The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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55 巻, 7 号
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巻頭言
Interview
第2回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会 会長インタビュー
特集『筋萎縮性側索硬化症』
  • 松尾 雄一郎
    2018 年55 巻7 号 p. 534-538
    発行日: 2018/07/18
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,大半が孤発性であるが,一部に家族性ALSが存在し,原因遺伝子が次々に同定されている.国際的なALSの診断基準は早期診断の感度を向上させるため,下位運動ニューロン障害について臨床症状と針筋電図所見を同等に扱うようになった.ALSの予後不良につながる要因には,球麻痺発症,呼吸障害発症,栄養状態不良などがあり,薬物療法に加えて全身管理として栄養や呼吸の管理が重要である.また,ALSの病態にSOD1やTDP-43の関与が明らかとなり,発症機序や疾患修飾因子を標的とした根本的治療の開発が期待されている.

  • 早乙女 貴子
    2018 年55 巻7 号 p. 539-544
    発行日: 2018/07/18
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー

    ALSのリハビリテーション治療は,対症療法の1つとして位置づけられる.患者が可能な限り自立した生活を送ることができ,quality of life(QOL)を保てるよう,リハビリテーションでは発症早期から終末期まで,患者の機能障害とその変化を評価し,経時的にゴールとプログラム設定・見直しを行いながら,運動療法や呼吸理学療法,福祉用具や機器の導入,介助指導などを行う.呼吸障害や摂食・嚥下機能障害に起因する栄養障害は生命予後に直結し,コミュニケーション障害は患者や介護者のQOL低下につながる.呼吸や栄養管理・予後に関する患者の意思決定は他職種と情報共有が欠かせない.患者と介護者に治療のみならず緩和ケアとしてもリハビリテーション医療を実践する.

  • 荻野 美恵子
    2018 年55 巻7 号 p. 545-550
    発行日: 2018/07/18
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー

    筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は特異的に随意運動が障害される進行性疾患であり,特に呼吸筋麻痺は生命予後に直結する.他にも進行性筋ジストロフィーなど呼吸筋麻痺をきたす疾患はあるが,ALSの呼吸管理の難しさは呼吸機能低下と同時に嚥下障害を伴うことにある.両者の機能低下は密接に関係し,患者のQOLに直結する.そのため,単に呼吸管理を行うだけでなく,誤嚥への対応が重要となる.病状の進行に伴い,管理のノウハウがあるので,多職種で対応するとよい.また,治療の選択が命の選択になるため,適切な意思決定支援が必要である.

  • 春名 由一郎
    2018 年55 巻7 号 p. 551-555
    発行日: 2018/07/18
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,中年期まで普通に社会生活を送っていた人に発症し,その人の生活や人生に大きく影響する.しかし,現在,情報コミュニケーション技術や支援機器により,ALS患者各人の経験や能力を活かした職業などの社会とのつながりの可能性が広がっている.「生活機能」に着目した支援のあり方は,難病法や障害者総合支援法の大きな課題であり,特にALS患者に対しては,発症後早期から一人ひとりの希望や強みなどに応じてカスタマイズされた生活・人生の充実に向けて,職場や家庭,地域社会の環境整備や,生命・生存,生活,人生を総合的に支える地域支援体制など,多くの挑戦課題がある.

  • 日野 創
    2018 年55 巻7 号 p. 556-563
    発行日: 2018/07/18
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー

    地域包括ケアシステムでは,人工呼吸器を装着し日常生活動作(activities of daily living:ADL)全介助の状態で在宅療養生活を送るALSなどの神経難病患者においてもリハビリテーション医療のかかわりが重要である.しかし,神経難病のリハビリテーション治療は,脳血管疾患や外傷に代表される急性発症疾患の急性期発症モデルの,急性期リハビリテーション治療・回復期リハビリテーション治療・維持期リハビリテーション治療と受け継がれていく一般的な地域リハビリテーション医療の支援体制に当てはまらないため,提供が十分でないばかりでなく,人材育成・研修についても独自の研修拠点を考える必要がある.稀少疾患であるため専門病院以外での経験が蓄積しにくく,一般的な知識技術の伝達だけでは十分なスキルアップを確保することが困難である.さらに,相談窓口・連携を意識する必要がある.

  • 小林 宏高
    2018 年55 巻7 号 p. 564-572
    発行日: 2018/07/18
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)では,症状の進行とともに音声によるコミュニケーションが困難になる.コミュニケーションの代表的な代償手段である重度障害者用意思伝達装置は,障害者総合支援法に基づき補装具として支給を受けることができる.ただし,その機種および入力スイッチは多種存在しており,障害状況,使用環境,利用者のニーズなどを総合的に判断し,できるだけ長期にわたり実用的な使用が可能なものを検討して処方することが重要である.また,2018年度から補装具の借受け制度が開始されたが,適切に運用されればALSのような進行性の疾患に対して有用な制度であると考えられる.

  • 野﨑 園子
    2018 年55 巻7 号 p. 573-577
    発行日: 2018/07/18
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー

    ALSにはいくつかの病型があるが,摂食嚥下障害はどの病型でも経過中ほとんど必発である.比較的急速に進行するが,経過には個人差があり,咽頭期障害先行タイプと口腔期障害先行タイプがある.残存機能を生かすとともに,姿勢調整や摂食動作への介入,体得している代償嚥下の評価を行う.

    適切な栄養管理により体重減少を抑えることが生命予後延長に寄与するので,PEGの導入についても早めの説明と対応を行う.進行期には,呼吸筋麻痺への介入や誤嚥防止術の提案も並行して行う.

    摂食嚥下障害の早期評価と早期介入が重要であり,進行の早い疾患であってもリハビリテーション介入が有用であるという認識をチーム医療として共有し,食べる・味わう楽しみを支える多職種のかかわりが必要である.

  • 中島 孝
    2018 年55 巻7 号 p. 578-582
    発行日: 2018/07/18
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)は神経・筋疾患の代表であり,重篤な運動ニューロン疾患である.原因治療法のみならず,運動機能を改善させる治療として,筋力トレーニング,持久力トレーニング(endurance training)などの有効性は検証されてこなかった.神経変性疾患に対する神経可塑性を促進する研究は,神経系は再生しないというドグマにより研究されてこなかった.NCY-3001試験でALSを含む神経筋8疾患に関するサイボーグ型ロボットHybrid Assistive Limb(HAL)の短期の治療効果と安全性は検証されている.長期治療効果としてどの程度,進行を緩やかにできるのか,医薬品などとの複合治療で機能改善効果が長期に得られるかが今後の課題と考えている.HALの運動単位電位の解析機能を利用したサイバニックインターフェースは,装着者の運動現象を利用しない,生体現象方式の重度障害者用意思伝達装置として実用的に使用できることが示され,CyinTM(サイン)と命名され製品化された.

教育講座
連載 古今東西 見逃せない研究論文・書籍
原著
  • 百崎 良, 岡田 昌史, 奥原 剛, 木内 貴弘, 緒方 直史, 安保 雅博
    2018 年55 巻7 号 p. 606-613
    発行日: 2018/07/18
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は日本におけるリハビリテーション医学領域の研究登録状況を調査し,今後のリハビリテーション医学研究のあり方について検討することである.

    方法:UMIN-CTR(2005年以降)の登録データを用い,リハビリテーション医学領域の介入研究を網羅的に検索した.研究デザインや結果公開状況,登録時期などのデータを収集し,検討を行った.

    結果:21,410件のデータより,529件の研究が抽出された.研究デザインは並行群間比較が54%と最も多く,有効性の検討を目的とした研究が65%と多かった.比較試験の86%はランダム化がなされており,53%はブラインド化がなされていた.研究開始前の事前登録は50%あり,事後登録研究に比べ,結果の公開割合が少なかった.

    結論:研究登録数は経年的に増加していたが,研究の透明性を確保するためにも事前登録を心がける必要があると考えられた.リハビリテーション医学領域においても臨床研究を適切に計画・登録できる医療者のさらなる育成が重要だと考えられた.

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