日本義肢装具学会誌
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31 巻, 2 号
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巻頭言
特集1 歩行用ロボット
  • 和田 太, 緒方 友登, 吉川 真理
    2015 年 31 巻 2 号 p. 86-90
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    脊髄損傷の対麻痺者の歩行再建用に開発されたReWalkTMは,外骨格フレームを持つロボット下肢装具である.傾きセンサーが体幹の動きを捉えてモーターの駆動を行い,歩行を実現する.ReWalkTM自身にはバランスをとる機構がないことから,使用者はロフストランド杖を用いてロボットの動きを制御する方法を学ぶ必要がある.約20時間程度の基礎的なトレーニングで,起立,椅子への立ち座り,ターン,室内での歩行が可能となる.脊髄損傷者が長時間の立位をとることは,身体的な,また精神的な健康の維持改善に有益であることは既によく知られている.ロボット下肢装具が,日常生活の中で立位や歩行を容易にする一手段として発展することが期待される.
  • 岡本 隆嗣, 丸田 佳克, 有末 伊織, 藤井 靖晃, 田中 直次郎
    2015 年 31 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    歩行アシストは,股関節の屈曲伸展をアシストするトルクを発生させることで歩行比を大きくする装着型の歩行支援ロボットである.装着は簡便で,歩行練習の場所に制約を受けないため,臨床的に使用しやすい機器である.即時効果として,若年健常者では,歩行のエネルギー効率のみ向上したが,脳卒中患者では,PCIや平均歩幅·歩行比で有意な差を認めた.また脳卒中患者に対する2週間連続使用では,歩行速度が60 m/分未満の群で歩行速度·歩行率·歩幅の改善を認め,対照群との比較では歩幅や歩行比の増加傾向を認めた.回復期リハビリテーション病棟における,効果的な使用方法の検証がさらに必要である.
特集2 大腿義足膝継手
  • 森本 正治, 吉田 晴行, 富山 弘基, 橋本 泰典
    2015 年 31 巻 2 号 p. 97-100
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    義肢装具の足部·足継手部の高機能化に伴い,機能特性を客観的に計測評価する必要性や歩行機能の改善能力を定量的に評価する必要性が高まりつつある.これを解決するために,一定の歩行運動を繰り返し再現できる歩行負荷シミュレータを用いて足部·足継手部に作用するScrew Lineと足底揺動板との交点としての着力点の三次元Rollover軌跡を表示するとともに,足底に作用する力ベクトルとモーメントベクトルを重ね合わせて表示することで運動学的特性と力学的特性を併せて表示できる計測評価手法を開発した.これにより各種の義足足部·足継手部のアライメントとRollover特性との関係が定量化でき,高機能下肢装具足継手部の歩行機能改善能力の評価が可能になる.
  • 二宮 誠, 増田 勝也, 原 良憲, 後藤 学
    2015 年 31 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    我々は,大腿義足膝継手NAL-Kneeの開発を行った.それは,膝継手の油圧シリンダーの下に,踵かつま先に荷重がかかった時に働く新しいリンクをもっている.つま先をついて階段を上る時は,膝継手を任意の角度でロックし,踵荷重で階段を下る時は,イールディングとなる機構である.これにより大腿切断者は,階段を交互昇降することが可能となった.これはバッテリー不要で使用中のソケットや足部の交換も必要ない.酸素摂取量のテストによって,階段昇降におけるNAL-Kneeのメリットを証明した.下りではNAL-Kneeの方が従来型よりスピードも効率も優れていたが,上りでは個人差と慣れの問題がある.また,平地歩行においては,ゆっくり歩きからランニングまで幅広い歩行スピードに対応できることがわかった.これは大型の油圧シリンダーを用い,油路抵抗も少ないためである.
  • 藤原 健司
    2015 年 31 巻 2 号 p. 108-111
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    四節リンク機構と油圧電子制御を組み合わせた世界で初めての膝継手ALLUXTM(アルクス)を開発した.ナブテスコ(株)の義足分野の取り組みは1974年に兵庫県総合リハビリテーションセンターからの依頼を受けたのがきっかけであり,1993年に世界で初めての電子制御義足「インテリジェント義足膝継手」の製品化に成功した.その後,多様化したニーズに対応すべく,さまざまな膝継手を開発した.そして新しく開発したALLUXTMは,いままで培ってきた多節リンク設計技術や高性能油圧設計技術などのコア技術に加え,新たに電子式歩行センサや歩行制御システムを組み合わせた最新の膝継手である.本稿では開発の経緯や特徴を紹介する.
  • 志田 幹雄
    2015 年 31 巻 2 号 p. 112-114
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    近年,医療技術の進歩,革新的な医療ロボットが開発されている.同様に,義肢装具分野でも最先端のテクノロジーを駆使した義足パーツが普及している.本稿では最先端の電子制御膝継手であるOssur社リオニー3 (RHEO KNEE 3)について述べる.第三世代のリオニー3にはジャイロスコープが追加されたことや,伸展補助バネの改良により,安定性,支持性が向上し,幅広いユーザーへの対応が可能となった.高額な義足パーツであるが,電子制御膝継手の中では一部公費で支給されているケースもあり,今後より一層身近なものになっていくものと考えられる.
原著
  • —長下肢装具を処方された患者を対象に—
    平野 恵健, 西尾 大祐, 池田 誠, 新田 收, 宮崎 泰広, 皆川 知也, 高橋 秀寿, 木川 浩志
    2015 年 31 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,回復期リハビリテーション(リハ)病棟に入院した脳卒中重度片麻痺患者に対して,入院時の身体機能から退院時の歩行能力を予測することの可否を検討することである.対象は,回復期リハ病棟に入院した脳卒中患者のうち,入院時に重度片麻痺を有し,長下肢装具を処方された49名とした.方法は,対象者を退院時の歩行能力から歩行可能群と歩行不能群の2群に分類し,入院時の患者属性,神経症候,高次脳機能障害,運動機能を単変量解析した.さらに,有意差を認めた評価項目を用いて,退院時の歩行能力を従属変数とした判別分析を行った.その結果,単変量解析では,年齢,神経症候,高次脳機能障害,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力において有意差が認められた(p < 0.05).また,判別分析では,年齢,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力が選択された.以上より,回復期リハ病棟に入院した脳卒中重度片麻痺患者の退院時の歩行能力は,入院時の年齢,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力を用いることにより予測することができると考えられた.
  • —fNIRS装置を用いた検討—
    飯田 修平, 青木 主税, 池田 喜久子, 石田 健太, 宮坂 稜平, 井上 正雄
    2015 年 31 巻 2 号 p. 120-125
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究ではfNIRS装置を使用して短下肢装具の有無による歩行時の大脳皮質表層の前頭葉運動関連領域の血流動態の変化を比較検討した.対象は外来通院する被殻出血患者8名とし,発症時の出血部位,片麻痺と感覚障害の程度,歩行能力が類似した症例を選別した.課題1で装具歩行,課題2で装具なし歩行,それぞれ30秒×3セットのトレッドミル歩行を実施した.装具なし歩行では装具歩行に比べ病巣側運動前野,両側補足運動野,非病巣側運動前野,内側一次運動野,病巣側外側一次運動野と推定される箇所にて有意な増加がみられた.短下肢装具の使用により,前頭葉の運動関連領野の活動が限局されていることが確認された.
短報
  • 平山 史朗, 高田 稔, 島袋 公史, 加治屋 司, 今村 健二, 渡邉 英夫
    2015 年 31 巻 2 号 p. 126-129
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺患者における短下肢装具(以下,AFO)の役割の1つに遊脚期における足部の引きずり防止がある.今回,病態に応じた背屈補助力を歩行中に測定できる計測用AFOを考案した.基本構造は背屈を制限し,底屈は制限しない機能を有する足継手付きプラスチックAFOで,背屈補助の力源にゴムバンドを利用した.補助力の調節は,ゴムバンドの数とAFOの下腿部に取り付けたギボシを選択することで可能とした.計測手順は,①裸足歩行で足部の引きずりの確認,②計測用AFOを装着して引きずりが解消する背屈補助力まで調節,③その背屈補助力(ゴムバンドの張力)を計器で計測,④計測値に類似する常備のAFOを選定し歩行練習をする.また,計測値は処方するAFOに反映させる.適応は尖足や内反足などの変形がなく,背屈の関節可動域がほぼ保たれていて,歩行障害の原因が遊脚期の引きずりに限定しているような症例だと考えている.
講座 末梢血管原性切断の義肢作製
  • 安藤 智洋
    2015 年 31 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 2015/04/01
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
    透析患者の運動器障害の原因としては,骨関節病変,骨格筋減少,四肢血流障害などが挙げられる.慢性腎臓病代謝性骨疾患(CKD-MBD)の概念では,透析患者の骨病変,動脈硬化病変は,心血管系イベント,骨折発生,生命予後に影響する.透析患者の運動器障害の特徴としては,骨代謝異常による骨強度の低下と,透析によって除去されないβ2ミクログロブリンを原因とした骨関節組織へのアミロイド沈着による骨関節破壊が挙げられる.これらの変化は全身の骨関節に及んでいる.症状の出ている局所はもちろん,現在臨床症状を認めない骨関節でも潜在的に認められ,外傷などがなくても容易に障害が発生する.治療時には,障害された局所のみでなく,全身の運動器の状態を評価し治療にあたることが,治療後長期のADLの向上に重要である.
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