The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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59 巻, 9 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
特集『摂食嚥下障害に対するリハビリテーション医学・医療The Cutting Edge』
  • ―最近の知見と動向―
    青柳 陽一郎
    2022 年 59 巻 9 号 p. 870-876
    発行日: 2022/09/18
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル フリー

    摂食嚥下障害患者は年々増加かつ高年齢化しており,特にフレイル,サルコペニアをベースにもつ患者が増えている.誤嚥性肺炎は日本人の死因の第6位を占めるに至っており,この割合は今後も増加すると見込まれる.2020年からは新型コロナウイルス感染症に関連した種々の原因による嚥下障害が報告されており,原因の1つとして咽喉頭の感覚障害,咽頭収縮不全を伴う舌咽・迷走神経障害があると考えられるため,誤嚥性肺炎の合併に注意する必要がある.摂食嚥下に関するリハビリテーション評価・治療のトピックスとして,高解像度インピーダンスマノメトリー,干渉波電気刺激,反復性末梢性磁気刺激などの最近の知見,今後の可能性を概説した.その他のトピックスとして,外傷性頚髄損傷,神経核内封入体病による摂食嚥下障害を解説した.

  • 松尾 浩一郎
    2022 年 59 巻 9 号 p. 877-883
    発行日: 2022/09/18
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル フリー

    摂食嚥下障害者に対して,窒息や誤嚥性肺炎などの重篤な合併症を予防し,安全な経口摂取を進めるためには,嚥下機能だけでなく,口腔環境の維持,改善が不可欠である.そのため,摂食嚥下障害評価では,嚥下機能評価とともに口腔環境の評価が必要となる.口腔環境を評価するときには,口腔衛生状態と口腔機能に分けて考えると理解しやすい.ここでは,リハビリテーションに応用できる口腔衛生環境の評価と口腔機能評価について概説する.適切な口腔評価とリハビリテーション医療および歯科との連携により効果的な摂食機能の回復につなげることができる.

  • 岡崎 達馬, 出江 紳一, 海老原 覚
    2022 年 59 巻 9 号 p. 884-887
    発行日: 2022/09/18
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル フリー

    本稿では慢性肺疾患の中で嚥下性肺疾患(誤嚥性肺炎とびまん性嚥下性細気管支炎)と慢性閉塞性肺疾患を取り上げる.繰り返し発症する誤嚥性肺炎は慢性炎症である,との概念は2015年に本邦から報告された.びまん性嚥下性細気管支炎は不顕性の微量誤嚥の反復により発症し,1996年に本邦から報告された.回復期病棟の高齢で嚥下障害のある症例に発症し得るが,呼吸器内科以外では認識されることが少ない.一方の慢性閉塞性肺疾患では嚥下障害をもつ症例が健常人より多かった.嚥下障害の存在は慢性閉塞性肺疾患の急性増悪の発症頻度を上げた.急性増悪は死亡率が高いため,予防が重要である.

  • ―診断と治療―
    藤島 一郎, 國枝 顕二郎
    2022 年 59 巻 9 号 p. 888-896
    発行日: 2022/09/18
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル フリー

    サルコペニアの診断は筋肉量の減少が必須であるとされたが,2019年のEWGSOPの発表では筋肉量のみならず筋肉の質が大事であるとされている.嚥下に関する筋肉は横紋筋であるが,発生学的には鰓弓由来の呼吸筋に近く,四肢の骨格筋とは別の特性をもっている.安静時にも呼吸からのドライブがかかっているために廃用に陥りにくい.ただし,オトガイ舌骨筋のみは例外で,サルコペニアが生じやすい.治療としては栄養管理と筋力強化が重要である.サルコペニアによる摂食嚥下障害の診断にはフローチャートが提案されているが,確定診断は現時点では困難とされている.嚥下筋の評価はエコーが有力視されている.治療は運動と栄養療法が基本である.

  • 井口 はるひ
    2022 年 59 巻 9 号 p. 897-902
    発行日: 2022/09/18
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル フリー

    頚椎・頚髄疾患は姿勢・呼吸・上肢巧緻性・物理的圧迫による咽頭機能・自律神経障害などをきたし,先行期・口腔期・咽頭期・食道期の摂食嚥下障害を起こし得る.頚椎症性脊髄症では,前方固定術のみならず,後方固定術でも摂食嚥下障害が起こり得る.前縦靱帯骨化症は摂食嚥下障害が主症状で,抗炎症薬投与と手術療法を行う.脊髄損傷は呼吸障害や上肢機能障害,自律神経障害に伴う摂食嚥下障害を生じる.パーキンソン病などの頚部姿勢障害を生じる疾患でも摂食嚥下障害を併発し頚椎装具を処方することがあるが,装具装着による摂食嚥下障害も起こり得る.頚椎・頚髄疾患の摂食嚥下障害は,言語聴覚士のみならず多職種で対応する必要がある.

  • ―最近の運動学的研究からみえてくるもの―
    稲本 陽子
    2022 年 59 巻 9 号 p. 903-911
    発行日: 2022/09/18
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル フリー

    摂食嚥下練習において嚥下手技,姿勢調整は,効率よく目標課題をめざすために不可欠な課題の難易度調整における重要な変数である.双方とも古くから臨床的に用いられているが,運動学的意味や効果のエビデンスは十分とはいえない.昨今,高解像度マノメトリーや嚥下CTの登場により運動解析が進み,主たる効果の理解が進んでいる.メンデルソン手技,努力嚥下では咽頭収縮に対する効果が明確となり咽頭クリアランスに有効な手技であることが示されてきている.姿勢調整では,頭部回旋は梨状窩の形態変化およびUES圧低下による咽頭クリアランスの効果,リクライニング位は重力に対する諸器官の運動調整による気道防御の効果が明らかとなっている.

  • 藤谷 順子
    2022 年 59 巻 9 号 p. 912-917
    発行日: 2022/09/18
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル フリー

    嚥下調整食については,日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013の公表後,公的に認められるようになりつつある.その後,発達期嚥下調整食分類2018および,学会分類2013の改訂版である嚥下調整食分類2021が公表されている.嚥下調整食の分類では形態を分類しているが,実際には味や外観,バリエーションなどのおいしさと,高栄養であることが重要である.そして,嚥下調整食をただ提供するのではなく,食べている様子の観察なども行って適切に選択したり訓練を追加するなど,リハビリテーション医療の視点から嚥下調整食を利用することが重要である.

  • 加賀谷 斉, 小川 真央
    2022 年 59 巻 9 号 p. 918-925
    発行日: 2022/09/18
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル フリー

    摂食嚥下障害に対して用いられている末梢の電気刺激療法,磁気刺激療法としては,神経筋電気刺激,咽頭電気刺激,感覚神経電気刺激,末梢磁気刺激がある.神経筋電気刺激は既に多くの報告があり,メタ解析からエビデンスも得られている.咽頭電気刺激は欧州を中心に発展し多国間での大規模多施設共同研究も多いが,まだ一定の見解は得られていない.感覚神経電気刺激は上喉頭神経を干渉波を用いて刺激する手法であり本邦で開発された.末梢磁気刺激は摂食嚥下障害に対する報告は本邦からのみであるが,神経筋電気刺激よりも疼痛なく舌骨上筋群の刺激が可能である.現在,本邦では上記のうち咽頭電気刺激以外は使用可能である.

教育講座
リハビリテーション医学研究のこれから
原著
  • 本橋 隆子, 永田 修, 伏見 清秀, 髙田 礼子
    原稿種別: 原著
    2022 年 59 巻 9 号 p. 939-950
    発行日: 2022/09/18
    公開日: 2022/11/18
    [早期公開] 公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    目的:診療報酬改定によるインセンティブの増額が人工膝関節全置換術後リハビリテーション医療開始のタイミングや提供量に及ぼす変化を明らかにすることで,急性期リハビリテーション医療の質への影響を評価する.

    方法:2010~2017年の全国のDPCデータを用いて,8年間の症例数が1,000症例以上と1,000症例未満の病院に層別化し,診療報酬改定年度別に基本属性,臨床所見・経過,リハビリテーション実施状況の差の有意性を検討した.また,術後リハビリテーション開始までの期間と実施単位数を目的変数,診療報酬改定年度,症例数などを説明変数として重回帰分析を行った.

    結果:1,000症例以上と1,000症例未満では,リハビリテーション開始までの期間は8年間で0.4日と1.3日有意に短縮した.術後1週目の実施単位数は3.2単位と2.8単位,術後2週目は1.8単位と3.7単位有意に増加した.また,リハビリテーション開始までの期間の短縮には症例数の多さと診療報酬改定年度,実施単位数の増加には症例数の多さと診療報酬改定年度,リハビリテーション総合計画評価料算定が関連していた.

    結論:診療報酬の増額は,特に1,000症例未満の病院の早期開始と提供量の増加を短期間で実現し,急性期リハビリテーション医療の質の底上げ効果が示唆された.

  • 武原 格, 酒井 貴哉, 牛場 直子, 安保 雅博
    原稿種別: 原著
    2022 年 59 巻 9 号 p. 951-958
    発行日: 2022/09/18
    公開日: 2022/11/18
    [早期公開] 公開日: 2022/09/15
    ジャーナル フリー

    はじめに:これまでわれわれは多くの脳損傷患者に対し,病状,身体所見,高次脳機能検査,ドライビングシミュレーターなどの評価結果から自動車運転再開の可否判断を行ってきた.今回,運転再開可否を判断した時期と運転困難と判断した理由について,後方視的に検討したので報告する.

    対象:2014年4月1日~2020年3月31日に当院に入院中あるいは外来にて運転再開評価を行った脳損傷患者279人を対象とした.

    方法:診療録より後方視的に運転再開時期,運転再開不可となった理由,外来訓練回数などについて調査し検討を行った.

    結果:233人に運転再開が許可され,46人は許可されなかった.当院入院中に運転が許可されたのは65人,当院退院後外来通院中に許可されたのは83人,他院より運転再開目的に外来紹介された85人であった.当院退院後外来通院中に運転再開が許可された患者のうち,94%の患者が退院後2年以内に許可されていた.許可されなかった患者の判断時期は,当院入院中6人,当院退院後外来通院17人,他院からの紹介23人であった.運転が許可されなかった理由は,高次脳機能障害が39人,同名半盲を含む眼科的問題が5人,てんかん発作が2人であった.

    結論:脳損傷者の運転再開支援は,回復期リハビリテーション病棟入院中のみで完結するものではなく,外来リハビリテーション医療の継続的提供が重要である.

Secondary Publication
  • 三浦 和知, 津田 英一, 石橋 恭之
    2022 年 59 巻 9 号 p. 959-970
    発行日: 2022/09/18
    公開日: 2022/11/18
    ジャーナル フリー

    背景:バレーボール選手はスパイク動作を反復して行うことで利き腕側肩関節に高度のストレスが加わり肩関節内旋域減少(GIRD)と肩甲上神経障害をきたす可能性がある.本研究の目的は男子大学生バレーボール選手におけるpathological GIRDと肩甲上神経障害の発症率を明らかにすることである.

    方法:男子大学生バレーボール選手22名を対象とし,肩関節可動域,肩関節等尺性筋力,棘下筋の厚さ,および神経伝導検査での肩甲上神経の潜時と振幅を測定し,利き腕側と非利き腕側で比較した.

    結果:肩関節の平均内旋域は非利き腕側(64.5±10.2°)と比較し利き腕側(55.1±8.7°)で有意に減少していた(p<0.001).20°以上のpathological GIRDは4名(18.2%)に認めた.3名(13.6%)の利き腕上肢に神経伝導検査で棘下筋に肩甲上神経障害を認めた.利き腕側肩関節の内旋筋力に対する外旋筋力の比(99±18%)は非利き腕側(106±12%)と比較し有意に減少していた(p=0.04).棘下筋の厚さおよび神経伝導検査所見(潜時・振幅)は利き腕側と非利き腕側との間に有意差を認めなかった.

    考察:男子大学生バレーボール選手におけるpathological GIRDの発症率は過去の報告と同様であったが,肩甲上神経障害の発症率は過去のハイレベルなバレーボール選手における報告よりも低かった.肩関節障害を予防するためには,利き腕側肩関節の外旋筋と内旋筋との間の不均衡を改善する後方腱板の筋力増強訓練を行うことが推奨される.

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