日本胸部疾患学会雑誌
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33 巻, 1 号
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  • 木村 俊樹
    1995 年 33 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    筆者は, 侵襲的な検査法である食道内圧測定に代わる指標を各種循環動態の中に求め, 雑種成犬を用いた中枢型無呼吸モデルおよび閉塞型無呼吸モデルにおいて食道内圧と循環動態の関係を検討した. そして奇脈の程度および容積脈波の呼吸性変動の程度と食道内圧の変動の程度との間に視覚的に相関を認めた. その定量評価のために, 雑種成犬を用い上気道狭窄モデルを作製し, 奇脈の程度と食道内圧の変動の程度との間に高い相関関係を認めた (r=0.992~0.998, p<0.001, n=5). また同様に容積脈波の呼吸性変動の程度と食道内圧の変動の程度との間にも高い相関関係を認めた (r=0.985~0.995, p<0.001, n=5). これらの循環動態の特徴および低酸素血症の有無による中枢型無呼吸, 閉塞型無呼吸および上気道狭窄に伴う呼吸の鑑別, 極言すればパルスオキシメーターから出力される容積脈波および酸素飽和度を用いた睡眠呼吸障害の鑑別法の臨床応用への可能性について言及した.
  • 吉村 尚高, 阿部 直, 冨田 友幸
    1995 年 33 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ヒトの前側腹壁を構成する4つの腹筋の機能的差異を明らかにするため, 呼出負荷に対する反応を検討した. 6人の健常人を対象とし, 超音波断層装置を用いて直視下に fine wire 電極を筋層内に留置した. 5, 10, 15, 20cmH2Oの経鼻持続陽圧気道圧 (n-CPAP) を加え, 仰臥位と立位において各筋から筋電図を記録した. n-CPAPが高い程, また仰臥位に比較し立位において, 呼気相に動員される電気的活動の出現頻度が高かった. 電気的活動の出現率は腹横筋 (TA) で最も高く, 以下内腹斜筋 (IO), 外腹斜筋 (EO), 腹直筋 (RA) の順であった. RAでは, 立位のn-CPAP 20cmH2Oにても6例中2例にしか電気的活動が出現しなかった. TAでは, 立位の安静換気でも全例で電気的活動が認められた. TAは呼出負荷に対し最も反応したことから主要な呼気筋である. 一方, RAは反応が最も鈍く補助呼気筋である. すなわち, 弱い刺激に対してはTAを中心とした内層の腹筋が, 強い刺激に対してはRAを含めた全ての腹筋が反応する.
  • 高杉 知明, 石原 傳幸, 川村 潤, 佐々木 一哉, 豊田 丈夫, 大角 光彦, 鈴木 浩一, 西尾 和三, 青柳 昭雄, 川城 丈夫
    1995 年 33 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    デュシェンヌ型筋ジストロフィー (DMD) 症の人工呼吸器が導入される以前の病期における動脈血液ガス分析値 (PaO2, PaCO2, pH,〔HCO3-〕) の年齢に対する回帰式ならびに個人別に追跡した経年変化量を求めた. 全検査成績から求めた各指標値の年齢に対する回帰式はPaO2=95.6-0.45×(Age), PaCO2=34.7+0.7×(Age), pH=7.397-0.0023×(Age),〔HCO3-〕=20.7+0.28×(Age) であった. 個人別経年変化量の平均値はPaO2: -0.74 (Torr/year), PaCO2: 1.07 (Torr/year), pH: -0.0028 (/year),〔HCO3-〕: 0.55 (mEq/l/year) であった. 肺胞気・動脈血酸素分圧較差 (AaDo2) は加齢に伴って増大せず, 肺胞低換気障害がDMD症のガス交換病態の主体であった. 酸・塩基平衡では慢性呼吸性アシドーシスの所見を呈していた.
    年齢との相関係数および回帰式からの残差標準偏差を考慮するとDMD症の換気不全の進行度を判定するにはPaCO2がPaO2よりも鋭敏な指標であり, PaCO2を換気不全の進行度の指標とするのが望ましいと考えた.
  • Iunis Suzuki, 近藤 哲理, 小林 一郎, 廣川 豊, 金澤 修, 太田 保世, 有田 秀穂
    1995 年 33 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    咳嗽時には胸郭内気管と共に胸腔内圧の影響を受けない頸部気管も収縮する. この収縮機序を探るために, 動物の気道に機械的刺激を加え, 咳嗽を誘発して検討を行った. 安静呼吸時に, 気管平滑筋は横隔神経活動 (PNA) と同期して収縮弛緩を繰り返しており, 肺・気道からの求心性入力を遮断すると, 気管平滑筋張力とPNAの大きさは相関していた. 咳嗽時には, PNAは増強し気管平滑筋も持続性に収縮した. しかし, 両者の相関は不良であり, 気管平滑筋収縮がPNA増強に先行する例も存在した. さらに, 筋弛緩の前後で, 咳嗽時PNA増強の程度を比較すると, 弛緩後は咳嗽時PNA増強は鈍化した. 以上の結果から, 咳嗽時には中枢の吸息活動増加に加えて気道・呼吸筋等からの入力が気管平滑筋収縮に関与していることを推測し, さらに, 咳嗽反応には気道・呼吸筋等からの入力に対する positive feedback 機構が存在すると考えた.
  • 急性型と慢性型の比較
    周 彩存, 長山 直弘, 大塚 義郎, 永井 英明, 宍戸 春美, 佐藤 紘二, 倉島 篤行, 蛇沢 晶
    1995 年 33 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    特発性急性間質性肺炎 (3名) と慢性間質性肺炎急性増悪 (4名) を急性型間質性肺炎 (7名) とし, 回復後ないし増悪時のフロー・ボリウム曲線 (V25/VC, VC: 肺活量, V25: VCの25%の肺気量位での気流) を特発性慢性間質性肺炎41例のそれと比較した. %VC-V25/VC面上にて末梢気道閉塞の有無を検討すると, 急性型では6例/7例 (86%) に, 慢性型では8例/41例 (19.5%) にそれぞれ末梢気道閉塞を認めた. つまり急性型においてはほとんどの症例で, 慢性型においては一部の症例で呼吸機能上末梢気道閉塞を認めた. 両群間においてその頻度に有意差 (p<0.01) があった.
  • 坂本 晃, 片上 秀喜, 迎 寛, 谷口 治子, 牧 妃佐子, 芦谷 淳一, 伊井 敏彦, 道津 安正, 松倉 茂
    1995 年 33 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    高カルシウム血症 (補正血清Ca値10.5mg/dl以上) ならびに白血球増加症 (WBC 10,000以上) を合併した原発性肺癌4症例において血中PTH関連蛋白質 (PTHrP) ならびにG-CSF濃度を測定し, さらに腫瘍組織中のPTHrPならびにG-CSF産生を免疫組織化学的に検討した. 症例は全例男性で, 年齢は59歳から79歳であった. 補正Ca濃度は15.8±1.4mg/dl (mean±SE), 白血球数は24,800±3,253/mm3 (mean±SE) であった. 病期はIIIA期1例, IIIB期2例, IV期1例でいずれも進行癌であった. 組織型は扁平上皮癌3例, 腺癌1例であった. 血中PTHrP濃度は4例中3例で高値 (137±68pg/ml, 正常<16pg/ml) を示した. 一方, 血中G-CSF濃度は全例に軽度から中等度の高値 (72±7.7pg/ml, 正常<20pg/ml) を示した. さらに全ての症例の腫瘍組織にPTHrP (1~34), G-CSFの免疫活性が証明された (ABC法). 原発性肺癌における高Ca血症および白血球増加症の原因として肺癌組織からのPTHrPおよびG-CSFの同時産生が示唆された.
  • 徳山 猛, 米田 尚弘, 濱田 薫, 吉川 雅則, 夫 彰啓, 友田 恒一, 仲谷 宗裕, 成田 亘啓, 田村 猛夏, 北村 和道
    1995 年 33 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    悪性胸膜中皮腫の胸水中組織ポリペプタイド抗原 (TPA) の診断的有用性について鑑別が問題となる各種胸膜炎と比較検討した. 悪性胸膜中皮腫症例の胸水中TPAは全例7,000U/l以上であったが (18,600±9,867 (n=5)), 良性石綿性胸膜炎はじめ良性疾患による胸膜炎の胸水中TPAはすべて4,000U/l以下で有意に低く (良性石綿性胸膜炎1,598±570 (n=5): p<0.01, 結核性胸膜炎1,370±759 (n=11): p<0.01, その他2,497±2,152 (n=3): p<0.05, その鑑別に有用であると考えられた. 肺癌に伴う胸水中TPAは悪性胸膜中皮腫と有意差は認めなかった. しかし肺癌症例ではTPA高値例全例に胸水細胞診で悪性細胞を認めたが, 悪性胸膜中皮腫症例は5例中4例が細胞診陰性であった. 今回検討した全症例のうち胸水中TPAが4,000U/l以上でかつ細胞診陰性例は悪性胸膜中皮腫症例のみであった. 以上からTPAは胸水中細胞診が陰性で診断が難しい悪性胸膜中皮腫を疑うマーカーになることが示唆された.
  • 森川 哲行, 武内 浩一郎, 藤野 英世, 福村 基之, 木村 緑, 古家 仁, 永野 尚登, 角田 幸雄, 田代 征夫
    1995 年 33 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    1992年2月より1994年4月までに当院にてガンマ・ナイフによる radiosurgery を施行した肺癌脳転移症例6例について検討した. 5例が腺癌, 1例が小細胞癌であり, 2例が単発転移, 4例が多発転移であった. 合計12転移巣に対して周辺線量12Gyから25Gyで治療を行い, 3転移巣に complete response, 8転移巣に partial response が認められ奏功率は92%であった. また, 全例に神経学的所見の改善が認められ, 剖検された2例において組織学的にも効果が確認された. 大きな副作用は認められず, 安全で侵襲の少ない治療法であったが, 6例中に4例に照射野外に再発を認めた. 以上の結果よりガンマ・ナイフは肺癌脳転移の治療に有用であることが示唆され, 特に脳幹部のような脳深部の転移巣に対して有用であると考えられた. しかし, 照射野外に再発が認められたことより, 全脳照射の追加は必要であると考えられた.
  • 畠山 忍, 立花 昭生, 鈴木 和恵, 岡野 弘
    1995 年 33 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    誤嚥性肺炎における少量, 短期間のステロイドホルモンの抗生物質との併用効果を検討する目的で, 30名の誤嚥性肺炎と診断した患者を用いて Clindamycin 600mg×2/日を投与した上で methyl prednisolone 20mg/日を3日間併用する群 (S群) と投与しない群 (P群) に分けて double blind でその短期治療効果をみた. 1) CRPはS群において4日目で有意な低下を認めた (p<0.05) が, P群では有意差はみられなかった. 2) 好中球エラスターゼはS群において4日目と7日目で有意な低下を認めた (p<0.05, p<0.05) が, P群では有意差はみられなかった. 3) 最高体温も7日目でS群で有意に低下した (p<0.05) が, P群では有意差はなかった. 4) 肺炎のスコアー化を行い検討したが, S群で4日目に有意な改善がみられた (p<0.01) が, P群では有意差はなかった. ステロイド併用による副作用は認めなかった. 以上より誤嚥性肺炎に対する少量, 短期のステロイドホルモン併用療法は有用であると考えた.
  • 杉田 学, 鈴木 道明, 清水 孝一, 坂本 匡一, 岩瀬 彰彦, 青木 茂行, 松岡 緑郎, 永山 剛久
    1995 年 33 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 女性. 平成4年2月に呼吸困難発作をきたし, 同5月に気管支喘息発作で当院第一回入院. 同年6月発熱, 咳嗽, 呼吸困難を主訴に第二回目入院. 好酸球の増加, 血中IgEの高値, 胸部X線, CT上全肺野にびまん性小粒状影を認め, 経気管支肺生検 (TBLB) を施行した. 組織像では血管外肉芽腫の所見を認めた. 同時期より自覚的には四肢末端のしびれ感も出現し, 神経伝導速度の低下も認め上記の所見と合わせ Churg-Strauss 症候群と診断した. ステロイド治療に反応し臨床症状は改善した. 本症は早期に診断すればステロイド剤投与により予後は良好であり, また胸部X線写真上異常陰影を示すことがあるといわれている. 本例は胸部X線写真上の異常陰影を認め, 他のびまん性肺疾患を鑑別するためにTBLBを施行した. 本例の如くTBLBで血管外肉芽腫の組織像が得られたという報告は稀であり, 若干の文献的考察を加え報告した.
  • 中村 祐之, 鈴木 俊英, 河端 美則
    1995 年 33 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は55歳, 女性で, 既往歴に25歳からの気管支喘息あり. 4年前の健康診断にて胸部X線写真上異常陰影を指摘されて以来, 胸部X線写真上移動する浸潤影が見られた. 入院2週間前より胸背部痛, 血痰を訴え入院. 開胸肺生検により, 病理組織学的に内部に断片化した真菌を見る気管支中心性肉芽腫症と好酸球浸潤を伴う肺病変が見られ, アレルギー性気管支肺真菌症と診断した. 抗好酸球分泌型カチオニック蛋白抗体による免疫染色にて, 病巣への高度の好酸球浸潤と共に好酸球顆粒の高度の脱顆粒像の所見が得られ, 本疾患における好酸球顆粒の組織障害面での病態への関与が強く示唆された.
  • 飯島 直人, 吉川 公章, 馬嶋 邦通, 新美 岳, 秋田 裕子, 伊奈 康孝, 佐藤 滋樹, 河口 治彦
    1995 年 33 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    16歳, 男性. 急激な発熱, 乾性咳嗽, 呼吸困難にて発症し, 胸部X線写真上両肺野びまん性浸潤影, 右胸水, Kerley's A, B, line が認められた. BALにて好酸球の著明な増加を認め, TBLBにて肺胞隔壁および肺胞腔内に好酸球を主体とした炎症細胞浸潤と胞隔の肥厚が認められた. 経過観察にてすみやかな臨床所見の改善と胸部異常陰影の消失がみられた. 以上より Allen らの報告した急性好酸球性肺炎 acute eosinophilic pneumonia (AEP) に合致すると考えられた. しかし, 本症例では以前よりIgE高値, 鼻アレルギーの既往等からアトピー素因が示唆されており, Allen らの報告した症例がアトピー素因を認めないという点では合致しなかった. また, 本邦での報告例25例のうち9例にはなんらかのアトピー歴が認められ, 22例のうち10例にIgEの高値が認められた. このことより, アトピー素因の有無については, 本邦例では必ずしも合致していないように思われた.
  • 斧原 康人, 古西 満, 濱田 薫, 前田 光一, 徳山 猛, 竹内 章治, 三笠 桂一, 国松 幹和, 澤木 政好, 成田 亘啓
    1995 年 33 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は33歳男性. 平成4年6月から長男, 長女, 次女が相次いで水痘に罹患した. 7月12日体幹に皮疹を認め, 翌日には顔面, 四肢にも出現した. 水痘と考えアシクロビルの投与を開始したが7月14日乾性咳嗽や呼吸困難が出現し胸部X線でもびまん性粒状影を認めた. 諸症状の改善を認めた後も胸部X線は改善しなかった. 7月24日気管支鏡を施行し気管支粘膜に白苔の付着を認めた. さらに, 同部位の組織像で壊死性変化を認め免疫組織化学にて Varicella Zoster Virus 抗原を証明した. 以後, 胸部X線上改善を示し7月31日粒状影はほぼ消失した. 本症例は画像上また臨床経過上水痘肺炎として典型例であり, 気管支病変から間接的に Varicella Zoster Virus 抗原を検出し得た興味深い1例と考えた.
  • 特異な臨床修飾が加えられた1例
    中島 淳, 小塚 裕, 柳生 邦良, 竹下 美香, 古瀬 彰, 岡 輝明
    1995 年 33 巻 1 号 p. 80-84
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    過誤腫性肺脈管筋腫症は続発性自然気胸のまれな病因の1つであるが, 結節性硬化症に時に合併することが報告されている. われわれは自然気胸発症から上記2疾患と診断された42歳女性の1例を経験したので報告する.
    Thin sliced high resolution CT (HRCT) では特徴的なびまん性の肺嚢胞が認められた. 気胸手術時施行した肺生検の病理所見では, 肺嚢胞および肺嚢胞壁・細気管支周囲の平滑筋増生を認め, 平滑筋はアクチン染色陽性・HMB45染色陽性であった. しかしその程度は軽度であり, 従来言われた肺嚢胞発生の機転である平滑筋増生による気道閉塞は認められなかった. 自然気胸手術後順調に経過し, 3年後も臨床的に増悪を認めなかった. 本症例では気胸発生前に妊娠歴が無く, また両側卵巣摘除がなされていたという既往のために, 病状の進行が妨げられたものと考えられた.
  • 畠山 忍, 立花 昭生, 鈴木 和恵, 岡野 弘, 岡 輝明
    1995 年 33 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の男性. 血痰と発熱を主訴に近医受診. 胸部X線写真上右上葉に巨大な腫瘤影を認め当院へ紹介入院となった. 胸部X線写真や胸部CTでは, 比較的境界明瞭な圧排性増殖を示す腫瘤影であり, 気管支鏡所見でも気管支粘膜への圧排や狭窄所見が主体だった. 気管支鏡下の生検組織像では壊死組織しか得られなかったが, 気管支洗浄細胞診で腺癌と診断された. cT2N0M0, Stage I の診断で右上葉切除+R2郭清が施行された. 切除標本では上皮性の悪性組織とともに間葉系の悪性組織が認められたため肺芽腫と診断した. 主腫瘍の周囲に高分化腺癌と考えられる組織も認められ, 興味ある症例と考え報告した.
  • 田坂 定智, 金沢 実, 仲村 秀俊, 松本 道長, 森 正明, 山口 佳寿博, 半田 俊之介, 倉持 茂
    1995 年 33 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 1995/01/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    57歳の男性. 52歳の時に輸血の既往がある. 進行性の労作時呼吸困難を主訴に当院を受診した. 入院後右心力テーテル検査にて肺高血圧症と診断した. また肝機能障害も認めた. 利尿剤を投与し, 経過を観察していたが進行性の低酸素血症を認めた. 肺血流シンチグラムで腎臓の描出を認め, 肺内シャントの存在が考えられた. 感染を誘因とした心不全の増悪のため, 発症から7年後に死亡した. 剖検肺では著明な高血圧性肺血管病変に加え, 前毛細管領域の細小動脈の異常な拡張像を認めた. また食道静脈瘤もあり, 門脈圧の充進が推察された. 著明な低酸素血症と肺内血管拡張から肝肺症候群 (hepatopulmonary syndrome) の関与が考えられた.
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