日本門脈圧亢進症学会雑誌
Online ISSN : 2186-6376
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ISSN-L : 1344-8447
29 巻, 1 号
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特別寄稿
総説
原著
  • 多田 藤政, 平岡 淳, 矢野 怜, 橋本 悠, 小泉 洋平, 徳本 良雄, 廣岡 昌史, 竹下 英次, 阿部 雅則, 二宮 朋之, 日浅 ...
    2023 年29 巻1 号 p. 20-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    【背景/目的】門脈圧亢進症合併症例の予後改善やサルコペニア進展阻止のため栄養介入をすべき症例の臨床像は未だ明らかではない.栄養介入を開始すべき臨床像を明らかとする.【対象/方法】2021年12月までに当院で診断した初発肝癌患者408例.肝予備能評価にはmALBIを用い,門脈圧亢進症(PHT)は食道胃静脈瘤F2以上/治療歴ありとした.BTR 4.4以下をアミノ酸インバランス(AAI)と規定して後方視的に生命予後を解析した.【結果】多変量解析で75歳以上,mALBI 2b以下,MVL, PHTが予後因子であった.AAIを予測するALBIは-2.586(AUC 0.789)であった.【結語】PHTがあれば,Child-Pugh AでもmALBI 1から2aへの過渡期にAAIがすでに起こりはじめており,MVLへの進展を防ぐために栄養介入を積極的に行うべきである.

  • 佐々木 脩, 金子 順一, 宮田 明典, 長谷川 潔
    2023 年29 巻1 号 p. 27-32
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    脾臓摘出術(脾摘)は腹腔鏡下手術が広く行われるが,食道がんや胃がんで報告を見る左開胸開腹アプローチについて,脾摘術に応用した報告はない.

    2021年までの5年間に当院で行われた左開胸開腹アプローチによる脾摘11例(左開胸開腹群)と腹腔鏡下脾摘術10例(腹腔鏡下群)を解析した.左開胸開腹群の男女比は4:6,年齢中央値は69歳で,術前予測脾容量中央値は697 ml,疾患は脾腫瘍が7例,特発性門脈圧亢進症その他が4例であった.腹腔鏡下群の男女比は6:4,年齢71歳,脾容量213 ml,疾患は悪性リンパ腫5例,特発性血小板減少性紫斑病その他5例であった.左開胸開腹群で脾容量が大きく(p<0.05),手術時間は短く(p<0.01),膵液ろうが少なかった(p<0.05).

    巨脾や脾悪性腫瘍など限定的な症例で右半側臥位および左開胸開腹アプローチを選択することで,迅速かつ安全に手術を施行した.

症例報告
  • 田上 真, 中西 孝之, 荒木 寛司, 森脇 久隆
    2023 年29 巻1 号 p. 33-39
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    先天性門脈欠損症(congenital absence of portal vein:CAPV)は出生時のマススクリーニングで発見されることがある.本症例は出生時高ガラクトース血症から門脈欠損症を疑われ,1歳時に施行された血管造影でCAPVと診断された.また肝右葉に腫瘍を指摘され,生検から結節性再生性過形成の疑いで経過観察された.なお高アンモニア血症に対しラクツロースが継続投与された.腫瘍は次第に増大し10歳時には右葉塊状となり肝移植の適応が検討されたが,CAPV肝外合併症もあり保存的治療を継続した.肝腫瘍はさらに増大,多血化したため肝癌の合併を疑って23歳で当科精査入院となった.血管造影で門脈は完全に欠損,腫瘍は多血化を確認し肝癌の合併を強く疑った.また腫瘍はすでにほぼ全肝を占めており,生検も困難で,TAE(transcatheter arterial embolozation)も禁忌と思われた.保存的に治療を継続したが,肝不全のため約1年後24歳に死亡した.

  • 瀬尾 智, 上村 良, 待本 貴文, 寺嶋 宏明, 波多野 悦朗
    2023 年29 巻1 号 p. 40-44
    発行日: 2023年
    公開日: 2024/12/27
    ジャーナル フリー

    大量肝切除後の門脈圧亢進は術後肝不全(PHLF)との関連が報告されている.今回PHLF対策の脾摘術を併施し良好な結果を得た3例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.症例1:肝門部胆管癌,右三区域切除(残肝容積35.3%,ICGKrem 0.035).門脈圧は脾摘術で18から11 mmHgまで低下しGrade BのPHLFを認めたが術後40日で退院可能となった.症例2:肝内胆管癌,術前GEM+CDDP後,拡大右葉切除(残肝容積39.3%,ICGKrem 0.059).門脈圧は脾摘術で25から20 mmHgまで低下し重篤な合併症なく退院した.症例3:肝細胞癌・門脈腫瘍栓,右葉切除(残肝容積51.8%,ICGKrem 0.063).PHLFを発症し術後41日目に脾摘術施行.門脈圧は24から17 mmHgに低下し,徐々に状態改善し退院となった.門脈圧亢進症を伴う大量肝切除において,脾摘術による門脈圧調整はPHLF対策として有用である可能性が示唆された.

総会・研究会 司会総括
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