The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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60 巻, 2 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
巻頭言
特集『進化する呼吸器疾患のリハビリテーション医療』
  • 金﨑 雅史
    2023 年 60 巻 2 号 p. 96-101
    発行日: 2023/02/18
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル フリー

    呼吸困難は複数の感覚と情動的側面から構成される.また,呼吸困難は身体活動やQOL,医療費,死亡率と関連することが知られ,そのメカニズムの把握と介入は重要である.しかしながら,多くの患者において,適切な治療でも,なお呼吸困難が残存していることが問題となっており,普段の生活において呼吸困難に関するunmet needが存在することが示唆されている.慢性閉塞性肺疾患における呼吸困難において,気管支拡張薬が有用であるが,呼吸困難を征圧するに至っていない.また,モルヒネによる呼吸困難の緩和においても,一致した見解が得られておらず.さらなる介入方策が求められている.一方,携帯型扇風機による顔面への送風やメントールによる呼吸困難の緩和は比較的容易に利用でき,その有効性が近年報告されている.加えて,サルコペニアを合併する慢性閉塞性肺疾患患者においては,浅速呼吸が呼吸困難の悪化の要因となっており,吸気筋力トレーニングが有用であることが示唆されている.

  • 宮城 翠, 海老原 覚
    2023 年 60 巻 2 号 p. 102-107
    発行日: 2023/02/18
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル フリー

    間質性肺炎の診断・治療において要となるのが原因と病型を確定することであり,それには集学的検討が重要である.さらに,間質性肺炎の経過は症例ごとに進行速度やパターンが異なるため,治療や慢性安定期の段階においても個々の症例に合わせたリハビリテーション,栄養,生活指導,服薬指導などあらゆる観点からの集学的検討を行い,「呼吸困難→活動性低下→廃用→さらなる呼吸困難」の負のスパイラルを逆回転させる必要がある.さらに,逆回転の効果の維持には患者によるセルフマネジメントも重要であり,医療者と患者で協働する包括的呼吸リハビリテーションが重要である.

  • 岡崎 達馬, 出江 紳一
    2023 年 60 巻 2 号 p. 108-113
    発行日: 2023/02/18
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル フリー

    誤嚥は明らかな顕性誤嚥と明らかでない不顕性誤嚥の2種類に分けられ,特に唾液による不顕性誤嚥は肺炎発症に大きく関与する.現在最もエビデンスレベルの高い誤嚥性肺炎の治療,予防方法は降圧薬のangiotensin-converting enzyme inhibitor(ACE阻害薬)内服である.ただし死亡率低下への効果は判然としない.嚥下リハビリテーションは嚥下障害や嚥下能力を改善させる可能性や胸部感染症の発症率を下げる可能性が報告されたが,残念ながら非常に低いエビデンスレベルとされ,死亡率抑制への効果はない,と報告された.その他,誤嚥性肺炎の予防,治療,リハビリテーション治療の方法や今後の見通しなどについて述べる.

  • 尾花 正義, 小磯 寛, 中村 嘉子, 髙橋 忠志
    2023 年 60 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 2023/02/18
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル フリー

    COVID-19重症肺炎は,COVID-19重症度分類の重症に該当し,呼吸不全の状態で,L型とH型に分けられ,それぞれの病型の特徴を考慮した酸素療法などの対処が必要になる.

    COVID-19重点医療機関である東京都立荏原病院(以下,当院)では,2021年1月から集中治療室(ICU)に入室する呼吸不全患者が増え,7~8月に急増した.その後は減少し,2022年12月末時点では,ほぼいない.

    当院では,このCOVID-19重症肺炎患者に,呼吸不全の悪化防止・改善や廃用の防止・改善を目的に,腹臥位療法などのリハビリテーション治療を積極的に行い,一定の効果を得た.

  • 佐々木 信幸
    2023 年 60 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 2023/02/18
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル フリー

    COVID-19後遺症とは,感染後数カ月経過してもなお種々の症状が持続するものであり,最も頻度の高い倦怠感は感染者の2~4割に認められる.治療は確立しておらず種々の症状の構成要素へそれぞれ対処するしかないが,特に心肺機能障害としては肺拡散能の低下および心筋炎の存在に注意が必要である.急性期に軽症であってもこれらは残存している可能性がある.認知機能障害としてはブレインフォグが特徴的であり,当科では反復性経頭蓋磁気刺激(rTMS)を用いた治療的介入を行っている.リハビリテーション治療や生活において身体・認知負荷をかける場合,負荷により症状が増悪するpost-exertional malaise(PEM)という現象に注意し,段階的な社会復帰をめざさなければならない.

  • 近本 哲士, 野川 裕史, 天野 佐亞哉, 荒木 武弥, 山口 覚博, 三上 幸夫
    2023 年 60 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2023/02/18
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル フリー

    近年,肺がんの薬物療法において,従来から使用されてきた細胞障害性抗がん剤に加え,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が登場し,肺がんに対する薬物療法は大きな変化を迎えている.これらの新しい薬剤の登場により予後の改善がみられている一方,問題点もあり,薬物療法を実施する肺がん患者に対するリハビリテーション医療について解説する.

  • 高橋 諒, 海老原 覚
    2023 年 60 巻 2 号 p. 134-138
    発行日: 2023/02/18
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル フリー

    重症呼吸不全患者に対する唯一の根本的な治療に肺移植がある.その目的は,生命予後の延長と健康関連QOL(health-related quality of life:HRQL)の改善である.近年,肺移植患者の生命予後改善に伴い,HRQLの改善に関心が向けられている.HRQLは,肺移植により著しく改善するが,健常人と比較すると十分とはいえない.HRQLに影響を与える要因の1つは,呼吸困難の自覚症状であることが指摘されている.肺移植患者のHRQL改善には,呼吸困難に対する包括的な呼吸リハビリテーションが期待されている.本稿では,肺移植患者のHRQLに関して概説する.

  • 小林 誠一
    2023 年 60 巻 2 号 p. 139-144
    発行日: 2023/02/18
    公開日: 2023/05/17
    ジャーナル フリー

    呼吸リハビリテーションは「患者自身が疾患を管理できることを目標とした,多職種医療チームによる個別的・包括的介入」であり,運動療法と並んでセルフマネジメント教育が重要である.

    COPDは喫煙歴のある高齢者に多い慢性肺疾患であり,禁煙や薬物療法に加えて,呼吸リハビリテーションが有益である.われわれは,宮城県石巻地域で「石巻地域COPDネットワーク」を設立して地域完結型・循環型の医療連携を構築し,COPD患者に対して多職種医療者による個別化された包括的介入を実施している.セルフマネジメント教育を重視し,身体活動性の維持を含めた,良好な自己管理行動をうながしている.

教育講座
原著
  • 安西 真衣, 大澤 麻記, 水口 雅
    原稿種別: 原著
    2023 年 60 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 2023/02/18
    公開日: 2023/05/17
    [早期公開] 公開日: 2023/02/16
    ジャーナル フリー

    目的:われわれの施設では,肢体不自由児とその保護者に入園での集中訓練を提供している.目的や訓練内容は症例ごとに異なり,個別の評価を必要とする.Canadian Occupational Performance Measure(COPM)は作業療法の成果指標だが,今回COPMを用いて入園経過を評価し,結果を検討した.

    方法:3年間に入園した親子のうち31例を対象とした.入園者が設定した5つの目標に対し,入園時,4週終了時,退園時に遂行度と満足度を採点した.各平均値を用いて後方視的に解析した.

    結果:遂行スコア,満足スコアとも評価を繰り返すごとに有意に上昇し,退園時は入園時より両者とも平均3.9上昇した.医療的ケアあり群はなし群より両スコア変化が大きい傾向にあった.基礎疾患や運動機能,回復期か否かで有意差はなかった.目標別のスコア変化も,療育分野やセラピスト経験年数に影響されなかった.満足度向上と遂行度改善は相関した.

    考察:全例で遂行度,満足度の向上が定量的に示され,他の指標では反映し難いような入園効果も判定できた.満足度採点は主観的だが,遂行度変化と相関し,一定の妥当性はあると考えた.

    結論:COPMを用いた親子入園評価は,入園者主体の訓練活動の立案とその効果判定にも有用と考えられた.身体機能に限らず,活動や参加を含めて患者の生活を評価する視点は重要であり,COPMは有効と考えられる.

症例報告
  • ―タイムプレッシャーマネジメント内的手法の応用―
    澤木 優治, 山本 裕泰, 山本 正彦, 羽吹 敏行, 山田 勝雄, 齋藤 孝次
    2023 年 60 巻 2 号 p. 159-165
    発行日: 2023/02/18
    公開日: 2023/05/17
    [早期公開] 公開日: 2023/02/16
    ジャーナル フリー

    Few reports have yet investigated adequate cognitive rehabilitation for patients with chronic cognitive disorder. In this report, we describe a case of cognitive rehabilitation 10 months after onset of cerebral infarction in the right middle cerebral artery region, resulting in a good outcome. The patient was a 44-year-old right-handed male, with primary symptoms of inattention and left hemispatial neglect. The patient had not undergone any neuropsychological evaluations or cognitive rehabilitation until 10 months after disease onset. After 30 days of both direct attention training and metacognitive strategy training, including time pressure management, improvement of his cognitive disorder was achieved. The teaching of internal methods to improve metacognition with a high level of evidence was effective even 10 months after onset. Furthermore, it is important for therapists who provide cognitive rehabilitation using metacognitive strategy training to understand patients' remaining functions based on neuropsychological assessment, and to consider and teach compensatory methods so that they can be effectively used by patients in situations of daily life.

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