The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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60 巻, 6 号
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巻頭言
特集『脳炎治療アップデートと脳炎後遺症リハビリテーション治療』
  • 中嶋 秀人
    2023 年 60 巻 6 号 p. 466-472
    発行日: 2023/06/18
    公開日: 2023/08/23
    ジャーナル 認証あり

    脳炎・髄膜炎は中枢神経系に炎症をきたす病態であり,恒久的な脳損傷による重篤な後遺症,さらには致死的転帰も招くことがあるため,迅速な診断と早期の的確な治療開始が必要な神経救急疾患である.抗菌薬や抗ウイルス薬の治療が進歩したが,原因はウイルス,細菌,結核,真菌など多岐にわたるうえ,臨床現場では速やかに原因病原体を同定することが困難なときもあり,必ずしも満足すべき治療成績は得られていない.そのため,年齢,基礎疾患,病歴,発症様式は脳炎・髄膜炎の原因を推測するうえで重要であり,臨床現場で脳炎・髄膜炎が疑われれば確定診断がつかなくとも,推測される病原体に対する経験的治療を開始することが重要である.

  • 進藤 淳彦, 林 明人
    2023 年 60 巻 6 号 p. 473-477
    発行日: 2023/06/18
    公開日: 2023/08/23
    ジャーナル 認証あり

    自己免疫性脳炎(autoimmune encephalitis:AE)は日進月歩で研究が進んでおり,さまざまな抗神経抗体の病態や治療法などもここ15年程度で徐々に確立してきている.診断においては原則として除外診断であることを念頭に置き,痙攣への対応などを含めた全身管理を行いつつ,重症度の評価や感染症・中枢性自己免疫疾患などの除外を速やかに行うことが重要である.さらに,特にAEを疑う場合には,抗神経抗体などを追加提出し,速やかな治療につなげ,治療反応性の評価や二次治療へと加療を継続することが重要である.

  • 中野 貴司
    2023 年 60 巻 6 号 p. 478-483
    発行日: 2023/06/18
    公開日: 2023/08/23
    ジャーナル 認証あり

    小児の脳炎と脳症は,ともに意識障害や痙攣を主訴とする病態である.中枢神経系にダメージを及ぼし,後遺症や生命予後に影響する場合も多い.感染症を契機として発症することが多いが,先天性の代謝障害や遺伝的な素因が発症に関与する場合もある.また,COVID-19の罹患により,ときに脳症をきたす.予後改善をめざして,原因の確定,感染症に対する予防や治療,病態に応じた特異的治療や特殊治療を検討し,適切なリハビリテーション治療も不可欠である.

  • 西田 拓司
    2023 年 60 巻 6 号 p. 484-490
    発行日: 2023/06/18
    公開日: 2023/08/23
    ジャーナル 認証あり

    脳炎はてんかんの重要な病因の1つである.脳炎後てんかんの発作は抗てんかん薬治療に抵抗性を示すことが多い.脳炎後てんかんの抗てんかん薬治療のエビデンスは乏しく,新規抗てんかん薬だけでなく従来薬の併用療法を行わざるを得ないことも少なくない.さらに脳炎後てんかんの患者は高次脳機能障害,精神行動障害を併存することが多く,それらはてんかん発作や抗てんかん薬の影響を受けることがあるため,治療がより複雑となる.治療は日本神経学会のガイドラインを参考にしつつ,個別の病状,状況に合わせた抗てんかん薬治療,多職種による包括的支援を行っているのが実情と思われる.

  • 浦上 裕子
    2023 年 60 巻 6 号 p. 491-497
    発行日: 2023/06/18
    公開日: 2023/08/23
    ジャーナル 認証あり

    記憶障害を生じる脳炎は,大脳辺縁系が障害されるヘルペス脳炎,抗NMDAR脳炎などの自己免疫性脳炎,Wernicke脳症などの代謝性脳症が代表的である.ヘルペス脳炎では内側側頭葉の損傷により重度の前向性健忘を生じ,遷延する.陳述記憶やエピソード記憶も選択的に障害されるため,保たれる手続き記憶や意味記憶を用いたリハビリテーション治療を行う.発症早期に免疫学的治療が行われた自己免疫性脳炎の記憶障害の回復は良好である.Wernicke脳症は視床が損傷され健忘症候群を呈し,再生・再認とも障害されるため,誤りなし学習などの治療を行う.記憶障害の内容や程度に応じたリハビリテーション治療を選択することが必要である.

  • 船山 道隆
    2023 年 60 巻 6 号 p. 498-504
    発行日: 2023/06/18
    公開日: 2023/08/23
    ジャーナル 認証あり

    脳炎後の神経心理症状や精神症状は,疾患によって異なる.単純ヘルペス脳炎では側頭葉の病巣を反映して,エピソード記憶障害,意味記憶障害,感覚性失語が残存しやすい.病巣が前頭葉眼窩部や線条体に進展した場合は行動異常が残存することもある.この場合は,患者が特定の行動をイメージした際にわくべき情動が機能しないと考えると病態を捉えやすい.抗NMDA受容体脳炎ではワーキングメモリの低下,処理速度の低下,注意・遂行機能の低下が残存しやすい.これは,特定の病巣というよりは脳全体の軽度の機能低下を反映する症状と考えられる.抗NMDA受容体脳炎の後遺症で出現する精神症状は,これらの認知機能の低下と関連していることが多い.

  • 吉橋 学
    2023 年 60 巻 6 号 p. 505-510
    発行日: 2023/06/18
    公開日: 2023/08/23
    ジャーナル 認証あり

    小児の脳炎・脳症のリハビリテーション治療に関しては不明な点が多く,各施設で病態および小児の特性に基づいた治療が行われている.てんかんの発症のみならずてんかんの治療も機能・ADLに影響するため,治療は総合的な視点で行う必要がある.長期的には生活支援,あるいは知的障害・高次脳機能障害への介入が課題となる場合が多い.成長・発達に沿ってライフステージに合わせた支援を行う必要がある.

  • 山徳 雅人
    2023 年 60 巻 6 号 p. 511-517
    発行日: 2023/06/18
    公開日: 2023/08/23
    ジャーナル 認証あり

    脳炎における後遺症として,特に高次脳機能障害は就労復帰,就労継続における大きな阻害因子となる.現在,高次脳機能障害患者に対する支援事業はさまざまなものが存在し,相談支援コーディネーターが配置されている支援拠点機関が各機関との連絡・調整を行いながら,近年ではリワークを活用して就労復帰を果たすようになってきている.一方,脳血管障害,指定難病など一部の疾患では「仕事と治療の両立支援」といった取り組みがあり,就労復帰・両立支援サポートを行った際に指導料が算定される.脳炎はまだ対象ではないが,医療・社会復帰支援が長期的に必要であることから,今後脳炎においても両立支援が対象となることが期待される.

教育講座
原著
  • 吉川 達也, 古澤 一成, 池田 篤志, 早田 美和, 岩井 泰俊, 田島 文博
    原稿種別: 原著
    2023 年 60 巻 6 号 p. 533-542
    発行日: 2023/06/18
    公開日: 2023/08/23
    [早期公開] 公開日: 2023/06/15
    ジャーナル 認証あり

    目的:本研究の目的は脊髄損傷者を対象として脊髄再生医療に対するアンケート調査を実施し,その認識を明らかにすることである.

    方法:2019年10月~2020年2月に,入院,通院で当院に受診歴のある脊髄損傷者を対象としてアンケート調査を実施した.脊髄再生医療の治療希望については,年齢,家庭復帰前後,重症度,損傷高位で層別化し比較した.

    結果:99名から回答を得たが,男性が90.9%,平均年齢が52.8±14.8歳で,外傷が90.9%,損傷高位は頚髄が54.5%,胸髄が37.4%,腰髄が8.1%,AISはAが63.6%,Bが6.1%,Cが12.1%,Dが18.2%であった.脊髄再生医療に対しておおいに関心があるが66.7%,おおいに期待しているが54.5%であった.37.4%が積極的に治療を受けてみたいと答えた.層別化した比較では65歳未満,家庭復帰前,重症例,頚髄損傷者で積極的に治療を受けたい割合が多かった.回復を期待する機能は多かった順に,歩行が45.5%,巧緻性が20.2%,排便障害が17.2%であった.再生医療の知名度は,iPS細胞,骨髄間葉系幹細胞,自家嗅粘膜移植の順に高かった.情報源として多かったのは,テレビ,インターネットであった.再生医療の心配事として,効果や経済面についての関心が高かった.

    結論:脊髄損傷者の約半数が脊髄再生医療によって歩行機能が回復することを期待している.

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