The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
Online ISSN : 1881-8560
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60 巻, 5 号
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巻頭言
特集『治療と仕事の両立支援』
  • 田島 浩之, 伊藤 英明, 松嶋 康之, 佐伯 覚
    2023 年 60 巻 5 号 p. 368-372
    発行日: 2023/05/18
    公開日: 2023/08/16
    ジャーナル 認証あり

    高齢者の就労拡大や医療の進歩により疾病を有する労働者の増加が予測されているが,職場の理解や支援体制不足で離職に至る場合がある.少子高齢化が進行する中で,就労拡大をめざして厚生労働省から両立支援のためのガイドラインが示され,診療報酬改定で「療養・就労両立支援指導料」が新設された.両立支援は医療の重要な役割であり,患者や事業所(産業医を含めた産業保健スタッフ),主治医との連携が必要不可欠である.また,リハビリテーション診療においても,職場業務に必要な機能評価に加えて,復職をめざした訓練や各専門機関との連携,福祉サービス制度の適切な利用を進めていくことが重要である.

  • 菊地 尚久
    2023 年 60 巻 5 号 p. 373-377
    発行日: 2023/05/18
    公開日: 2023/08/16
    ジャーナル 認証あり

    脳卒中患者に対する治療と仕事の両立支援は急性期治療後に片麻痺などの身体障害と高次脳機能障害が残存することが多く,治療と仕事の両立のみならず,障害も含めた両立が必要なところが特徴である.脳卒中患者の両立支援に向けた流れでは多くが自立訓練,就労移行支援など障害者総合支援法による自立支援事業が用いられる.支援機関として産業保健総合支援センター,ハローワーク,障害者就業・生活支援センター,地域障害者職業センターがある.両立支援に向けた配慮として安全と健康の確保,労働者本人による両立支援に対する取組,労働者本人の申出に適切に対応する,治療と仕事の両立支援の特徴を踏まえた対応を行うなどの事項がある.

  • 古澤 一成, 難波 孝礼, 池田 篤志, 早田 美和, 岩井 泰俊, 尾崎 文, 本郷 匡一, 德弘 昭博
    2023 年 60 巻 5 号 p. 378-387
    発行日: 2023/05/18
    公開日: 2023/08/16
    ジャーナル 認証あり

    障害者における就労は,生活上の経済的な基盤の確立のみならず,自らの存在価値を再認識できるという点においてその意義は大変大きく,計り知れない.

    脊髄損傷者も高齢化の傾向にあるものの,約3割は60歳未満での受傷であり,リハビリテーション医療における他の疾病や障害に比べて「治療と仕事の両立支援」の対象となる者が多い.脊髄損傷のリハビリテーション医療においては,社会復帰までに複数の医療機関がかかわり個々の脊髄損傷者のゴールを達成することになる.本稿では,いずれの時期の医療従事者も知っておきたい「治療と仕事の両立支援」のための基礎知識と意識について述べる.

  • 土方 奈奈子, 辻 哲也
    2023 年 60 巻 5 号 p. 388-393
    発行日: 2023/05/18
    公開日: 2023/08/16
    ジャーナル 認証あり

    がん治療のため仕事をもちながら通院する患者は増加しており,がん患者における治療と仕事の両立支援の重要性は高まっているが,がん患者への両立支援の体制は現状まだ十分でない.「がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査」から,がん患者が体力低下,がん自体や治療に伴う副作用・後遺症による機能障害に悩んでおり,仕事を続ける自信をなくし,退職の要因となっていることが明らかにされており,支持療法の一環として両立支援にリハビリテーション治療が重要な役割を果たす.本稿ではがん患者における両立支援で考慮すべき機能障害と予防・回復・維持期における両立支援の要点を述べる.

  • 中山 敦子
    2023 年 60 巻 5 号 p. 394-400
    発行日: 2023/05/18
    公開日: 2023/08/16
    ジャーナル 認証あり

    心血管患者の職場復帰はがん疾患,脳卒中疾患に続いて,注目されつつある.日本では超高齢社会に移行するとともに労働人口の縮小が予想される社会的背景の中,罹患後も働くことができない状態は患者側としてもデメリットである.2022年度の診療報酬改定では両立支援の対象疾患として「心疾患」が追加された.一方,心血管疾患患者への職場復帰や両立支援の現状については,いまだ明らかになっていない.心血管疾患患者の両立支援の特徴としては,一見疾患名や重症度がわかりにくいことなどが挙げられるが,心肺機能検査で評価し,心臓リハビリテーションで包括支援することで両立支援が成功することが多い.両立支援モデル事業を行っている当院での取り組みを,遠隔両立支援を含めて紹介する.

  • 浦上 裕子
    2023 年 60 巻 5 号 p. 401-409
    発行日: 2023/05/18
    公開日: 2023/08/16
    ジャーナル 認証あり

    復職を目標とした高次脳機能障害のリハビリテーション治療の目的は,急性期から基礎疾患の治療を行いながら,機能回復訓練と並行して障害認識を深める介入を行い,回復期・生活期と連続した就労準備訓練につなげることである.両立支援では,職場からの勤務情報提供書を受け,勤務内容を確認し,高次脳機能障害の障害特性と就業中の配慮について主治医意見書に記載する.自動車運転再開可否の診断が必要となるが,安全配慮の面から,高次脳機能障害者は単独での運転業務や危険作業は避けることが望ましい.複数の情報が入ることや業務内容が変わることで混乱するため,復職後も就労定着支援を必要とする.

  • 神山 昭男
    2023 年 60 巻 5 号 p. 410-416
    発行日: 2023/05/18
    公開日: 2023/08/16
    ジャーナル 認証あり

    両立支援の実現に向けて,対象者が発達障害(自閉スペクトラム症,注意欠如・多動症)の場合に,具体的にどのような配慮,対応が必要,もしくは適切なのかを理解しておく必要がある.両立支援にかかわる当事者を,対象者,職場,主治医,家族,支援機関に分類し,各々の重点課題を,①対象者をめぐる課題:対象者の現実認識・判断,対象者の職場適応の達成,②職場をめぐる課題:事例性・疾病性の把握と対応,法的義務の履行,③主治医をめぐる課題:主治医による疾病性の把握と対応,④家族・支援機関などをめぐる課題:寄り添う支援,最後に,⑤当事者の共通課題:効果的な連携をめぐるスキル,ノウハウ,などとりまとめて概説した.

  • 小山 文彦
    2023 年 60 巻 5 号 p. 417-422
    発行日: 2023/05/18
    公開日: 2023/08/16
    ジャーナル 認証あり

    うつ病などのメンタルヘルス不調(精神疾患)に罹患した労働者の全人的な回復とは,病状の回復と職業生活の両立がかなうことである.主に医療機関における治療によって病状が回復・安定した場合,職場側は主治医などと連携して復職支援を行うが,その目的は,治療と職業生活の両立であり,その後の安定就労が重要な安全衛生課題となる.一般的には,主治医から「就労可能」と判断された時点から,職場側が復職の可否について検討し,治療と仕事の両立を図る支援(両立支援)が行われるが,本稿では,その際に重要となる職場内外の連携におけるポイントについて述べる.

教育講座
原著
  • 三浦 裕幸, 加藤 拓彦, 田中 真, 澄川 幸志
    原稿種別: 原著
    2023 年 60 巻 5 号 p. 436-445
    発行日: 2023/05/18
    公開日: 2023/08/16
    [早期公開] 公開日: 2023/05/17
    ジャーナル 認証あり

    目的:頭頚部がん喉頭摘出者(喉摘者)の状況を機能,活動,参加,環境などから調査し,quality of life(QOL)関連因子を検討する.

    方法:対象は,日本喉摘者団体所属の喉摘者とした.調査項目は,基本属性,QOL,サルコペニア,頚部・上肢機能,上肢関連activities of daily living(ADL)などとした.統計解析は,相関分析後に多重ロジスティック回帰分析を行い,QOL関連因子を検討した.

    結果:有効回答者数は272人であり,年齢の中央値は74.0歳,喉頭摘出術後経過期間の中央値は8.7年,喉頭摘出術後就労継続者は94人であった.QOL関連因子には,上肢関連ADL,サルコペニア,頚部・上肢機能が抽出された.

    結論:喉摘者のQOL関連因子は,頚部・上肢機能,上肢関連ADL,サルコペニアであり,QOL向上にはこれらに対するリハビリテーション治療が重要と考えられた.

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