H2ブロッカーは胃, 十二指腸の抗潰瘍剤としての効果が劇的で, その使用頻度は臨床的にはかなり普及していると推定される。また, ドラッグストアでも市販されるにおよび, 臨床血液学的には骨髄抑制1)の症例が心配される。 最近, この種の薬剤の使用が原因と推定される例で血小板減少症, 顆粒球減少症, 汎血球減少症などの骨髄標本を観察する例が多くなってきた。薬剤性の骨髄抑制は, 古くからクロラムフェニコールの再生不良性貧血の例がよく知られているが, 形態学的には前赤芽球の空胞化が最も鑑別の手掛かりとなるようで, ウイントローブの血液学2)でもその形態異常が示されている。ここでは前赤芽球, 骨髄芽球の細胞質に発生した著明な空胞変性を提示して血液検査室の骨髄像検査担当者へも注意を喚起したい。原因薬剤が赤芽球系, 顆粒球系, 巨核球系の初期段階に影響した造血抑制で, 分裂増殖から成熟までを障害し, 汎血球減少の原因になりうる。赤芽球系と同時に顆粒球系にも同様な空胞変性が細胞質および核の中にも発生して以降の細胞分裂障害にもなり, 骨髄球, 後骨髄球の中間成熟段階で変性は強まり壊死, 崩壊に至る。
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