The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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59 巻, 11 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
巻頭言
特集『臨床現場からの研究発信―観察データをどう活かすか―』
  • ―着眼点と統計手法―
    小山 哲男
    2022 年 59 巻 11 号 p. 1080-1086
    発行日: 2022/11/18
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    本邦のリハビリテーション医療の現場はデータの宝庫である.現場のデータに基づく観察研究は世界に伍する研究成果となる.実践面では,日常診療の中湧き上がる問いかけを研究主題に選べばよい.背景を可及的に揃えるよう研究対象を絞り込むことが留意点の1つである.それらデータの基本的統計手法である相関と回帰直線,ロジスティック回帰分析,さらに発展的な手法として非線形モデルを本稿で紹介する.

  • 百崎 良
    2022 年 59 巻 11 号 p. 1087-1092
    発行日: 2022/11/18
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    傾向スコア解析や操作変数法といった統計学的因果推論手法を用いた研究がリハビリテーション医学領域でも増加している.傾向スコアとは治療を受ける傾向(確率)を表す値であり,交絡因子から推定できる.傾向スコア解析では調整したい交絡因子が多数ある場合でも,モデルの誤設定や多重共線性の問題を気にする必要がない.操作変数法は未測定交絡因子の調整を行うことができる解析法である.操作変数とは治療の選択を左右する因子であり,アウトカムと直接関連していないことが条件である.適当な操作変数をみつけられるかどうかが鍵となるが,各施設におけるリハビリテーション治療実施割合や週末入院などが操作変数として利用されている.

  • ―介入前後のデータから効果を検証―
    吉村 芳弘
    2022 年 59 巻 11 号 p. 1093-1099
    発行日: 2022/11/18
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    差分の差分法は介入効果の因果関係を後ろ向きに検証する分析手法の1つである.前後比較デザインは介入前後のアウトカムを時系列で単純に比較する研究デザインであるが,仮に介入がなかった場合にアウトカムの値は変わらないという仮定が必要である.前後比較デザインにおけるその他の因子の影響を取り除く研究デザイン(考え方)が差分の差分法である.差分の差分法には介入群における介入前後の比較(差分)と介入群とコントロール群の比較(差分)という2つの差分が存在する(名称のゆえんである).差分の差分法が正しく介入効果を推定するためには平行トレンド仮定と共通ショック仮定の2つの仮定を満たす必要がある.

  • 内山 祐介, 藤木 聡一朗, 中野 淳, 青柳 京子, 樋口 佳則, 神作 憲司
    2022 年 59 巻 11 号 p. 1100-1105
    発行日: 2022/11/18
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    本稿では,解釈性と説明性を有するAIモデルであるベイジアンネットワークの概要と医学分野へのいくつかの応用事例について紹介する.合わせて,ベイジアンネットワークの実データへの応用例の1つとして,筆者が所属する研究グループの最新の結果である,定位放射線治療後の転帰予測について紹介する.

  • ―交絡因子を含めた因果関係の証明―
    京極 真
    2022 年 59 巻 11 号 p. 1106-1110
    発行日: 2022/11/18
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    本論の目的は,データ分析段階で観察データの交絡因子を制御できる層別解析と回帰分析を概説することである.層別解析は,交絡因子でデータを分けることでその影響を制御し,各層の推定値から全体の推定値を求める.回帰分析は,交絡因子を説明変数に含めることでその影響を制御し,変数間の因果関係を示す推定値を求める方法である.本論では,層別解析ではプール化する方法を,回帰分析では重回帰分析を中心に紹介する.

  • 美馬 達哉, 小金丸 聡子, 芝田 純也, 佐藤 岳史
    2022 年 59 巻 11 号 p. 1111-1117
    発行日: 2022/11/18
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    2010年代以降に注目を集めているN-of-1研究について,従来の症例研究との差異,高いエビデンスレベルである理由,臨床研究としての実験計画および論文執筆の際の注意点などについて概説した.個別性の高いケアを重視するリハビリテーション医学の領域において,この研究手法は大きな可能性を有すると考えられる.さらに,近年では,複数のN-of-1研究を標準化してまとめ,集団疫学と同様に扱う手法も提案されている.Patient-centered careやprecision medicineが議論されている現状では,今後も重要性が高まると予測され得る.本稿の最後では,非侵襲的脳刺激法のリハビリテーション応用について,N-of-1研究から切り拓かれる展望についても,筆者らの経験を例として論じる.

  • ―時間とイベント発生の関係―
    河野 裕治, 青柳 陽一郎
    2022 年 59 巻 11 号 p. 1118-1124
    発行日: 2022/11/18
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    生存時間解析は,死亡までの時間や疾患発症,回復までの時間など,特定のイベントが起こるまでの時間とイベントの関係に焦点を当てた解析方法である.生存時間解析では観察期間に対するイベント発生率の推移を表すKaplan-Meier法やログランク検定,生存時間要素を含んだ多変量解析であるCox比例ハザード解析がよく用いられる.同じ解析方法でも研究目的によって結果の提示や解釈が異なるため,ハザード比やp値に依存するのではなく,得られた結果からさまざまな情報を読み取ることが重要である.また,丁寧に結果を提示することが研究の質を担保するためにも重要である.

  • ―感度・特異度・ROC曲線など―
    野嶌 一平, 野口 泰司
    2022 年 59 巻 11 号 p. 1125-1130
    発行日: 2022/11/18
    公開日: 2023/01/20
    ジャーナル フリー

    再生医療や情報工学の技術的進展に伴い,リハビリテーション医療も新たなフェーズに入ってきているように感じられる.新しい治療戦略が臨床に提案された場合,その治療の有用性を臨床データにより統計学的に検証することは非常に重要である.その基本的な統計手法として,感度・特異度やROC曲線を使った検討は臨床的に,非常に有用な手法であると考える.本稿では,感度・特異度の基礎的な概念から算出方法までを説明するとともに,これらの指標を視覚化する方法であるROC曲線を紹介する.またROC曲線については,Rを使った簡単な再現が可能となるよう,サンプルデータとコードを添付する.

特別寄稿
教育講座
リハビリテーション医学研究のこれから
原著
  • 福田 真也, 福田 仁, 上羽 佑亮, 田中 健次, 水口 紀代美, 上羽 哲也
    原稿種別: 原著
    2022 年 59 巻 11 号 p. 1151-1163
    発行日: 2022/11/18
    公開日: 2023/01/20
    [早期公開] 公開日: 2022/11/17
    ジャーナル フリー

    目的:放線冠ラクナ梗塞の画像解析を用いた予後予測は従前から試みられてきたが,定量性や汎用性の点から理想的とは言い難い.今回汎用性の高いCTを用いて,皮質脊髄路のCT値の定量評価が予後予測し得るかを検討した.

    方法:放線冠ラクナ梗塞の患者24名を対象とした.発症後30日前後のCT画像で皮質脊髄路の損傷度をCT値で評価し,単回帰分析で90病日の上下肢運動機能との相関(決定係数=R2)を調べた.次に上下肢それぞれの,予後予測に最も適したCT上での皮質脊髄路の仮想走行範囲を決定した.最後に,皮質脊髄路のCT値と上下肢の実用性(実用手と装具や補助具無しでの自立歩行獲得)との関連を調べた.

    結果:CT上での皮質脊髄路損傷度は,90病日の上下肢の運動機能が低いことと有意に相関した.上肢では皮質脊髄路の半径7 mmでBRS上肢(R2=0.69)と握力(R2=0.52)とSimple Test for Evaluating Hand Function(R2=0.75)に,下肢では半径6 mmでBRS下肢(R2=0.51)とWeight Bearing Index(R2=0.53)とBerg Balance Scale(R2=0.52)に最も相関した.また,それらのCT値は実用手および歩行獲得と関連した.

    結論:放線冠ラクナ梗塞患者に対して,CT値を用いた皮質脊髄路損傷度評価は,90病日の麻痺側上下肢運動機能と実用性に相関した.

症例報告
  • 内尾 優, 中村 花穂, 志真 奈緒子, 猪飼 哲夫
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 59 巻 11 号 p. 1164-1169
    発行日: 2022/11/18
    公開日: 2023/01/20
    [早期公開] 公開日: 2022/11/17
    ジャーナル フリー

    Wolf-Hirschhorn syndrome is a chromosomal aberration caused by a deletion of the distal short arm of chromosome 4, characterized by distinct craniofacial features, failure to thrive, psychomotor developmental retardation, epilepsy, and feeding disorders. We report a case of patient with Wolf-Hirschhorn syndrome who underwent interventional rehabilitation commencing from the neonatal period in the neonatal intensive care unit. The patient was born at gestational age of 38 weeks 0 days, weighing 1583 g, with an Apgar score of 4/9, and was diagnosed with partial monosomy of the short arm of chromosome 4. Postnatal inspiratory stridor exacerbation was noted for which high-flow nasal cannula therapy was initiated. Rehabilitation commenced on the 18th day after the infant's birth, to promote sensorimotor development. Initially, the trunk was in a low muscle tension and unstable state. Therefore, we first prescribed rest followed by sensorimotor rehabilitation. When the infant's clinical condition stabilized, we performed prone and anti-gravity hugging exercises to improve the low trunk tension. Breastfeeding evaluation began 56 days after birth, when the respiratory condition improved. We practiced feeding the infant orally, in collaboration with doctors and nurses, to reduce bending and stabilize the posture when raising the mandible. The infant was gradually able to feed orally and gained weight. Thereafter, he was discharged 141 days after birth. This report concluded that rehabilitation intervention from the neonatal period, in collaboration with the multidisciplinary team and patient's family, contributed to initiation of oral feeding, improvement of sensorimotor development, and smooth transition to home care.

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