The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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59 巻, 7 号
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特集『外科治療における術前リハビリテーション(プレハビリテーション)治療』
  • 松村 純, 加賀谷 斉
    2022 年 59 巻 7 号 p. 669-673
    発行日: 2022/07/18
    公開日: 2022/09/05
    ジャーナル フリー

    大腿骨近位部骨折受傷後には,できるだけ早期に手術を行うことが推奨されているが,さまざまな理由により術前待機期間が長くなってしまうことがある.術前リハビリテーション治療は周術期合併症の予防のために重要となる.術前では患部の疼痛のために行えることに限りがあるが,筋力の維持や適切なポジショニングによる総腓骨神経麻痺や肺炎,褥瘡の予防に努める必要がある.また,高齢者に多い本疾患では病前の歩行能力や日常生活活動,認知症の有無を把握することで適切なゴール設定を行い,術後リハビリテーション治療を円滑に進められるようにしたい.

  • 瀬田 拓, 飯島 進乃, 原 毅
    2022 年 59 巻 7 号 p. 674-680
    発行日: 2022/07/18
    公開日: 2022/09/05
    ジャーナル フリー

    開胸手術周術期に対するリハビリテーション医療の最終目標は,退院後生活のQOL向上である.術前治療は,オリエンテーション,術前評価,術前指導で構成され,術前の患者教育とコンディショニングによって術後早期離床を実現させることで,術後合併症を予防することを狙う.最近では,多職種による多面的サポートである術前外来の中で行われることが増えた.術前に限った治療の有効性については,データの蓄積がまだ不十分なのが現状である.エビデンスの蓄積,術後合併症予防,退院後生活における活動やQOL向上にも貢献できる術前リハビリテーション治療プログラムの開発が課題である.

  • 村井 昂太, 坂野 元彦, 向井 裕貴, 田島 文博
    2022 年 59 巻 7 号 p. 681-686
    発行日: 2022/07/18
    公開日: 2022/09/05
    ジャーナル フリー

    近年,がん診療においても周術期のリハビリテーション治療のさまざまな有効性が示されており,術後早期からのリハビリテーション治療は術後合併症予防や入院期間の短縮のためすでに多くの病院で普及している.医療の発展によりがん診療も多くの面で発展しつつあるが,高齢化社会の進行に伴い,がん患者が併存疾患を複数抱えている場合や身体機能の低下を伴っている場合も珍しくない.そのため,術前環境の最適化や術後を見すえた身体機能強化や指導のためにも術前リハビリテーション治療が行われることが望まれつつある.本稿では,消化器がんに対する術前リハビリテーション治療の概要と和歌山県立医科大学付属病院での取り組みについて概説する.

  • 位田 みつる, 川口 昌彦
    2022 年 59 巻 7 号 p. 687-692
    発行日: 2022/07/18
    公開日: 2022/09/05
    ジャーナル フリー

    低侵襲手術や短時間作用型の薬剤の登場により手術後のアウトカムは向上している.患者アウトカムを向上させる取り組みの次なるターゲットは手術決定から手術が実施されるまでの期間であり,この期間に実施される取り組みをプレハビリテーションと呼ぶ.運動療法や栄養療法などが含まれ多くの研究が実施されているが,一貫性のある結論は得られていない.適正な対象患者の選択と介入方法の決定に加えて,遵守率の評価方法が問題となる.本稿では,プレハビリテーションの概要と当院で実施している取り組みを紹介する.

  • 河野 崇
    2022 年 59 巻 7 号 p. 693-697
    発行日: 2022/07/18
    公開日: 2022/09/05
    ジャーナル フリー

    超高齢社会に突入したわが国では,高齢者が手術を受ける機会が増加している.術後せん妄は,高齢者に多く予後とも関連する術後合併症である.その病態には,ミクログリアの過剰活性に伴う脳内神経炎症が関与する.ミクログリアは老化により炎症反応性が亢進することから高齢者では脆弱性が高まる.術前リハビリテーション治療は,老化ミクログリアの炎症反応性を軽減することで術後せん妄を予防できることが動物研究で示され,臨床研究でも有用性を示唆する報告がなされている.本稿では,術後せん妄に焦点を当て,術前リハビリテーション治療が高齢手術患者の回復の質を高める有用な方策となり得るか,現時点での課題と今後の展望も合わせて解説したい.

  • 中出 泰輔
    2022 年 59 巻 7 号 p. 698-704
    発行日: 2022/07/18
    公開日: 2022/09/05
    ジャーナル フリー

    心肺運動負荷試験(CPET)は客観的に患者の運動耐容能を評価することが可能である.術前にCPETを実施することにより,患者の術前リスク評価,治療方針の決定,併存している疾患の同定および術後起こり得る合併症の予測が可能となる.また,術前に高強度インターバルトレーニングや有酸素運動などの術前リハビリテーション治療を行うことにより,術後の合併症発生リスクを低減させる可能性がある.

  • 谷口 英喜
    2022 年 59 巻 7 号 p. 705-713
    発行日: 2022/07/18
    公開日: 2022/09/05
    ジャーナル フリー

    超高齢社会に突入したわが国では,治療技術の向上により,高齢患者への手術適応が以前にも増して拡大した.高齢患者では,呼吸循環器系の合併症に加え,認知機能の低下やサルコペニアおよびフレイルなどが,周術期に問題視される.ERASプロトコルでは,高齢者に対する術前環境適正化策の1つとして,プレハビリテーションが推奨されるようになった.プレハビリテーションでは,運動療法,心理的サポートおよび栄養サポートの3つの介入を行う.栄養療法に関しては,一般的な術前栄養介入と異なり,介入期間が数週間に及び,投与する栄養素もホエイプロテインを中心としたたんぱく質が選択される.しかし,わが国では,いまだ実施に向けた課題が多く残る.

原著
  • 春山 幸志郎, 川上 途行, 宮井 一郎, 藤原 俊之
    原稿種別: 原著
    2022 年 59 巻 7 号 p. 714-724
    発行日: 2022/07/18
    公開日: 2022/09/05
    [早期公開] 公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    目的:COVID-19パンデミックが脊髄小脳変性症(SCD),多系統萎縮症(MSA)患者の生活機能のうち心身機能・活動・参加の各要素に及ぼした影響を明らかにすることを目的とした.

    方法:全国患者会会員1,000名を対象として2020年11~12月に質問紙調査を実施し,回答が得られたSCDおよびMSA患者460名を分析した.多目的データから基本情報に加え,COVID-19に関連する設問を抽出した.COVID-19に関連した各生活機能への全般的な影響は7点尺度で回答を得た.年齢,要介護認定取得状況,リハビリテーション治療機会の制限に基づいて2群に層別化し,χ2検定を用いて各生活機能への影響の群間差を検証した.

    結果:SCDで54%,MSAで46%が参加制約を報告し,心身機能低下と活動制限は両疾患とも約20%で報告された.要介護認定未取得または要支援群では要介護群と比較してSCDで心身機能低下,MSAで参加制約を報告した.COVID-19パンデミックの影響として,約24%の対象者でリハビリテーション実施機会の制限が報告され,制限のあったMSA患者では心身機能低下の報告が多くを占めた.

    結論:COVID-19パンデミックは,特に生活機能のうち参加の要素に影響を及ぼしていた.要介護認定が軽度あるいはリハビリテーション治療機会の制限がある患者では心身機能あるいは参加の要素に影響を及ぼしている実態が示された.

  • 福田 航, 河村 顕治, 横山 茂樹, 片岡 悠介, 五味 徳之
    原稿種別: 原著
    2022 年 59 巻 7 号 p. 725-731
    発行日: 2022/07/18
    公開日: 2022/09/05
    [早期公開] 公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,前十字靱帯(ACL)再建術後に同側下肢のACL再損傷が発生する者としない者で術前の片脚スクワット動作中の膝関節可動域(ROM)とそれらの変動係数(CV)に違いがあるかどうかを明らかにすることである.

    方法:対象は非接触型のACL損傷者38名である.全例がACL再建術の前日に片脚スクワット動作を行った.3次元動作解析装置を用いて片脚スクワット中の膝関節ROMとそれらのCVを算出した.ACL再建術後約30カ月後までに同側下肢のACL再損傷の発生について調査し,術後再損傷群と術後非損傷群で膝関節ROMとそれらのCVを比較した.

    結果:術後再損傷群は9名,術後非損傷群は29名であった.術後再損傷群は術後非損傷群よりも膝関節内外旋ROMが大きく(再損傷群5.8±2.0°,非損傷群3.5±1.4°,p=0.001),膝関節内外反CVが大きかった(再損傷群26.7±20.6%,非損傷群11.2±8.8%,p=0.029).

    結論:ACL再建術前の片脚スクワット動作中の膝関節内外旋ROMと膝関節内外反CVはACL再損傷予防を検討するうえでの評価のポイントになると示唆された.

  • 岩井 慶士郎, 大熊 諒, 高橋 仁, 渡邉 修, 安保 雅博
    原稿種別: 原著
    2022 年 59 巻 7 号 p. 732-741
    発行日: 2022/07/18
    公開日: 2022/09/05
    [早期公開] 公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    目的:脳損傷者の自動車運転再開可否判定におけるWAIS-Ⅲスコアの予測能について検討し,カットオフ値を算出して臨床的な妥当性を検証することである.

    方法:対象は,運転再開を希望し当院を受診した脳損傷者71名(運転再開群43名,運転非再開群28名)とした.まず,群間比較を行い運転再開可否判定に関連するスコアを調査した(Mann-WhitneyのU検定,有意水準5%).次に運転再開可否判定の予測精度を調査するためreceiver operating characteristic(ROC)解析を実施し,予測精度とカットオフ値を算出した.

    結果:ROC解析の結果,曲線下面積が0.7(中等度の予測精度)を超えた項目は,全検査IQ(FIQ),動作性IQ(PIQ),群指数の知覚統合(PO)であった.そしてPIQが98.5,FIQが107,POが107を統計的なカットオフ値とした場合,特異度が高く(カットオフ値を超えると運転再開の可能性が高い),感度が低い(運転は控えるべき患者は見逃す可能性が高い)結果となった.

    結論:WAIS-ⅢのFIQ,PIQ,および,群指数のPOのカットオフ値は,脳損傷者の運転再開の予測妥当性としては不十分であった.しかし,3つすべてのスコアが70未満である場合,運転再開に至らない確率は75%であり運転を控えるべき指標の1つとなることが示唆された.

症例報告
  • ―1症例への言語聴覚療法を通して―
    岡本 梨江, 寺島 さつき, 小口 和津子, 水谷 瞳, 荒川 裕子, 栗田 浩
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 59 巻 7 号 p. 742-747
    発行日: 2022/07/18
    公開日: 2022/09/05
    [早期公開] 公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    We present the case of an infant with oral cancer that developed in the 3rd month of life, following which oral feeding became difficult. In the 11th month of life, the right side of the mandible was resected surgically and movement on the right side of the mandible was restricted because of the compression caused by the rectus abdominis myocutaneous flap used for reconstruction. We initiated rehabilitation for the initial acquisition of eating functions so that the patient would be able to ingest baby food despite having an organic disorder in the oral cavity.

    Postoperative dysphagia in adult oral cancer is an organic disorder that occurs after acquisition of a normal swallowing pattern, whereas postoperative dysphagia in pediatric oral cancer is an organic disorder that occurs during the initial acquisition of eating functions. At present, the rehabilitation approach has not been established.

    From 12 months of age in this patient, we evaluated training methods that were easily accepted by children, including postoperative oral function evaluation, with the goal of the initial acquisition of eating functions. We approached postoperative wound contracture prevention with a focus on approaches to lip insufficiency, predation, and tongue/mandibular movements. In addition, we focused on family guidance and tried to support the caretaker's correct use of methods established during training.

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