The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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60 巻, 8 号
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巻頭言
特集『排尿・排便の障害学』
  • 乃美 昌司, 仙石 淳
    2023 年 60 巻 8 号 p. 654-664
    発行日: 2023/08/18
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    排尿を司る膀胱・尿道(下部尿路)と排便を司る大腸・肛門は,ともに中枢神経と末梢神経系の制御を受けている.そして,その神経障害のレベルにより,前者は橋上型,核上型・橋下型,および核・核下型の神経因性下部尿路障害(神経因性膀胱),後者は反射性大腸および弛緩性大腸のタイプの神経因性大腸機能障害を呈することになる.

    排尿障害と排便障害は,それぞれ大きく排尿障害(尿排出障害)と蓄尿障害,および便秘と便失禁とに分けられるが,その原因は神経因性の機能障害に限らず,ADL障害も含めて多岐にわたり,また症例ごとに種々の程度に複合している.従って,その評価においては症例ごとに全身的な検索が必要となる.

  • 青木 芳隆, 阿部 由依
    2023 年 60 巻 8 号 p. 665-672
    発行日: 2023/08/18
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    尿失禁はQOLのみならず,人間の尊厳にもかかわる問題である.多職種連携で行う排尿自立支援の普及とともに,尿失禁を含む排尿障害を有する患者に対して,泌尿器科治療とリハビリテーション医療の連携は重要なものとなっている.泌尿器科で行う生活指導,薬物療法だけでは改善しないこともあり,トイレまでの移動,トイレ移乗,トイレ内での着脱衣などができるようにリハビリテーション治療を行う必要があることも多い.さらに,骨盤底リハビリテーションの1つである骨盤底筋トレーニング(PFMT)は,腹圧性尿失禁だけでなく過活動膀胱症状にも有効であり,現在までに多くのエビデンスが蓄積されており,それらを本稿で紹介する.

  • 鈴木 明日香, 横山 修
    2023 年 60 巻 8 号 p. 673-677
    発行日: 2023/08/18
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    膀胱での蓄尿・排尿のメカニズムには脊髄の排尿中枢が大きく関与している.そのため脊髄が損傷を受けると,排尿筋括約筋協調不全となり,排尿障害が生じる.脊髄損傷急性期には尿道カテーテルを留置するが,受傷数カ月後には膀胱機能を評価し,適切な排尿方法を選択していく必要がある.排尿方法は自排尿,清潔間欠導尿,カテーテル留置の3つが挙げられる.膀胱機能に応じて,薬剤の内服やボツリヌス治療も有効である.適切な尿路管理がなされないと,種々の泌尿器科的合併症をきたす恐れがあり,QOLに多大な影響を及ぼす.脊髄損傷患者は正しい排尿管理方法を身に着け,社会で実践していく必要がある.

  • 松田 恭平, 植村 修
    2023 年 60 巻 8 号 p. 678-688
    発行日: 2023/08/18
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    難治性排便障害の1病型として神経因性腸機能障害(neurogenic bowel dysfunction:NBD)が挙げられる.NBDは多くの脊髄損傷患者に合併し,排便障害に留まらず心身機能やquality of life(QOL)に多大な影響を与える.これまでの管理プログラムはエキスパートコンセンサスに基づいたものが主流であったが,近年は排便障害について新たな知見が得られており,最新のエビデンスを考慮したガイドラインが各国で発行されている.最新のエビデンスに基づいた段階的アプローチにより,個々人の状態に合わせた包括的かつ体系的な排泄管理プログラムを構築する必要がある.

  • 榊原 隆次
    2023 年 60 巻 8 号 p. 689-700
    発行日: 2023/08/18
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    神経変性疾患は,自律神経不全としての排泄障害をきたすことが多い.パーキンソン病(PD)は神経変性疾患の代表的なものであり,非運動症状の中で,排泄障害は最も多いものの1つと思われる.このうち消化管運動障害(胃もたれ,胃食道逆流,便秘,イレウス)は70%と多く,運動障害にしばしば先行してみられることから,近年,迷走神経からの逆行性alpha-synuclein伝播説が考えられている.検査では胃排出能遅延,大腸通過時間延長,直腸固有収縮低下,腹圧低下,排便時の奇異性括約筋収縮(PSD)などがみられ,主にPDの腸管壁内神経叢の病変によるものと思われる.腹圧低下・PSDには中枢病変も関与していると思われる.排尿障害(過活動膀胱〔尿意切迫・頻尿〕)は70%にみられる.検査では排尿筋過活動がみられ,主にPDの前頭前野-黒質線条体ドパミンD1系の障害による,排尿反射の亢進が考えられる.このうち特に消化管障害は,患者のQOLを阻害し,レボドパ吸収を遅延させ,イレウス緊急入院をきたす場合もあるので,積極的な加療が望まれる.PD以外の神経変性疾患についても一部触れてみたい.

  • 横山 剛志
    2023 年 60 巻 8 号 p. 701-707
    発行日: 2023/08/18
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    排尿・排便障害は,下部尿路(膀胱・尿道)機能,下部消化管(肛門・直腸)機能と認知機能,排泄動作に関する日常生活動作のいずれかに支障をきたして発生する.地域在住高齢者の排尿・排便管理においては,高齢者の自立を阻害する認知症,フレイルに着目し,また薬物療法ではポリファーマシーに注意する必要がある.問診・観察,排尿・排便日誌,残尿測定などのアセスメントのもと,排泄動作訓練,骨盤底筋訓練(骨盤底筋トレーニング),膀胱訓練,尿道カテーテル管理,食事指導,水分摂取の指導などのリハビリテーション治療が必要である.

  • 片岡 ひとみ
    2023 年 60 巻 8 号 p. 708-713
    発行日: 2023/08/18
    公開日: 2023/10/31
    ジャーナル 認証あり

    ストーマ保有者は排泄経路および排泄方法の変更に伴いさまざまな問題に直面する.患者および家族が安心して手術に臨めるよう,術前からのアプローチが重要である.在院日数短縮化に伴い,外来での術前管理の重要性が高まっている.術後は患者および家族が退院後の日常生活をイメージし,退院後もストーマとともにその人らしく生活できるようストーマの理解,セルフケア能力を見極め指導することが重要である.さらに,退院後は日常生活上のさまざまな困った経験が報告されているため,継続した指導および支援が不可欠である.本稿では,ストーマリハビリテーションにおけるストーマ造設術前・術後管理,ストーマ用品,継続支援の必要性,社会保障制度などについて概説する.

原著
  • 辺見 大剛, 高窪 祐弥, 村川 美幸, 鈴木 克彦, 髙木 理彰, 佐藤 寿晃
    原稿種別: 原著
    2023 年 60 巻 8 号 p. 714-722
    発行日: 2023/08/18
    公開日: 2023/10/31
    [早期公開] 公開日: 2023/08/17
    ジャーナル 認証あり

    目的:高齢者において,浴槽をまたぐ動作は,転倒を伴いやすく注意が必要な動作である.歩行分析では両脚支持時間の割合が大きいと転倒リスクが高い関係が示唆され,浴槽側方またぎ動作においても同様の関係が予想される.本研究では,機能的バランス能力および移動・歩行能力の回復が不十分なTHA術後患者において,術側下肢を先行脚とした場合と非術側下肢を先行脚とした場合の浴槽側方またぎ動作の違いを両脚支持時間の割合の観点から解析することを目的とした.

    方法:対象は,初回片側THAを後方アプローチにて施行した変形性股関節症患者11例とした.測定時期は当院退院時期とした.ポータブル3次元動作解析装置を使用し,手すりを把持しながら浴槽に入る,浴槽を出る動作を行い,それぞれにおいて,先行脚の違いによる両脚支持時間の割合を算出し,両脚支持時間割合と関連する項目について検討した.

    結果:浴槽を出る際の両脚支持時間の割合は,非術側から出る場合のほうが術側から出る場合に比べて有意に小さかった.浴槽を出る際の両脚支持時間割合と手すり荷重値割合に負の相関関係を認めた.

    結論:THA術後2~3週の下肢機能に左右差がある患者において,浴槽を出る動作は,非術側下肢を先行脚とすることで転倒リスクが小さくなる可能性がある.また,手すりの使用は術側下肢支持時の転倒リスク軽減に寄与する.

症例報告
  • 清水 直人, 高橋 孝多, 奥田 求己, 宮本 啓江, 久保 秀一, 大橋 鈴世, 近藤 正樹, 三上 靖夫
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 60 巻 8 号 p. 732-729
    発行日: 2023/08/18
    公開日: 2023/10/31
    [早期公開] 公開日: 2023/08/17
    ジャーナル 認証あり

    Welwalk WW-1000® (WW-1000®) is a gait exercise-assisted robot. Suitable assistance was provided to the patients with hemiplegic legs in both stance and swing phases. In addition,this robot offers various forms of feedback to patients during exercise. We present the case of a patient with multiple sclerosis and left hemiplegia who underwent WW-1000® gait exercise.

    The 73-year-old patient required maximum assistance with metal ankle foot orthotics (AFO) and a quadruped cane prior to robot-based rehabilitation. The aims of gait exercise with the WW-1000® were as follows;① maintain the verticality of the trunk during the entire gait cycle;②shifting the center of gravity during stance phase on the nonparalytic limb;③stabilizing the swing phase on the paralytic limb, and enhancing support during the stance phase on the paralytic limb. Each aim was modified depending on level of achievement. Assistance with the WW-1000® activated the trunk and Nonparalytic limb (visual feedback was utilized in exercises). On day 9, the patient could walk using a plastic AFO and T-cane supervised by a therapist.

    The multifunctional WW-1000® is useful for subdividing gait goals, exercise and set stepwise aims consistent with the patient's abilities. Gait exercises using the WW-1000® may efficiently improve gait and helps adapt to changes in conditions in the subacute phase.

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