日本胸部疾患学会雑誌
Online ISSN : 1883-471X
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33 巻, 10 号
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  • 理論モデルの構築
    閔 庚〓
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1031-1037
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    静肺圧量 (SPV) 関係から肺内結合組織の量と質を評価する方法を検討した. 小葉モデル (閔ら, 1987) から全体肺の結合組織の応力釣り合いを小葉中心網 (隣接する小葉中心点間を結んでできる三次元網) の応力釣り合いに還元した. この小葉中心網の変形に相似性と可逆性の仮定を設けると確率幾何的な方法で肺内圧Pと肺容量Vが求められた (xは媒介変数) P=α0・exp(ax)/(1+x)2, V=V0(1+x)3, α0=0.12∑0/3V0. ここで, aは肺内結合組織の分子的組成を反映する弾性定数, V0は弛緩時肺容量, ∑0は肺内結合組織の総量を表わしている. したがって, SPV関係からパラメータa, V0, α0が推定できれば結合組織の質的量的変化が評価できる. このモデルは高肺気量位 (60%~90%TLC) で測定されたヒトのSPV関係のデータをよく再現した. したがって, 高肺気量位のSPV関係を利用すれば肺内結合組織の量と質が評価できる.
  • 細谷 順, 佐藤 忍, 仲川 義人
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1038-1043
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ラットにセファゾリンを併用してテオフィリンの結合するアルブミン量を変動させながら, 肺組織内と血漿中のテオフィリン濃度をテオフィリン投与15分後に測定し, その関係を検討した. 遊離型テオフィリンは限外濾過法で分離した. セファゾリン投与量に依存してテオフィリンの血漿中蛋白非結合率は上昇, 血漿中総濃度は低下した. 血漿中遊離型濃度はセファゾリン低用量併用時は変化なく, 高用量併用時は低下した. 肺組織内テオフィリン濃度はセファゾリン併用量に依存して低下した. テオフィリン主代謝物, 1,3-dimethyluric acid 血漿中濃度も低下し, テオフィリンの代謝が亢進しているとは考えられない. テオフィリンの利尿作用により未変化体の尿中排泄が促進されたものと考えた. ラット血中でテオフィリンのアルブミン結合率をセファゾリンによって変動させた場合, 血漿中遊離型濃度よりも総濃度の方が肺組織内濃度を正確に反映していることが示された.
  • 西田 富昭, 石橋 正義, 吉田 稔
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1044-1051
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺リンパ瘻を作製した麻酔犬を用いて, 小腸の虚血・再灌流による遠隔肺傷害の発症における好中球の活性化及びその動態の役割について検討した. 再灌流群 (n=7) では, 非開腹下に2時間半の小腸の虚血後に3時間再灌流を行った. 対比検討のため対照群 (n=6) を設けた. 再灌流群では虚血時には肺動脈抵抗 (Rpa) のみ上昇したが, 再灌流後には全肺血管抵抗 (Rpt) 及びRpaのみならず肺静脈抵抗 (Rpv) も上昇した. 再灌流後肺毛細血管左 (Ppc) の上昇は見られなかったが, 肺リンパ流量 (Jv) 及びリンパ蛋白クリアランス (Qp) は共に有意に増加し (p<0.01), 肺血管外水分量も増加した. 血中の好中球H2O2産生, 肺 Myeloperoxidase (MPO) 活性および肺リンパ中への好中球数は処置前に比べ有意に増加した (p<0.05). 以上より小腸の虚血再灌流によって流血中で Priming された好中球は容易に活性化されることが示唆され, その結果として好中球が肺へ集積したことが遠隔肺傷害の発症機序に関与していると考えられた.
  • 上村 由樹, 小林 誠, 宗石 秀典, 浦田 知之, 箱田 英二, 田中 優治, 三好 勇夫
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1052-1057
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    気管支鏡的擦過細胞診と, 染色体数的異常を蛍光 in situ hybridization (FISH) 法にて比較検討した. 対象は, 画像診断にて肺癌が疑われた症例, 確定診断を得るために気管支鏡手技を要した症例である. 北大のグループは, 人肺癌細胞株及び肺癌組織からの単離細胞に対し, 7, 17, X, Y染色体セントロメア特異的DNAプローブを用いて検討しているが, 筆者は11番染色体セントロメア特異的DNAプローブを用いた. 擦過細胞診で classV と診断された7症例に, disomy 以外の異数性のあるシグナルを認めた. 正常細胞が多数混在していることもあって, シグナル数は, 組織型に拘わらず大多数が2個で, 異数性のあるシグナルとしては3~5個のものが最も多かった. 擦過細胞診が class I, 臨床経過から最終的に非腫瘍性と診断された症例14~25では, 細胞あたり3~5個のシグナルを示すものは1%以下で, 6~8個以上のものは認められなかった. 一方, class Iと診断されたが, 他の診断手技により肺癌が証明された症例8~13のうち, 症例8~11は, シグナル数3~5個の増加, また6~8個以上を示すものも認められた. 以上より気管支鏡的擦過細胞標本を用いたFISH法は, 肺癌の補助診断として有用であると考えられた.
  • 力丸 徹, 矢野 秀樹, 田中 泰之, 木下 正治, 市川 洋一郎, 大泉 耕太郎
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1058-1063
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺癌患者の抗癌療法中の発熱時における喀痰由来細菌の中には, 非発熱群に比べ有意菌を多く認め, 菌種別には黄色ブドウ球菌やグラム陰性桿菌の割合が高く, 典型的な院内感染の様相を呈していた. 発熱要因として, IVHカテーテルの挿入や白血球および好中球の減少があげられる. 発熱原因として, 呼吸器感染症以外では菌血症が重要であり, 長期発熱患者の約4分の1で真菌や弱毒菌を主体とする病原微生物の血液培養陽性を認め, 治療にあたっては, これらの病原体を考慮する必要がある. granulocyte colony-stimulating factor (G-CSF) の導入前後で分離菌種を検討すると, クレブシエラ属の減少やMRSAの増加が知られた. 今回の検討では, G-CSFの使用例でむしろ発熱頻度が高いという傾向を認めたが, G-CSFの使用が抗癌剤の Dose Intensity を高め, そのため易感染性をましている可能性もあり, さらなる検討が必要と考えられた.
  • 吉田 直之, 杉田 博宣, 中島 由槻, 中野 裕康, 河端 美則
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1064-1072
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺癌に伴う肺梗塞症例の, CT像を中心とした画像とその病理所見とを対比し, 肺梗塞の診断に有用と思われるCT所見とその成因を検討した. 1980年から1990年までの11年間に当院で施行された肺癌切除518例中16例 (3%) に肺梗塞の合併が認められ, これらの症例に剖検1例を加えた17例を対象とした. 男13例, 女4例, 平均年齢56歳. 腫瘍の内訳は腺癌8例, 扁平上皮癌6例, 腺癌扁平上皮癌2例, 小細胞癌1例. 画像で梗塞像を確認出来た8例では, 肺癌に伴う肺梗塞の特徴的なCT所見として, a. 肺癌と同一肺葉内でその末梢に存在. b. 直径10~25mm大で辺縁不明瞭な結節影. c. 胸膜面に接する結節影と, 胸膜面と離れた結節影がほぼ同じ割合でみられる. との結果が得られた. 1例では経時的な結節影の追跡によりそのサイズの縮小, 辺縁の明瞭化を確認出来た. 肺梗塞の原因の殆どは腫瘍の中枢進展に伴う中枢側肺動静脈狭窄によるものであった.
  • 篠崎 俊秀, 巽 浩一郎, 佐久間 哲也, 増山 茂, 加藤 邦彦, 岡田 修, 木村 弘, 栗山 喬之
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1073-1079
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    閉塞型睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) における覚醒時の肺高血圧症成立に関与する因子に関して, 右心カテーテル検査を施行しえたOSAS 25例を対象として検討した. 肺動脈平均圧20mmHg以上の肺高血圧症は8例に認めた. 肺動脈平均圧と動脈血PO2 (r=-0.54)・%FVC (r=-0.68)・FEV1.0% (r=-0.52) には負の相関が, 動脈血PCO2 (r=0.79)・%IBW (r=0.45)・Hb値 (r=0.40) には正の相関が認められ, 覚醒時の高炭酸ガス血症・低酸素血症・拘束性および閉塞性換気障害・肥満・多血症は, OSASにおける覚醒時の肺高血圧症成立に関与していることが示された. しかし, 覚醒時の肺動脈平均圧は, 睡眠時無呼吸および睡眠時低酸素血症の程度と有意の相関は認めず, 覚醒時の肺高血圧症成立には睡眠呼吸障害の程度は直接的に関与していないことが示唆された.
  • 平潟 洋一, 北村 諭
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1080-1085
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    原発性肺癌患者におけるばち状指と肺性肥大性骨関節症 (PHO) の合併率およびこれらの症例の臨床的特徴について検討した. 原発性肺癌患者の12.5%にばち状指を認め, 扁平上皮癌の割合が高かったが, 臨床病期に差を認めなかった. ばち状指を呈した肺癌患者では低酸素血症および高二酸化炭素血症を認めず, これらはばち状指の成因に関与していないと考えられた. PHOは3例で, ばち状指陽性肺癌患者の2.9%, 肺癌患者全体の0.22%に見られ欧米における合併頻度に比較し明らかに低かった. 3例中2例は男性で平均年齢は49歳であった. 組織型, 臨床病期は扁平上皮癌IIIA期, 大細胞癌VI期, 腺癌VI期が各1例ずつであった. いずれも骨シンチ検査がその診断や経過フォローに有用であった.
  • 安藤 守秀, 堀場 通明, 角田 俊昭, 進藤 丈, 町田 和也, 高木 健三
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1086-1092
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    私たちは在宅酸素療法患者の在宅率の経年的変化を知るために, 大垣市民病院呼吸器科にて在宅酸素療法を導入された患者で1年以内の観察打ち切り例を含まぬ72例を対象に retrospective に在宅率の算出を行った. 解析の結果, 全体例での在宅率は1年目92.7% (n=61), 2年目87.5% (n=36), 3年目78.5% (n=16) と算出された. 生存例と死亡例を区別した場合, 生存例では2年以上に亘って95%以上の在宅率が維持されていたのに対し, 死亡例では経年的に直線的に在宅率は低下し, 在宅率よりみると, HOT導入直後より両群は区別され得ることが示唆された.
  • 谷田 達男, 植田 信策, 小野 貞文, 星川 康, 田畑 俊治, 野田 雅史, 鈴木 聡, 千田 雅之, 芦野 有悟, 藤村 重文
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1093-1098
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    機械的な刺激によって活性化された白血球が引き起こす肺血管透過性亢進と肺血管抵抗の増加が, シクロオキシゲナーゼ (COX) 代謝産物を介しているか否かをラット摘出肺を用いて検討した. 実験は対照値を測定後, 白血球を無処置 (非活性群) あるいは, ガラス容器内で10秒間振盪して (活性化群) 灌流液に加え, 90分間灌流を停止した後, 再灌流した. COX阻害剤のメクロフェナメート (Meclo) を活性化白血球注入前に灌流液に投与した (Meclo 群). 活性化群では濾過係数が約2.5倍に, また肺血管抵抗が約3.3倍に上昇した. Meclo 群では濾過係数の上昇は抑制されたが, 肺血管抵抗は対照群との中間の値をとった. また, 組織の検索により白血球の血管内接着は抑制されなかった. 以上から, 白血球の接着能の亢進による肺血管透過性亢進は, COX代謝産物を介することが示唆された.
  • 山本 浩三, 阿部 聖裕, 井上 義一, 横山 彰仁, 河野 修興, 日和田 邦男
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1099-1104
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は36歳女性で温室栽培業を営んでいる. 咳, 膿性痰を主訴に当科を受診した. 胸部X線写真上, 左舌区の浸潤影を認め,喀痰検査および経気管支肺生検の結果 Aspergillus fumigatus 認による粘液性気管支閉塞をともなうアレルギー型肺アスペルギルス症と考えた. フルコナゾールを投与し症状および浸潤影は消失したが, 約70日後より再び咳, 膿性痰が出現し胸部X線写真上でも左上肺野に新たな浸潤影の出現を認めたため当科に入院した. 喀痰および気管支洗浄液の培養で Aspergillus flavus を認め, 経気管支肺生検で好酸球性肺炎と診断し薬剤をフルコナゾールからイトラコナゾールへ変更したところ, 症状および浸潤影は軽快した. 本例は明らかな喘息症状や中心性気管支拡張症は認めず, 治療経過中アスペルギルス属の菌種交代を認めた興味深いアレルギー型肺アスペルギルス症であった.
  • 長谷島 伸親, 小林 淳晃, 竹澤 信治, 大和 邦雄, 門山 周文, 川野 裕
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1105-1110
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    ベリリウムの使用量に比し, 本邦の慢性ベリリウム症の報告は少なく20数例である. 今回, 我々は, 低含量Be銅合金加工工場で発生した慢性ベリリウム症の一例を経験した. 症例は24歳, 男性, 労作時呼吸困難を主訴に受診した. 19歳の時より当院受診時まで, 1.8%未満のベリリウム銅合金加工工場に勤務し, 細線加工に従事していた. 胸部X線像では左気胸と両肺にびまん性の微細な粒状影と嚢胞が認められ, 肺機能検査は, 拡散障害と拘束性障害を示していた. 肺生検組織で壊死を伴わない類上皮細胞性肉芽腫と胞隔炎を認め, 肺組織に正常より高濃度のベリリウムが検出された. BeSO4による気管支肺胞洗浄液リンパ球刺激テストと末梢血リンパ球刺激テストは共に陽性であった. 職業歴と検査所見より慢性ベリリウム症と診断した.
  • 須郷 亜紀子, 瀬山 邦明, 矢口 高基, 能戸 幸司, 吉良 枝郎, 山口 洋
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1111-1118
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    関節炎, 眼病変, BHL, 皮膚病変でサルコイドーシスを発症し, 3年後に高度房室ブロックによる徐拍性不整脈とともにサルコイドミオパチーに進展した症例を報告し, サルコイドミオパチー本邦報告24例 (本症例を含む) を文献的に考察した. 症例は49歳, 女性で, 徐拍性不整脈による心不全症状で入院した. ペースメーカー植え込みにより心不全改善後も階段昇降困難感, 軽度の下肢筋力低下が持続し, 67Gaシンチで両下肢にびまん性の異常集積を認めた. 左腓腹筋生検で筋線維間質に多数の非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めた. 巨細胞, 組織球, リンパ球の浸潤を伴い, 肉芽腫に隣接する筋線維は萎縮し, 一部硝子様変性を示した. サルコイドミオパチー本邦報告例の検討では, 男女比は1:3.8と女性に多かった. ミオパチーを契機にサルコイドーシスと診断された群より, サルコイドーシス診断確定後ミォパチーを発症した群は, 高齢発症で, 多臓器羅患の傾向があり, 心サルコイドーシスの合併が多かった. ステロイドは75%で有効であった.
  • 北 俊之, 藤村 政樹, 早瀬 満, 松田 保, 野々村 昭孝
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1119-1124
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 女性. 6年前より左耳下腺腫脹と口腔内乾燥感を認め, 胸部X線にて右中肺野の異常陰影を指摘され精査のため入院した. 口唇生検, 唾液腺シンチでシェーグレン症候群と診断した. 経皮肺生検で組織学的には, 右肺S4の腫瘤は pseudolymphoma, 切除した左耳下腺腫瘍は myoepithelial sialadenitis の所見でともに悪性像は認めなかった. 4年後, 胸水貯留による呼吸不全で死亡した. 剖検の結果, 病理組織学的には右肺中葉の腫瘍は非ホジキンリンパ腫 (diffuse, large, B cell, IgG) で, 背景には小型で細胞質が淡明な centrocyte-like cell のモノトーナスな増生像を認めた. retrospective には切除された左耳下腺腫瘍にも同様の所見を認め, シェーグレン症候群の経過中に耳下腺原発で mucosa-associated lymphoid tissue (MALT) 由来の肺非ホジキンリンパ腫 (肺NHL) が合併したものと考えられた.
  • 五十嵐 知文, 中川 晃, 西野 雅彦, 村上 聖司, 大内 博文, 小関 孝之, 吉田 豊, 干野 英明, 今井 良成, 阿部 庄作
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1125-1129
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    肺好酸球性肉芽腫症の2例を報告した. 症例1は39歳, 女性, 喫煙歴は10~15本/日, 20年, 症例2は19歳, 男性, 喫煙歴は20本/日, 5年であった. CTでは嚢胞性病変, 小結節性病変が上中肺野を主体に認められた. 症例1は胸腔鏡下肺生検, 症例2は経気管支肺生検によって診断した. 診断後, 禁煙指導のみで経過観察を行ったところ自覚症, CT所見, 肺活量の改善を認めた. 禁煙が本症の軽快に関与していた可能性があると思われた.
  • 金子 保, 庄司 晃, 椿原 基史, 大久保 隆男, 大越 隆文
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1130-1134
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 男性. 小細胞肺癌の診断でシスプラチン (80mg/m2, day 1)+エトポシド (100mg/m2, day 1, 2, 3) による併用化学療法 (以下PE療法) を計6コース施行し, 多発脳転移に対して44Gyの全脳照射を追加した. 照射11ヵ月後よりふらつき・歩行障害が出現した. 頭部CTでは中枢神経系再発の所見は認められず, 脳室の軽度拡大と大脳白質の低吸収像が著明であり, 頭部MRIではT2強調像にて大脳白質の広範な高信号領域が明瞭であった. 本症例はPE療法に全脳照射が加わることによって発症した治療関連の白質脳症と診断した. 神経症状は安定し, 症状発現から8ヵ月経過後も肺癌再発の徴候もなく生存中である. メトトレキセートや5-フルオロウラシル系抗癌剤に起因する白質脳症は報告されているが, PE療法との関連が示唆される白質脳症の報告は本例が第1例目である.
  • 坂東 修二, 山地 康文, 池田 宇次, 山内 英雄, 大西 隆行, 藤田 次郎, 高原 二郎, 前田 昌純
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1135-1140
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は23歳, 男性. 反回神経麻痺による嗄声を主訴として発症. 胸部画像上, 前上縦隔に巨大な腫瘤像が認められ, 同部からの吸引細胞診で胸腺腫と診断された. 病期の検索では心膜に播種を認め stage IVa (正岡) と考えられた. 本症例に対し, 始めに carboplatin (CBDCA), adriamycin (ADM) および etoposide (VP-16) の3者による多剤併用化学療法を行い, 著しい腫瘍縮小効果が得られた. 引き続いて行った手術時には腫瘍は肉眼的に瘢痕化しており, 病理学的にも切除材料および切除断端には腫瘍細胞の残存がないことが確認された. 進行期の浸潤型胸腺腫に対する術前化学療法としてCBDCA, ADMおよびVP-16併用療法が有効であることが示唆された.
  • 佐藤 敦夫, 中谷 光一, 松下 葉子, 松尾 寿保, 山鳥 英世, 倉沢 卓也, 池田 宣昭
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1141-1145
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の男性. 肺結核遺残空洞に合併した慢性壊死性肺アスペルギルス症にて itraconazole (ITCZ) 投与を続けていたが, 発熱右下葉に新たに出現した浸潤影にて入院した. 入院時喀痰よりアスペルギルスが繰り返し培養されたため, ITCZ経口200mg/日と amphotericin B (AMPC) 吸入10mg/4回/日の併用療法を開始し, 浸潤影は次第に改善した. 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法にて血清AMPCの血清濃度を測定したところ, 2,400mg/日のAMPC経口投与を行った場合に匹敵する0.09μg/mlのAMPC血清濃度が得られた. 従来AMPCは経気道的に吸収されないと考えられており, 本症例はAMPCの経気道的な吸収を示唆する貴重な症例と考えられた. また, ITCZとAMPC吸入の併用は, 慢性壊死性肺アスペルギルス症に対する有効な治療法の一つであると考える.
  • 新井 徹, 今村 文生, 中村 慎一郎, 宝来 威
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1146-1149
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 76歳の男性. 咳嗽, 血痰, 血清CEA高値にて当院紹介入院となった. 入院時, 血清CEAは528.6ng/mlと著明な高値を示し, 胸部X線像では, 左下肺野に腫瘤陰影が認められた. 気管支鏡検査では, 左底幹に表面に壊死を伴ったポリープ様病変が認められ, 同部の生検にて, 気管支カルチノイドと診断された. 左下葉及びS5区域切除が施行され, 術後病理組織診断でも同様の診断であった. 免疫組織化学では, CEA強陽性を示した. 血清CEAは術後2ヵ月で正常化した. したがって, 本症例の血清中のCEA高値は, 気管支カルチノイドの腫瘍細胞に産生されたものであり, 非常に稀な症例と考えられた.
  • 篠原 陽子, 神 靖人, 舘 治彦, 藤原 明, 船越 直哉, 鈴木 恵子, 横瀬 智之
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1150-1154
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 42歳, 男性, 主訴は咳, 痰, 息切れで胸部X線写真, 胸部CTにて左肺に数個の結節影を認め, 平成4年10月5日試験開胸を試行した. 病理所見ではAL型アミロイド結節と診断され, 形質細胞と異物型巨細胞の浸潤が認められた. 免疫組織化学的染色法でアミロイド結節はALλ+κ型であった. 形質細胞は基本的にはポリクローナルで一部モノクローナルな集族が観察された. 異物型巨細胞内にも軽鎖の陽性像を認めた. in situhybridization にて観察すると形質細胞においてはλ mRNA, κmRNAのシグナルが強く認められ, 異物型巨細胞においてはシグナルは認められなかった. これより異物型巨細胞内の軽鎖は吸収によることが明らかにされた. 電顕像では異物型巨細胞に“amyroid star”像を観察しアミロイドを異物型巨細胞が産生している形態学的所見を示していると考えられた.
  • 大城 元, 兼島 洋, 嘉数 朝一, 普久原 浩, 中村 浩明, 斎藤 厚
    1995 年 33 巻 10 号 p. 1155-1159
    発行日: 1995/10/25
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の女性で, 上気道炎の症状にて近医を受診し, 胸部異常陰影を指摘され当科紹介となった. 胸部X線上, 右下肺野に横隔膜に接して腫瘤影が認められ, 腫瘤の形状から肺内良性腫瘍が疑われた. 胸部CTにて腫瘤部のCT値が肝と同一であり, また腹部超音波検査にて腫瘤部位に一致して肝との連続性をもち胸腔内に突出する病変が認められたため肝ヘルニアを疑い精査を進めた. 胸部MRIの縦断像, 肝シンチおよび腹部血管造影検査等にて最終的に確診に至った. 肺内良性腫瘍と鑑別を要する肝ヘルニアは稀ではあるが, 横隔膜に接する右下肺野の腫瘤影の鑑別診断において本症も念頭におく必要があると思われるため報告した.
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