The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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60 巻, 9 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
特集『脳損傷後の神経可塑性変化Up To Date』
  • 森岡 周
    2023 年 60 巻 9 号 p. 749-753
    発行日: 2023/09/18
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    脳損傷後の神経可塑性については,動物モデル研究および臨床研究によって明らかにされた.身体の使用頻度によって脳の構造的変化が生じることや,課題の練習の伴う学習の経験によって脳の機能的変化が引き起こされることが明らかになったことは,リハビリテーション医療にとって重要なエビデンスとなった.脳損傷後の運動麻痺からの回復には,麻痺の重症度による違いはあるものの,残存する運動関連領域の機能的代償,非損傷半球の関与,機能的活動の増加,そして関連領域間の正しいコネクティビティの強化が重要な要素である.

  • 小杉 亮人, 舩戸 徹郎, 関 和彦
    2023 年 60 巻 9 号 p. 754-761
    発行日: 2023/09/18
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    麻痺は脳卒中後の最も一般的な運動障害である.特に,病変部位と反対側の上下肢に麻痺が起こり,片麻痺と呼ばれる.脳卒中片麻痺患者の約60%は,対象物に向かって手を伸ばす到達運動や,対象物を掴む把持運動などの上肢の運動機能が完全には回復しないといわれている.われわれは,身体運動の神経制御機構について研究を行っており,その一環として,運動麻痺の神経機構とその評価方法について検討している.運動麻痺の背景にある神経機構の議論は,運動制御メカニズムの理解に対して多くの示唆を与えるからである.本稿では,これらのうち,霊長類を実験動物とした運動麻痺モデル動物を用いた研究成果1),および筋シナジー解析を用いた新たなリハビリテーション効果の評価方法についての研究成果2)についてそれぞれ解説する.

  • 河野 悌司, 宮井 一郎
    2023 年 60 巻 9 号 p. 762-767
    発行日: 2023/09/18
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    上肢運動機能における神経可塑性変化は,ニューロイメージングや神経生理学的検査などの手法を用いることにより神経ネットワークの構造的結合と機能的結合の観点から評価することができる.上肢運動機能において,構造的結合の観点からは錐体路だけでなく小脳や高次運動野などを含む運動経路も回復に寄与しているとされる.機能的結合の観点からは半球間の病変相同部位,一次運動野以外の病変側半球内の運動関連領域や非病変側半球内運動関連領域の回復への関与が報告されている.神経可塑性の促進はリハビリテーション医療における新たな治療戦略となる可能性がある.

  • 山田 尚基
    2023 年 60 巻 9 号 p. 768-772
    発行日: 2023/09/18
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    ニューロモデュレーションは,一般的に電気的または化学的な性質をもつ多くの方法を包含しており,最終的には神経細胞の活動を刺激し,疾患や神経損傷後の転帰の改善を目的としている.International Neuromodulation Society(INS)の定義は「電気刺激や化学物質などの刺激を体内の特定の神経部位に標的を定めて投与することにより,神経活動を変化させること」である.本定義より,ニューロモデュレーション療法は主に電気・磁気刺激,または何らかの薬物療法に狭まるが,リハビリテーション治療をはじめとしたコンビネーション療法が多く,侵襲的なアプローチを含む複合的な治療法も多い.

  • 大畑 光司
    2023 年 60 巻 9 号 p. 773-779
    発行日: 2023/09/18
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    脳損傷後の下肢機能に対する神経可塑性は上肢と比較して不明瞭なことが多い.その理由の1つとして,機能回復に関連する可塑的変化が皮質,皮質下を通じて広範に生じている可能性があることが考えられる.交差する外側皮質脊髄路だけでなく,交差しない皮質脊髄路や網様体脊髄路,脊髄固有路などが下肢機能に対して影響を与えると推察されるが,いまだ詳細についてはわかっていない.神経学的な代償である神経可塑性を利用して行動学的な回復を促すためには,可塑的変化のメカニズムを知っておく必要がある.

  • 藤原 俊之
    2023 年 60 巻 9 号 p. 780-784
    発行日: 2023/09/18
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    歩行運動は脊髄歩行運動関連回路(locomotor circuit)の関与が大きい.このlocomotor circuitは脊髄反射回路をもとに構成されている.この脊髄反射を利用することにより,ステレオタイプな歩行運動は再現が可能である.脊髄刺激などのneuromodulationはこのlocomotor circuitの賦活を図ろうとするものである.リハビリテーション医学においても応用され,脊髄損傷患者や脳卒中患者の歩行障害に対する治療に用いられている.本稿では,歩行制御の神経回路につき解説するとともに,脊髄刺激などのneuromodulationのリハビリテーション医学への応用について解説する.

  • 西田 大輔
    2023 年 60 巻 9 号 p. 785-791
    発行日: 2023/09/18
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    脳障害における脳可塑性変化に注目した歩行再建が注目されている.脳活動と動作解析手法を組み合わせ,歩行動作と脳の神経活動の関係性が少しずつ明らかになっている.本稿では歩行動作と脳機能の解析手法とその知見について概観し,脳障害の病態でニューロモデュレーションの臨床応用,研究が比較的進んでいるパーキンソン病を例に外部刺激,薬剤,電気刺激,磁気刺激による歩行再建について検討する.また,ロボットリハビリテーション訓練ではさまざまな疾患の歩行再建について脳可塑性変化をめざして研究開発,利用の拡大が行われている.現時点で脳可塑性に基づいた歩行再建リハビリテーションは発展途上であり今後の展開が期待される.

  • ―サルの知見とヒト脳機能イメージングから得た知見―
    阿部 十也
    2023 年 60 巻 9 号 p. 792-798
    発行日: 2023/09/18
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    リハビリテーション治療は,脳梗塞後の運動麻痺を改善させる効果をもつ.サル損傷モデルの観察によると,運動機能の回復過程で脳脊髄運動伝導路は大規模な再構築を起こし,損傷前とは異なる回路に変化する.ヒト脳機能イメージング手法を用いて脳梗塞後の機能回復を観察した研究が多数ある.リハビリテーション治療による機能回復と並行して大脳神経活動パターンが変化した.別の研究では,回路の解剖学的な構築が変化した証拠を提示した報告もある.一連のヒト研究の結果は大脳回路の再編を反映しているかもしれない.しかし,どの脳脊髄伝導路を巻き込んでいるのかはわからずサルの知見との対比ができない.イメージング手法の技術革新により脳脊髄運動伝導路を間接的に評価することが可能になった.脳脊髄運動伝導路の視点で機能回復を観察できるようになれば,さらに神経基盤の理解が深まるだろう.

症例報告
  • 江原 昌宗, 阿部 理奈, 藤原 大, 金成 建太郎, 水尻 強志, 出江 紳一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 60 巻 9 号 p. 799-804
    発行日: 2023/09/18
    公開日: 2023/11/09
    [早期公開] 公開日: 2023/09/15
    ジャーナル 認証あり

    This report describes a case of an amputee with a lumber spinal cord injury who successfully recovered ambulation with the use of prosthesis.

    A 30-year-old man with schizophrenia underwent amputation of the lower legs and concurrently developed lumbar spinal cord injury from of a suicide attempt. After the treatment of stump plasty and posterior fusion, the patient was transferred to our facility. Lower-extremity prostheses for both legs were fitted, and orthostatic training was commenced following admission. During the initial evaluation, the patient could not maintain a stable standing position because of weakness in the hip extensor muscle. An inflexion angle of the prosthesis was set to 0° to extend the knee joint and achieve standing stability. Appropriate adjustments of the prosthesis were made as required, specifically addressing the paraplegia caused by his lumbar spinal cord injury. Thus, the patient successfully regained ambulation with the treatment.

    Recovering walking independence after bilateral lower leg amputations or paraplegia caused by lumber spinal cord injury is not uncommon. However, this case is unique in that the muscle weakness caused by lumbar spinal cord injury presented unforeseen difficulties for the patient to achieve ambulation, which is not ordinarily observed in amputation rehabilitation cases. No similar cases have been reported in which patients concurrently suffered from both these conditions in Japan;therefore, this case is extremely rare.

  • 塚本 陽貴, 石黒 基
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 60 巻 9 号 p. 805-809
    発行日: 2023/09/18
    公開日: 2023/11/09
    [早期公開] 公開日: 2023/09/15
    ジャーナル 認証あり

    Post-injury rotation contractures of the forearm significantly interfere with various activities of daily living, such as washing the face, receiving change, or wiping a desk, and cause distress to patients. The Colello-Abraham dynamic pronation-supination splint is useful for rotation contractures of the forearm;however, the device includes several small parts and a complicated structure, and assembling the appliance requires technical expertise. Here, we report a case of rotation contracture of the forearm that improved following the use of a simple dynamic splint.

Secondary Publication
  • 松垣 竜太郎, 大谷 誠, 峰 悠子, 佐伯 覚, 伏見 清秀, 松田 晋哉
    2023 年 60 巻 9 号 p. 810-818
    発行日: 2023/09/18
    公開日: 2023/11/09
    ジャーナル 認証あり

    目的:同種造血幹細胞移植を受ける血液腫瘍患者に対する移植前リハビリテーションの有効性は示されているが,移植前リハビリテーションが移植後在院日数に及ぼす影響は不明である.本研究の目的は同種造血幹細胞移植を受ける血液腫瘍患者における移植前リハビリテーションと移植後在院日数の関係を明らかにすることである.

    方法:本研究は診断群分類包括評価(Diagnosis Procedure Combination)データを使用した観察研究である.対象は2014年4月~2017年3月に対象病院を退院した血液腫瘍患者のうち,入院中に同種造血幹細胞移植およびリハビリテーションを受けた者である.血液腫瘍患者はICD-10コード(C81-85,C90-94,C96,D46)を用いて特定した.統計解析には被説明変数を移植後在院日数(自然対数変換)としたマルチレベル線型回帰分析を用いた.

    結果:本研究には3614名の血液腫瘍患者が取り込まれた.移植後在院日数は移植前リハビリテーション無し群と比較して,移植前リハビリテーション有り群で有意に短く(平均74.2 vs. 90.2日,p<0.001),マルチレベル線型回帰分析の結果,移植前リハビリテーションは移植後在院日数の短さと有意に関連していた(β=-0.134,p<0.001).

    結論:造血幹細胞移植を受ける血液腫瘍患者に対する移植前リハビリテーションは移植後在院日数の短縮に寄与する可能性がある.そのため,造血幹細胞移植を受ける血液腫瘍患者に対しては移植前からリハビリテーションを開始することを考慮する必要がある.

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