The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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60 巻, 3 号
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巻頭言
特集『末梢神経障害のリハビリテーション医療』
  • 正門 由久
    2023 年 60 巻 3 号 p. 184-191
    発行日: 2023/03/18
    公開日: 2023/06/26
    ジャーナル フリー

    末梢神経障害は,手足のしびれや筋力低下などを呈し,日常診療において非常に多く遭遇する疾患である.末梢神経障害の原因は多種多様であり,詳細な病歴聴取および全身の診察(併存する疾患や随伴症状のチェック),神経学的所見の評価に基づき,種々の検査を行うことが診断に重要である.神経伝導検査は主に大径有髄神経の機能を反映しており,一方アミロイドニューロパチーなどの小径線維優位型の評価法(自律神経機能評価)が必要である.

    治療としては,ステロイド,IVIg,血漿交換などが行われてきたが,効果が十分でない症例もあり,近年抗補体薬などが免疫介在型末梢神経障害に用いられるようになってきており,有用な効果を示している.

  • 山中 義崇
    2023 年 60 巻 3 号 p. 192-196
    発行日: 2023/03/18
    公開日: 2023/06/26
    ジャーナル フリー

    免疫性末梢神経障害は,自己免疫の機序により末梢神経の髄鞘あるいは軸索が障害をきたすことにより生じる疾患群である.代表的な疾患にGuillain-Barré症候群や慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーがあり,抗補体薬や免疫グロブリン皮下注射などの新規薬物療法の開発が急ピッチで進められている.リハビリテーション治療の基本方針は,急性期は二次障害予防を主に実施し,病勢のコントロールがついたら速やかに低負荷高頻度の筋力増強訓練を開始することである.実際にはoverwork weaknessを心配するあまりに,必要な運動負荷に達していない症例も少なくない.疲労の評価を行いながら,適切なタイミングで高強度リハビリテーションプログラムに移行することが望まれる.

  • 大竹 弘哲
    2023 年 60 巻 3 号 p. 197-201
    発行日: 2023/03/18
    公開日: 2023/06/26
    ジャーナル フリー

    遺伝性末梢神経障害として,Charcot-Marie-Tooth病(CMT)と家族性アミロイドーシスについて解説した.

    CMTは緩徐進行性の運動感覚ニューロパチーを呈し,緩徐進行性にADLが低下し,有効な治療は確立されていない.CMTに対する筋力トレーニングが過用を招くとする報告がみられ負荷量を調整すべきであるが,有酸素運動やストレッチは有効とされている.一般的に生命予後には影響が少ない疾患であるが,長い罹病期間における日常的な生活の管理が重要で,肥満や糖尿病などの生活習慣病に伴う心血管系の合併症を避けていきたい.

    一方,家族性アミロイドポリニューロパチーは無治療の場合,10~15年で致命的な状態に陥る心筋障害を伴い,心臓リハビリテーションに準じた対応が必要である.左室駆出率を保ちつつ心不全に至ることが多いとされ,心肺運動負荷試験の結果をもとにして訓練を進めることが望ましい.

  • 尼子 雅敏, 田村 吏沙
    2023 年 60 巻 3 号 p. 202-209
    発行日: 2023/03/18
    公開日: 2023/06/26
    ジャーナル フリー

    絞扼性神経障害は,末梢神経が生理的狭窄部において生じる神経障害の総称である.その病態は物理的圧迫だけでなく,牽引,血流障害,摩擦など多岐にわたる.外科的に神経障害因子を除去することが最も有効な治療法であるが,その前に非侵襲的に末梢神経の環境改善を行い,神経再生をもたらすことで症状の改善が期待できる.これらの保存療法で改善が得られない場合は,神経剥離術が適応となる.しかし,特に運動障害が長引いて筋萎縮を生じると神経剥離術では機能改善が得られず,腱移行術などの再建手術を要することも少なくない.リハビリテーション科医は保存療法のみならず手術療法にも精通し,適切な治療適応を選択することが重要である.

  • ―臨床応用と末梢神経刺激に特化した刺激装置の開発―
    出江 紳一
    2023 年 60 巻 3 号 p. 210-217
    発行日: 2023/03/18
    公開日: 2023/06/26
    ジャーナル フリー

    20 Hz以上で反復するパルス磁場による四肢・体幹への刺激が局所の疼痛を緩和することが報告されている.作用機序として局所作用だけでなく感覚運動野のmaladaptive changeの是正も考えられている.従来の研究では経頭蓋磁気刺激装置が用いられていたが,現場のニーズに基づいて新しい磁気刺激装置が開発された.磁気刺激の無痛性と深達性は筋骨格系の疼痛治療に有利であると思われる.

  • 和田 太
    2023 年 60 巻 3 号 p. 218-221
    発行日: 2023/03/18
    公開日: 2023/06/26
    ジャーナル フリー

    末梢神経障害に対する装具は,リハビリテーション治療を進めていくうえで,重要な役割を果たすが,この領域について取り上げられる機会は少ない.臨床研究についても十分ではなく,その効果について不明な点も多い.末梢神経障害を引き起こす原因はさまざまであり,それぞれの病態や神経障害のパターンにより装具の適応,活用も異なっている.特に,単神経麻痺と多発神経障害では装具の目的や用いる時期が大きく異なっている.多発神経障害では,単に運動麻痺だけでなく,感覚神経や自律神経も大きく影響し,糖尿病性では潰瘍の予防や治療に装具が大きくかかわってくる.

教育講座
原著
  • ―在宅訓練の実行可能性に関する観察研究―
    肥田 理恵, 沢田 よしみ, 藤嶋 亮太, 森瀬 脩平, 齋藤 亮, 小山内 俊久
    原稿種別: 原著
    2023 年 60 巻 3 号 p. 235-247
    発行日: 2023/03/18
    公開日: 2023/06/26
    [早期公開] 公開日: 2023/03/23
    ジャーナル フリー

    目的:乳房再建術のリハビリテーション治療については報告が少なく,標準的なプログラムもない.本研究の目的は,われわれが作成したプログラムの実行可能性を検討することである.また,術後の身体機能と生活の質(QOL)の推移も報告する.

    方法:2020年9月から2021年10月に,当院で横軸型腹直筋皮弁または深下腹壁動脈穿通枝皮弁による再建術を受けた乳がん患者15人を前向きに評価した.プログラムはプレハビリテーションから始まり,入院中はセラピスト監視下訓練,術後12週目までは在宅自主訓練とした.自己記入の訓練実施表から実施率と実行上の課題を調査した.そして術後4,8,12,24週にセラピストが関節可動域,筋力,上肢機能障害,健康関連QOL,生活活動などを評価して術前と比較した.

    結果:観察期間中にプログラムに起因する有害事象は認めず,全員が離脱なくプログラムを完遂した.在宅訓練実施率は71.1%だったが,経時的に低下する傾向があった.上肢機能は術後8週で回復したが,体幹機能,QOL,生活活動は術後12週でも術前に復していなかった.患者の意見には自主訓練の有用性を評価するものがある一方で,訓練順序の効率の悪さや復職後の実施困難さを指摘するものがあった.

    結論:セラピストによる定期的評価と指導は乳房再建術後の在宅訓練の継続を可能とする.プログラムに基づいたリハビリテーション治療は術後の早期において,社会復帰を促進しQOL向上に寄与する可能性がある.

短報
  • 笠井 史人, 藤原 大, 垣田 真里, 吉田 輝, 松元 秀次, 川上 途行, 池田 巧, 平岡 崇, 田島 文博
    原稿種別: 短報
    2023 年 60 巻 3 号 p. 248-252
    発行日: 2023/03/18
    公開日: 2023/06/26
    [早期公開] 公開日: 2023/03/23
    ジャーナル フリー

    目的:リハビリテーション科は日本専門医機構が認定する基本19領域の1つであるが,全国82大学医学部にリハビリテーション医学講座は44大学にしか設置されておらず,リハビリテーション医学の教育が不十分なまま基本診療科として選択することに不安を抱えている医師は多い.そんな不安を払拭するために2017年から「リハビリテーション科医になろうセミナー」が開催されているが,それらの結果が専攻医数にどのように現れているのかを調査することを目的とした.

    方法:過去の出席者数を調べ,そのうち何人がリハビリテーション科専攻医になったかを追跡調査した.

    結果:5年間のセミナー参加者数は589名,Webで開催された2020年度と2021年度のオンデマンド視聴者数は554名であった.セミナーを開催後にリハビリテーション科専門研修を開始した医師471名中,116名が本セミナーに参加もしくはWeb視聴しており,24.63%を占めた.その割合は年々増加しており,2022年応募の専攻医では36.81%が参加しており,複数回参加者も増えていた.専攻医数は著しく増加しており,2018年度の74名に対し2022年は144名と倍増している.

    結論:当セミナーでリハビテーション科医のことを深く知り,複数回参加しながら想いを膨らませて,専攻を開始したケースも多い.企画を開始して5年が経ち,その成果が今まさに結実していると考える.

Secondary Publication
  • ―重回帰分析研究―
    小山 哲男, 内山 侑紀, 道免 和久
    2023 年 60 巻 3 号 p. 253-261
    発行日: 2023/03/18
    公開日: 2023/06/26
    ジャーナル フリー

    背景:脳卒中患者の帰結を評価するため,拡散テンソル法MRIによる皮質脊髄路のfractional anisotropy(FA)が用いられている.また,年齢や脳卒中病型も帰結に影響する可能性がある.本研究では,年齢,脳卒中病型(脳出血/脳梗塞),病巣半球および非病巣半球の大脳脚FAと帰結の関連を検討した.

    方法:脳卒中患者80例(脳出血40例,脳梗塞40例)を対象とした.これらの患者で発症後14~21日目に拡散テンソル法FA脳画像を取得した.病巣半球と非病巣半球の大脳脚FA値を抽出し,その比(rFA)を算出した.回復期リハビリテーション病院退院時のBrunnstrom Recovery Stage(BRS),Functional Independence Measure運動項目合計(FIM-motor),総入院日数を帰結の指標とした.ステップワイズ増加法による変数選択を行う重回帰分析を用いて,rFA,非病巣側FA,年齢,脳卒中病型と,帰結指標の関連をモデル化した.

    結果:BRS肩/肘/前腕とBRS手/指のモデルはrFAと非病巣側FAの2因子により構成された.BRS下肢のモデルにはこれらに脳卒中病型が加わり,脳出血が重症と関連した.FIM-motorおよび総入院日数のモデルはrFA,非病巣側FAと年齢の3因子により構成された.すべての帰結指標に対するrFAの影響は,非病巣半球FAよりも強かった.FIM-motorについて年齢の影響はrFAとほぼ同等に強かった.

    結論:rFAで示される皮質脊髄路の神経損傷がさまざまな帰結指標に最も強く影響していた.その一方,FIM-motorにより評価される日常生活動作の低下は年齢を含む,より広範な要素と関連していた.

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