The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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60 巻, 10 号
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巻頭言
特集『リハビリテーション医療におけるフレイル対策の実際』
  • 荒井 秀典
    2023 年 60 巻 10 号 p. 838-842
    発行日: 2023/10/18
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル 認証あり

    フレイルとは,加齢に伴うさまざまな臓器機能変化や予備能力低下によって外的なストレスに対する脆弱性が亢進した状態であり,ストレスに対して十分な回復力を有する健常な状態と自立した生活が困難である要介護状態の中間的な状態である.そのスクリーニング,診断については多くの基準が示されており,世界的に統一基準がない状態であるが,わが国において開発されたツールも含めて,早期からフレイルを診断し,適切な予防策をとることが求められる.

  • 井平 光
    2023 年 60 巻 10 号 p. 843-848
    発行日: 2023/10/18
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル 認証あり

    がんは消耗性疾患とも認識されており,身体的フレイルとの関連が強いことが多くの研究報告から明らかになってきている.本稿では,身体的なフレイルのみならず,精神・心理的フレイルや社会的フレイルとがんとの関連についても触れ,がん疾患がいかにフレイルと関連しているのか,また,現状におけるがん疾患のフレイル対策を紹介しながら概説する.がん治療の進展が進む現代において,がんサバイバーにおけるフレイル対策が有益であることを提案したい.

  • ―最新のエビデンスと臨床実践―
    足立 拓史
    2023 年 60 巻 10 号 p. 849-856
    発行日: 2023/10/18
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル 認証あり

    身体的フレイルは心血管疾患,特に心不全を有する高齢者において高率に併存し,QOLや予後と強く関連する.フレイルと心血管疾患の病態には相互関連性が示唆されており,フレイル対策はQOL向上や介護予防に留まらず,疾病の重症化予防にも寄与する可能性がある.サルコペニアは身体的フレイルの中核となる因子であるが,心不全の病態コントロールが不良な症例では二次性サルコペニアを想定した包括的心臓リハビリテーションが対策のカギとなる.本稿では,心血管疾患におけるフレイルの臨床疫学,フレイルの多面的な評価と心臓リハビリテーションにおける位置づけ,介入方策について,現状のエビデンスに基づいて整理した.

  • 今村 慶吾, 松永 篤彦
    2023 年 60 巻 10 号 p. 857-863
    発行日: 2023/10/18
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル 認証あり

    慢性腎臓病患者の増加と患者人口の高齢化に伴い,フレイルの管理が重要な課題になっている.慢性腎臓病患者は加齢に加えて,尿毒症,インスリン抵抗性および代謝性アシドーシスといった疾患特有の病因を多く有することから,地域在住高齢者よりもフレイルの有病率が高いことが知られており,入院や死亡といった有害事象と強く関連することが知られている.しかしながら,慢性腎臓病患者に対するフレイルの評価や効果的な介入についてはいまだコンセンサスが得られていない.フレイル管理をルーチンケアとして行っていくためには,特に高齢患者の割合が高いわが国からのエビデンスの蓄積および発信が重要である.

  • 橋田 竜騎, 神谷 俊次, 中野 暖, 堤 翼, 松瀬 博夫, 川口 巧
    2023 年 60 巻 10 号 p. 864-870
    発行日: 2023/10/18
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル 認証あり

    慢性肝疾患患者,特に肝硬変や肝がん患者は高頻度にフレイルを合併している.また,フレイルは肝硬変の病期進展,肝発がんや患者予後のリスク因子である.そのため,フレイルの予防や治療は肝疾患患者の診療において重要な意義を有する.本稿では,肝硬変や肝がん患者におけるフレイルの実態およびフレイルが病期進展に及ぼす影響について論述する.また,われわれが考案した肝硬変・肝がん患者に対する運動プログラムとその効果およびリハビリテーション治療に際しての注意点についても紹介する.

  • 吉村 芳弘
    2023 年 60 巻 10 号 p. 871-879
    発行日: 2023/10/18
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル 認証あり

    代謝性疾患は,生体内の代謝に関連する異常を指し,遺伝的,生活習慣,環境要因によって引き起こされる.これらの疾患は臓器や組織に影響を及ぼし,糖尿病や脂質異常症,肥満,骨粗鬆症などはフレイルと関連している.代謝性疾患によるフレイルのメカニズムは,炎症,栄養状態の悪化,運動能力の低下,神経変性,遺伝子の変化などにより惹起される.これらの疾患は転倒,日常生活動作(ADL)の低下,死亡といった悪影響を及ぼす可能性がある.代謝性疾患の予防と治療には,適切な食事,運動,ストレス管理,薬物療法などが重要である.フレイルの評価には統一基準はないが,日本版CHS(J-CHS)基準が広く用いられている.

  • 植木 純, 野村 菜摘
    2023 年 60 巻 10 号 p. 880-884
    発行日: 2023/10/18
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル 認証あり

    2023年5月に公表された「健康日本21(第三次)」では,COPDの死亡率の減少が新たな目標として掲げられた.フレイルはCOPDの死亡,心血管イベント,入院,入院を要する増悪,プライマリケアを受診する増悪のリスクを増大させる病態である.COPDのプレフレイルやフレイルは進行性で,フレイルからの回復が低い可能性がある.また,COPDでは,呼吸筋力低下と呼吸筋量減少を示す呼吸サルコペニアが全身性サルコペニアとともに併存する場合がある.COPDの死亡率の減少を達成するためには,フレイルおよびサルコペニアの早期発見,介入が重要である.呼吸リハビリテーションは有益性のエビデンスが確立された治療介入である.フレイルの存在は増悪や入院による呼吸リハビリテーションからの脱落のリスクとなるが,プログラムを完了すると,MRCスコア,運動耐容能,身体活動性,QOLの改善効果が認められ,半数以上がフレイルから脱することが報告されている.導入後も評価に応じた呼吸リハビリテーションによるシームレスな介入や,健康の維持・増進や増悪予防のためのセルフマネジメント行動が継続できるようにセルフマネジメント教育をコアとして,調整,意思決定,システム構築,専門職育成を柱とする統合されたセルフマネジメント支援を行うことも重要である.

  • 松尾 浩一郎
    2023 年 60 巻 10 号 p. 885-891
    発行日: 2023/10/18
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル 認証あり

    口腔機能は1つだけでなく,歯や舌,口唇などの運動機能や筋力,唾液分泌などいくつかの機能が複合的に働くことで,構音,呼吸,咀嚼嚥下などの機能を支えている.口腔機能の低下は,咀嚼困難の一因となり,食品摂取の多様性を低下させ,食事摂取に影響を及ぼす.オーラルフレイルは,最終的にはフレイルやその先の要介護リスクを高め,食の楽しみを奪いQOLをも低下させると報告されている.ただ,口腔機能は,1つの機能が低下したとしても,他の機能によって補塡されるため機能低下がマスキングされやすい.オーラルフレイルのスクリーニング検査や定量的な口腔機能検査による早期発見と早期対応が口腔機能低下予防のために重要である.

原著
  • 玉村 悠介, 野﨑 園子, 朝川 弘章, 吉川 創, 松浦 道子, 錦見 俊雄
    原稿種別: 原著
    2023 年 60 巻 10 号 p. 892-901
    発行日: 2023/10/18
    公開日: 2023/12/15
    [早期公開] 公開日: 2023/10/17
    ジャーナル 認証あり

    「入院時オンライン家屋訪問」は通信機器にて家屋と院内をオンライン接続下で入院初期に実施する家屋訪問である.家屋では家族と訪問した理学療法士が参加,院内では患者や医師,療法士,社会福祉士などが参加することで,家屋情報や患者・家族希望を多職種が視覚的にリアルタイムで共有可能となる.今回,入院時オンライン家屋訪問の有用性を検証した.

    回復期リハビリテーション病棟から自宅退院に至った運動器疾患患者と脳血管疾患患者から,入院時オンライン家屋訪問を実施した患者25名(オンライン群)と入棟7日以内に従来の家屋訪問を実施した患者50名(従来群)のFunctional Independence Measure(FIM)効率を比較した.また,療法士に入院時オンライン家屋訪問後のリハビリテーション治療内容の変化について聴取した.

    その結果,運動器疾患におけるFIM効率はオンライン群(n=14)1.0±0.5点/日,従来群(n=26)0.7±0.45点/日であり,オンライン群のFIM効率が有意に高く(p<0.05),在棟日数はオンライン群が従来群に比べ有意に短縮していた(p<0.05).また,療法士の83.3%が家屋訪問後に治療内容を見直し,生活動線を想起した動作練習を実施していた.

    入院時オンライン家屋訪問は映像で家屋状況を把握できることでより自宅環境に見合ったリハビリテーション治療が提供でき,FIM効率の向上および円滑な自宅退院準備の促進に寄与できる介入であることが示唆された.

症例報告
  • 来海 壮志, 笠原 隆, 水野 勝広
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 60 巻 10 号 p. 902-907
    発行日: 2023/10/18
    公開日: 2023/12/15
    [早期公開] 公開日: 2023/10/17
    ジャーナル 認証あり

    Typical cases of neuralgic amyotrophy present with sudden onset of excruciating pain in the shoulders and upper extremities, followed by marked muscle weakness and atrophy over a period of hours to days. Neuralgic amyotrophy is not confined to the brachial plexus, and difficulties in its diagnosis may delay the start of rehabilitation therapy. Here, we report a case of rehabilitation of a patient with neuralgic amyotrophy presenting with Collet-Sicard syndrome (9th, 10th, 11th, and 12th cranial nerve disorder).A 44-year-old man developed severe pain from the left posterior neck to the occipital region, followed by sporadic onset of dysarthria, dysphagia, and difficulty in raising the left upper limb over several weeks. Nerve conduction studies showed marked bilateral differences in the amplitude of the compound muscle action potential recorded from the trapezius during accessory nerve stimulation. Needle electromyography showed abnormal resting potentials in the left trapezius and left side of the tongue and a decrease in the interference pattern during voluntary contraction. Based on the clinical course, neurological and laboratory findings, a diagnosis of neuralgic amyotrophy was made. Speech language hearing therapy was performed for dysarthria and dysphagia, and physical therapy was performed for difficulty in raising the left upper limb due to accessory nerve palsy. Rehabilitation along with recovery from inflammation-induced neuropathy allowed the patient to become independent in activities of daily living.

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