberを使用し、有効膜面積1.1m2のモジュールの人工肺を作成し動物実験にてガス交換能ならびに圧力損失を検討した。
    Gas Flow Ratio 1.0のとき、B1500mL/minで酸素供給能95.6±3.83mL/min/m2、二酸化炭素排泄能63.7L/min/m2と良好な結果を得た。しかし、圧力損失に関しては115mmHgと高値を示した。
  • 城山 友広, 赤松 映明, 福増 広幸, 湯浅 貞雄
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1079-1082
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    A closed type pulsatile extracorporeal circuit has been developed instead of conventional perfusion by a roller pump. This is composed of alternate pump ing double chambers (right heart), a membrane oxygenator, a heat exchanger and a pulsatile pumping chamber (left heart). The possible short tubing aims at the small priming volume. Hydrodynamic charactaristics of each element and of the whole system combined with a MOCK circulation were investigated. Bypassing between the right reservoir and the left reservoir proved to reduce the interaction between the right heart system and the left. In the right heart system, the regurgitation by heart valves and the excess rigidity of the hollow fiber oxygenator turn out to be improved.
  • 岡田 忠彦, 五味 昭彦, 岡村 吉隆, 増田 宏, 服部 淳
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1083-1087
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    体外循環を自動化する試みは以前から多くあるが, 今回我々は体外循環に伴う諸因子の変動を正確に記録する目的で, 小型マイコンによる自動記録機能を持つ体外循環装置を試作した. この体外循環装置には, 心筋保護の簡素化を目的とした心筋保護液注入用ポンプ及び局所冷却水灌流用ポンプを合わせ持たせた. 自動記録装置は, 毎分の送血量, 送・脱血温, 動・静脈圧, 心筋温, 直腸温の変化を記憶させ5分毎の変化を自動的に記録させ, 体外循環中の諸操作はその都度入力することとした. その結果, 体外循環中の記録はもとより, 終了後, 最終稀釈率, 水分バランス及び血液バランスなどを計算, 出力させることができた. この記録をもとに, 今後の適正体外循環基準を見出し, 現在の体外循環の問題点を把握する事に役立て, 自動化へと進めることを考えている。
  • 福増 廣幸
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1088
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 松井 道彦, 杉田 洋一, 森田 紀代造, 鈴木 和彦, 水野 朝敏, 新井 達太
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1089-1092
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    平均0.3μのmicroporous膜を用い, 7つのBlood channels, 0.8m2の有効膜面積を持つ, インターパルス膜型人工肺(IPMO)を10例の開心術に応用した。
    パルス発生装置(PULSER)を使用して, Blood channel内のBloodに二次的渦流(secondary flow)を発生させ, 良好なガス交換を行っている。perfusion blood flow 4.05±0.3L/min, perfusion oxygen flow 3.63±0.88L/min, perfusion temp. 32.1±0.45℃の条件下で, PaO2 263.2±13.7mmHg, Pa CO2 25.3±0.95mmHg, PH 7.58±0.02との良い血液ガス所見を示した。血液成分への影響は, 他の膜型人工肺と同様であった。尚, PULSERによるパルスは, 橈骨動脈圧に20~40mmHgの脈圧を生じ, 拍動流型人工心肺装置として期待できる結果を得た。
  • 篠原 裕希, 田野井 均, 岡崎 俊典, 大森 一光, 中岡 康, 石井 良幸, 名取 宏, 瀬在 幸安, 中西 光, 桑名 克之, 井上 ...
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1093-1096
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    膜型人工肺は, 開心術のみならず急性呼吸不全の治療にも応用されてきているが, 操作性の煩雑さ, 除泡の困難性などにより多用されていない. 我々はsilicone rubberをhollow fiber(中空系)として利用した膜型人工肺を試作してin vitro及び動物実験にて満足すべき結果を得て臨床応用した. 膜面積5M2の試作肺にて1ボンプ・1リザーバー回路を用いて成人開心術42症例に応用した. 先天性心疾患5例, 虚血性心疾患21例, 弁膜疾患16例で体外循環時間36~4時間32分で平均2時間18分であった. 回路内に緊急用のHarvey's bubble oxygenaforを組み込んだが, 体外循環開始後の使用例はなく全例において満足すべき結果を得ており, 長時間灌流例においても性能の低下は認めなかった. 溶血も少く, 血小板数も他肺と有意差を認めなかった. 我々の試作膜型肺は, 優れたガス交換能を有し, 溶血も少く, 開心術のみならず, 補助循環にも応用できる優れた人工肺であると考える.
  • 二宮 淳一, 山手 昇, 落 雅美, 水谷 隆, 若林 武雄, 小林 杏一, 佐々木 建志, 三枝 直紀, 庄司 佑
    1982 年 11 巻 6 号 p. 1097-1100
    発行日: 1982/12/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    境界型および糖尿病合併心疾患患者10名(成人例)について体外循環下開心術中の血糖, 尿糖, インスリン値を定期的に測定し, 正常群10例と比較検討し, 興味ある知見を得た。すなわち境界型および糖尿病合併症例の開心術では体外循環中は正常群に比較して, 血糖, 尿糖値は有意(P<0.001)に高値を示し, かつインスリン分泌は正常群とほぼ同様に抑制されていた。また体外循環終了後は, 境界型および糖尿病群はともに正常群と同様に血糖, 尿糖値は減少傾向を示したが, 糖尿病群の3例においては高血糖, 高尿糖値が, インスリン分泌状態が正常群とほぼ同様であるにもかかわらず持続した。
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