The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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54 巻, 9 号
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巻頭言
特集『嚥下障害に対する新たなアプローチ』
  • 藤島 一郎
    2017 年54 巻9 号 p. 648-651
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    リハビリテーションは障害を扱う医学であるが,その捉え方扱い方は歴史的に変化している.現在はICFに基づいており,評価や訓練が計画され,運動学習の視点が重視され,新たな機器の導入もあり進歩がみられている.評価には診断だけでなくその後の治療を念頭に置いた治療的評価が必要である.スクリーニングと精密検査の違いと意味をよく理解して訓練を組み立てることが大切である.訓練では従来の代償法主体から,運動学習の理論に基づいて機能回復を目指す訓練が導入され,成果を上げている.予後予測をしながら明確なゴールをめざして行うリハビリテーションが大切である.

  • 山脇 正永
    2017 年54 巻9 号 p. 652-656
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    嚥下運動は高度に組織化されたsequentialな運動であり,随意的要素および不随意的要素が混在したものである.その神経系のプロセスとしては,口腔内をはじめとする感覚入力,食認知・食欲を含めた認知機能,さまざまな情報の統合・分析,感覚フィードバックを含む嚥下運動,の要素からなり,延髄のみならず大脳も関与している.臨床的には,このプロセスの異常の部位によって,異なるパターンの嚥下障害をきたすことが知られている.現在の医学では,嚥下障害の治療およびリハビリテーションは困難を極めることが多いが,嚥下運動の神経学的メカニズムのいっそうの解明により,新たな治療法・リハビリテーション法の開発が期待される.

  • 花山 耕三, 山本 五弥子
    2017 年54 巻9 号 p. 657-660
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    摂食嚥下関連筋の形態や嚥下運動を超音波装置を用いて評価する方法が数多く報告されている.超音波検査は筋,軟部組織の描出に優れており,また場所を選ばず施行することができる.筋の形態評価では,舌,舌骨上筋群の,嚥下運動については舌や舌骨の運動報告が多い.嚥下造影検査(VF)のように食塊の移動と嚥下運動を全体として捉えることは困難であるが,その特質を生かした臨床応用が期待される.今後の知見の積み重ねに期待したい.

  • 青柳 陽一郎, 稲本 陽子, 才藤 栄一
    2017 年54 巻9 号 p. 661-665
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    嚥下障害の評価としては,嚥下造影検査,嚥下内視鏡検査が標準的である.これらの検査は,臨床場面で広く用いられており,食塊の通過の確認,すなわち誤嚥の有無や咽頭残留を評価するのに適した評価法である.しかし,嚥下関連器官のダイナミックな三次元的評価や嚥下障害の神経生理学的機序を正確に捉えるには不向きである.これらを補完する検査法として,320列area detector CT(320列CT),高解像度マノメトリー,筋電図などがある.320列CTは最も新しく登場した検査法であり,嚥下動態の立体的動態の描出が可能となり,最近の嚥下動態の理解と機能評価にブレークスルーをもたらした.本稿では,320列CTの登場によってもたらされた嚥下動態の解明,日常臨床での嚥下評価について,いくつかの具体例を挙げて紹介する.

  • 小野 高裕, 堀 一浩, 藤原 茂弘, 皆木 祥伴, 村上 和裕
    2017 年54 巻9 号 p. 666-671
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    極薄型の舌圧センサシートを口腔内に貼付することにより,自然な嚥下時の舌圧を多点で測定することができる.舌圧の持続時間,最大値,順序性,左右バランスなどのパラメータの変化は,脳卒中,神経筋疾患,口腔中咽頭がんなど各疾患特有の舌のmotor controlの異常と関連しており,不顕性の嚥下機能低下を捉えるうえで有用である.また,嚥下時舌圧データは,嚥下手技の舌に対する効果検証や,患者個々の舌機能に応じた食品性状の設定に応用することによって,摂食嚥下リハビリテーションにおけるさまざまなアプローチの合理化や効率化に貢献する可能性をもつと考えられる.

  • 井上 誠
    2017 年54 巻9 号 p. 672-675
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    リハビリテーションの分野において,電気刺激療法は鎮痛や筋力強化などの目的で古くから使用されてきた.筋力強化をめざした電気刺激療法は,脳血管疾患患者の摂食嚥下障害に対する理学療法として浸透してきたが,その効果に関するエビデンスはいまだ十分に得られていない.一方,筋力強化とは別に,感覚神経への刺激を通して,中枢神経系に働きかけることによって嚥下運動にかかわる中枢神経系の改善をめざした治療法もある.本稿では,電気刺激療法の種類や原理を紹介したうえで,中枢強化を目的とする電気刺激療法にも触れ,摂食嚥下障害への応用について,今後の展望と課題を解説する.

  • 小川 真
    2017 年54 巻9 号 p. 676-682
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    嚥下障害の治療の第一選択はリハビリテーションであるが,嚥下障害の程度が重度であり,リハビリテーションの効果がこれ以上見込めないと判断された場合には,外科的治療の適応となる場合がある.患者がまったく,あるいはほとんど食物を経口摂取できない重度嚥下障害の状態で,患者が再度経口摂取できるようになることを希望する場合には嚥下改善手術の適応が,患者が嚥下機能を再獲得できる見込みがなく,誤嚥のために肺の障害が進行して生命に危険を及ぼすと予測される場合には誤嚥防止術の適応が考慮される.本稿では,喉頭挙上術,輪状咽頭筋切断術,および,さまざまな誤嚥防止術のそれぞれの術式についての文献をもとに,主に適応と治療効果についてまとめた.

  • ―脳卒中回復期を中心に―
    椎名 英貴
    2017 年54 巻9 号 p. 683-686
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    脳卒中後の摂食嚥下リハビリテーションを進めるにあたり,予後予測に基づき,対象者を層別化し目標設定やアプローチ方法の検討を行う必要がある.重症例では,口腔ケアと姿勢管理による誤嚥性肺炎の予防が重要である.直接訓練開始例では,誤嚥を防止し効率的な経口摂取を確立するために,多様な訓練技法の中から最適な方法を選択する必要がある.軽度群では,食形態の調整に代表される代償的方法に頼るだけではなく,機能改善に向けての練習を積極的に実施すべきである.

  • 鎌倉 やよい
    2017 年54 巻9 号 p. 687-690
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    摂食嚥下障害患者に対する地域包括医療における看護の役割とリハビリテーション科医への期待を論じた.摂食嚥下リハビリテーションは専門職によるtransdisciplinary teamとして機能するため,診療の補助を広範囲に実施できる看護師の役割拡大が期待される.摂食・嚥下障害看護認定看護師は卓越した看護実践によって実績を重ね,地域包括医療においても核となる役割が期待できる.診療の補助として摂食嚥下療法を行うには医師からの指示が必要である.所属が異なる専門職が協働するには,目標を提示するリーダーとしてリハビリテーション科医が重要であり,主治医と連携して指示することができる仕組みの構築が望まれる.

  • 栢下 淳
    2017 年54 巻9 号 p. 691-697
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    わが国ではおもてなしの気持ちが強いので,咀嚼機能や嚥下機能の低下した高齢者にさまざまな嚥下調整食が提供できるように工夫されてきた.しかし,病院や施設ごとに呼称や形態が異なっていては連携がしにくいため,いくつかの嚥下調整食分類が提案された.最近では日本摂食嚥下リハビリテーション学会が作成した学会分類2013が医療現場では浸透し始めている.市販介護食の分類としては農林水産省のスマイルケア食が活用されると期待される.学会分類2013とスマイルケア食は形態が同じであれば,コード番号も同じになるように設定されているため,病院から在宅に戻った際にも,嚥下調整食の選択が容易になり,在宅療養しやすい環境が整ってきた.

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原著
  • 小関 弘展, 尾﨑 誠, 堀内 英彦, 本田 祐一郎, 佐々部 陵, 坂本 淳哉, 樋口 隆志, 砂川 伸也, 沖田 実
    2017 年54 巻9 号 p. 718-723
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/11/01
    ジャーナル フリー

    目的:ラット後肢不動モデルを用いて皮質骨と海綿骨の3次元微細構造を分析した.

    方法:8週齢Wistar系ラット24匹を対象とし,両側後肢をギプス固定する不動群(n=12)とコントロール群(n=12)に振り分けた.4週間後に大腿骨を摘出し,骨幹部と遠位骨幹端部をµCTで撮影した.皮質骨と海綿骨の各組織形態パラメータ値を計測して統計学的に分析した.

    結果:骨幹部では不動群の全断面積,皮質骨面積,皮質骨幅の値がコントロール群よりも有意に低かった.また,骨幹端部海綿骨では不動群の骨組織容積比,骨梁幅が低下し,骨梁形状を示すSMI値は増加した(p<0.05).

    結論:本研究では「荷重を許容した不動化」が骨微細構造に与える影響を評価した.不動性骨萎縮の構造的特徴は,皮質骨幅の菲薄化と海綿骨の骨梁幅減少による骨容積比の低下である.

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