The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
Online ISSN : 1881-8560
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57 巻, 9 号
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巻頭言
特集『脳卒中後の上肢機能障害に対するリハビリテーション治療』
  • 天野 暁
    2020 年 57 巻 9 号 p. 774-780
    発行日: 2020/09/18
    公開日: 2020/10/22
    ジャーナル フリー

    現在の脳卒中リハビリテーション領域の上肢機能関連研究においては,Fugl-Meyer Assessment(FMA)とAction Research Arm Testが重要な位置を占めている.両ツールともに,本邦における使用環境も整っており,通常の臨床業務での利用も推奨される.仮にFMAの実施時間が負担になるのであれば,短縮版FMAを導入することで,臨床業務とのバランスが取れる可能性がある.臨床研究デザインを評価視点で一段階引き上げたい場合には,適切な信頼性が確認された遠隔評価システムの導入を検討することによって,評価者盲検化を達成できる可能性がある.

  • ―CI療法―
    竹林 崇
    2020 年 57 巻 9 号 p. 781-785
    発行日: 2020/09/18
    公開日: 2020/10/22
    ジャーナル フリー

    脳卒中後の上肢麻痺に対して,エビデンスが確立されているアプローチの1つにConstraint-induced Movement Therapyがある.本稿では,CI療法の歴史,方法論,最近の臨床研究等を通して,現状の動向の理解を促す内容となっている.読者の臨床活動の一助となることを期待している.

  • 高橋 香代子
    2020 年 57 巻 9 号 p. 786-791
    発行日: 2020/09/18
    公開日: 2020/10/22
    ジャーナル フリー

    ロボット療法を脳血管障害の上肢機能障害のリハビリテーション治療に用いることは,上肢機能(運動コントロール,筋力)の改善に有効であることが多くのmeta-analysisで報告されており,さまざまなガイドラインによって推奨されている.一方,ロボット療法によって獲得した機能は実生活に般化されにくいことも示されており,近年では実生活での麻痺手の使用を促進するCI療法をロボット療法と併用するといった試みも進んでいる.さらに,ロボット療法の訓練効果についても,身体機能面だけでなく,主体性の向上など心理的な効果があることも新たに示唆されている.本稿では,ロボット療法の分類や効果,今後の可能性について述べる.

  • ―近年のメタ解析より―
    小金丸 聡子
    2020 年 57 巻 9 号 p. 792-798
    発行日: 2020/09/18
    公開日: 2020/10/22
    ジャーナル フリー

    脳血管障害における上肢機能障害の治療法の1つとして,非侵襲的中枢神経刺激療法がある.代表的なものは反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS),経頭蓋直流電流刺激法(tDCS)である.rTMS,tDCSの治療原理は半球間抑制の不均衡の是正であり,患側1次運動野(M1)への促通刺激と健側M1への抑制刺激が用いられる.近年のメタ解析では,運動機能改善にrTMSの有意性は認められたが,tDCSの有効性は認められなかった.rTMSでは,発症時期が30日以内,皮質下病変である場合がより効果的であった.一方,tDCSは上肢巧緻運動機能に限れば有意な効果が認められ,特にリハビリテーション治療との併用刺激が有効であった.これらの刺激条件を考慮しながら中枢刺激療法を施行することが肝要である.

  • 補永 薫
    2020 年 57 巻 9 号 p. 799-803
    発行日: 2020/09/18
    公開日: 2020/10/22
    ジャーナル フリー

    脳卒中の上肢麻痺に対するリハビリテーション治療では,目標となる課題動作の設定や,訓練デザインの設計を適切に行うことにより,訓練と日常生活の垣根をなくし,日常レベルでの麻痺肢の使用頻度を上げていく必要がある.

    そのための手法として,近年ではNMESが注目をされている.臨床的には麻痺筋の筋電図をフィードバックとして麻痺筋の運動を誘発するNMESが主流である.NMESは他のニューロリハビリテーション手法との親和性も高く,さまざまな治療を組み合わせたハイブリッドセラピーとして行うことにより,効果の増大も期待される.そのため,今後ともに発展が期待される分野である.

  • ―最近の知見―
    河村 健太郎, 衛藤 誠二
    2020 年 57 巻 9 号 p. 804-809
    発行日: 2020/09/18
    公開日: 2020/10/22
    ジャーナル フリー

    促通反復療法は,伸張反射や皮膚筋反射を利用した促通手技によって,意図した運動をより容易に実現し,その運動を集中反復することで,特に共同運動からの分離運動を促進し,効率よく片麻痺の回復を図る治療法である.患者にとって必要な促通パターンを選択して用いることで,麻痺した上肢や手指を無理なく自分の思い通りに動かせるようにして,日常生活の中で使うように促す.さらに,その促通効果を高めるために,麻痺肢の痙縮の程度や麻痺の重症度に応じて,神経筋電気刺激や振動刺激痙縮抑制法,経頭蓋磁気刺激,近年開発された訓練用ロボットと併用することで高い効果が期待できる.

  • ―ボツリヌス療法に関連して―
    大串 幹
    2020 年 57 巻 9 号 p. 810-820
    発行日: 2020/09/18
    公開日: 2020/10/22
    ジャーナル フリー

    ボツリヌス療法は,痙縮を軽減する効果を提供することで,これまで痙縮のために不可能であったリハビリーション手技にたどり着くことを可能とする.装具療法は主に固定と安静を目的にしているが,ボツリヌス療法の効果を最大限支持する機能も求められている.使える手になるには,患者も治療者もさまざまなeffortを必要とするかもしれないが,生活場面での使用を増やすことができるかが成功の鍵である.

  • ―視覚入力で誘導される運動錯覚―
    金子 文成, 川上 途行
    2020 年 57 巻 9 号 p. 821-827
    発行日: 2020/09/18
    公開日: 2020/10/22
    ジャーナル フリー

    脳卒中後に生じる上肢運動麻痺に対するアプローチとして,視覚入力により誘導する運動錯覚(kinesthetic illusion induced by visual stimulation:KINVIS)が注目されている.これは,仮想現実技術の中でも拡張現実を応用することで,身体意識の中で自己の運動機能を拡張することを体験させ,その結果として生理学的な効果を得ようとするものである.視覚入力で運動錯覚を誘導する方法として,鏡を使用した鏡療法によるものと,バーチャルリアリティ(VR)を用いるものがあるが,VRによるシステムでの脳卒中慢性期上肢麻痺患者への介入効果が認められている.特に,治療選択肢の限られている重度の上肢麻痺への治療ツールとして,神経筋電気刺激との併用など今後の臨床応用が期待されている.

教育講座
原著
  • 瀧野 皓哉, 原 康貴, 作井 大介, 菊地 淳, 菰田 拓之, 肥田 朋子
    原稿種別: 原著
    2020 年 57 巻 9 号 p. 852-860
    発行日: 2020/09/18
    公開日: 2020/10/22
    [早期公開] 公開日: 2020/07/29
    ジャーナル フリー

    目的:血管内治療(EVT)を受ける末梢動脈疾患(PAD)患者の身体機能の実態およびEVT術前の身体活動との関連について明らかにする.

    方法:対象はEVTを受けたPAD患者101例.身体機能は握力,歩行速度,等尺性膝伸展筋力体重比とした.国際標準化身体活動質問票を用いて1週間の身体活動より低活動(0 kcal/週:n=52),中程度活動(0 kcal以上500 kcal未満/週:n=22),高活動(500 kcal以上/週:n=27)の3群へ分類した.歩行障害質問票(WIQ)にて間欠性跛行症状を評価した.身体活動を従属変数,等尺性膝伸展筋力体重比0.4 kgf/kg未満,年齢,性別,WIQを独立変数とした多変量解析(累積ロジットモデル)を行った.

    結果:身体機能の実態は握力(kg;男性28.1,女性16.6),歩行速度(m/s;男性1.1,女性0.96),等尺性膝伸展筋力体重比(kgf/kg;男性0.42,女性0.28)であった.また,等尺性膝伸展筋力体重比0.4 kgf/kg未満の割合は56.4%であった.等尺性膝伸展筋力体重比0.4 kgf/kgは低活動と中程度活動(odds:0.99,p=0.98)群間において関連を認めなかったものの,低活動と高活動群間(odds:5.02,p=0.007)に関連する因子であった.

    結論:EVTを受けるPAD患者の身体機能は低下しており,下肢筋力低下はEVT術前の身体活動の関連因子であった.

短報
  • 諸冨 伸夫
    原稿種別: 短報
    2020 年 57 巻 9 号 p. 861-867
    発行日: 2020/09/18
    公開日: 2020/10/22
    [早期公開] 公開日: 2020/07/29
    ジャーナル フリー

    目的:首都圏デイケアにおける高齢心不全患者の心臓リハビリテーションの実態について調査し,課題点の抽出と改善に向けた施策の検討を行う.

    方法:首都圏のデイケア126施設を対象にアンケート調査を行った.調査項目は1.施設の属性,2.心不全患者に対する問題点とその解決方法,3.リハビリテーションサービス内容と急変時を含む施設におけるリスク管理,4.心不全患者が受け入れ困難な場合の理由,についての4分野14項目とした.

    結果:アンケート回収率は41%であった.デイケアにおいても高齢心不全患者の受け入れは困難であった.心臓リハビリテーションへの取り組みには,「地域における高齢心不全患者の増加」,「地域心臓リハビリテーションにおける心不全患者の対応困難」,「施設病院間における診療情報の不足」が課題として挙げられた.その施策として,高齢心不全患者のための心臓リハビリテーションの規範的ツールを作成すること,施設と病院間で相互に有用な情報を明示した共有ツールを作成することが必要であると考えられた.

    結論:首都圏のデイケアでは高齢心不全患者の受け入れには3つの課題があり,その施策として地域で共有できる規範ツールと情報共有ツールを作成することが必要である.

Secondary Publication
  • 小山 哲男, 道免 和久
    2020 年 57 巻 9 号 p. 868-876
    発行日: 2020/09/18
    公開日: 2020/10/22
    ジャーナル フリー

    背景:MRI拡散テンソル画像(DTI)は脳内神経線維を評価する新しい画像診断である.われわれは,急性期脳梗塞により失語症を呈した患者を対象にDTI撮像を行い,同年齢層の対照群との比較のもと,失語症の責任病巣を検討した.

    方法:初発脳梗塞後14~21日目の失語症患者においてDTIを撮像した.撮像データよりfractional anisotropy(FA)画像を作成し,tract-based spatial statistics(TBSS)解析を行った.失語症群と対照群において,脳画像の群間比較を行った.さらに,個々の症例のTBSSデータに左右の弓状束を関心領域(ROI)に設定してFA値を抽出した.FA値の左右比について,失語症群と対照群の群間比較を行った.

    結果:解析データベースは失語症群10名と対照群21名であった.脳画像の群間比較では,失語症群において左弓状束FA値が統計的有意に低値であること示された.症例ごとにFA値を抽出したROI解析では,失語症群においてFA値の左/右比が統計的有意に低値であることが示された(中央値[範囲]:失語症群0.955[0.739~1.023].対照群1.006[0.982~1.088];Wilcoxon順位和検定p=0.0001).

    考察:脳梗塞急性期の失語症患者において,左大脳半球の弓状束FA値の低下が示された.急性期患者においては,慢性期で観察される神経的回復が起こっているとは考えにくい.急性期患者を対象とした本研究の知見は,左弓状束が失語症発症に重要な神経束であることを示唆する.

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