The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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54 巻, 10 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
特集『筋肉と筋力増強訓練』
  • 津田 英一
    2017 年 54 巻 10 号 p. 740-745
    発行日: 2017/10/18
    公開日: 2017/12/04
    ジャーナル フリー

    骨格筋は身体運動を行うための最終的な出力器官としての役割を担っている.その最小単位は筋原線維を構成する筋節であり,収縮タンパク質であるミオシンとアクチン間で滑走が生じることで筋は収縮する.筋に発生する張力はその生理的断面積と,筋収縮速度はその筋長と相関し,筋の基本的な機能的特性を決定づける.臨床的に測定される筋力は,関節運動によって発生するモーメントによって提示されることが多く,筋張力以外にも関節の構造や屈曲角度の影響を受ける.筋力増強にはさまざまな原則や特異性が存在するため,それらを十分理解したうえで処方することが効率よく増強効果を得るために必要である.

  • 木藤 伸宏, 金口 瑛典, 小澤 純也
    2017 年 54 巻 10 号 p. 746-751
    発行日: 2017/10/18
    公開日: 2017/12/04
    ジャーナル フリー

    筋力維持と増強のための治療法は,関節可動域運動とともに身体機能障害に対する理学療法の2大治療手技として,現在に至るまで臨床で用いられている.本稿では以下の内容に沿って,筋力増強運動の基礎と具体的処方について示した.すなわち,筋力の検査,筋力増強運動の基礎理論,筋力増強運動の処方である.なお,筋力増強運動の処方については,負荷と回数設定,方法について具体的に述べた.筋力増強運動は方法論ありきではなく,必ず治療者による評価と再評価によって,処方する運動の選択と負荷量と回数の設定を行いながら進めるべきである.また,高齢者や筋骨格系に病態を有する者は,あらかじめ負荷を低く,少ない回数で安全性を重視したうえで行う.

  • ―超音波による評価
    名倉 武雄
    2017 年 54 巻 10 号 p. 752-755
    発行日: 2017/10/18
    公開日: 2017/12/04
    ジャーナル フリー

    骨格筋の柔軟性は,肉離れや筋損傷の予防に重要であると考えられる.静的筋ストレッチは,骨格筋に対しさまざまな作用があるといわれているが一定の見解は得られていない.健常者14名を対象とし,超音波診断装置を用いて静的ストレッチの効果を検討した.ハムストリングに対する1分間の静的ストレッチ前後の中心腱移動距離,筋硬度変化を計測した.また,筋加温の変化についても検討した.その結果,男女ともストレッチ後30分間は中心腱移動距離が増加する傾向を認めた.筋硬度はストレッチ後男性のみ増加する傾向を認めた.筋加温による影響は明らかでなかった.超音波診断装置により,骨格筋に対するストレッチ効果を判定可能と考えられた.

  • 佐藤 貴彦
    2017 年 54 巻 10 号 p. 756-760
    発行日: 2017/10/18
    公開日: 2017/12/04
    ジャーナル フリー

    骨格筋組織には,最終分化産物である筋線維と再生に寄与する幹細胞のサテライト細胞が存在する.両者は同一細胞系譜由来であり,骨格筋の形態的変化に大きく関与している.廃用性筋萎縮やサルコペニアなどの筋萎縮時には筋線維の減弱化ならびに再生能力が低下するが,筋萎縮を予防するため従来のトレーニング,リハビリテーション法以外に分子制御による医療応用が考えられている.その1つである骨格筋成長因子のマイオスタチン抑制制御により,動物実験レベルで筋萎縮の改善につながることが明らかとなってきた.今後このような分子標的研究により,筋萎縮に対する創薬および新規治療法に結びつく可能性が広がっている.

  • 片山 訓博, 山﨑 裕司
    2017 年 54 巻 10 号 p. 761-763
    発行日: 2017/10/18
    公開日: 2017/12/04
    ジャーナル フリー

    固定用ベルトを併用したhand-held dynamometerは,比較的安価で,簡便性・汎用性・信頼性に優れ,多くの臨床データが蓄積されている.

    院内連続歩行,階段昇降,椅子からの立ち上がりに必要な膝伸展筋力体重比の自立閾値は,それぞれ0.4 kgf/kg,0.5 kgf/kg,0.35 kgf/kgである.下限閾値は,それぞれ0.25 kgf/kg,0.25 kgf/kg,0.2 kgf/kgである.また,本邦高齢者の膝伸展筋力体重比は,移動動作の自立閾値に近似しており,予備力が乏しい状態にある.

  • 緒方 徹
    2017 年 54 巻 10 号 p. 764-767
    発行日: 2017/10/18
    公開日: 2017/12/04
    ジャーナル フリー

    筋肉および神経への電気刺激による筋収縮誘導の知見は,すでに臨床の現場で活用されている技術となっている.健常者に対する筋力増強の効果はすでに確立しているが,下肢を中心とする運動器疾患での臨床成績への効果については報告にばらつきがあり,高いエビデンスとはなっていない.こうしたばらつきは,対象とする疾患の重症度や廃用の状態に影響されていると考えられる.最大随意収縮との比較(%MVIC)など刺激強度を確認する方法と,介入する筋肉の状態を把握したうえでの介入研究の蓄積が求められる.

  • ―加圧トレーニング―
    平泉 裕, 中島 敏明, 今西 登之彦, 佐藤 義昭
    2017 年 54 巻 10 号 p. 768-775
    発行日: 2017/10/18
    公開日: 2017/12/04
    ジャーナル フリー

    加圧トレーニング法は下肢または上肢を空圧式加圧ベルトで加圧し,適度な血流制限下での運動により短期間・軽負荷で筋肥大効果を期待できる.本法はオリンピック選手やプロスポーツ選手の強化トレーニング法として実績があり,近年はリハビリテーションや医療現場でも応用されるようになった.本技術は軽い身体負荷での運動を選択する必要がある患者に対して有効と考えられ,高齢化社会にふさわしいリハビリテーション法と考えられる.

  • 酒井 良忠
    2017 年 54 巻 10 号 p. 776-780
    発行日: 2017/10/18
    公開日: 2017/12/04
    ジャーナル フリー

    炭酸ガスを経皮的に吸収させて薬理効果を得る治療法は炭酸泉など古くから存在する.われわれは効率よく簡便に炭酸ガスを経皮吸収させるシステムを開発し,研究を行ってきた.筋肉においては,筋力,筋持久力の増加,筋肉痛の改善,運動パフォーマンスの向上,筋損傷の治癒促進を報告している.これは短期的には血管拡張,人工Bohr効果による組織への酸素供給量の増加と,長期的には筋線維の移行,ミトコンドリア量の増加,血管新生作用に由来すると推察される.当システムは運動負荷をかけにくい患者の筋力維持やアスリートのコンディショニングに有用である可能性があり,臨床応用が期待される.

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原著
  • ―超音波エラストグラフィを応用した筋硬度の解析―
    川道 幸司, 山口 鉄生, 宮脇 鈴子, 岡本 和久, 植村 直子, 髙田 信二郎
    2017 年 54 巻 10 号 p. 800-807
    発行日: 2017/10/18
    公開日: 2017/12/04
    ジャーナル フリー

    目的:健常者における下肢骨格筋の筋硬度の特性について調査すること.

    方法:超音波エラストグラフィを利用して,健常者の大腿直筋と腓腹筋内側頭の筋硬度を計測し,筋硬度と筋の量的指標である筋厚,筋の質的指標である筋輝度との関係性を調査した.また,筋硬度と年齢・体重・BMIとの関係性についても検討した.

    結果:大腿直筋の筋硬度は,筋厚と正の相関があり,筋輝度とは弱い負の相関がみられた.また,体重やBMIとは弱い正の相関がみられた.一方,腓腹筋内側頭では,筋硬度と相関する因子はなかった.いずれの筋も筋硬度と年齢に相関はなかった.また,筋硬度に性差はなかった.

    結論:大腿直筋の筋硬度は,筋厚および筋輝度と関係していたが,腓腹筋内側頭では,それらの関連性はみられなかった.大腿直筋における筋硬度は,骨格筋の量および質的状態を反映することが示唆されたが,このような関係性は筋の部位によって異なる可能性がある.

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