アンチモン (Sb)と硫酸塩を含む合成廃水を処理するため、ラボスケールの嫌気性上向流式の流動床リアクター(FBR)を構築した。FBRにポリビニルアルコール (PVA)ゲルビーズを充填し、硫酸塩還元細菌Desulfovibrio sp.を植種した。Desulfovibrio sp.は硫酸塩を硫化物に異化的に還元し、Sb(V)は硫化物によってSb(III)に還元され、三硫化アンチモン (Sb2S3)が沈殿する。22.8 mg/LのSb、98.6 mg/Lの硫酸塩、360 mg-C/Lの乳酸塩を含む廃水をFBRによって28℃で24~1時間の水理学的滞留時間(HRT)で処理した。HRTが24時間から3時間に減少すると、硫酸塩とSbの除去率は、それぞれ96.8%から89.4%、93.7%から49.0%に減少した。硫酸塩とSbの最大除去速度は、それぞれHRTが1時間において68.6mg/L/h、3時間において3.76 mg/L/hあった。この結果は、FBRにおけるSb除去の律速は、硫酸還元ではなく、硫化物によるSb(V)の化学的還元であることを示唆している。FBR内のPVAゲルビーズと蓄積された汚泥は、Sb2S3を含んでおり、PVAゲルと汚泥中のSb含有量は、それぞれ15.7 mg/g-dryおよび109 mg/g-dryまで増加した。
標準活性汚泥法から段階的高度処理方法への運用変更過程(実験系)における二次処理水質と衛生微生物(HRM)の除去性能は報告されていない。そこで、段階的高度処理方法(対照系)との並行運転を通じて、運用変更過程での二次処理水質(生物化学的酸素要求量、全窒素、全リン)とHRM(大腸菌群、大腸菌、糞便性連鎖球菌、腸球菌)の除去性能を明らかにした。両系の二次処理水は一貫して目標水質を満たし、運用変更が適切であったことを確認した。実験系の大腸菌群と大腸菌は対照系の濃度レベルに収束したが、糞便性連鎖球菌、腸球菌は収束しなかった。汚泥返送率は反応槽の硝化率、水温、生物多様性指数との相関が高く、運用変更過程の指標として有用であった。HRMの対数除去率は、汚泥返送率>全窒素>微小後生動物、の順に関係が高かった。この研究により、運用変更での注目すべき点、および処理水質とHRMの除去性能を明らかにした。
全窒素(TN)と全リン(TP)の重量比はアオコの発生を見極める指標の1つとして知られている。しかし,TN/TP重量比がアオコの増減にどの程度影響を及ぼすのか,またアオコの増減によってTN/TP重量比が変化する原因について明らかにされていない。本研究では,Microcystis sp.の増殖とTN/TP重量比の関係を明らかにするため半連続単培養実験により検討した。培地にはBG-11培地を用い,リン濃度を固定(0.11 mg/L)した条件の下,初期TN/TP重量比を1-100の範囲で変化させてMicrocystis sp.を培養した。その結果,Microcystis sp.の増殖に伴いTNは減少傾向,TPは増加傾向を示し,結果としてTN/TP重量比が低下した。この傾向はアオコが発生している実湖沼でも観測された。TN/TP重量比の減少は,リンに富む細胞外多糖類(EPS)の増加に影響されること,またMicrocystis sp.の増加とともに細胞内N/P重量比13.2-20.3に近づくことに起因していると予想された。さらに,初期TN/TP重量比が18および50のときにMicrocystis sp.がブルームを形成しやすいことが示された。この結果から,ブルームの発生前であればTN/TP重量比を18未満または50より高く制御することにより,アオコを抑制できることを示唆している。