The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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59 巻, 10 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
特集『再生医療とリハビリテーション医学』
  • 緒方 徹
    2022 年 59 巻 10 号 p. 988-993
    発行日: 2022/10/18
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    脊髄再生医療が実臨床で実施・検討されるようになり,リハビリテーション治療の役割が注目されている.移植された細胞に対し,運動学習に基盤を置くリハビリテーション治療は神経組織の機能を調整するだけでなく,細胞の形態変化も誘導する作用があると考えられている.再現性の高い反復訓練を可能にするロボットリハビリテーションは再生医療の効果を引き出す有効な方法と予想されるが,現状では細胞治療単独の効果を検証することが急務となっており,リハビリテーション医療は標準的な内容を実施するなどプロトコールを調整する必要がある.今後,臨床的エビデンス構築を加速するためにはバイオマーカー技術による適合症例の選別も重要となる.

  • 三上 幸夫, 平田 和彦, 中前 敦雄, 亀井 豪器, 木村 浩彰, 石川 正和, 安達 伸生
    2022 年 59 巻 10 号 p. 994-1000
    発行日: 2022/10/18
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    2013年に「外傷性軟骨欠損症」または「離断性骨軟骨炎」による「軟骨の損傷サイズが合計4 cm2以上」で,他に治療法がない場合,自家培養軟骨(ジャック®)移植が保険適応となった.自家培養軟骨(ジャック®)移植術後のリハビリテーション治療は,組織の修復を妨げることなく,術後の機能低下を最小限に抑えることが重要である.そのため,術後リハビリテーション治療プログラムは,培養軟骨の成熟過程と膝関節のバイオメカニクスに基づいて進めていく必要がある.今後はエビデンスに基づいた,自家培養軟骨(ジャック®)移植術後リハビリテーション治療ガイドラインを作成することが望まれている.

  • 小林 萬里, 佐々木 雄一, 本望 修
    2022 年 59 巻 10 号 p. 1001-1007
    発行日: 2022/10/18
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    脳梗塞は年間約30万人が新規に発症する国民病である.残存する神経機能障害の回復はきわめて困難な疾患の1つで,本邦における要介護者の原因疾患第1位となっている.脳梗塞による社会的負担は甚大であり,新しい治療法として再生医療への期待が高まっている.われわれは骨髄間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)の移植が,脳梗塞を含む神経疾患に対して治療効果を発揮することを報告してきた.また,2018年12月には自己培養骨髄間葉系幹細胞製剤「ステミラック注®」が,脊髄損傷患者の後遺症に対する治療薬として世界で初めて承認され,現在治療が進められている.本稿では,MSCを中心とした脳梗塞における再生医療とリハビリテーションについて解説する.

  • 森実 飛鳥
    2022 年 59 巻 10 号 p. 1008-1013
    発行日: 2022/10/18
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病は進行性の神経難病で,中脳黒質のドパミン神経が進行性に脱落する.薬物療法を中心とした現行の治療では疾患自体の進行を抑制することができない.iPS細胞などの多能性幹細胞を用いた再生医療が,失われたドパミン神経細胞を補充する治療として期待されている.運動療法と組み合わせることにより移植の効果を促進するという研究報告もある.ただし,再生医療はあくまでも有力な治療オプションの1つであり,現在行われている薬物治療,リハビリテーション医療,補助療法などを含めた集学的なアプローチが重要であることは今後も変わらない.

  • 宮川 繁
    2022 年 59 巻 10 号 p. 1014-1019
    発行日: 2022/10/18
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    重症心不全治療として最も重要な治療法である心臓移植は,きわめて深刻なドナー不足であり,新しい移植法案が可決されたものの,欧米レベルの汎用性の高い治療法としての普及は困難が予想される.一方,左室補助人工心臓(LVAD)については,日本では移植待機期間が長期であるため,感染症や脳血栓などの合併症が成績に大きく影響している.このような状況を克服するため,世界的に再生医療への期待が高まっており,心臓移植やLVADに代わる新しい治療開発が急務である.

    このような現状の中,重症心不全においては,細胞移植,組織移植,また再生医療的手法を用いた再生創薬の研究が進み,臨床応用化が進んでいる.本稿では,これまでの筋芽細胞シートのトランスレーショナルリサーチとともに,iPS細胞由来心筋細胞シートを用いた心不全治療の試み,さらに,疾患特異的iPS細胞に関して紹介し,再生医療技術を用いた新しい心不全治療を概説する.

  • 竹中(蜷川) 菜々, 櫻井 英俊
    2022 年 59 巻 10 号 p. 1020-1025
    発行日: 2022/10/18
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    デュシェンヌ型筋ジストロフィーはジストロフィン欠損による筋損傷により重度の筋力低下をきたす遺伝性筋疾患である.その治療法として,骨格筋幹細胞移植による筋再生医療が期待されている.われわれは発生段階を模倣した分化誘導法の至適化により,iPS細胞から効率よく骨格筋幹細胞を誘導することに成功し,移植によりマウスモデルで高い筋再生能をもつことも示された.さらには運動機能の評価方法として足関節底屈トルク測定機器を用いた手法を開発し,約10%以上のジストロフィン発現回復と機能回復が相関する可能性を見いだしている.また,同機器によってリハビリテーション介入も可能になったことから,細胞移植治療に有用な運動プロトコルも開発した.

  • 弓削 類, 大塚 貴志, 黒瀬 智之, 中川 慧
    2022 年 59 巻 10 号 p. 1026-1035
    発行日: 2022/10/18
    公開日: 2022/12/28
    ジャーナル フリー

    わが国の脳卒中を含む脳血管疾患の治療や経過観察などで通院している患者数は130万人(2019年)と推計され,2025年には300万人に膨れ上がることが懸念されている1).特に増加傾向にある脳梗塞治療においては超急性期における血管内治療が発達しているが,神経組織は自己修復能に乏しく損傷後の神経回復はいまだ困難なことから再生医療への期待が高い.体性幹細胞である間葉系幹細胞を用いた再生医療の研究は,主に軟骨,脳梗塞,脊髄損傷などを対象に,すでに国内外で臨床研究や治験が行われている.われわれは,神経と起源を同じくする神経堤由来の間葉系幹細胞に着目し,頭蓋骨から間葉系幹細胞を樹立した.

    同時に,移植効果の高い間葉系幹細胞の研究のために,米国航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration:NASA)との連携で生体工学の応用研究として微小重力環境での幹細胞培養技術の開発も行っている.

    再生医療は,後遺症や障害を残さない根治療法をめざした新規治療法と考えられていたが,臨床試験や治験が進むに伴って,細胞治療後のリハビリテーション医療の重要性が浮き彫りになってきた.また,細胞治療の回復過程に応じたリハビリテーション医療とロボットの活用がきわめて重要である.そのために,ロボットも活用した効果のある上肢,手指,下肢のリハビリテーション治療効果のエビデンス構築も急務といえる.

教育講座
リハビリテーション医学研究のこれから
原著
  • 広田 桂介, 神谷 俊次, 福島 竜也, 杉本 幸広, 松瀬 博夫, 橋田 竜騎, 岩永 壮平, 松岡 昌信, 高須 修, 星野 友昭, 志 ...
    原稿種別: 原著
    2022 年 59 巻 10 号 p. 1045-1055
    発行日: 2022/10/18
    公開日: 2022/12/28
    [早期公開] 公開日: 2022/10/17
    ジャーナル フリー

    重症Coronavirus disease 2019(COVID-19)患者は治療困難例も多く,集中治療室滞在が長期化した患者に神経学的合併症を引き起こした報告が多数みられる.重症COVID-19患者に対するリハビリテーション医療は重要とされているが,その有効性を示すプログラムはない.そこで,当院で作成し使用した重症COVID-19患者に対する発症後の急性期から開始するリハビリテーションプログラムの有効性について検討した.対象は,当院重症COVID-19病棟に入院となり,リハビリテーション治療を施行した重症COVID-19患者28人.年齢中央値61歳,男女比67.9%:32.1%(19:9),BMI中央値25.0 kg/m2.COVID-19重症病棟退出後でCOVID-19中等症病棟入室および退出時におけるMedical Research Council Scoring(MRC)を評価し比較検討した.MRCは,COVID-19中等症病棟入室時の中央値43点であり,退出時は50点で有意に改善した(p<.001).さらにBarthel Indexにおいても同様に有意な改善が認められた(32.5点vs. 77.5点,p<.001).重症COVID-19患者に対する発症後の急性期から開始するリハビリテーション治療は,筋力や日常生活を改善させる可能性がある.

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