The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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59 巻, 8 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
巻頭言
特集『ICFの可能性と活用法』
  • 才藤 栄一, 向野 雅彦
    2022 年 59 巻 8 号 p. 764-768
    発行日: 2022/08/18
    公開日: 2022/10/24
    ジャーナル フリー

    ICFは,生活機能の枠組み概念(生物心理社会的統合モデル)であり,膨大な数の関係用語を集めた辞書でもあって,特に国際比較を考える場合,共通用語化に役立つ.ICFモデルは,健康状態を心身機能・身体構造,活動および参加という生活機能の3つの要素から説明し,さらに生活機能へ背景因子(環境因子と個人因子)が影響することを示す.ICF項目(用語)は,全部で1,600以上から構成される.活用推進に向け,少数項目からなるICFコアセットが用意されてきた.また,ICD-11では生活機能評価に関する補助セクション(V章)が登場した.採点法の明瞭化,既存スケールの換算的利用などの臨床での取り組みが進んでいる.

  • 山田 深
    2022 年 59 巻 8 号 p. 769-774
    発行日: 2022/08/18
    公開日: 2022/10/24
    ジャーナル フリー

    WHOはWHO国際分類ファミリー(WHO Family of International Classifications:WHO-FIC)にオントロジーの考え方を導入し,Webでの利用を前提とした現代化を推し進めている.ICDの第11回改訂に合わせる形でWHO-FIC Foundationが構築され,ICFはLinearizationの1つとして整理された.また,年次の改正作業はWHO-FICメンテナンスプラットフォームに統合されている.ICD-11第V章を含めた利用の促進,および先行するICD-11に倣ったレファレンスガイドやコーディング・ツールなどの整備が今後の課題である.

  • 向野 雅彦
    2022 年 59 巻 8 号 p. 775-781
    発行日: 2022/08/18
    公開日: 2022/10/24
    ジャーナル フリー

    2019年に採択されたICD-11には生活機能評価に関する補助セクションとして “V章” が新設された.V章は主に世界保健機関(WHO)の作成した生活機能評価ツールのWHODAS 2.0と,ICFの抜粋版である “一般的機能の構成要素” の項目群から構成されている.このV章を国内で適用していくにあたり,厚生労働省の設置した生活機能分類普及推進ワーキンググループを中心に,臨床における使用をサポートするためのツールとして簡潔で直感的な説明文の作成,採点リファレンスガイドの作成が実施されてきた.今後,使用目的に応じた項目セットの作成など,さらに実用を推進するための取り組みが求められる.

  • 加藤 真介
    2022 年 59 巻 8 号 p. 782-789
    発行日: 2022/08/18
    公開日: 2022/10/24
    ジャーナル フリー

    国際疾病分類(International Classification of Diseases:ICD)は,死因の分類から発展してきた経緯があり,「活動と参加」の維持・回復を主な治療目標とするリハビリテーション医療の現場で使いやすいものではなかった.臨床家主導で改訂されたICD-11はIT化された系統だった分類となり,extension codeによる病態のより詳細な表現や,double codingによる並存症の記載も可能となった.さらに,ICFの概念的枠組みに基礎を置いているWHODAS 2.0がV章として収載されており,ICDとICFとの緊密な連携が期待できる.

  • 大夛賀 政昭
    2022 年 59 巻 8 号 p. 790-796
    発行日: 2022/08/18
    公開日: 2022/10/24
    ジャーナル フリー

    ICFは,幅広いヘルスケア領域での実践や研究での活用が期待されているが,これを構成する項目は約1,600コードも存在し,評価のルールも複雑であるため,数量化された情報を収集するツールとしてICFを扱うには課題が多い状況にある.一方で,既存の評価スケールや臨床情報をICFの概念モデルやICF項目によって整理することができれば,ICFに基づく情報を収集することができることから,この取り組みに関する報告が海外で数多く実施されている.しかし,国内では標準的ルールに準じたICFによる情報整理の取り組みはほとんど実施されていない.そこで本稿では,国内外で実施されたリコードの事例およびリンキングルールを紹介し,今後のICFを活用した既存情報整理について展望を行った.

  • 井上 剛伸
    2022 年 59 巻 8 号 p. 797-804
    発行日: 2022/08/18
    公開日: 2022/10/24
    ジャーナル フリー

    支援機器は,国際生活機能分類(ICF)では環境因子に位置づけられ,生活機能の維持,向上に重要な役割を果たす.また,支援機器と,心身機能・身体構造および活動・参加との関係は機器の性格により異なるため,その点について,歩行支援機器を例として解説した.ICFの活用例として,心身機能・身体構造にて利用者の特徴を表し,活動・参加によって機器の利用場面を表すことで,支援機器のマッピングを行った事例を示した.このような対応表をもとに,支援機器の選定・導入に役立てるガイドの概要についても紹介した.急速に進展するデータ社会の流れの中で,さらなるICFの活用も広がる可能性もある.

  • 河埜 康二郎, 村井 千賀, 横井 安芸, 遠藤 千冬, 宮口 英樹
    2022 年 59 巻 8 号 p. 805-810
    発行日: 2022/08/18
    公開日: 2022/10/24
    ジャーナル フリー

    精神科領域における作業療法では,基本的能力,応用的能力,社会的適応能力という視点から対象者の生活機能を捉え,制度や社会資源の利用など,対象者の個人特性に応じた治療および援助を行っている.精神科作業療法を効果的に実施するためには,対象者の生活を包括的に捉えるための作業療法計画が必要であり,日本作業療法士協会は精神科作業療法計画にICFモデルを活用することを推奨している.本稿では,日本作業療法士協会が行った実態調査の結果を踏まえ,ICFコードを活用した精神科作業療法計画について解説する.

  • 上出 杏里
    2022 年 59 巻 8 号 p. 811-816
    発行日: 2022/08/18
    公開日: 2022/10/24
    ジャーナル フリー

    ICFは障害に対する医学モデルと社会モデルの統合モデルである.それゆえに,障害者の「活動と参加」を高めるためにパラスポーツを介して環境因子の課題解決に取り組むことが,障害者個人の問題としてwell-beingやエンパワーメントにつながるだけでなく,人々の多様なあり方を認め合う共生社会の実現につながると考えられる.スポーツ庁によるスポーツ基本計画をはじめとして,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を機に展開されている「#WeThe15」の人権活動,「I'mPOSSIBLE」によるパラリンピック教育,持続可能な開発目標「SDGs」への取り組みが性別や年齢,障害の有無,地域・国の事情にかかわらず,人々の「活動と参加」の可能性を拡げていくことが期待される.

教育講座
原著
  • 小山 照幸
    原稿種別: 原著
    2022 年 59 巻 8 号 p. 825-835
    発行日: 2022/08/18
    公開日: 2022/10/24
    [早期公開] 公開日: 2022/08/17
    ジャーナル フリー

    目的:わが国は世界に先駆けて高齢者人口が増加している.それに伴い高齢患者も増加しており,リハビリテーション治療は重要である.リハビリテーション関連医療費も増加しているが,どのような年齢層にリハビリテーション治療が実施されているかについては知られていない.そこで今回,保険診療におけるリハビリテーション治療患者の年齢分布を調査したので報告する.

    調査方法:厚生労働省が公表しているNDBオープンデータから,各疾患別リハビリテーション料の「性年齢別算定単位数」について2014(平成26) ~2019(平成31)年度の6年間の年次推移を検討した.

    結果:心大血管疾患リハビリテーション料は80歳代前半にピークがあり,それまでは男性が約2倍多かった.脳血管疾患等リハビリテーション料は80歳代前半にピークがあり,男性のピークは70歳代後半でそれ以下の年代では男性のほうが多かった.廃用症候群リハビリテーション料は80歳代後半にピークがあり,女性のほうが多かった.運動器リハビリテーション料の算定単位数が最も多く,80歳代前半にピークがあり,女性は男性の2.5倍実施されていた.呼吸器リハビリテーション料は80歳代後半にピークがあり,男性のほうが多かった.がん患者リハビリテーション料は70歳代後半にピークがあり,男性が女性の約2倍であった.

    結論:リハビリテーション治療実施患者の年齢のピークは80歳代であり,年々増加していた.

  • ―決定木分析を用いた検討―
    星野 高志, 小口 和代, 伊藤 正典, 小笠原 沙映, 田中 元規, 松田 華加
    原稿種別: 原著
    2022 年 59 巻 8 号 p. 836-846
    発行日: 2022/08/18
    公開日: 2022/10/24
    [早期公開] 公開日: 2022/08/17
    ジャーナル フリー

    目的:回復期リハビリテーション病棟入院中の片麻痺患者における病棟内杖歩行自立の客観的判定基準を,決定木分析を用いて明らかにする.

    方法:対象は3年間の脳卒中片麻痺患者のうち,退院時の杖歩行が監視以上の者とし,病棟内杖歩行自立群と非自立群に分けた.評価項目はSIAS下肢運動合計 (SIAS-LE),Trunk Control Test (TCT) ,Berg Balance Scale (BBS) ,10 m歩行速度 (m/s),入院時FIM認知合計 (FIM-C)とし,自立群は歩行自立時,非自立群は退院時の評価を用いた.さらに歩行自立後の転倒状況も調査した.統計分析は単変量解析および決定木分析を行った.

    結果:自立群101名(平均68±13歳),非自立群47名(平均79±12歳)で,歩行速度,TCT,BBS,FIM-Cに有意差を認めた.決定木分析では歩行速度,FIM-C,BBSの順に選択され,①歩行 ≧ 0.42 m/s,FIM-C ≧ 22点(自立者割合97%/転倒者割合5%),②歩行 ≧ 0.42 m/s,FIM-C<22点,BBS ≧ 50点 (100%/0%),③歩行 ≧ 0.42 m/s,FIM-C<22点,BBS<50点 (52%/8%),④歩行<0.42 m/s,BBS ≧ 28点 (49%/28%),⑤歩行<0.42 m/s,BBS<28点 (0%/0%)に分けられた.転倒者割合は全体で8.9%,うち④が最も高かった.

    結論:歩行自立には歩行速度,FIM-C,BBSの順に関与し,各基準値が明らかになった.歩行速度の低い者は易転倒傾向であり,特に慎重な自立判断が求められる.

症例報告
  • 武藤 百合子, 大森 まいこ, 益田 結子, 櫛田 幸, 小林 由紀子, 辻 哲也
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 59 巻 8 号 p. 847-852
    発行日: 2022/08/18
    公開日: 2022/10/24
    [早期公開] 公開日: 2022/08/17
    ジャーナル フリー

    Rehabilitation therapy is important for patients with cancer, especially for those with terminal stage cancer who have physical malfunction and psychological distress. By setting goals according to patients' wishes, rehabilitation therapy may positively affect physical activity. In this study, we reported the implementation of rehabilitation training outside the hospital as a rehabilitation treatment. A 64-year-old man was diagnosed as having multiple brain metastases from lung cancer. The patient was admitted to the palliative care ward without active treatment according to his wish and was referred to the rehabilitation department. The patient had mild right hemiplegia at the time of initial examination and therefore required assistance for walking and eating. On the 51st day of the intervention, he requested to visit the ramen restaurant of his friend, which recently opened. Going out independently to the restaurant served as his practical training for improving his quality of life (QOL). This outing further expanded his activities of daily living, which made him motivated to treat his cancer. On the 71st day of intervention, he was discharged from the hospital and underwent outpatient examination. Therefore, the role of treatment in palliative care is to achieve the highest possible QOL. In this case, providing options according to the patients' wishes, such as outing, is believed to be effective in cancer treatment

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