含硫酸クロム酸溶液につい反鉄のカソード電流-電位曲線, 生起する種々の電極反応の分担電流-電位曲線を測定し, 電極表面に生成するクロミック・クロメー・ト皮膜の量が, クロム酸濃度 (50~250g/
l) および硫酸濃度(0~2.5g/
l)によってどのように変わるかを調べた。その結果つぎのことがわかった。
(1) 溶液の組成がどのようであってもカソード電流-電位曲線には0.4~-0.95Vおよび-0.95V以下の電位領域にそれぞれ一つずつの電流波が認められた。これらの電流波は既報の白金電極の場合のIII波およびIV波に相当する。しかし白金の場合とは異なり-0.4Vよりプラスの電位域にII波は認められなかった。
(2) 電流の大きさはIII波においては白金の場合よりもかなり小さく, またIV波では白金の場合とほぼ同一であった。
(3) III波およびIV波で生起する反応はCr(III)
aqの生成, H
2発生およびCr(O)の析出 (ただしCr(O) の析出はIII波の前半では起こりない) であり, 白金の場合と同てじであった。
(4) クロミック・クロメート皮膜中のクロムイオン量, すなわち皮膜量は電位の低下に応じ反階段的に増大した。また, 皮膜量は溶液のクロム酸イオン濃度にはほとんど依存せず, 硫酸濃度の増大にともなって減少した。
(5) 皮膜中の鉄イオン量は-0.5Vよりもプラスの電位域ではクロムイオン量に匹敵するほど多いが, 電位が-0.7V以下になるときはきわめて小さな値に低下し, -1.0V以下ではゼロになる。
(6) クロミック・クロメート皮膜の性状を考慮し鉄電極のカソード電流-電位曲線の特徴を説明した。クロム酸のカソード還元機構は白金電極の場合と本質的な差異はないと考えられる。
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