The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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60 巻, 7 号
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巻頭言
特集『周産期のリハビリテーション医療』
  • 森野 佐芳梨
    2023 年 60 巻 7 号 p. 560-565
    発行日: 2023/07/18
    公開日: 2023/10/24
    ジャーナル 認証あり

    妊娠すると,腰背部の痛みや骨盤帯機能障害に代表されるようなさまざまな身体症状が発生する.これについては,特に妊娠期には母体のみならず胎児への影響が危惧されるため,侵襲的な治療や薬剤投与などによる介入が困難であることから,例えば産婦人科にて疼痛の訴えがあっても有効な対処がなされていない現状がある.これに対し,非侵襲的な検査や処置が求められており,リハビリテーション医療分野からの介入が求められている.リハビリテーション治療介入を進めるにあたり,評価により明らかとなる個々の身体的特徴や動作戦略に合わせたプログラムが必要となるが,そのためにまず,周産期における一般的な姿勢や歩行の変化について知ることが重要である.

  • 宗田 聡
    2023 年 60 巻 7 号 p. 566-571
    発行日: 2023/07/18
    公開日: 2023/10/24
    ジャーナル 認証あり

    妊娠中の運動は,以前であれば基本的に体を動かさずに安静に過ごすことが妊婦として最もよいと思われていたが,最近では妊娠経過に問題なく,胎児発育も順調で,合併症などがなければ,妊娠中の運動は推奨されている.運動することのメリットはあるが,一方で運動の内容や状況によっては,勧められない運動もある.妊娠中望ましいと考えられているスポーツとしては,ウォーキング,水泳,ジョギング,エアロビクス,ヨガ,ピラティス,固定自転車などである.運動の強度も適切な程度で行うことが推奨されている.

  • 平元 奈津子
    2023 年 60 巻 7 号 p. 572-577
    発行日: 2023/07/18
    公開日: 2023/10/24
    ジャーナル 認証あり

    産褥期の女性は,妊娠・出産に伴うホルモン分泌の変化や身体機能の低下,新たな育児による心身の負荷などにより,さまざまな身体症状を抱える.特に腰痛,骨盤帯痛,尿失禁などの骨盤機能障害や手関節の痛みなどの運動器系の症状が多く,理学療法士をはじめとしたリハビリテーション関連職種による専門的な介入が可能である.直接的な身体症状の治療だけでなく,抱っこや授乳などの正しい育児動作の指導も行うことで,症状の改善と予防が期待できる.産後の女性のリハビリテーションや支援は,専門職で連携をしながら,医療機関だけでなく,行政や地域の子育て支援の場などのさまざまな場面で行うことが必要とされる.

  • 吉田 志朗
    2023 年 60 巻 7 号 p. 578-583
    発行日: 2023/07/18
    公開日: 2023/10/24
    ジャーナル 認証あり

    切迫流産・切迫早産症例では産科医から安静が指示されることが多く,最も安静の程度が高い床上安静とする場合もある.床上安静は,運動機能低下,血栓塞栓症などの身体的リスクの他,日常生活に高度の制限が加えられることに起因する心理的リスクも伴う.しかし,切迫流産・切迫早産症例を安静とすることで早産を回避できるという根拠はない.身体的リスクを考慮すれば,産科とリハビリテーション医療部門が協力し,安静の程度に応じて妊婦に適切な介入を行うことが有益である.本稿では,産科医の立場から,リハビリテーション医療計画を作成するうえで必要と考えられる妊婦の身体特性,および産科とリハビリテーション医療部門の連携の重要性を概説する.

  • 道木 恭子
    2023 年 60 巻 7 号 p. 584-588
    発行日: 2023/07/18
    公開日: 2023/10/24
    ジャーナル 認証あり

    女性脊髄障害者の妊娠期は貧血,尿路感染症,切迫流産,切迫早産,自律神経過緊張反射などの合併症および,排便困難,尿漏れなどのマイナートラブルのリスクがある.また妊娠週数が進むと,日常生活活動や,家事,病院受診などに支障をきたすようになる.

    妊娠に伴う諸問題は,妊娠期の管理や環境整備などによって多少なりとも問題の軽減を図ることはできる.本稿では妊娠に伴う諸問題の実情と相談対応について,妊娠期に焦点を当てて述べる.

  • 滝澤 歩武, 森 まどか
    2023 年 60 巻 7 号 p. 589-594
    発行日: 2023/07/18
    公開日: 2023/10/24
    ジャーナル 認証あり

    遺伝性神経筋疾患においては,近年の遺伝子診断技術の発展に伴い原因遺伝子・病態の解明の進歩が著しい.一方で,小児期から重篤な症状を呈し,有効な治療法が確立していない疾患も少なくない.そのため,これを基礎疾患としてもつ女性が妊娠・出産する際は,適正な遺伝カウンセリングが実施可能で,周産期に母児に起こり得るリスクにも対応可能な施設での管理が望ましい.

  • 近藤 和泉
    2023 年 60 巻 7 号 p. 595-599
    発行日: 2023/07/18
    公開日: 2023/10/24
    ジャーナル 認証あり

    早産児は中枢神経系の完成が十分ではないまま出生してしまうことと,周産期に脳の障害を起こしやすいことから,脳性麻痺および協調性運動発達障害の要素をもつ発達障害を合併することが多く,運動発達が遅延しやすい.運動発達の遅れには,原始反射の消退の遅延,さらに感覚過敏が残存しやすいことなども関係するが,その背景にある中枢神経系の発達を意識して,リハビリテーション医療を進めていく必要がある.

  • 弘中 祥司
    2023 年 60 巻 7 号 p. 600-604
    発行日: 2023/07/18
    公開日: 2023/10/24
    ジャーナル 認証あり

    摂食嚥下機能は,出生後からすぐに生育環境・食環境や口腔の感覚-運動体験を通して,新たな機能を獲得しながら発達する運動機能である.特に哺乳は,母子の共同作業である.そのため,哺乳のリハビリテーション医療とは,親と児の双方に対して行う必要性があり,特に児に対する早期の医療の介入は重要である.

    嚥下機能は乳汁を摂取することに適した乳児嚥下と,食物を嚥下することに適した成人嚥下に分類される.わずか1年足らずの間に乳児は乳汁だけではなく,固形物を飲みこむ機能が獲得される.そのため,特に留意するのは,体重増加不良・哺乳時のむせ(チアノーゼ)・便秘・嚥下障害であり,保護者も含めたチームでの対応が望まれる.

教育講座
症例報告
  • 内尾 優, 鈴木 詩織, 圖師 将也, 中村 花穂, 志真 奈緒子, 猪飼 哲夫
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 60 巻 7 号 p. 615-620
    発行日: 2023/07/18
    公開日: 2023/10/24
    [早期公開] 公開日: 2023/07/14
    ジャーナル 認証あり

    Spinal muscular atrophy is a neuromuscular disease characterized by muscle atrophy and progressive muscle weakness due to the degeneration of motor neurons in the anterior horn of the spinal cord. We report a case of an adult patient with spinal muscular atrophy type II and difficulty holding a sitting position. The patient was evaluated before and after Nusinersen treatment and thereafter periodically for up to 3 months for motor and daily living functions. At 3 months post-treatment, the Expanded version of the Hammersmith Functional Motor Scale and the Revised Upper Limb Module, which are motor function assessment tools for evaluating spinal muscular atrophy, showed an increase of 2 points. Evaluation of daily functioning using the Canadian occupational performance measure demonstrated improvements in eating and computer finger manipulation, and these improvements were considered important in daily lives by the patient. This report shows that the Nusinersen treatment improved motor and daily life functions in a patient with spinal muscular atrophy and low motor function. The report also concludes that rehabilitation evaluation for spinal muscular atrophy should include a disease-specific assessment of motor function, combined with an assessment focusing on physical symptoms and daily life functions to capture clinical changes that are responsive to individual patients with spinal muscular atrophy.

Secondary Publication
  • 村山 稔, 山本 澄子
    2023 年 60 巻 7 号 p. 621-632
    発行日: 2023/07/18
    公開日: 2023/10/24
    ジャーナル 認証あり

    目的:先行研究では,短下肢装具の使用が前脛骨筋の廃用性萎縮を引き起こす可能性が示唆されている.この研究の目的は,底屈制動を有する短下肢装具を2カ月間使用して,回復期の脳卒中患者の歩行と筋活動の変化を調査することであった.

    方法:対象者は,底屈制動を有する短下肢装具を処方された回復期の脳卒中患者19名であった.足関節と下腿部の傾斜角度,および10 mの歩行テスト中に前脛骨筋とヒラメ筋の筋活動を計測した.計測は3回行い,1回目が装具完成の2週間後,2回目が1カ月後,3回目が2カ月後であった.歩行パラメータの変化は,初回と1カ月後の計測の間,および1カ月後と2カ月後の計測の間で分析した.

    結果:1カ月後と2カ月後の間では,荷重応答期における足関節の底屈角度と下腿部の前傾角度,および前脛骨筋の活動比率が有意に増加した.

    結論:底屈制動を有する短下肢装具によって誘発される底屈運動は,荷重応答期における前脛骨筋の活動比率を増加させる可能性がある.

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